食品・調味料の輸出 完全ガイドマップ2026|商材別の難易度から規制・支援制度・販路・展示会まで
- 堤浩記
- 7月25日
- 読了時間: 14分
更新日:11 時間前

「食品を輸出したいが、どの商材から手をつけるべきか分からない」
「調味料の海外展開に関心はあるが、規制が複雑そうで踏み出せない」
「台湾かシンガポールか、どの国から攻めるべきかの判断基準がほしい」
食品・調味料の輸出は、いま国の後押しがもっとも強い分野のひとつです。農林水産省によれば、2025年の農林水産物・食品の輸出額は過去最高の1.7兆円に達し、13年連続で増加しました。政府は2030年に5兆円という目標を掲げ、2026年4月には省庁を横断する新しい支援プログラムも動き出しています。
一方で食品は、工芸品や生活雑貨と比べて輸出の難易度が高い商材でもあります。規制、賞味期限、温度帯——モノの性質そのものが制約になるため、「どう売るか」の前に「何を・どこへ売るか」の見極めが成否を分けます。
このガイドマップは、Link Globalが台湾・アジア向けの販路開拓支援で蓄積した実務知見をもとに、食品・調味料の輸出に必要な情報を商材別・国別・テーマ別に整理したものです。各セクションから詳細記事へリンクしていますので、自社の状況に近いところから読み進めてください。
食品輸出が工芸品より難しい3つの理由

食品・調味料の輸出計画を立てるとき、最初に押さえておくべきなのは「食品には他の商材にない3つの制約がある」という点です。この3つを理解しているかどうかで、初期の商材選定の精度が大きく変わります。
① 規制が「商品ごと」にかかる
工芸品や雑貨の輸出では、多くの場合まとまった単位で通関の考え方を整理できます。しかし食品は、原材料・添加物・残留農薬・アレルゲン表示といった要件が商品ごと、そして輸出先国ごとに異なります。同じ醤油でも、原材料に何が入っているかで輸出できる国が変わることは珍しくありません。
② 賞味期限がリードタイムを縛る

海上輸送で2〜4週間、通関と現地物流でさらに数週間。輸入国のなかには、残存賞味期限が一定割合以上でなければ通関を認めないという運用を持つところもあります。賞味期限が短い商品は、そもそも船便に乗らないという判断が先に来ます。
③ 温度帯がコストを決める
常温・チルド・冷凍のどれで運ぶかで、輸送コストは数倍変わります。冷凍が必要な商品は、現地に冷凍対応の物流網と保管能力を持つ輸入者を見つけられるかが前提条件になり、選べるパートナーの数が一気に絞られます。
商材別・輸出難易度マップ|「始めやすい商材」から組み立てる

