アルコール飲料の台湾輸出ガイド2026|菸酒進口業許可執照・菸酒稅・中文表示から独占契約の交渉まで実務解説
- 堤浩記
- 20 時間前
- 読了時間: 26分
台湾は日本産の農林水産物・食品にとって米国・香港に次ぐ第3の市場で、2025年の輸出額は1,812億円。そのうちアルコール飲料が159億円を占め、台湾向けの品目別で3年連続の1位です。
つまり台湾は、日本の酒がすでに大量に入っている市場です。この記事は「これから台湾に酒を出す」ための手続きを整理すると同時に、すでに埋まっている棚にどう割り込むのかという、より難しいほうの問題も扱います。
酒類は食品とは所管官庁が違い、必要な免許も税の構造も別物です。食品輸出のつもりで準備を進めると、輸出直前に手続きがひとつも進んでいなかった、ということが起こります。
食品全般の台湾向け輸出手続きについては台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版で扱っています。本記事はそこから酒類だけを抜き出し、制度と商流の両面を掘り下げたものです。
本記事のデータについて
市場規模の数値は、公益財団法人日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2024年3月・2026年3月更新)および農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」(2026年2月3日公表)に基づきます。輸出実績は財務省貿易統計を基に農林水産省が作成したもので、今後の確々報値・確定値により変更される場合があります。
制度・税率・表示義務は、台湾の菸酒管理法、菸酒稅法、酒類標示管理辦法、および財政部国庫署の公開情報を一次情報として参照しています。日本側の免許は国税庁の法令解釈通達によります。
関税率については、本記事では二次情報として把握している水準を示すにとどめ、断定していません。関税は品目のCCC号列(11桁)で決まるため、実際の輸出前には必ず通関業者または輸入者を通じて確認してください。原典の図表は転載せず、数値から独自に記述しています。原典にない数値の推定補完は行っていません。
まず確認する3つのこと
台湾向けの酒類輸出は、次の3点が揃わないと1本も動きません。逆に言えば、この3つを最初に確認すれば、進むか進まないかは早い段階で判断できます。
1. 台湾側の取引相手が「菸酒進口業許可執照」を持っているか。持っていない相手とは、どれだけ話が盛り上がっても輸入できません
2. 日本側に酒類を輸出できる免許があるか。国内向けの酒販免許では輸出できません
3. 自社の酒がどの課税区分に入るか。清酒とウイスキーでは、税負担の構造がまったく違います
この3つはいずれも、商談の前に確認できます。順に見ていきます。
台湾向けアルコールは3年連続1位——159億円が意味すること
2025年の台湾向けアルコール飲料の輸出額は159億円で前年比9.4%増、品目別で3年連続の1位です。同じ年の台湾向けでは牛肉が133億円(前年比17.7%増)、ホタテが133億円(同9.9%増)と続きます。
この数字は追い風にも逆風にも読めます。追い風として読めば、台湾の消費者と飲食店は日本の酒をすでに受け入れているということです。市場をゼロから作る必要はありません。
一方で逆風として読むなら、159億円分の日本の酒がすでに台湾の棚と飲食店に入っているということです。新規参入する蔵にとって、これは「空いている棚がない」という意味になります。

図:2025年 台湾向け 日本産農林水産物・食品の主要品目。出典:日本台湾交流協会レポート(2026年3月更新)、農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」。輸出実績は財務省貿易統計を基に農林水産省が作成したもので、確々報値・確定値により変更される場合があります。上位10品目のうち前年から10億円以上伸びた品目を抜粋。
