中国向けアルコール輸出 完全ガイド2026|関税40%の壁、国税局ルート、中文ラベルと酒類固有の実務
- 堤浩記
- 8月10日
- 読了時間: 23分
酒蔵・蒸溜所から「中国に日本酒を出したい」「ウイスキーの引き合いが中国から来ている」というご相談が増えています。
ところが実務に入ると、多くの企業が同じところでつまずきます。中国向けの食品輸出について書かれた解説を読んでも、酒類の実務は半分しか分からないからです。
酒類には、一般食品と異なる手続きが少なくとも4つあります。
産地証明書の発行元が農林水産省ではなく国税局であること
日本側で輸出酒類卸売業免許が必要になる場合があること
充填証明書・可塑剤検査報告書という酒類固有の書類があること
そして品目によって、関税が0%から40%まで開くこと
本記事では、この酒類固有の論点に絞って実務を整理します。企業登録(GACC登録/シングルウィンドウ登録)や備案といった食品共通の手続きについては、中国への食品輸出 完全ガイド2026で詳しく解説していますので、本記事では酒類に関わる部分だけを扱います。
**【ご注意】**中国の輸入規制および日中間の運用は頻繁に変更されます。本記事は2026年8月時点で公開されている公的情報をもとに作成していますが、実際の輸出にあたっては、必ず記事末尾の「公式情報リンク集」に掲載した一次情報でご自身で最新の状況をご確認ください。本記事を含む解説記事の記述だけで判断しないことを強くおすすめします。

まず確認する3つのこと
本記事は1万字を超えます。全体を読む前に、この3つだけ先に確認してください。ここで引っかかると、その先の手続きはすべて無駄になります。
製造地が10都県に該当しないか。 宮城・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・新潟・長野で製造された酒類は輸入停止対象です
自社商品のHSコードが2203/2206/2208のどれか。 ここで関税が0%か40%かが決まります。事業計画の前提が変わる論点です
輸出酒類卸売業免許を持っているか。 自社で製造した酒類を自ら輸出する場合は不要ですが、他社の酒を輸出する場合は必要です
この3つが確認できれば、あとは手続きの積み上げです。以下、順に解説します。
産地の壁——日本酒の主要産地4県が輸入停止対象に入っている
10都県産は輸入停止
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、長野県の10都県で生産された食品は輸入停止中です。新潟県産については、精米のみが例外的に認められています。
酒類にとって、この規制は他の食品カテゴリーより重く効きます。 新潟・福島・長野・宮城は、いずれも日本酒の主要産地です。国内の売れ筋上位に並ぶ蔵の多くが、この規制で中国に出せません。
10都県以外で生産された酒類については、日本政府機関が発行する産地証明書の添付が求められます。ここが一般食品との最初の分岐点です。酒類の産地証明書は、農林水産省ではなく国税局が発行します。

見落としやすい2点
第1に、10都県を「通過」する場合の取扱いです。 国税庁によれば、酒類およびその原材料が指定10都県を陸路で通過するものについては、申請者が現地の通関状況などを承知したうえでなお強く要望する場合には、申請者自身の責任において対応することを前提に発行するとされています。つまり輸送ルートまで設計対象になります。
第2に、原材料の産地です。 産地証明書の申請では、輸出する製品の生産・加工地および国名に加えて、主原料の産地および国名、輸出製品の生産地・加工施設、出港地から中国の目的地までの輸送経路と方法、加工施設の名称・所在地などを記載することになっています。自社の蔵が10都県外にあっても、使用している酒米の産地は個別に確認が必要です。
出典:ジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」、国税庁「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた輸出証明書の発行について」
企業登録は「軽い側」——酒類は自己登録ルート
中国に食品を輸出するには、その食品を製造・加工または貯蔵した海外の企業が、中国海関総署(GACC)に事前登録されている必要があります。2026年6月1日から、根拠規定が海関総署令第248号から第280号へ切り替わりました。
ここで酒類にとって重要なのは、酒類が「政府推薦品目」に含まれないことです。
国税庁は、酒類について「日本政府を通さず、企業自らが登録を申請する品目に該当します」と明記しています。280号の下で推薦が必要とされた17品目(肉及び肉製品、水産物、乳製品、食用穀類など)に酒類は入っていません。