初めての食品輸出では、「売りたい商品」より「輸出しやすい商品」から入るほうが立ち上がりが速くなります。自社の商品ラインナップを、次の難易度の階段に当てはめてみてください。
難易度★|常温の加工食品・菓子・乾物
もっとも参入しやすい層です。常温で流通でき、賞味期限が比較的長く、動物性原材料を含まないものであれば、規制対応も物流も現実的です。菓子、米菓、乾麺、フリーズドライ、乾物などが該当します。最初の輸出実績をつくり、現地バイヤーとの取引を開始する足がかりとして最適です。
難易度★★|調味料——醤油・味噌・だし・柚子胡椒
海外の日本食需要を背景に、伸びしろが大きいカテゴリです。常温流通できるものが多く、業務用と小売用で異なる展開が可能な点も強みです。注意すべきは、だし系の商品に含まれる魚介・肉エキスです。動物性原材料が入ると検疫の要件が発生し、輸出できる国が絞られます。原材料表を先に整理しておくことが、そのまま輸出可能国リストの作成につながります。
九州の調味料を例にした商材別の具体論は、福岡・九州の食品・調味料を海外に売る実務ガイドで解説しています。
難易度★★|茶・抹茶——世界的な需要拡大の波
いま最も需要が強いカテゴリのひとつです。常温・長期保存が可能で輸出適性は高い一方、残留農薬基準(MRL)が国ごとに異なり、有機認証の有無が販路を左右します。用途に対して適切なグレードを選べるかが、価格交渉力にも直結します。
市場動向を掴む:世界で加速する“抹茶ブーム”
グレードと産地の選び方:抹茶のグレードと生産エリアを正しく理解する
輸出実務の確認:抹茶輸出のチェックリスト
ASEANの日本茶市場をデータで読む2026——シンガポール・タイ・ベトナムで売れる茶種・購入形態・チャネルがどう違うかを、消費者調査とバンコク店頭調査のデータで比較
難易度★★★|酒類——日本酒・焼酎
酒類は食品規制に加えてアルコール規制が二重にかかります。輸入者側の酒類取扱免許、アルコール度数に応じた酒税、ラベルへの警告表示義務など、国ごとに独自のルールがあります。品質面では温度管理と遮光が課題になり、生酒はさらにハードルが上がります。詳細は日本酒の輸出方法と注意点にまとめています。
難易度★★★★|冷凍・チルド・水産加工品
冷凍・チルドは、現地の物流網と輸入者の設備が前提条件になります。水産加工品はさらに、輸出先国が求める衛生要件に対応した施設での製造が必要になるケースがあり、製造拠点そのものの認定が論点になります。明太子のように日本国内で強いブランドを持つ商材でも、まず「どの国なら現行の製造体制で出せるか」の確認から入るのが実務です。
難易度★★★★★|生鮮青果・畜産物
植物検疫・動物検疫が正面からかかる領域です。輸出先国ごとに、産地登録や指定施設での処理、検疫証明の取得などが求められます。単独で挑むより、産地単位の取り組みや公的支援の枠組みに乗るほうが現実的です。
どの国から始めるか|規制ハードルと市場性で選ぶ

商材が絞れたら、次は国の選定です。食品輸出では「市場が大きい国」より「自社の商材が通る国」を先に見るのが定石です。
台湾——距離・嗜好・日本ブランド評価のバランスが良い
日本からの輸送日数が短く賞味期限の制約を受けにくいこと、日本食が生活に定着していること、日本ブランドへの評価が高いことから、初回の輸出先として選ばれることが多い市場です。手続き・必要書類・販路開拓の実務は台湾への食品輸出完全ガイド2026にまとめています。台湾市場全体の理解は台湾市場進出 完全ガイドマップ2026から辿ってください。
規制面では大きな前進がありました。2025年11月21日、台湾は東日本大震災後に導入した日本産食品への輸入規制を全面撤廃し、5県産食品の放射性物質検査報告書と、全日本産食品の産地証明書がいずれも不要になりました(酒類はいずれも対象外)。産地による手続きの差が消えたため、旧情報を前提に輸出可否やコストを判断していた場合は見直す価値があります。
販路側も動いています。2026年7月に台湾で家樂福(カルフール)ブランドが消滅し、小売は統一集団と全聯集団の二大グループへ集約されました。どのチャネルを狙うかで求められるロット・価格・ラベル精度が変わるため、チャネル別の条件整理も上記の台湾ガイドに収録しています。
シンガポール——規制が明快で、ASEANの試験市場になる
食品規制がSFA(シンガポール食品庁)に一元化されており、ルールが明文化されていて読みやすい市場です。英語ラベルが基本であること、関税が限定的でGSTの扱いを押さえれば価格設計が立つことから、ASEAN展開の試験市場として使いやすい特徴があります。規制・ラベル・GST・販路の実務はシンガポールへの食品輸出完全ガイド2026、市場全体はシンガポール市場進出 完全ガイドマップ2026を参照してください。
香港・その他アジア
香港は関税面のハードルが低く、日本食のプレゼンスも高い市場です。タイ・ベトナム・マレーシアは所得の伸びとともに日本食需要が拡大していますが、マレーシア・インドネシア向けではハラール対応が事実上の参入条件になる場合があります。
中国本土は、上記のいずれとも制度の構造が異なります。台湾やシンガポールが輸入者主体の制度であるのに対し、中国は日本側の製造工場そのものを中国当局に事前登録する仕組み(シングルウィンドウ登録)で、2026年6月には根拠規定が海関総署令第280号に切り替わりました。産地規制も残っており難易度は高い市場ですが、加工食品・調味料・菓子には実需があります。手続きの全体像は中国への食品輸出 完全ガイド2026で解説しています。
米国・EU
市場規模は最大級ですが、要求される管理水準も高くなります。米国は食品安全強化法にもとづく輸入者側の検証義務が実務上の関門になり、EUは添加物や動物性原材料に関する規制が厳格です。抹茶のように単価が高く常温で運べる商材から入り、実績を積んでカテゴリを広げる進め方が現実的です。
全商材に共通する4つの実務論点

