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ASEANの日本茶市場をデータで読む2026|シンガポール・タイ・ベトナムで「売れる茶種・形態・飲み方」はこれだけ違う

  • 堤浩記
  • 8月11日
  • 読了時間: 19分

「東南アジア向けに日本茶を売りたい」——そう考えたとき、シンガポール・タイ・ベトナムを同じ市場として扱っていないでしょうか。実際に3か国の消費者データを並べると、認知されている茶種も、好まれる購入形態も、飲まれる時間帯も、買われる場所も、国ごとにまったく違う姿が浮かび上がります。


本記事では、ジェトロ浜松貿易情報センターが2026年4月に公表した「ASEAN(シンガポール・タイ・ベトナム)における日本茶消費者嗜好・購買行動調査」の結果をもとに、日本の茶産地・食品メーカー・輸出商社が実務としてどう動くべきかを整理します。


結論——ASEANの日本茶市場は「ひとつの市場」ではない


先に結論を3点でまとめます。


① 3か国とも日本茶の購入意向は約9割と極めて高く、市場はすでに「認知獲得」ではなく「選ばれ方」の勝負に入っている

② 認知トップの茶種はシンガポール・タイが抹茶、ベトナムは煎茶と逆転しており、同じ商品構成で3か国に入るのは非効率

③ 希望される購入形態はシンガポール/ベトナムがティーバッグ、タイは粉末・RTDと分かれ、同じ茶葉でも国ごとにSKU設計を変える必要がある


「ASEAN一括」の画一的な商品展開ではなく、各国の飲用文化に合わせたローカライズができるかどうか。それが成否を分けます。


この記事で使うデータについて


本記事が参照するのは以下の調査です。数値はすべて同調査からの引用であり、実務への示唆・解釈はLink Globalによるものです。


調査名:ASEAN(シンガポール・タイ・ベトナム)における日本茶消費者嗜好・購買行動調査(主要3カ国の国別分析)

実施主体:日本貿易振興機構(ジェトロ)浜松貿易情報センター

公表:2026年4月/情報基準時点:2026年2月

調査方法:オンラインパネル調査(各国600名・合計1,800名、18歳以上)+タイ・バンコクでの店頭調査(カフェ・スーパー・コンビニ計15店舗)


原典レポートはジェトロの調査レポートページで公開されています。あわせて、同機構の地域・分析レポート「抹茶ブームを経て本格的な普及段階に移行するASEAN日本茶市場」も参考になります。


なお、日本茶全体の世界的な需要動向については世界で加速する「抹茶ブーム」——主要地域・用途・チャネルで読む最新動向で整理していますので、グローバルの文脈を先に押さえたい方はそちらをご覧ください。


前提:3か国とも「日本茶はすでに売れている」


シンガポール・タイ・ベトナムの日本茶の購入意向と現在購入率の比較

購入意向は9割前後という高水準


まず押さえるべきは、3か国いずれも日本茶に対する購買意欲が非常に高い水準にあるという点です。「今後6か月以内に日本茶を購入・飲用したいか」という設問で「ぜひ購入したい」と答えた割合は、ベトナム80.5%、タイ73.7%、シンガポール56.7%。「できれば購入したい」を加えると、ベトナムは95.7%、タイは89.4%、シンガポールは87.9%に達します。


現在の購入実態も同様です。「日本茶を自分用に購入したことがあるか」という設問で「現在も購入している」と回答した割合は、ベトナム78.0%、タイ68.3%、シンガポール61.2%。過去の購入経験を含めれば、いずれの国も約9割が日本茶を買った経験を持っています。


これが意味するのは、ASEAN主要国において日本茶はすでに「知らないから売れない」段階を抜けているということです。市場に必要なのは啓蒙ではなく、数ある日本茶の中で自社の商品がどう選ばれるかという設計です。


茶そのものの飲用習慣にも国差がある


前提として、緑茶・紅茶・烏龍茶・ハーブティー等を含む茶系飲料の飲用頻度を見ると、ベトナムは「ほぼ毎日」が57.8%と突出しており、「週4〜6日」を加えると約8割が週4日以上飲んでいます。タイは「ほぼ毎日」36.2%、シンガポールは33.0%です。