これは実務上、かなり大きな違いです。政府推薦ルートでは、gBizIDプライムの取得、eMAFFでの施設認定申請、1施設あたり10,400円の認定手数料、そして農林水産省から中国政府への概ね月1回のまとめ要請という工程を通ります。酒類はこれらを通らず、CIFERで直接申請できます。 農林水産省は、自己登録品目について申請完了から番号付与までおおよそ2〜3週間を要するとしています。
CIFERの具体的な申請手順、登録番号の内包装・外包装への表示ルール、そして日本の輸出者に必要な境外出口商備案・中国の輸入者に必要な輸入商備案については、中国への食品輸出 完全ガイド2026で詳しく解説しています。酒類も手順そのものは同じです。
誰が何をするのか——酒類でこそ混乱しやすい
登録・備案は3者に分かれます。酒類は「蔵が造り、商社が輸出する」形が多いため、ここの切り分けを間違えやすいカテゴリーです。
製造企業登録(CIFER)/対象:日本の製造施設/実行するのは蔵・蒸溜所(自己登録)
境外出口商・代理商の備案/対象:日本の輸出者/実行するのは自社輸出なら自社、商社経由なら商社
輸入商(収貨人)の備案/対象:中国の輸入業者/実行するのは中国側の取引先(日本側では代行できない)
輸出酒類卸売業免許/対象:日本の輸出者/他社の酒を輸出する者(自社製造品を自ら輸出する場合は不要)
自社の蔵で製造し商社経由で輸出する場合、登録するのは蔵、備案するのは商社という分担になります。ここを整理しないまま進めると、蔵の登録は済んでいるのに輸出者側の備案がなく、船積み直前で止まります。
また輸入商の備案は先方の責任範囲であり、日本側では代行できません。パートナー選定の段階で「食品の輸入実績があり、備案済みか」を必ず確認してください。
出典:国税庁「輸出支援の取組」、農林水産省「企業自ら中国政府に登録が求められる品目の登録方法について」、進出口食品安全管理弁法(海関総署令第249号)第19条
日本側の免許——輸出酒類卸売業免許
中国側の話ばかりが注目されますが、日本側でも免許が必要になる場合があります。
アルコール飲料を輸出するためには、日本において輸出酒類卸売業免許を取得する必要があります。ただし、酒類製造者が自ら製造した酒類を輸出する場合には、この免許は不要です。
つまり、酒蔵・蒸溜所が自社製品を自ら輸出する場合は免許不要、商社・卸が他社の酒類を輸出する場合は免許が必要ということです。
商社経由の輸出を検討している場合、その商社が免許を持っているかは確認事項になります。また、自社製品と他社製品を組み合わせてアッソートで出す構想がある場合は、この線引きに注意が必要です。
出典:国税庁「酒類の免許」「酒類卸売業免許申請等の手引」
税負担の非対称性——同じ「酒」で0%から40%まで開く
この記事で最もお伝えしたい論点です。 中国の関税は、酒類の中でカテゴリーによって極端に違います。
ビール(2203):MFN税率 0%/RCEP協定税率 0%
ぶどう酒(2204):MFN税率 14%〜30%/RCEP協定税率 10.2%〜16.3%(一部適用外)
清酒等の発酵酒(2206):MFN税率 40%/RCEP協定税率は2206.0010が適用外、2206.0090が34.3%
蒸留酒・リキュール(2208):MFN税率 10%/RCEP協定税率 7.30%

さらに、ウイスキー(2208.3000)とぶどう酒またはぶどう酒もろみの搾りかすから得た蒸留酒(2208.2000)には暫定税率5%が設定されています。
清酒は2206.0010か、2206.0090か
上の一覧を見て、清酒の担当者はここで止まるはずです。2206.0010ならRCEPが使えず40%、2206.0090なら34.3%。5.7ポイントの差です。
中国の税則では、22060010は「黄酒」、22060090は「其他発酵飲料」と規定されています。黄酒は中国の米を原料とする醸造酒であり、日本の清酒はこれに該当しません。したがって清酒は2206.0090に分類されると解され、RCEP協定税率34.3%の適用対象になります。
ただしRCEP税率の適用には原産地規則の要件充足が必要です。また最終的な品目分類は中国側税関の判断になりますので、実際の分類は通関業者を通じて事前に確認してください。
ウイスキーが有利で、清酒が不利
同じ「日本産酒類」でも、ウイスキーはMFN10%・暫定5%、清酒は40%(RCEPで34.3%)。この差は商品戦略に直結します。 清酒は関税負担を吸収できる価格設計、つまり中高価格帯以上でなければ成り立ちにくいという構造的な制約を最初から抱えています。