成熟市場に後から入るということ
台湾の日本酒市場は、輸入者・卸・小売・飲食店の商流がすでに出来上がっています。有名銘柄はすでに現地代理店を持ち、酒販店の棚には定番が並んでいます。
この状況で新しい蔵が持ち込む場合、輸入者側から見た論点は「売れるかどうか」ではなく「いま扱っている銘柄と何が違うのか」になります。日本国内での評価や受賞歴は説明材料にはなりますが、それだけで棚を空ける理由にはなりにくいのが実情です。
弊社が台湾での商談に関わってきた範囲では、輸入者が最初に確認するのは、知名度そのものよりも「その酒を扱う理由を、自社の顧客にどう説明できるか」という点です。価格帯が既存の取扱銘柄と重なっていないか、提供できるストーリーがあるか、継続的に供給できるか——このあたりが最初の関門になります。
※ この段落は弊社の実務上の所感であり、統計や公的資料に基づくものではありません。
「成熟している」は撤退理由にはならない
ただし、成熟しているから入れないという話ではありません。台湾は市場が成熟しているぶん、消費者と飲食店の側に日本酒を評価する目があります。説明の手間が少なく、いきなり高価格帯から入れる可能性もあります。
重要なのは、参入の設計を「認知を作る」ではなく「既存の棚のどこと入れ替わるか」から考えることです。この違いが、後述する独占契約の交渉にも直結します。
台湾側に許可執照を持つ輸入者がいないと1本も入らない
台湾で酒類を扱うには、菸酒管理法にもとづく許可が要ります。同法は菸酒業者を製造業者・進口業者・販賣業者の3種に分けており、輸入を行うのは菸酒進口業者です。
重要なのは、許可執照を持たずに輸入された酒は「私酒」として扱われるという点です。書類の不備といった程度の話ではなく、法律上まったく別のものになります。

図:日本側と台湾側の手続き分担。輸入査験の申請義務者は台湾側の輸入業者であり、日本の輸出者ではありません。
菸酒進口業者になれるのは「公司」だけ
菸酒進口業者の組織は公司に限られます。2014年5月30日の改正条文施行前に許可を得ていた合夥・独資の事業者で、その後に負責人が変わっていない場合だけが例外です。
手続きは二段階です。まず中央主管機関に設立許可を申請し、設立許可を得た日から2年以内に公司登記証明文件を添えて許可執照の交付を申請します。許可執照を受け取ってはじめて営業できます。
つまり、これから輸入業を始める相手と組む場合、相手が営業できる状態になるまでに相応の時間がかかります。

図:菸酒進口業許可執照の取得フロー。出典:菸酒管理法。組織は公司に限られ、2014年5月30日の改正条文施行前に許可を得ていた合夥・独資で負責人が変わっていない場合のみ例外です。
執照の確認で見るべき3点
菸酒進口業許可執照を保有しているか。「取得予定」「申請中」は、まだ輸入できない状態です
執照の名義は商談している法人と一致しているか。グループ内の別法人が持っているケースがあります
酒類の輸入実績があるか。食品の輸入者が酒類も扱えると考えているケースがあります
輸入酒類の衛生査験を申請する義務を負うのも、菸酒進口業許可執照を取得した酒類輸入業者です。手続きの主体は日本側ではなく台湾側にあります。
出典:菸酒管理法(全国法規資料庫)、財政部国庫署「進口酒類査驗管理業務問答」。申請窓口は財政部国庫署(02-2322-8000 内線7465〜7471)。
日本側の免許——輸出入酒類卸売業免許
日本側では、酒税法にもとづく酒類販売業免許が必要です。国税庁の法令解釈通達上の区分は「輸出入酒類卸売業免許」で、輸出される酒類、輸入される酒類、またはその両方を卸売できる酒類卸売業免許を指します。
国内向けの一般酒類小売業免許では輸出できません。蔵元が自社の酒を直接輸出する場合は製造者としての扱いになりますが、他社の酒を仕入れて輸出する場合はこの免許が要ります。
審査で見られる項目
免許の取消処分を受けた場合、その日から3年を経過していること