商材と国が決まったら、次の4点を並行して固めます。ここが曖昧なまま商談に入ると、条件提示の段階で必ず止まります。
① ラベル表示
輸出先国の言語で、名称・原材料・内容量・賞味期限・保存方法・原産国・輸入者情報を表示するのが基本形です。栄養成分表示やアレルゲン表示の要否・様式は国ごとに異なります。ラベルは印刷リードタイムが長いため、商談と並行して着手するのが実務上の鉄則です。
② HSコードと関税
HSコードの分類が、そのまま関税率と必要書類を決めます。分類の解釈が分かれやすい商品では、事前に輸入者側と認識を合わせておくとトラブルを避けられます。台湾向けのコスト構造と価格設定は台湾への輸出にかかる関税・コスト・価格設定ガイドで整理しています。
③ 賞味期限(シェルフライフ)と温度帯
日本国内の賞味期限から、輸送日数・通関・現地在庫期間を引いた残りが、現地で販売できる期間です。この計算を先にしておかないと、価格が合っても物理的に取引が成立しません。
④ 現地の輸入者要件と登録
多くの国では、輸入手続きの主体は現地の輸入者です。輸入ライセンス、施設登録、製品登録が必要な国もあり、誰を輸入者にするかが規制対応の可否そのものを決めます。パートナー選定の考え方は海外代理店の探し方と選び方、台湾の商流実務は台湾のバイヤー・代理店・ディストリビューターと組む実務ガイドを参照してください。
2026年の公的支援・補助金の全体構造

食品輸出は、公的支援がもっとも手厚い分野です。制度が多く見えますが、「認定制度」「相談・伴走支援」「設備投資への補助金」の3層で捉えると整理しやすくなります。
① 輸出促進法にもとづく「輸出事業計画」の認定
農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律(令和元年法律第57号)にもとづき、輸出の取り組みを行う事業者は輸出事業計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けることができます。認定を受けると、関連事業での優先採択、国・JETRO・都道府県・専門家による支援チームのサポートに加え、税制上の措置として機械装置は30%、建物・附属設備・構築物は35%の割増償却を5年間適用できます。計画策定の手引きは令和8年4月に改訂されています。
② GFPと「日本の食輸出1万者支援プログラム」
GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)は、輸出に意欲のある生産者・事業者を対象に、輸出診断、専門人材とのマッチング、セミナーなどを提供する農林水産省の枠組みです。登録は無料です。
2026年4月には、経済産業省・中小企業庁・農林水産省・JETRO・中小機構が連携する「日本の食輸出1万者支援プログラム」が始動しました。JETROが4月10日にポータルサイトを開設しており、登録すると相談対応、専門家による助言・伴走支援、支援施策の紹介を受けられます。とくに加工食品分野でこれから輸出に挑む事業者の掘り起こしに重点が置かれているため、調味料・加工品メーカーは最初に確認しておくべき窓口です。
③ 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金「グローバル枠」
設備投資をともなう輸出体制の整備には、2026年に新設された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」のグローバル枠が使えます。補助率は中小企業で2/3、補助上限は最大7,000万円(大幅賃上げ特例の適用時は最大9,000万円)です。海外旅費・通訳翻訳費がグローバル枠のみの対象経費に含まれるのも特徴です。第1回公募は2026年6月29日に公募要領が公開され、申請受付は8月31日から9月30日18時までとなっています。
制度の詳細は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金「グローバル枠」とは?、補助金全体の見取り図は海外販路開拓に使える補助金完全ガイド2026、福岡県の事業者は福岡県の海外展開支援制度・補助金完全ガイド2026も併せてご確認ください。
補助金・支援制度は年度ごとに要件やスケジュールが改定されます。申請にあたっては必ず各省庁の最新の公募要領で最終確認してください。
商談の場をつくる|食品系の主要展示会
食品輸出では、展示会が販路開拓の主戦場になります。試食を通じて商品の価値を直接伝えられるうえ、輸入者・卸・小売のバイヤーが一度に集まる場は他にありません。
台湾
台湾最大級の食品見本市:Food Taipei(台北国際食品展)とは?
台湾の食品展示会全体の見取り図:台湾の食品展示会の魅力とビジネスメリット
シンガポール・東南アジア
東南アジア向けの主要商談機会:FHA(Food & Hospitality Asia)とは?
開催時期と使い分け:シンガポールの食品展示会一覧と出展活用ガイド
出展形態の選び方、費用の組み立て、会期後のフォローまでの共通論点は海外展示会 完全ガイドマップ2026に集約しています。
輸出を立ち上げる5ステップ|食品ならではの差分