出典:ジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」(関税は2024年10月時点調査)、中華人民共和国輸出入税則
関税に加えて、消費税と増値税が乗る
中国で酒類を輸入・販売する際に課税されるのは、関税・消費税・増値税の3種類です。
中国の消費税は日本の消費税とは異なり、特定物品への課税です。酒類の税率は次のとおりです。
白酒:20%、かつ0.5人民元/500g(または500ml)
黄酒:240人民元/トン
甲類ビール:250人民元/トン
乙類ビール:220人民元/トン
その他の酒類:10%
国税庁の調査によれば、清酒は「その他の酒類」に分類され、税率10%が適用されます。
増値税はアルコール飲料について13%です。組成課税価格は「関税課税価格+関税額+消費税額」で算出されます。
出典:ジェトロ(同上)、国税庁「中国の酒類の輸入等に係る規制等の情報」
通関時点でいくらになるか——税額の積み上げ試算
税率を並べただけでは実感が湧きません。四合瓶(720ml)1本、関税課税価格1,000円と仮定して積み上げてみます。
清酒(2206.0090/RCEP34.3%を適用した場合)
関税課税価格:1,000円
関税:1,000 × 34.3% = 343円
消費税:(1,000+343) ÷ (1-0.10) × 10% = 149円
増値税:(1,000+343+149) × 13% = 194円
通関後原価:約1,686円(1.69倍)
清酒(MFN40%が適用された場合)
同じ計算で、関税400円・消費税156円・増値税202円、**通関後原価は約1,758円(1.76倍)**になります。RCEPが使えるかどうかで約72円、4%強の差が出ます。
ウイスキー(2208.3000/暫定税率5%)
関税50円・消費税117円・増値税152円で、通関後原価は約1,318円(1.32倍)。清酒とは0.4倍以上の開きがあります。
この試算にはまだ運賃・保険料・輸入者マージン・卸マージン・小売マージンが一切入っていません。 中国の店頭価格は、ここからさらに積み上がります。FOB1,000円の四合瓶が現地小売で3,000〜4,000円台になるのは、決して誰かが不当に儲けているからではないということです。

※消費税の組成計税価格は「(関税課税価格+関税)÷(1-消費税比例税率)」、増値税の組成課税価格は「関税課税価格+関税額+消費税額」の算式に基づく試算です。税率・暫定税率・為替により変動しますので、実際の見積りは必ず通関業者にご確認ください。
出典:税率はジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」、算式は増値税暫定条例・消費税暫定条例。試算はLink Global
酒類だけに必要な4つの書類
輸入通関手続き時には、一般的な貿易書類(契約書、インボイス、パッキングリスト、船荷証券など)に加えて、酒類固有の書類が必要になります。
充填証明書:製造者が発行する証明書で、製造者名、住所、充填した年月日などを記載します。輸入通関時には、製造者の署名・捺印入りの原本の提示が求められます。 PDFの送付では足りない場面があるということです
産地証明書:10都県以外で製造されたアルコール飲料について必要。発行は国税局です
成分分析報告書:検査項目および検査方法について明文化された規定がなく、中国側税関によって要求事項が異なる可能性があります。輸出前に輸入事業者または通関業者に確認してください
可塑剤検査報告書:フタル酸エステル類の検査報告書です

可塑剤(フタル酸エステル類)の上限値
「食品中の可塑剤の汚染リスク対策に関する市場監督管理総局の指導意見」第4条では、次のように定められています。
白酒およびその他蒸留酒中、DEHPは5mg/kg、DBPは1mg/kg を上回ってはならない
酒類食品中、DEHP(白酒・その他蒸留酒を除く)は1.5mg/kg、DINPは9.0mg/kg、DBP(白酒・その他蒸留酒を除く)は0.3mg/kg を上回ってはならない
ここでいう酒類食品には、白酒、食用アルコール、ぶどう酒、混成酒、黄酒、果実酒およびその他の蒸留酒など、エタノール含有量が20%を上回る食品が含まれる
アルコール度数15%前後の清酒は、この意見が対象とする「エタノール含有量20%超」に該当しません。 一方、焼酎・ウイスキー・スピリッツは該当します。ただし中国側税関から報告書の提出を求められるかどうかは運用によりますので、事前確認を推奨します。
なお、汚染物質については「食品中汚染物上限値」(GB 2762-2022)で、鉛が酒類(蒸留酒・黄酒を除く)0.2mg/kg、蒸留酒・黄酒0.5mg/kg と定められています。
出典:ジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」、GB 2762-2022