申請前2年内に国税・地方税の滞納処分を受けていないこと
経験その他から判断し、適正に酒類の卸売業を経営するのに十分な知識と能力を有すると認められること
事業を経営するのに十分と認められる所要資金等を有していること
実務上は、免許通知書に取扱酒類の条件が付されるのが原則です。清酒だけを輸出する事業計画で申請すると「自己が輸出する清酒の卸売」という条件になり、その範囲を超える酒類は扱えません。将来ほかの酒類も出す予定があるなら、申請時の事業計画の書き方から設計しておく必要があります。
出典:国税庁「第9条 酒類の販売業免許」法令解釈通達、および「酒類卸売業免許審査項目一覧表(輸出入酒類卸売業免許)」。要件の適用は所轄税務署の判断によります。
税の構造——清酒とウイスキーで酒税がほぼ同額になる理由
台湾に酒を入れると、関税・菸酒稅・営業税の3つがかかります。このうち菸酒稅は菸酒稅法第8条で酒の種類ごとに定額が決まっており、日本の酒にとっては構造的な有利不利が生じます。
菸酒稅法第8条の課税区分
【釀造酒類・啤酒】1リットルあたり26台湾ドル
【釀造酒類・その他】1リットルにつきアルコール分1度あたり7台湾ドル(清酒・ワインはここ)
【蒸餾酒類】1リットルにつきアルコール分1度あたり2.5台湾ドル(ウイスキー・焼酎・ブランデーはここ)
【再製酒類】アルコール分20%超は1リットル185台湾ドル、20%以下は1度あたり7台湾ドル(梅酒・リキュールはここ)
【料理酒】1リットルあたり9台湾ドル
【その他酒類】1リットルにつき1度あたり7台湾ドル
同じ1リットルで比べると差がはっきりします。アルコール分15度の清酒は7×15=105台湾ドル。アルコール分40度のウイスキーは2.5×40=100台湾ドル。度数が2.7倍近く違うのに、酒税はほぼ同じです。
720mlの清酒(15度)なら0.72×15×7=約76台湾ドル、700mlのウイスキー(40度)なら0.7×40×2.5=70台湾ドル。清酒のほうが度数は低いのに税は重くなります。
なお、酒税がもっとも高額になるのは清酒ではなく、アルコール分20%を超える再製酒類です。1リットルあたり185台湾ドルの定額で、度数にかかわらず課されます。梅酒やリキュールを出す場合は、この区分に入るかどうかを先に確認してください。

図:菸酒稅法第8条の課税区分と実額比較。出典:菸酒稅法第8条。菸酒稅のみの比較で、関税・営業税は含みません。単位は台湾ドル。
関税を足すと差はさらに開く
ここに関税が乗ります。二次情報として流通している水準では、蒸餾酒は0%、ワインは10%、清酒を含む発酵穀類酒は20%とされています。この通りだとすると、清酒は関税でも酒税でも不利な側に置かれることになります。
ただし関税率は品目のCCC号列(11桁)で決まるため、本記事ではこの水準を断定しません。実際の輸出前には、必ず通関業者または台湾側の輸入者を通じて確認してください。CCC号列の特定方法と関港貿単一窗口での税率検索については台湾への輸出にかかる関税・コスト・価格設定ガイドで詳しく扱っています。
さらに営業税5%が、関税と菸酒稅を含んだ額に対してかかります。関税・酒税・営業税は積み上がる構造なので、原価計算では「CIF価格の何%」ではなく金額で積み上げて確認してください。

図:税の積み上げ構造。関税率は品目のCCC号列で決まります。本図は税の重なり方を示す概念図であり、税率・金額は表していません。
出典:菸酒稅法第8条(財政部主管法規共用系統)、財政部税務入口網。関税率は二次情報にもとづく参考値であり、CCC号列での確認が必要です。
なぜ台湾側は独占を求めてくるのか
台湾の輸入者と話を進めると、多くの場合どこかの段階で独占(獨家代理)の話が出ます。これは酒類に限った話ではありませんが、酒類では特に強く出る傾向があります。
理由は単純です。台湾ではその銘柄はまだ誰も知りません。輸入者は試飲会を開き、飲食店を回り、酒販店の棚を取り、SNSやメディアで露出を作ります。この費用と時間は輸入者が負担します。
