top of page

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金「グローバル枠」とは?補助率2/3・最大9,000万円の海外展開支援を徹底解説

  • 堤浩記
  • 7 日前
  • 読了時間: 14分

更新日:4 日前


「海外に販路を広げたいが、設備投資の資金が重い」——そんな中小企業にとって、2026年は大きな転換点になりました。

これまで別々の制度だった「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合され、2026年6月29日に新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募要領が公開されたためです。

この新制度には海外展開に特化した「グローバル枠」が用意されており、補助率2/3・補助上限額は最大9,000万円と、旧制度から大幅に拡充されました。旧ものづくり補助金のグローバル枠が上限3,000万円だったことを考えると、その差は歴然です。

この記事では、グローバル枠の補助額・対象経費・申請要件・スケジュール、そして申請前に必ず知っておくべき注意点までを、初めて検討する方にもわかりやすく解説します。


30秒でわかる|グローバル枠の全体像

細かい話に入る前に、まずは要点だけを押さえておきましょう。

・制度名:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合)

・実施主体:中小企業庁・中小企業基盤整備機構

・海外展開向けの枠:グローバル枠(3つの申請枠のうちの1つ)

・補助率:中小企業2/3(3枠のなかで最も高い)

・補助下限額:750万円

・補助上限額:従業員規模に応じて2,500万円〜7,000万円(大幅賃上げ特例の適用時は最大9,000万円)

・対象経費の特徴:グローバル枠のみ「海外旅費・通訳翻訳費」が対象

・第1回公募:公募開始 2026年6月29日/申請受付 8月31日/締切 9月30日18時

・申請方法:電子申請(GビズIDプライムが必須)

※本記事は第1回公募要領および中小企業基盤整備機構の公表情報(2026年7月時点)に基づいています。最新の要件は必ず公式サイトでご確認ください。


新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは

ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された新制度

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業等が「技術的革新性のある製品・サービスの開発」「既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出」「海外市場開拓(輸出)に向けた国内体制の強化」に取り組む際の設備投資等を支援する制度です。

最大のポイントは、これまで別々に運用されてきた2つの大型補助金が1つに統合されたことです。

・旧「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(通称:ものづくり補助金)

・旧「中小企業新事業進出補助金」

この2制度が再編され、2026年6月29日に新制度として第1回公募要領が公開されました。そのため、過去の記事やブログで「ものづくり補助金の第23次公募」「新事業進出補助金の第3回公募」といった情報を見かけても、それらは統合前の旧制度の情報である点にご注意ください。

なお、制度の目的は設備投資の支援だけではありません。生産性向上や付加価値向上を通じて、企業規模の拡大と賃上げを実現することが制度全体の狙いとされています。後述する「賃上げ要件」が申請の必須条件になっているのは、このためです。


3つの申請枠から1つを選んで申請する

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の3つの申請枠(革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠)の比較

本補助金は3つの申請枠で構成されており、自社の取り組みに合う枠を1つ選んで申請します。

① 革新的新製品・サービス枠:自社の技術やノウハウを活用した革新的な新製品・新サービスの開発を支援する枠です。単なる機械設備の更新は対象外で、新たな価値を生み出す取り組みが求められます。補助上限額は最大3,500万円です。


② 新事業進出枠:既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。新たな顧客層や市場を開拓するための設備投資が対象になります。


③ グローバル枠:海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を支援する枠です。自社製品を活用した海外販路開拓が対象事業とされています。

海外展開を目的とする企業であれば、選ぶべきは③のグローバル枠です。以降はこのグローバル枠に絞って詳しく見ていきます。


グローバル枠の補助率と補助額

補助率2/3は3つの枠で最も有利

グローバル枠の補助率は中小企業2/3です。これは他の2枠が原則1/2(条件により2/3)であるのに対し、無条件で2/3が適用される点で、3つの枠のなかで最も有利な設定になっています。

補助率2/3とは、たとえば3,000万円の事業を行った場合、2,000万円が補助され、自己負担は1,000万円になるという意味です。海外展開に取り組む企業を国が特に後押ししている姿勢が、この数字に表れています。