つまりベトナムは茶が生活に埋め込まれた市場、シンガポールとタイは嗜好品としての性格がやや強い市場、という違いがあります。この差は、後述する飲用シーンや購入形態の違いにそのまま反映されています。


違い①|認知されている茶種が国によって逆転する


日本茶の茶種別認知度の3か国比較(抹茶・煎茶・ほうじ茶・玄米茶・玉露)

「知っている日本茶」を複数回答で尋ねた結果は、3か国で明確に分かれました。


シンガポール:抹茶76.0%>煎茶58.2%>ほうじ茶55.5%>玄米茶30.7%>玉露12.2%

タイ:抹茶84.8%>煎茶67.3%>ほうじ茶33.7%>玉露29.8%>玄米茶27.3%

ベトナム:煎茶76.7%>抹茶57.3%>ほうじ茶55.0%>玄米茶50.3%>玉露32.0%


タイは抹茶が84.8%と圧倒的で、世界的な抹茶ブームがそのまま認知に転化している市場です。一方ベトナムでは煎茶が76.7%でトップに立ち、抹茶は57.3%と3か国で最も低い。さらにベトナムは玄米茶が50.3%、茎茶・くき茶も25.3%と、抹茶以外の茶種の認知が全体的に高いのが特徴です。


ここから読み取れる実務上の示唆は明快です。ベトナム市場に抹茶を主力商品として持ち込むと、消費者の頭の中では三番手のカテゴリーで戦うことになります。逆にタイでは煎茶単独で入るより、抹茶を入口にした方が認知の追い風を受けられます。


属性差もあります。シンガポールでは女性の抹茶認知が80.6%と男性の71.4%を約9ポイント上回り、ベトナムでは18〜24歳の抹茶認知が77.1%と全体の57.3%を大きく上回りました。若年層ほど抹茶に寄る傾向は3か国共通です。


違い②|実際によく飲まれている茶種


認知と実際の飲用は必ずしも一致しません。「よく飲む日本茶」の1位に選ばれた茶種を見ると、国ごとの構造がさらにはっきりします。


タイは抹茶が65.6%と一強状態で、2位の煎茶16.6%を大きく引き離しています。シンガポールは抹茶37.3%と煎茶32.4%が拮抗し、ほうじ茶も19.0%と一定のシェアを持つ三極構造。ベトナムは煎茶36.3%が首位で、抹茶28.3%、ほうじ茶13.9%と続きます。


さらに重要なのが世代差です。シンガポールでは18〜24歳の55.7%が抹茶を1位に挙げる一方、55歳以上では煎茶が44.1%と最多になります。ベトナムでも18〜24歳は抹茶52.2%に対し、45〜54歳は煎茶64.7%。タイは全年代で抹茶が6〜7割を占めるものの、18〜24歳が69.0%と最も高い水準です。


日本茶の飲用茶種における世代差の比較(若年層は抹茶・中高年層は煎茶)

つまり、同じ国の中でも「若年層=抹茶、中高年層=煎茶」という分化が3か国共通で存在します。ターゲット世代を決めずに商品を投入すると、パッケージも価格も訴求メッセージもぶれる構造になっているということです。


飲用頻度で見ると、タイは「ほぼ毎日」49.3%、ベトナムは55.2%と日常飲料として定着している一方、シンガポールは「少なくとも週に1回」46.8%が最多で「ほぼ毎日」は25.7%。シンガポールは週数回の嗜好品ポジション、タイ・ベトナムは日常消費ポジションという違いがあり、想定される消費量と価格帯の設計が変わります。


違い③|購入形態——ここが商品設計の分岐点


日本茶の希望購入形態の3か国比較(ティーバッグ・粉末・RTD・リーフ)

実務上、最も直接的に商品設計へ影響するのがこの項目です。「日本茶を購入する場合、最も好ましい形態」を単一回答で尋ねた結果は次の通りでした。


シンガポール:ティーバッグ51.0%/粉末17.2%/ボトル・缶等RTD16.7%/リーフ(茶葉)7.5%

タイ:粉末30.2%/RTD23.5%/形態は問わない15.8%/ティーバッグ14.8%/リーフ13.2%

ベトナム:ティーバッグ45.8%/リーフ21.5%/粉末18.0%/RTD7.0%


シンガポールとベトナムはティーバッグ中心の「簡便性志向」、タイは粉末とRTDで過半を占める「アレンジ・即飲志向」と、主流形態が完全に分かれています。特にタイでティーバッグが14.8%にとどまる点は見落とされがちです。日本の茶産地が輸出用に最初に用意しがちなティーバッグ商品は、タイ市場では主流フォーマットではありません。