そうやって台湾で名前が通るようになった段階で、別の会社が同じ銘柄を扱い始めたらどうなるか。育てた側は、自分が作った需要を他社に持っていかれます。価格を崩されれば、それまで築いた売り方も通用しなくなります。
だから輸入者は、プロモーションに投資する前提として独占を求めます。裏を返せば、独占を求めてくる相手は販促に投資する意思があるということでもあります。
本当に危ないのは「販促をしない相手への独占」
独占契約そのものが悪いわけではありません。危ないのは、販促を実施しない相手に独占を渡してしまうことです。この場合、台湾での売上は伸びないのに、他の輸入者にも出せない状態が続きます。市場が凍結します。
そのため交渉の焦点は、最低発注量よりも先に「何をやるのか」に置くべきです。試飲会を年に何回開くのか、どのチャネルを開拓するのか、販促費用は誰が負担するのか。これらを契約に書き込めるかどうかで、相手の本気度が判別できます。

図:独占代理を求められた場合の判断フロー。本図には弊社の実務上の所感を含みます。個別の契約内容については弁護士等の専門家にご確認ください。
販促の具体的な内容と実施回数を契約に明記する
販促費用の負担割合を決める(蔵側が一部を持つ場合、その条件も)
独占の期間を区切り、更新は販促の実施状況と実績で判断する
販促が実施されない場合の独占解除条項を入れる
テリトリーを台湾全土にするか、飲食店向け・小売向けなどチャネル別に切るかを検討する
契約条件の詰め方そのものは、代理店契約全般に共通します。テリトリー設定・最低発注量・契約解除条項・繁体字版の扱いについては台湾のバイヤー・代理店・ディストリビューターと組む実務ガイドで詳しく扱っています。
並行輸入は独占契約だけでは止まらない
見落とされやすい点として、独占契約を結んでも並行輸入を完全には防げません。日本国内の卸や小売から商品を買い付けて台湾に持ち込むルートは、蔵と輸入者の契約の外側にあるからです。
独占を約束する以上、日本側でも出荷先の管理が必要になります。この点を曖昧にしたまま独占契約を結ぶと、輸入者との関係が後で悪化する原因になります。
※ 独占契約に関する本セクションの記述には、弊社の実務上の所感を含みます。個別の契約内容については弁護士等の専門家にご確認ください。
輸入査験——検査されるのは3項目
台湾に輸入される酒類には衛生査験があります。申請義務者は菸酒進口業許可執照を持つ酒類輸入業者で、日本側の輸出者ではありません。
検査方法は衛生福利部または財政部が同部と共同で定めた方法によります。食用酒精はCNS15351の国家標準に定める方法、検査方法が定められていないものは中華民国国家標準、国家標準がないものは国際的に認められた方法または性質に応じた通用方法によることとされています。
現行の検査項目
【メタノール】ガスクロマトグラフ法、分光光度法
【鉛】黒鉛炉原子吸光光度法、誘導結合プラズマ質量分析法
【二酸化硫黄】アルカリ滴定法、高速イオン排除クロマトグラフィー
食品の輸入査験が5方式に分かれ、不合格を出すと重い方式が続くのに対して、酒類の査験項目は限定的です。日本国内の通常の製造管理で出荷している酒であれば、この3項目で問題が出ることは多くありません。
ただし二酸化硫黄は、ワインや一部のリキュールで意識すべき項目です。日本酒でも酸化防止の目的で使用している場合は数値を把握しておいてください。
出典:財政部国庫署「進口酒類査驗管理業務問答」。免査驗となる条件が別途定められています。詳細は同署の菸酒検験関連資訊を参照してください。
中文表示——酒類は食品とは別のルール
台湾で販売する酒には、酒類標示管理辦法にもとづく表示が必要です。食品の中文表示(食品安全衛生管理法第22条の10項目)とは根拠法も項目も違います。食品用に作ったラベルの雛形は流用できません。
容器に表示する9項目
包装して販売する酒は、酒に直接接触する容器に次を表示します。