動植物検疫は不要
酒類については、動植物検疫は必要ありません。肉類や水産物と比べて手続きが軽い理由の一つです。
中文ラベル——酒類は追加項目も免除項目もある
中国に輸出する包装済み食品には、中国語(中文)のラベルが必須です。表示項目の一般ルールはGB 7718で定められており、これは食品共通です。
酒類に固有なのは、追加項目と免除項目が両方あることです。

追加で必要な項目
醸造酒およびその混成酒(GB 2758-2012)、蒸留酒およびその混成酒(GB 2757-2012)に基づき、GB 7718の項目に加えて次を表示します。
アルコール度数(%vol):測定条件温度は20℃です
警告表示:「过量饮酒有害健康(過度な飲酒は健康に有害です)」の表示が必要。その他の警告を併記してもかまいません
ビール:原麦汁濃度(°P)
ぶどう酒を除く果実酒:ストレート果汁含量を原材料欄に「××%」で表示
ガラス瓶入りビール:「瓶が破裂しないよう衝撃を与えないこと」等の警告
免除される項目
品質保持期限:ぶどう酒およびその他のアルコール度数10%vol以上の醸造酒・混成酒、ならびにアルコール度数10%vol以上の蒸留酒については、表示が免除されます
栄養成分表示:エタノール含有量0.5%以上のアルコール飲料は、栄養表示の義務がありません(GB 28050-2011)
免除項目を知らずに欄を作ってしまうケースが少なくありません。 版下の設計段階で押さえておくべきポイントです。
2027年3月16日、GB 7718-2025が施行される
2025年3月に公布されたGB 7718-2025およびGB 28050-2025が、2027年3月16日から施行されます。アレルゲン表示の義務化、「零添加」「不添加」等の表現の禁止、製造日と賞味期限を独立した領域に高コントラストで表示する要件などが加わります。
なお酒類については、GB 7718-2025でも「ぶどう酒及びアルコール度数10%vol以上の酒類」の保質期表示免除が維持され、加えてロット番号を表示している場合は製造日の表示も免除されるとされています。
いま新規に中国向けラベルを設計するなら、現行規格に適合させたうえで2027年の新要件も見据えた設計にしておくのが合理的です。版下を2回作り直すコストは想像以上に大きくなります。
出典:GB 2757-2012、GB 2758-2012、GB 7718-2011/GB 7718-2025、GB 28050-2011/GB 28050-2025、ジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」
通関の流れと検査
輸入申告はオンラインまたは紙媒体で行われ、審査、必要に応じた貨物検査、納税、放行(引き取り許可)という順で進みます。
酒類の通関に必要な書類として、前述の産地証明書・充填証明書・可塑剤検査報告書のほかに、次が挙げられています。
輸入貨物通関申告書、契約書、インボイス、パッキングリスト、積荷目録、船荷証券
代理通関申告授権委託協議書
(包装済み食品を初めて輸入する場合)食品表示ラベルの見本刷およびその翻訳文
生産日および品質保持期限を示す資料
初回輸入時のラベル見本提出は、スケジュール上のリスク要因です。 ここで差戻しが発生すると、貨物が港で止まります。初回は特に、輸入者・通関業者とラベル案を事前に突き合わせておくことを強くおすすめします。
初回の壁を越えると、2回目以降は軽くなる
国税庁の調査報告によれば、日本から包装済み食品を中国に初めて輸入する場合、ラベルの内容が法規および食品安全国家標準に合致するか、品質に関する記載が真実かつ正確かが検査されます。この検査に合格するとラベル届出番号が付与され、その後の輸入時には、検査機関の許可を得れば届出番号を提示することでラベルの様式検査が免除されるとされています。
つまり初回だけが重く、2回目以降は軽くなる構造です。最初の1本を通すことに集中すべき理由がここにあります。
また、ラベルを輸入者が作成して輸入港の指定倉庫で貼付する場合は、輸入申告時に各商品に貼るラベルの見本を提出し、審査を通れば通関後に指定倉庫で貼付することが可能とされています。GACC登録番号の表示についても、中国税関の輸入検査の時までに表示されていればよく、保税倉庫でシールを貼って対応することも可能と解されています。
日本側で完璧なラベルを刷ってから出荷する必要は必ずしもないということです。ただし運用は税関により異なりますので、輸入者・通関業者と事前に方式を決めてください。
現場検査では、コンテナ番号・封印シール番号・内外装の表示内容と申告情報の一致、内外装の汚染・破損・水濡れ・液漏れの有無、表示ラベルが食品安全国家標準および税関総署の規定に合致しているかなどが確認されます。