世代・性別による分化も顕著です。タイでは女性の粉末志向が36.0%と男性の21.8%を大きく上回り、男性はRTDが32.9%。ベトナムでは45〜54歳のリーフ志向が55.9%と突出する一方、18〜24歳は粉末25.7%・RTD17.1%。シンガポールでは55歳以上のティーバッグ志向が64.3%、18〜24歳はRTD30.3%・粉末25.8%です。


ここから導かれる実務判断は、「同じ茶葉でも国別・世代別にSKUを分ける」ということです。具体的には、シンガポールとベトナムにはティーバッグを主軸に、ベトナムの中高年層向けにはリーフのギフト対応を、タイには粉末(業務用およびスティックタイプ)とRTD向け原料供給を——という設計になります。


なお、粉末=抹茶で展開する場合は用途に応じたグレード選定が価格競争力を左右します。詳細は抹茶のグレードと生産エリアを正しく理解するで解説しています。


違い④|飲用シーンと「試してみたい飲み方」


日本茶の飲用シーンと試してみたい飲み方の3か国比較

いつ飲まれているか


主な飲用シーン(複数回答)は、国ごとに主役が入れ替わります。


シンガポール:リラックスしたい時57.0%>仕事・勉強中32.2%>食事中31.5%>朝食時23.9%

タイ:リラックスしたい時50.6%>朝食時38.2%>仕事・勉強中37.1%>外出先(カフェ・レストラン)31.0%

ベトナム:朝食時57.4%>リラックスしたい時56.5%>仕事・勉強中48.0%>来客・家族団らん33.4%


ベトナムだけが「朝食時」を最多に挙げており、日本茶が朝の定番飲料としての地位を確立しています。しかも「来客・家族団らん」が33.4%と3か国で突出して高く、家庭内・対人シーンでの消費が根づいていることがわかります。ギフト需要や大容量パッケージの余地があるのはこの市場です。


一方タイは「外出先(カフェ・レストラン)」が31.0%と3か国で最も高い。タイの日本茶消費は、家庭内より外食・カフェ経由で成立している比率が高いということです。これは後述するチャネル構成とも整合します。


試してみたい飲み方——アレンジ需要は3か国共通で高い


「今後試してみたい飲み方」(複数回答)では、アレンジ志向の強さが共通して確認されました。


シンガポール:伝統的な飲み方のみ43.5%/ミルクを入れて飲む(ラテ)42.3%/コールドブリュー30.3%

タイ:ラテ53.7%/伝統的な飲み方のみ43.2%/フルーツジュースと割って飲む30.2%/スイーツ・デザートとして21.2%

ベトナム:ラテ63.7%/コールドブリュー41.5%/スイーツ・デザートとして32.0%/炭酸割り29.0%/伝統的な飲み方のみ27.5%


ベトナムのラテ志向63.7%は3か国で最も高く、「伝統的な飲み方のみ」は27.5%にとどまります。煎茶の認知が最も高い国でありながら、飲み方はむしろ最も現代的——という一見矛盾した構造がここにあります。認知されている茶種と、求められている飲用スタイルは別の軸だということです。


世代差はここでも鮮明です。ベトナムでは45〜54歳の73.5%が「伝統的な飲み方のみ」を選ぶ一方、25〜34歳はラテ71.9%。シンガポールでも55歳以上は伝統75.7%に対し、18〜24歳はラテ66.7%・スイーツとして39.4%です。同じ国の中に、まったく別の商品を求める2つの層が併存しています。


実務的な含意は、茶種そのものを売るのではなく「飲み方・使い方」をセットで提示することが有効だという点です。ラテ用途を前提とするなら濃度・泡立ち・ミルクとの相性が評価軸になり、リーフの品質訴求とは求められるスペックが変わります。


違い⑤|どこで買われているか(チャネル)


日本茶の購入チャネルの3か国比較(スーパー・コンビニ・日本食材店・茶専門店)