1. 品牌名稱(ブランド名)
2. 產品種類(酒の種類。輸入酒は税関が放行時に適用した輸入税則号別の貨名で表示することも認められます)
3. 酒精成分(アルコール分)
4. 進口酒之原產地(輸入酒の原産地)
5. 製造業者の名称と住所。輸入の場合は輸入業者の名称と住所も併記
6. 容量
7. アルコール分7%以下の酒は、有効日期または装瓶日期。装瓶日期を書く場合は有効期限も併記
8. 「飲酒過量,有害健康」またはその他の警語
9. その他中央主管機関が公告した表示事項
表示は条列式で、消費者が各項目の意味を明確に理解できる形にすることが求められます。品牌名稱は太字か大きな字で、他の表示より大きくします。前ラベルで品牌名稱が十分大きく表示されていれば、裏ラベルでの再表示は省略するか前ラベル参照とすることができます。

図:容器に表示する中文9項目。出典:菸酒管理法第32条、酒類標示管理辦法第3条・第4条。食品の中文表示(食品安全衛生管理法第22条の10項目)とは根拠法も項目も異なります。
警語は字の大きさまで決まっている
警語は長さ・幅とも2.65ミリ以上の字体で、容器の最大外表面積の見やすい場所に、地色と対比する色ではっきりと表示します。翻訳の問題ではなくラベル設計の問題なので、デザインの段階から面積を確保しておく必要があります。
酒精類を除く酒は「飲酒過量,有害(礙)健康」を表示するか、次のいずれかを表示します。
飲酒過量,有害(礙)健康
酒後不開車,安全有保障
飲酒過量,害人害己
未滿十八歲禁止飲酒
短時間內大量灌酒會使人立即喪命
その他中央主管機関が承認した警語
なお条文は「酒精類を除く」酒についてこれらの警語を定めており、酒精類には別の警語が課されます。酒精類とは食用酒精のようにアルコールそのものとして扱われる区分で、「高度易燃,應遠離火源、火花、火焰」「刺激眼睛、皮膚、呼吸系統,應置於陰涼且通風良好處,並緊蓋容器」の表示が必要です。度数の高い飲用酒がこの区分に入るわけではありません。
アルコール分の許容誤差は種類で違う
アルコール分は摂氏20度における容量パーセントで、度・%・%vol・% by volume のいずれかの単位で、単一の数字として表示します。許容誤差は蒸餾酒類がプラスマイナス0.5度、その他の酒類がプラスマイナス1度です。
日本のラベルで「15度以上16度未満」のような幅のある表記をしている場合、そのままでは使えません。単一の数字にする必要があります。
中文表示が免除される項目
輸入酒のブランド名と、国外製造者の名称・住所
委託製造の場合の国外業者の名称・住所
輸入酒の地理標示
これら以外は中文表示が原則です。また輸出用として中文表示なしで作った酒を台湾国内で販売する場合は、改めて中文表示が必要になります。
やってはいけないこと
医療保健用語の表示、およびそれを暗示・明示する文字や画像の使用
原ラベルに記載のない事項を、輸入酒に追加で表示すること
翻訳語や「同類」「同型」「同風格」「相仿」などの表現で、実際とは違う地理的来源から産出されたと誤認させること。実際の原産地を正しく表示していても同様です
2つ目は日本の蔵が見落としやすい点です。台湾向けに追加の説明を加えたいと考えても、原ラベルにない内容は表示できません。訴求したい情報がある場合は、日本側の原ラベル設計から見直す必要があります。
出典:菸酒管理法第32条、酒類標示管理辦法第3条・第4条・第11条、財政部国庫署「菸酒産品標示」。食品の中文表示(食品安全衛生管理法第22条の10項目)とは根拠法も項目も異なります。
年份・酒齡・地理標示を書くなら証明書が要る
年份(ヴィンテージ)、酒齡、地理標示を表示する場合は、報関前に証明書を中央主管機関へ提出して査核に供する必要があります。表示してから求められるのではなく、事前提出です。
【年份・酒齡】原産国の政府、または政府が授権した商会が発行した証明書
【原産地】原産国の政府、原産国政府が授権した商会、輸出国政府、または輸出国政府が授権した商会が発行した原産地証明