補助上限額は従業員規模で決まる

補助額には下限と上限があります。グローバル枠の補助下限額は750万円です。つまり、補助額が750万円に満たない小規模な事業は対象になりません。

補助上限額は従業員規模に応じて設定されており、従業員1〜20人の企業で2,500万円、規模が大きくなるほど上限も引き上げられ、最大7,000万円となります。さらに大幅賃上げ特例を適用した場合には、最大9,000万円まで引き上げられます。

旧ものづくり補助金のグローバル枠では補助上限額が全規模共通で3,000万円だったため、新制度では大幅な拡充が図られたことになります。

なお、事業実施期間はグローバル枠で交付決定日から14か月以内とされており、革新的新製品・サービス枠の10か月以内より長く設定されています。海外展開は準備や現地調整に時間がかかることを踏まえた設計と言えるでしょう。


グローバル枠の対象となる取り組み

グローバル枠は「海外市場開拓(輸出)に向けた国内体制の強化」を目的としています。ここで重要なのは、支援の主眼が国内の体制づくりに置かれている点です。

たとえば、次のような取り組みが想定されます。

・これまで国内向けだった製品を輸出するために、生産ラインを増強する

・海外の規格や規制に対応するため、製品の仕様を改良する

・越境ECや海外展示会への出展に向けて、国内の供給体制・品質管理体制を整える

・輸出に耐える品質・包装・保管の仕組みを構築する

※上記は制度の趣旨を理解するための一般的な例です。実際に対象となるかどうかは事業内容ごとに個別に判断されます。

逆に言えば、単なる販促活動やカタログ制作だけを目的とした申請は、この枠には馴染みません。「売るための活動」ではなく「輸出できる状態をつくるための投資」を計画の中心に据えることが、グローバル枠を活用するうえでの基本方針になります。

販促物制作や展示会出展そのものを支援してほしい場合は、小規模事業者持続化補助金など、より販路開拓に特化した制度の方が適している場合があります。


補助対象経費|海外旅費・通訳翻訳費が使える

補助対象となる経費は次のとおりです。

・機械装置・システム構築費

・建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ)

・技術導入費

・知的財産権等関連経費

・外注費

・専門家経費

・クラウドサービス利用費

・原材料費

・広告宣伝・販売促進費

・海外旅費・通訳翻訳費(グローバル枠のみ)

海外展開を進める企業にとって特に注目すべきは、最後の「海外旅費・通訳翻訳費」がグローバル枠に限って対象経費に含まれている点です。

海外の展示会視察やバイヤーとの商談のための渡航費、契約書や製品資料の翻訳費、商談時の通訳費といった、海外展開に不可欠でありながら他制度では対象外になりがちな費用を、補助率2/3でカバーできる可能性があります。

なお、申請する枠によって「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかが必ず事業計画に含まれている必要があります。旅費や翻訳費だけを計上した申請はできない点にご注意ください。


申請要件|3〜5年の事業計画が必要

本補助金の申請には、以下の要件を満たす3〜5年の事業計画の策定が必要です。これらは3つの枠に共通する要件です。


基本要件

・付加価値額:年平均成長率4.0%以上のを達成する計画であること

・賃上げ:給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(未達の場合は返還義務が生じます)

・最低賃金:事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること(未達の場合は返還)

・ワークライフバランス要件:一般事業主行動計画の公表

・金融機関から資金調達を行う場合は、金融機関の確認書の提出

さらに、子育て支援や職場環境整備への取り組みのいずれかを実施することも求められます。

ここで特に注意したいのが、賃上げと最低賃金の要件が「努力目標」ではなく、未達の場合に補助金の返還義務が生じる拘束力のある条件だという点です。補助金を受け取った後の数年間にわたって企業の人件費計画を縛るため、申請前に社内でしっかり試算しておく必要があります。


特例要件を使うと上限や補助率が上がる

一定の条件を満たすと、補助上限額や補助率が引き上げられます。

・大幅賃上げ特例:給与支給総額の年平均成長率6.0%以上かつ事業場内最低賃金+50円以上を達成すると、補助上限額が引き上げられます(未達の場合は上乗せ分を返還)