購入場所(最大3つまでの複数回答)は、3か国ともスーパーマーケット・量販店が最多ですが、2番手以降の構成が大きく異なります。


シンガポール:スーパー65.7%/日本食材店・輸入食品店30.3%/コンビニ23.1%/茶専門店22.9%/ECマーケットプレイス18.7%

タイ:スーパー63.5%/コンビニ55.7%/日本食材店25.5%/カフェ・レストランでの物販22.9%/茶専門店19.4%

ベトナム:スーパー75.4%/日本食材店40.4%/茶専門店39.0%/コンビニ35.5%/ECマーケットプレイス17.3%


タイのコンビニ55.7%は突出しており、粉末・RTD志向というフォーマットの傾向と完全に整合します。タイ市場でボリュームを狙うなら、コンビニに載るRTD、あるいはカフェチェーンへの原料供給という2つのルートが現実的です。


ベトナムは茶専門店39.0%、日本食材店40.4%と、専門流通の比率が3か国で最も高い市場です。マス流通に一気に載せるより、専門店・日本食材店ルートで銘柄を認知させる方が、この市場の購買行動には合致します。25〜34歳では日本食材店の利用が47.0%に達しています。


シンガポールは日本食材店30.3%、茶専門店22.9%に加え、カフェ・レストランでの物販が12.9%(18〜24歳では31.1%)。飲んだ場所でそのまま買う導線が若年層で機能しています。


シンガポールへの輸出手続き・SFA規制・ラベル表示の実務はシンガポールへの食品輸出完全ガイド2026で詳しく解説しています。


バンコク店頭調査が示す「価格の3層構造」


バンコクにおける日本茶の価格帯(カフェドリンクと小売の3層構造)

同調査ではタイ・バンコクで15店舗の店頭調査も実施されています。ここで得られた価格データは、日本の事業者が価格設定を考えるうえで極めて実用的です(いずれも2026年2月時点)。


第1層|ローカルカフェ:抹茶ラテ60〜85バーツ


タイ最大級のコーヒーチェーンCafé Amazonでは抹茶ラテが60バーツ、Inthaninが80バーツ、PUNTHAI Coffeeが75バーツ。BTS改札付近のSybele Caféが85バーツ。抹茶特化型ではないローカルカフェのほぼすべてに抹茶メニューが置かれており、コーヒーと並ぶ選択肢として定着しています。


ただしこの層では、ほうじ茶や玄米茶はほぼ扱われていません。認知率の数字(タイのほうじ茶33.7%、玄米茶27.3%)とも一致します。


第2層|抹茶専門カフェ:抹茶ラテ115〜165バーツ


2025年秋開業のMATCHAKA!は抹茶ラテ115バーツ、ミルクなしの抹茶ドリンク85バーツ。一番人気は抹茶キャラメルみそ味のRTDで135バーツです。抹茶×味噌、抹茶×チーズ、抹茶×ココナッツといった意外性のある組み合わせとSNS映えを軸にしています。


日本・中国・台湾・タイの高品質茶葉を扱うPeace 和 Oriental Teahouseは抹茶ラテ165バーツ、煎茶の茶葉50gが285バーツ。抹茶以外に煎茶・ほうじ茶・玄米茶を使ったラテやストレートティーを揃え、茶筅や茶葉も販売しています。単一産地・単一品種の抹茶を扱うスペシャリティ抹茶バーMTCHでは、抹茶ラテ150バーツ、煎茶茶葉50gが285バーツ。「奥みどり」「やぶきた」など品種ごとに商品が並び、品種によって価格が変わる設計です。


同じPeace 和グループでも、「良い抹茶を、速く・安く・毎日に」をコンセプトにしたmini ミニ oriental speed barは抹茶ラテ65バーツ。BTS直結の商業施設を中心に多店舗展開し、午後にはローカルのOLやデリバリードライバーが10人以上列をなしていたと報告されています。同一グループ内で価格帯を明確に分けている点は示唆的です。


第3層|プレミアム業態:抹茶ラテ140〜345バーツ


Siam駅のTOKU Dessertでは抹茶ラテが140〜345バーツと産地によって価格差があり、八女や宇治の抹茶を使ったメニューはかなりの高価格帯になります。ここで重要なのは、産地名が価格に転嫁できているという事実です。