【地理標示】原産国の政府、または政府が授権した商会が発行した地理標示証明書
年份は、果実釀造酒に含まれる同一種類の果実原料の85%以上が同一の収穫年に由来するものを指します。酒齡は瓶詰め前に容器で熟成させた期間で、複数の酒齡を混和した場合は最も短い酒齡で表示します。陳年と表示する場合は熟成年数の併記が必要で、詳細な記録と証明書類を備えて査核に供する必要があります。
実務上は、原産地証明の取得ルートを先に決めておくことが重要です。商工会議所での取得には貿易登録が前提になるため、初回は想定より時間がかかります。
出典:酒類標示管理辦法。証明書の要件は表示する内容によって異なります。
誰の棚を狙うのか——2026年再編後の台湾チャネル
台湾の流通は2026年に大きく動きました。家樂福ブランドが台湾から消滅し、統一集団が量販店を「萬家福」、スーパーを「樂家康」へ改称しています。全聯は大潤發を統合して「大全聯」に一本化しました。大型量販は統一・全聯・遠東愛買の三強にコストコを加えた構図です。
酒類の場合、この量販チャネルだけを見ていると設計を誤ります。日本酒がどこで飲まれ、どこで買われているかは、チャネルによってまったく違うからです。
チャネル別に求められる条件
【日本料理店・居酒屋】銘柄の説明ができる人がいる場所。新規銘柄が最初に入りやすい。単価は取れるが数量は出にくい
【量販・スーパー】数量は出るが定番銘柄の棚が固い。価格競争になりやすく、新規参入の余地は小さい
【酒類専門店】説明できる棚。中価格帯から高価格帯の新規銘柄はここが現実的な入口
【コンビニ】台湾はコンビニ密度が高い。ただし扱われるのは規格化された商品で、少量生産の蔵には向かない
【EC】momo購物網などのプラットフォーム。酒類はプラットフォーム側の取扱条件を確認する必要がある
【ホテル・レストラン】高価格帯が動く。ただし採用までのリードタイムが長い
新規参入で現実的なのは、飲食店と酒類専門店から始めて実績を作り、そこから量販に広げる順序です。いきなり量販の棚を狙うと、価格を叩かれたうえに数量も出ないという最悪の形になりやすくなります。

図:チャネル別の特性と参入順序。チャネル別の記述には弊社の実務上の所感を含み、統計に基づくものではありません。
この順序は、前述した独占契約の交渉とも直結します。輸入者がどのチャネルに強いのかを確認せずに独占を渡すと、自社の商品に合わないチャネルだけで展開されることになります。
出典:台湾小売再編に関する記述は2026年7月時点の公開情報にもとづきます。チャネル別の記述には弊社の実務上の所感を含みます。
展示会——どこに出るか
台湾で酒類のバイヤーと接点を作る場としては、食品系の展示会が中心になります。
【Food Taipei(台北国際食品展)】1991年開始で2026年は通算第36回。33カ国が出展し21の国家館が設置されました。前半3日は業界関係者と登録メディアのみで、一般公開は最終日のみ。個別出展の締切は前年11月受付開始・3月末締切という実績です
Food Taipeiにはジェトロと日本台湾交流協会がジャパンパビリオンを設置しています。募集は会期のおよそ4か月前に始まるため、年度計画の段階で押さえておく必要があります。
台湾の食品系展示会の全体像と、それぞれの出展対象・時期については台湾の食品展示会の魅力とビジネスメリット完全解説で整理しています。
なお、ジェトロが海外見本市で出展支援を行う展示会の年間予定において、台湾で掲載されているのはFood Taipeiのみです。酒類は食品カテゴリに含まれるため、この枠を使える数少ない分野にあたります。非食品の分野では台湾に公的な受け皿がなく、自前での出展が前提になります。
出典:ジェトロ「海外見本市・展示会」年間予定(最終更新2026年7月22日)、各主催者公開情報。
売る段階の規制——販売場所にも義務がある
輸入して終わりではありません。台湾では酒を小売する場所にも表示義務があります。