出典:ジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」、税関輸出入貨物申告管理規定、国税庁「中国の酒類の輸入等に係る規制等の情報」、農林水産省「農林水産省における登録申請受付等について」
売る段階の規制——広告法と商標
制度をクリアして棚に並んでも、売り方には別の規制があります。 ここは日本のマーケティング担当者が最もつまずくところです。
広告法第23条
アルコール飲料の広告について、次が禁じられています。
飲酒を誘導し、そそのかし、または無節操な飲酒を宣伝してはならない
飲酒の動作を出現させてはならない
車、船、飛行機などを運転する活動を表してはならない
飲酒が緊張と焦りを解消し、体力を増加させるなどの効果があることを明示または暗示してはならない
日本のSNS素材やプロモーション動画がそのまま使えないということです。 乾杯シーン、グラスに口をつけるカット、「一日の疲れが吹き飛ぶ」といったコピー——いずれも日本では定番ですが、中国では作り直しが必要になります。
未成年者への販売
未成年者保護法第59条により、未成年者(18歳未満)への酒類販売は禁止され、店内の目立つ場所に「未成年者には酒類を提供していません」等の標識を貼り付ける必要があります。未成年者か判断できない場合は身分証明書の提示を求めなければなりません。
商標は先願主義
中国では商標法第31条に基づき、先に出願した者が優先的に保護される先願主義が採られています。中国で登録されていない自社ブランドが、第三者に先に登録されている可能性があります。
その第三者の商標と同一または類似の標章を許諾なく使用した商品を中国で販売した場合、登録商標専用権の侵害とみなされます。輸出前に、自社の銘柄名・ロゴが中国で第三者に登録されていないかを確認しておく必要があります。なお外国企業が中国で商標手続きを行う場合、中国の法により設立された商標代理機構への委託が必要です。
実務上、有名ブランドを扱うECプラットフォームでは商標登録証の提示を求められるのが一般的です。ECでの販売を視野に入れるなら、商標は「あとで」ではなく「先に」です。
出典:広告法(2021年改正)、未成年者保護法(2024年改正)、商標法、ジェトロ「アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)」
スケジュールの目安

産地・HSコードの確認:数日
輸出酒類卸売業免許(必要な場合):所轄税務署への申請
CIFERでの自己登録:申請完了から番号付与まで概ね2〜3週間(順調な場合)
境外出口商備案(日本の輸出者):オンライン申請
輸入商備案(中国の輸入者):先方の責任範囲。日本側では代行できません
産地証明書の取得:国税局への申請
中文ラベルの設計・法規レビュー:デザインと法規チェックの往復が発生
酒類は政府推薦ルートを通らないため、加工食品より短い期間で着手できます。ただし中文ラベルの設計と初回のラベル見本審査が最大の変動要因です。ここを楽観的に見積もると、商談会や展示会のスケジュールに間に合いません。
出典:農林水産省(自己登録ページ)、国税庁
政治リスクとどう付き合うか
制度の話から一段引いて、書いておかなければならないことがあります。
2025年11月以降、日本から中国に輸出した日本酒などの酒類や食品の通関手続きに、通常より時間がかかる事案が発生しました。中国に到着後、通関手続きに必要な書類が以前より増えたためと報じられています。2026年1月には鈴木農林水産大臣が会見で「農林水産物や食品の海外輸出が円滑に行われることが何より重要だ」と述べ、状況を注視する姿勢を示しました。
中国は魅力的な市場ですが、政治的な要因で貿易が突然滞りうる市場でもあります。
だからといって「中国はやめておくべき」という結論にはなりません。現実的な向き合い方は3つだと考えています。
中国を単独の出口にしない。 台湾・香港・シンガポール・東南アジアと並行して販路を設計し、1か国の政策変更で事業が止まらない構造にする
登録という「資産」は先に作っておく。 酒類の自己登録は比較的短期間で完了し、280号の下では原則5年ごとの自動更新です。市場が動いたときにゼロから始める企業と、登録済みの企業とではスタートラインが違います
越境ECという別ルートを検討する。 保税区モデルの越境ECは一般貿易と異なる制度で運用されており、要件も税制も異なります。小ロットでの市場テストには適した選択肢です
出典:日本経済新聞(2026年1月8日)、NHK(2026年1月9日)、ジェトロ「中国向け農林水産物・食品の越境ECに関する制度調査」
よくある質問(FAQ)