海外販路開拓の基本フローは商材を問わず共通です。詳細は海外販路開拓の進め方にまとめていますので、ここでは食品特有の差分だけを整理します。
ステップ1:市場を絞る前に、原材料表から輸出可能国を洗い出す。市場性より先に規制の通過可否を確認する
ステップ2:候補国を2〜3に絞り、残存賞味期限の要件と温度帯の実現性を確認する
ステップ3:輸入者候補をリストアップする際、扱う温度帯とチャネル(日系小売/現地スーパー/外食/EC)で分類する
ステップ4:商談前に英語および現地語のラベル案と、輸出仕様の価格表を用意する。試食サンプルの送付要件も事前確認する
ステップ5:初回は小ロットで実績をつくり、リピート発注が入ってから設備投資と補助金申請を検討する
よくある質問(FAQ)
食品輸出は、どの商材から始めるのが現実的ですか?
常温で流通できて賞味期限が長く、動物性原材料を含まない加工食品からです。菓子・乾物・乾麺・調味料(動物性エキスを含まないもの)が該当します。まず1品で輸出実績と取引関係をつくり、そこからカテゴリを広げる進め方が最短です。
調味料の輸出で最初に確認すべきことは何ですか?
原材料表です。魚介・肉エキスなどの動物性原材料が含まれると検疫要件が発生し、輸出できる国が絞られます。原材料表を整理することが、そのまま輸出可能国リストの作成になります。
台湾とシンガポール、どちらから始めるべきですか?
輸送日数が短く賞味期限の制約を受けにくい点、日本食が生活に定着している点では台湾が有利です。一方シンガポールは規制が明文化されていて読みやすく、英語ラベルで対応できるため、ASEAN全体を見据えた試験市場として機能します。商材の日持ちが短ければ台湾、ASEAN展開を前提にするならシンガポールという選び方が実務的です。
補助金は輸出を始める前から使えますか?
制度によります。設備投資をともなう補助金は事業計画の審査を経るため準備期間が必要です。まずは無料で使えるGFP登録や「日本の食輸出1万者支援プログラム」の相談窓口から入り、輸出の方向性が固まった段階で設備投資系の補助金を検討する順序が現実的です。
展示会に出るなら、どのタイミングで準備を始めるべきですか?
会期の8〜12か月前です。団体出展やジャパンパビリオンの公募締切がこの時期に集中するためです。食品の場合は試食サンプルの輸送・検疫手続きにも時間がかかるため、一般的な展示会より前倒しで動く必要があります。
賞味期限が短い商品は輸出できませんか?
船便での常温輸出は難しくなりますが、選択肢がないわけではありません。航空便を使う、冷凍で日持ちを延ばす、現地生産に切り替える、賞味期限の長い輸出専用仕様を開発するといった方法があります。どれもコスト構造が変わるため、価格設計から見直す前提で検討してください。
食品・調味料の輸出でお悩みならLink Globalへ
Link Globalは、台湾・アジア市場を中心に、食品・調味料を含む100社以上の海外販路開拓
を支援してきました。商材の輸出適性の見極めから、輸出先国の選定、展示会出展、現地バイヤー・代理店の開拓、商談の同席まで一貫してご支援します。
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