酒販売業者は、小売場所の出入口またはその他の適当な場所に、次の警語と飲酒運転禁止の警示図を明示しなければなりません。
飲酒勿開車
未滿18歲者,禁止飲酒
本場所不販賣酒予未滿18歲者
表示は中文で、字体は長さ・幅とも3センチ以上。「飲酒勿開車」は飲酒運転禁止の警示図と合わせて表示します。警示図文は固定して掲示し、動かしたり覆ったりしてはなりません。違反した場合は1万台湾ドル以上5万台湾ドル以下の罰鍰で、按次処罰(違反ごとに繰り返し処罰)されます。2016年1月1日施行です。
これは輸入者・小売側の義務ですが、日本側が把握しておく意味はあります。ポップアップやイベント出店を企画する場合、この要件を満たす必要があるからです。
出典:菸酒管理法第35条・第55条第1項第5款および第3項、菸酒管理法施行細則第9条。
許可なく扱った場合の罰則
許可執照を持たずに輸入された酒は私酒に該当します。私酒を製造した場合は5万台湾ドル以上100万台湾ドル以下の罰鍰、押収時の現物価値が100万台湾ドルを超える場合はその1倍以上5倍以下、上限1,000万台湾ドルです。
私酒を販売・運輸・譲渡した場合、またはその意図で陳列・貯蔵した場合は3万台湾ドル以上50万台湾ドル以下の罰鍰、押収時の現物価値が50万台湾ドルを超える場合はその1倍以上5倍以下、上限600万台湾ドルです。
日本側の輸出者が直接の名宛人になるわけではありませんが、取引相手が許可執照を持たないまま輸入していた場合、商品は差し止められ、取引そのものが継続できなくなります。相手の執照確認を最初に行うべき理由はここにあります。
出典:菸酒管理法第45条・第46条。
サンプルと少量輸送の扱い
商談用のサンプルをどう送るかは、酒類では特に注意が必要です。
旅客が携帯する自用の酒類は、18歳以上で1.5リットルまで(本数制限なし)が免税範囲です。この範囲であれば菸酒稅は免除されます。
郵送・宅配便については、二次情報として、自用の郵便小包・クーリエは5リットル以内であれば菸酒進口業許可執照が不要で、都度税関に申告して課税される、5リットルを超える場合は許可執照の添付が必要とされています。この水準は本記事では断定しません。実際の発送前に運送業者と税関に確認してください。
重要なのは、酒類には少額免税の枠が適用されないという点です。低価格の商品であっても関税・菸酒稅・営業税が課されます。「サンプルだから無税」という前提で計画を立てないでください。
なお菸酒稅法では、展覧会に参加し、展覧終了後に原品を元の工場へ戻すか輸出する場合は菸酒稅が免除されます。展示会出展時のサンプルはこの扱いを確認する価値があります。
出典:菸酒稅法第5条、財政部台北国税局。郵送・クーリエの数量基準は二次情報にもとづく参考値です。
実務フロー——逆算するとどこから始めるか
台湾向けの酒類輸出は、初回だけ発生する手続きと毎回発生する手続きに分けると整理しやすくなります。
【初回のみ】日本側の輸出入酒類卸売業免許の取得。申請から取得まで数か月かかります
【初回のみ】貿易登録と、原産地証明の取得ルートの確立
【初回のみ】台湾側の輸入者の選定と、菸酒進口業許可執照の確認
【初回のみ】中文ラベルの設計。警語の面積確保を含むデザイン調整が必要です
【初回のみ】商標の台湾出願。台湾は先願主義です
【毎回】原産地証明・年份証明等の取得と、報関前の提出
【毎回】輸入査験の申請(台湾側の輸入者が実施)
【毎回】通関と、関税・菸酒稅・営業税の納付
このうち日本側の免許取得が最も時間を要します。展示会の会期や商戦期から逆算する場合は、免許取得から着手してください。商談がまとまってから申請したのでは間に合いません。

図:初回出荷から逆算した実務フロー。バーの長さは相対的な所要期間のイメージであり、実際の日数を示すものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 台湾の日本酒市場はもう飽和していますか?