小売でも同様の構造が確認されています。高級スーパーGourmet Marketの「JAPANESE TEA ZONE」では日本産抹茶が主役で、価格帯は890〜1,300バーツが中心、業務用の上位品は3,000〜7,000バーツ。一方、高架下のセブンイレブンで売られる緑茶・烏龍茶のRTDは1本20〜30バーツ(約400〜500ml)で、日本で買う価格と大きく変わりません。約7割が加糖です。


つまりバンコクにおける日本茶の価格帯は、コンビニRTDの20〜30バーツから、プレミアムカフェの345バーツ、高級スーパーの業務用抹茶7,000バーツまで、明確に階層化しています。「タイは価格が安い市場だから安く出さなければ売れない」という前提は、少なくとも日本茶カテゴリーには当てはまりません。産地・品種・グレードを訴求できれば、日本国内より高い単価が成立しています。


この価格帯で勝負するには、産地・品種の裏づけと、輸出時の品質保持が前提になります。実務要件は抹茶輸出のチェックリスト——オーガニック、MRL、HSコード、輸送・保管までにまとめています。


注目すべきは、プレミアム業態ではほうじ茶・玄米茶・煎茶が既にメニュー化されている点です。Qraftのほうじ茶クリームクロワッサンは195バーツ、MTCHにはほうじ茶ラテとほうじ茶デザートがあります。抹茶以外の茶種は、上位業態から一般業態へと降りてくる途中にある——というのがバンコクの現在地です。


「抹茶の次」は誰に売るのか——茶種別の勝ち筋


抹茶・煎茶・ほうじ茶・玄米茶のASEAN市場におけるポジショニングマップ

抹茶:入口商品であり、体験商品


3か国共通で認知度・関心が最も高く、特に若年層のアレンジ用途で需要が顕著です。日本茶市場への入口として、またカフェ・外食・業務用との親和性が高い茶種として位置づけるのが妥当です。タイ・ベトナムではラテ需要が特に高く、甘味・乳製品との組み合わせが主流。シンガポールはアレンジ需要と伝統的飲用志向が二極化しています。


煎茶:日常飲用の本命、ベトナムが最有力


中高年層を中心に飲用頻度が高く、「毎日飲む日本茶」としてのポテンシャルがあります。アレンジより、飲みやすさ・品質・香りといった本格性と日常性の訴求が有効です。ベトナムは飲用頻度・認知ともに最も高く、日常飲料としての定着度がトップ。シンガポールは中高年層を中心に安定需要があり、煎茶を1位に挙げた層の60.8%が「飲みやすさ(苦味・渋みが少ない)」を評価軸に挙げています。タイでは抹茶優位のなかで存在感は限定的ですが、中高年層には支持があります。


ほうじ茶:25〜44歳女性を軸にした「シーン提案型」商材


全体の飲用比率は抹茶・煎茶に及びませんが、「香ばしさ」「苦味・渋味の少なさ」という評価軸との親和性が高い茶種です。シンガポールではほうじ茶を1位に挙げた層の55.0%が「香ばしい風味」を理由に挙げており、明確な選好理由が存在します。


大量消費型ではなく、リラックス用途(夜間・休憩時)、カフェインを控えたい層、香ばしさを生かしたラテ・デザートなど、利用シーンを明示して売る商材と考えるべきです。日本茶専門カフェでは抹茶ドリンクに次ぐポジションを占めており、日本茶ファンの間で人気が上昇している茶種でもあります。


玄米茶:和食レストラン経由の食中茶ポジション


認知度は限定的ですが、「香ばしさ」「飲みやすさ」「食事との相性」で評価軸との適合性が高い茶種です。食事中・食後の飲用、和食・日本食レストランでの提供が有望用途になります。シンガポールは日本食の浸透度が高く、食事対応茶としての導入余地が比較的大きい市場です。ベトナムでは認知が50.3%と3か国で最も高く、玄米茶を1位に挙げた層の73.6%が「香ばしい風味」を評価しています。