Q. 酒類のGACC登録は自社でできますか?
A. 酒類は自己登録品目のため、CIFERでアカウントを作成して自社で申請できます。農林水産省がシングルウィンドウの登録方法マニュアルを日本語で公開しています。ただし入力はアルファベット・数字・記号のみで、漢字・ひらがな・カタカナは入力できません。差戻しや追加照会が来た段階で中国語が必要になる点は見込んでおいてください。
Q. 新潟の日本酒は本当に出せないのですか?
A. 10都県産の食品は輸入停止中で、新潟県産については精米のみが例外的に認められています。清酒は精米ではありませんので、現時点では輸出できません。最新の規制状況は農林水産省「アジアにおける規制措置の変遷」でご確認ください。
Q. 自社の蔵は10都県外ですが、酒米が新潟県産です。問題ありますか?
A. 産地証明書の申請では主原料の産地および国名を記載することになっています。個別の判断は国税局にご確認ください。本記事の記述だけで判断しないことをおすすめします。
Q. 清酒の関税は40%ですか、34.3%ですか?
A. 中国の税則では22060010が「黄酒」、22060090が「其他発酵飲料」と規定されており、日本の清酒は黄酒に該当しないため2206.0090に分類されると解されます。この場合RCEP協定税率34.3%の適用対象です。ただし適用には原産地規則の充足が必要で、最終的な品目分類は中国側税関の判断になります。通関業者を通じて事前にご確認ください。
Q. ウイスキーの方が有利ということですか?
A. 関税だけを見ればそうです。ウイスキー(2208.3000)には暫定税率5%が設定されており、清酒との差は大きくなります。ただし中国のウイスキー市場は国際大手のブランドが競合するため、関税の有利さがそのまま販売の有利さになるわけではありません。
Q. 輸出酒類卸売業免許は必ず必要ですか?
A. 酒類製造者が自ら製造した酒類を輸出する場合は不要です。他社の酒類を輸出する場合に必要になります。
Q. 可塑剤検査報告書は日本酒でも必要ですか?
A. 市場監督管理総局の指導意見が対象とする「酒類食品」はエタノール含有量20%超のものとされており、通常の清酒は該当しません。ただし中国側税関から提出を求められるかは運用によりますので、輸入者・通関業者への事前確認をおすすめします。
Q. 中国語のラベルは、日本で印刷しなければいけませんか?
A. 輸入者が作成して輸入港の指定倉庫で貼付する方式も認められています。この場合、輸入申告時にラベル見本を提出し、審査を通れば通関後に指定倉庫で貼付します。GACC登録番号についても、中国税関の輸入検査の時までに表示されていればよいと解されています。ただし運用は税関により異なるため、輸入者・通関業者と事前に方式を決めてください。
Q. 2回目以降の輸入も、毎回ラベル検査がありますか?
A. 初回のラベル検査に合格するとラベル届出番号が付与され、その後は検査機関の許可を得れば届出番号の提示でラベルの様式検査が免除されるとされています。初回が最も重い工程です。
Q. 「酒類製品認証標章」とは何ですか?取得すべきですか?
A. 中国の「食品品質認証実施規則-酒類」(2005年)に基づく認証制度で、要件を満たすアルコール飲料には酒類製品認証証書が発行され、認証標章の使用が認められます。有効期間は発行日から3年間です。輸入の必須要件ではありませんので、まずは通常の輸出手続きを優先し、必要性は現地の販売戦略に応じてご判断ください。