・最低賃金引上げ特例:最低賃金近傍で雇用している労働者が一定割合以上いる事業者は、補助率が引き上げられます

前述の「最大9,000万円」という数字は、この大幅賃上げ特例を適用した場合の上限額です。特例を使わない場合の上限は最大7,000万円である点を、正しく理解しておきましょう。


対象外となる事業者

次に該当する場合は申請できません。

・従業員が0名の事業者

・創業1年未満の事業者(新事業進出枠の場合)

・みなし大企業

・過去に補助金の不正受給や未返還がある事業者

・政治団体、宗教法人 など


申請スケジュールと準備の進め方

第1回公募のスケジュール

第1回公募のスケジュールは次のとおりです。

・公募開始:2026年6月29日(月)

・申請受付開始:2026年8月31日(月)

・応募締切:2026年9月30日(水)18時(厳守)

公募開始から締切までは約3か月ありますが、実際に申請を受け付けるのは8月31日からです。締切間際はシステムが混雑するため、余裕をもった申請をおすすめします。


GビズIDプライムの取得が最初の関門

申請は電子申請システムで行うため、GビズIDプライムアカウントの取得が必須です。

見落とされがちですが、GビズIDプライムの取得には時間がかかる場合があります。締切直前になって「アカウントがないから申請できない」という事態を避けるため、申請を検討し始めた段階ですぐに取得手続きを進めておきましょう。これは事業計画の作成と並行して進められる作業です。


逆算した準備スケジュール

3〜5年の事業計画、賃上げ計画の試算、設備の見積取得、必要に応じた金融機関の確認書——これらを準備するには相応の時間が必要です。

申請受付開始の8月31日を起点に逆算すると、7月から8月にかけて事業計画の骨子づくりと見積取得を進め、8月中に申請書類を完成させておくのが現実的なラインです。公募要領が公開されている今こそ、準備を始めるべきタイミングと言えます。


申請前に必ず知っておきたい4つの注意点

① 補助金は後払い(精算払い)

国の補助金は原則として、事業完了後の実績報告を経てから支払われる精算払いです。つまり、事業費はいったん全額を自己資金で立て替える必要があります。

補助率2/3・上限9,000万円という数字だけを見ると資金の心配が要らないように感じますが、実際には数千万円規模の立替が発生します。採択されてから資金繰りに困ることのないよう、金融機関との調整を含めた資金計画を事前に立てておくことが不可欠です。


② 採択されても満額交付とは限らない

採択は「事業計画が認められた」ことを意味しますが、申請した経費が全額そのまま交付されるわけではありません。採択後の交付申請の段階で経費が精査され、減額されたり、一部が対象外と判断されたりする可能性があると公募要領に明記されています。


③ 交付決定前の発注・契約・支払いは対象外

これは非常に多くの事業者がつまずくポイントです。補助対象となるのは交付決定後に発注した経費のみで、それ以前に契約や支払いを済ませてしまった分は全額自己負担になります。

「採択が決まったから」と早合点して設備を発注してしまうと、補助対象外になりかねません。採択通知の後に交付申請・交付決定という手続きがあり、発注できるのはその後である、と正確に理解しておきましょう。


④ 事業完了後も5年間の報告義務がある

補助事業が完了した翌年度以降、5年間にわたって事業化状況報告を提出する義務があります。賃上げ要件の達成状況もこの期間に確認され、未達の場合は返還を求められることがあります。

補助金は「もらって終わり」ではなく、5年間続く約束であると捉えておく必要があります。


グローバル枠を活かすために|設備投資だけでは輸出は成立しない

最後に、海外展開支援の実務に携わる立場から、この補助金を本当に成果につなげるために大切な視点をお伝えします。

グローバル枠は「輸出できる状態をつくる」ための制度です。生産ラインを増強し、海外規格に対応した製品を作れるようになる——これは確かに大きな前進です。

しかし、輸出体制が整ったからといって、自動的に商品が売れるわけではありません。実際に海外で売上を立てるには、次のような工程が別途必要になります。

・どの国・地域のどの顧客層を狙うのかというターゲットの選定

・現地のバイヤーや代理店との出会いと関係構築

・現地の規制・認証・ラベル表示への対応

・展示会出展後の商談フォローと継続受注の獲得

補助金の事業計画を作る段階から、「設備を導入した先に、誰にどうやって売るのか」まで描いておくこと。これが、補助事業を単年度のイベントで終わらせず、販路という資産に変えるための分かれ目になります。