国別の打ち手——3か国それぞれの攻め方


シンガポール・タイ・ベトナム別の日本茶販路開拓の打ち手まとめ

シンガポール|成熟市場、品質訴求とアレンジ提案の両立


抹茶と煎茶が拮抗し、ほうじ茶も一定のシェアを持つ三極構造。週1回以上の飲用が72.5%と定着していますが、「ほぼ毎日」は25.7%で、嗜好品としての性格が強い市場です。ティーバッグ51.0%を主軸に、日本食材店・茶専門店ルートで品質・製法を訴求するのが基本線。若年層にはカフェ物販とRTDという別ラインを用意する二層構えが有効です。


市場全体の進出戦略はシンガポール市場進出 完全ガイドマップ2026に、現地商談の場としてはFHA(Food & Hospitality Asia)の活用が有力です。


タイ|抹茶&コンビニ・アレンジ市場、B2Bが本命


抹茶認知84.8%・飲用1位65.6%という圧倒的な抹茶市場です。粉末30.2%・RTD23.5%という形態志向と、コンビニ55.7%・カフェ物販22.9%というチャネル構成を合わせて考えると、日本の事業者にとっての本命はB2Bです。すなわち、カフェチェーンへの抹茶原料供給と、RTDメーカーへの原料供給。


店頭調査が示す通り、抹茶を扱うカフェは既に飽和に近い一方で、産地・品種で差別化する動きが始まっています。「八女」「宇治」「奥みどり」「やぶきた」といった固有名が価格に転嫁できている段階であり、産地ブランドを持つ事業者にとっては参入余地があります。


ベトナム|煎茶好きのヘビーユーザー市場、伸びしろが最大


購入意向95.7%、現在購入率78.0%、「ほぼ毎日」飲用55.2%。3か国で最も熱量の高い市場です。煎茶が認知・飲用ともにトップで、朝食時の飲用が57.4%と最多。ティーバッグ45.8%を主軸としつつ、45〜54歳のリーフ志向55.9%というギフト・本格層も存在します。


同時に、25〜34歳のラテ志向71.9%、コールドブリュー41.5%という現代的な飲用スタイルへの関心も最も高い。「煎茶×朝食×ティーバッグ」で日常需要を取りつつ、若年層には「煎茶ラテ・コールドブリュー」という提案を並行させる——この二正面が成立する数少ない市場です。茶専門店39.0%・日本食材店40.4%という専門流通の厚みも活かせます。


日本の産地・事業者が今からやるべき3つのこと


日本の茶産地・食品事業者がASEAN展開で取るべき3つのアクション

① 国別にSKUを分ける(同じ茶葉でも形態を変える)


最も費用対効果が高い打ち手です。シンガポール・ベトナムにはティーバッグ、タイには粉末とRTD原料。ベトナムの中高年層にはリーフのギフト仕様。「1つの輸出用パッケージで3か国に売る」という発想を捨てるだけで、初期の商談成功率は変わります。


② B2C完結ではなくB2Bの比重を上げる


特にタイでは、消費者の日本茶接点の相当部分がカフェ・外食経由です。小売棚を取りに行くより、カフェチェーン・RTDメーカー・ホテルへの原料供給の方が、量・継続性ともに有利になる場面が多い。業務用グレードの提案書と、現地での提供レシピをセットで持ち込むことが実務上の差になります。


③ 抹茶で入り、煎茶・ほうじ茶で残る導線を設計する


抹茶は入口としては最も強いカテゴリーですが、競合も最も多く、価格競争に巻き込まれやすい領域です。抹茶で取引口座と認知を作り、そこから煎茶・ほうじ茶・玄米茶へと商品を広げる——というシナリオを最初から想定しておく。プレミアム業態では既に抹茶以外の茶種がメニュー化されており、この導線は現実に機能しはじめています。


茶葉と併せて茶器・急須を提案するアプローチも、単価と物語性を高める手段として有効です。詳細は日本の茶器・急須を海外で売る実務ガイドをご覧ください。八女茶をはじめとする九州産地の輸出については福岡・九州の食品・調味料を海外に売る実務ガイドで解説しています。


輸出実務で押さえるべき前提


市場側の設計が固まったら、次は輸出実務です。日本茶は農産物であるため、残留農薬基準(MRL)が最初の関門になります。特にEU・米国と比べてASEAN各国は基準が異なるため、輸出先ごとの確認が必須です。有機認証の要否、HSコードの確定、輸送中の温湿度管理と遮光、賞味期限の設計も、商談前に整理しておくべき論点です。