Q. 越境ECなら手続きは簡単ですか?
A. 制度が一般貿易と異なり、輸出可能な品目、中文ラベル表示の要否、製造企業登録の要否、税制などがそれぞれ違います。「簡単」ではなく「別の制度」と捉えるのが正確です。
用語集——酒類輸出で最初につまずく言葉
充填証明書:製造者が発行し、製造者名・住所・充填年月日を記載する証明書。署名捺印入りの原本提示を求められます
産地証明書/原产地证明:10都県以外で製造されたことを示す証明書。酒類は国税局が発行
可塑剤/塑化剂(sùhuàjì):フタル酸エステル類。DEHP・DBP・DINP等
酒精度(jiǔjīngdù):アルコール度数。%volで表示、測定温度は20℃
保质期(bǎozhìqī):品質保持期限。アルコール度数10%vol以上は表示免除
过量饮酒有害健康:「過度な飲酒は健康に有害です」。酒類ラベルの必須警告表示
发酵酒及其配制酒(GB 2758):醸造酒およびその混成酒。清酒・ビール・ぶどう酒などが該当
蒸馏酒及其配制酒(GB 2757):蒸留酒およびその混成酒。焼酎・ウイスキー・白酒などが該当
黄酒(huángjiǔ):中国の米を原料とする醸造酒。HS22060010。日本の清酒とは別区分
其他发酵饮料:その他の発酵飲料。HS22060090
增值税(zēngzhíshuì):増値税。アルコール飲料は13%
消费税(xiāofèishuì):中国の消費税。特定物品への課税で、清酒は「その他の酒類」10%
境外生产企业在华注册编号:GACC登録番号。内包装・外包装に表示します
輸出酒類卸売業免許:日本側で必要な免許。自社製造品を自ら輸出する場合は不要
公式情報リンク集
制度は頻繁に変わります。実務にあたっては、必ず以下の一次情報をご確認ください。
国税庁:輸出支援の取組——酒類の中国向け企業登録、証明書発行
国税庁:酒類の輸出動向——最新の輸出統計
ジェトロ:アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き(中国)——本記事の主要な出典。関税・ラベル・書類の一次整理
農林水産省:中国向け輸出に必要な手続について——産地証明書・放射性物質検査証明書
農林水産省:アジアにおける規制措置の変遷——輸入規制の変更履歴
農林水産省:企業自ら中国政府に登録が求められる品目の登録方法について——自己登録ルートの日本語マニュアル
まとめ
酒類には一般食品と異なる手続きが4つある。産地証明書の発行元が国税局、日本側の輸出酒類卸売業免許、充填証明書と可塑剤検査報告書、そして品目別の関税差
10都県規制は酒類に重く効く。新潟・福島・長野・宮城という日本酒の主要産地が輸入停止対象。10都県の陸路通過と主原料の産地まで確認が必要
企業登録は「軽い側」。酒類は政府推薦17品目に含まれず、CIFERで自己登録できる。eMAFF・手数料10,400円のルートを通らない
関税はビール0%、蒸留酒10%(ウイスキー暫定5%)、清酒を含む発酵酒40%。清酒は2206.0090と解され、RCEP34.3%の適用対象だが分類は通関業者に確認すること
清酒は関税・消費税10%・増値税13%を積み上げると、通関時点で課税価格の約1.7倍。運賃・マージンはここから乗る
中文ラベルは酒精度と警告表示が追加で必要な一方、10%vol以上は保質期、0.5%以上は栄養表示が免除される。GB 7718-2025は2027年3月16日施行
初回だけが重い。 初回のラベル検査に合格すると届出番号が付与され、以降は様式検査が免除される。ラベルは保税倉庫での貼付も可能
登録・備案は3者に分かれる。蔵が登録し、商社が備案し、中国の輸入者が備案する。 この分担を整理しないと船積み直前で止まる
売る段階では広告法第23条が飲酒動作の描写を禁じている。日本のSNS素材はそのまま使えない。商標は先願主義のため「先に」出願する
2025年11月以降、通関に時間がかかる事案が発生。中国を単独の出口にせず、登録は先に取っておく
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※本記事は2026年8月時点で公開されている公的情報をもとに作成しています。中国の輸入規制および日中間の運用は変更される可能性があるため、実際の輸出にあたっては必ず最新の一次情報をご確認ください。




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