審査においても、設備投資の必要性だけでなく、その投資がどのように売上と付加価値の向上につながるのかというストーリーの具体性が問われます。販路の見通しを持った計画は、それ自体が採択の説得力を高めることにもつながります。


まとめ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠は、補助率2/3・補助上限額最大9,000万円という、海外展開に取り組む中小企業にとって極めて有力な制度です。海外旅費・通訳翻訳費が対象経費に含まれる点も、実務上の使い勝手を大きく高めています。

一方で、3〜5年の事業計画、拘束力のある賃上げ要件、後払いによる立替、5年間の報告義務など、相応の覚悟と準備を要する制度でもあります。第1回公募の申請受付は2026年8月31日から。準備を始めるなら、今がそのタイミングです。


出典・参考情報

本記事の制度内容・補助率・補助額・スケジュール等は、以下の公的機関が公表する一次情報に基づいて作成しています(いずれも2026年7月19日確認)。


一次情報(公的機関)

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト(中小企業基盤整備機構)|公募要領・申請様式・公募スケジュールの一次情報。申請前には必ず最新版の公募要領をご確認ください。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました(中小企業庁)|2026年6月29日付の公表。制度の目的(技術的革新性のある製品・サービスの開発、新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化)の記載元。

新事業進出・ものづくり補助金のご案内(中小機構「補助金活用ナビ」)|3つの申請枠の比較表、補助率・補助上限額、申請要件(付加価値額年平均成長率4.0%以上、賃上げ年平均3.5%以上、最低賃金+30円以上等)、補助対象経費、事業実施期間、重要注意事項の記載元。


本記事における数値の扱いについて

補助上限額について、本記事では「大幅賃上げ特例を適用しない場合の上限(最大7,000万円)」と「特例適用時の上限(最大9,000万円)」を区別して記載しています。これは公募要領上、特例の適用有無によって上限額が変わるためです。

また、補助下限額750万円・補助率2/3(中小企業)・事業実施期間14か月以内(グローバル枠)は、いずれも上記③の中小機構公表資料に基づく数値です。

補助金制度は年度ごとに要件・金額・スケジュールが改定されます。本記事は第1回公募(2026年)時点の情報であり、第2回以降の公募では内容が変更される可能性があります。実際の申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認いただくか、最寄りの支援機関にご相談ください。


申請にあたっての公的相談窓口

GビズID(デジタル庁)|電子申請に必須となるGビズIDプライムアカウントの取得はこちらから。取得には時間を要する場合があります。

ミラサポplus(中小企業庁)|中小企業向けの補助金・支援制度の総合情報サイト。

※本記事は制度の理解を助けることを目的とした解説であり、申請の採択や補助金の交付を保証するものではありません。個別の事業が補助対象となるか否かは、公募要領に基づき事務局が判断します。


海外展開の計画づくりでお悩みならLink Globalへ

株式会社Link Globalは、台湾をはじめとするアジア市場での海外販路開拓を、市場調査・戦略立案から現地バイヤーへのアプローチ、展示会出展、商談同行、成約後のフォローまで一貫して支援しています。

「補助金を使って輸出体制を整えたいが、その先の販路をどう設計すべきか」「自社の商品はどの国に可能性があるのか」といった、事業計画の根幹に関わるご相談にも対応しています。京都市・福岡県・大東市・大刀洗町のアドバイザーとして培った知見も踏まえ、貴社の状況に合わせた進め方をご提案します。


あわせて読みたい:補助金・海外展開の関連記事

コメント


浜松町ダイヤビル 2F

株式会社Link Global​

〒105-0013

東京都港区浜松町2丁目2番15号

© 2024-2026 株式会社Link Global

  • LinkedIn
bottom of page