これらの具体的な確認項目は抹茶輸出のチェックリストに、食品・調味料全般の輸出手順は食品・調味料の輸出 完全ガイドマップ2026にまとめています。現地パートナーの探し方については海外代理店の探し方と選び方が参考になります。


まとめ


ASEAN主要3か国において、日本茶は既に「売れる状態」にあります。購入意向は9割前後、現在購入率も6〜8割。問題は市場があるかどうかではなく、どう選ばれるかです。


そしてその「選ばれ方」は、3か国でまったく違います。シンガポールは抹茶と煎茶が拮抗する成熟した三極市場でティーバッグ主軸。タイは抹茶一強でコンビニ・カフェ経由、粉末とRTDが主流。ベトナムは煎茶が首位で朝食シーンに定着し、購入意向は3か国最高の95.7%。


「ASEAN向け」という括りで一つの商品を出すのではなく、国ごとに茶種・形態・飲み方・チャネルを組み替える。データが示しているのは、その一点に尽きます。


よくある質問


ASEAN向けに日本茶を輸出するなら、どの国から始めるべきですか


商材と体制によります。抹茶を業務用・原料として供給できる体制があるならタイ、煎茶をティーバッグで日常消費に載せたいならベトナム、品質・製法を訴求した小売展開を狙うならシンガポールが第一候補になります。購入意向はベトナムが95.7%と3か国で最も高く、現在購入率も78.0%で最も定着しています。


なぜタイではティーバッグが主流ではないのですか


売れないわけではありませんが、最も好ましい形態としてティーバッグを挙げた人は14.8%にとどまります。上位は粉末30.2%、ボトル・缶等のRTD23.5%です。コンビニ利用率55.7%、カフェ・レストランでの物販22.9%というチャネル構成とも一致しており、タイの日本茶消費は外食・カフェ経由の比重が高く、即飲・アレンジを前提としたフォーマットが主流になっています。


抹茶以外の日本茶は海外で売れますか


茶種ごとにポジションが異なります。煎茶はベトナムで認知76.7%・飲用1位36.3%と主力カテゴリーです。ほうじ茶は25〜44歳の女性を中心に「香ばしさ」で選ばれており、シンガポールではほうじ茶を1位に挙げた層の55.0%が香ばしい風味を理由に挙げています。玄米茶は食事との相性を軸に、和食・日本食レストラン経由の展開が有望です。


バンコクで日本茶はいくらで売られていますか


2026年2月時点の店頭調査では、ローカルカフェの抹茶ラテが60〜85バーツ、抹茶専門カフェが115〜165バーツ、プレミアム業態が140〜345バーツでした。小売ではコンビニのRTDが1本20〜30バーツ、高級スーパーの日本産抹茶が890〜1,300バーツ、業務用上位品は3,000〜7,000バーツです。産地・品種を訴求できれば日本国内より高い単価が成立しています。


日本茶の輸出で最初に確認すべき規制は何ですか


残留農薬基準(MRL)です。輸出先国ごとに基準値と対象成分が異なり、日本国内で適法な防除であっても輸出先で基準超過となる場合があります。あわせてHSコードの確定、有機認証の要否、輸送中の温湿度管理と遮光、賞味期限の設計を、商談に入る前に整理しておく必要があります。


ASEAN3か国に同じ商品構成で展開できますか


推奨しません。認知トップの茶種、希望される購入形態、主要な購入チャネルのいずれも国ごとに異なるためです。最低限、購入形態(ティーバッグ/粉末/RTD)は国別に分けることが必要になります。同じ茶葉でも、シンガポールとベトナムはティーバッグ、タイは粉末とRTD原料という設計が基本線です。


ASEAN・アジア向けの日本茶輸出のご相談


Link Globalは、台湾・東南アジア市場を中心に、累計100社以上・10カ国以上の海外展開を支援してきました。食品・飲料の輸出については、市場調査からバイヤー・代理店の開拓、展示会出展、商談フォローまでを一貫して支援しています。


「どの国から入るべきか」「自社の茶葉はどの形態で出すべきか」といった初期段階のご相談も承っています。まずはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。


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