アルコール飲料は台湾向け品目別で3年連続1位の159億円であり、市場は成熟しています。ただしこれは日本の酒が受け入れられているという意味でもあります。問題は市場の有無ではなく、既存の棚のどこと入れ替わるかを設計できるかどうかです。認知形成から始める市場ではなく、比較で選ばれる市場だと考えてください。
Q. 台湾側の相手が「執照は取得予定」と言っています。進めてよいですか?
許可執照を受け取るまで営業できません。設立許可から執照の申請までに2年の猶予があり、その間は輸入できない状態です。取得予定の段階で商品を送ると、私酒として扱われるおそれがあります。執照の写しを確認してから進めてください。
Q. 蔵元ですが、自社で直接輸出できますか?
酒類製造者が自社製造の酒を輸出する場合と、他社の酒を仕入れて輸出する場合とで扱いが異なります。後者には輸出入酒類卸売業免許が必要です。自社分のみであっても販売の形態によって必要な免許が変わるため、所轄税務署に事業計画を示して確認してください。
Q. 清酒とウイスキーで、税負担はどのくらい違いますか?
菸酒稅だけで見ると、720mlのアルコール分15度の清酒が約76台湾ドル、700mlのアルコール分40度のウイスキーが70台湾ドルです。度数が2.7倍近く違うのに酒税はほぼ同額で、清酒のほうが不利になります。ここに関税が加わると差はさらに開くとされていますが、関税率はCCC号列での確認が必要です。
Q. 日本のラベルに「15度以上16度未満」と書いてあります。そのまま使えますか?
使えません。台湾ではアルコール分を単一の数字で表示する必要があります。許容誤差は蒸餾酒類がプラスマイナス0.5度、その他の酒類がプラスマイナス1度です。
Q. 台湾向けに、日本のラベルにない説明を追加してもいいですか?
できません。輸入酒は原ラベルに表示されていない事項を追加表示することが認められていません。訴求したい情報がある場合は、日本側の原ラベルの設計から見直す必要があります。
Q. 独占契約を求められました。受けるべきですか?
独占そのものが問題なのではなく、販促を実施しない相手に独占を渡すことが問題です。台湾で銘柄を育てるのは輸入者の投資であり、育った後に他社が同じ銘柄を扱えば投資した側が損をします。独占を求めてくる相手には販促の意思があるとも読めます。判断基準は、販促の内容・回数・費用負担を契約に書き込めるかどうかです。
Q. 独占契約を結べば、他社が台湾に持ち込むことは防げますか?
完全には防げません。日本国内の卸や小売から買い付けて台湾に持ち込むルートは、蔵と輸入者の契約の外側にあります。独占を約束する場合は、日本側の出荷先管理もあわせて設計してください。
Q. 商談用のサンプルは無税で送れますか?
酒類には少額免税の枠が適用されません。低価格でも関税・菸酒稅・営業税が課されます。旅客が携帯する自用の酒類は18歳以上で1.5リットルまでが免税範囲です。郵送やクーリエの取り扱いは、事前に運送業者と税関に確認してください。
Q. 展示会に持ち込むサンプルの税はどうなりますか?
菸酒稅法では、展覧会に参加し展覧終了後に原品を元の工場へ戻すか輸出する場合、菸酒稅が免除されます。実際の適用は個別確認が必要です。
用語集
【菸酒管理法】台湾の酒とたばこを規律する法律。所管は財政部で、食品を所管するTFDA(衛生福利部食品薬物管理署)ではありません
【菸酒進口業許可執照】酒類を輸入するために必要な許可。取得できるのは公司に限られます
【私酒】許可執照を持たずに製造または輸入された酒。罰則の対象です
【菸酒稅】酒の種類ごとに定額で課される税。菸酒稅法第8条に区分と税額が定められています
【CCC号列】台湾の輸入品目分類コード。11桁で、これにより関税率が決まります
【獨家代理】独占代理。特定の輸入者だけが当該商品を扱える契約形態です
【酒齡】瓶詰め前に容器で熟成させた期間。複数を混和した場合は最短の酒齡で表示します
公式情報リンク集
菸酒管理法(全国法規資料庫):菸酒管理法 条文
酒類標示管理辦法(全国法規資料庫):酒類標示管理辦法 条文
財政部国庫署 菸酒管理:財政部国庫署 菸酒管理
進口酒類査驗管理業務問答(財政部国庫署):進口酒類査驗管理業務問答
国税庁 酒類の販売業免許(法令解釈通達):国税庁 法令解釈通達 第9条
農林水産省 農林水産物・食品の輸出に関する統計情報:農林水産省 輸出実績
まとめ
台湾向けの酒類輸出は、食品輸出とは別の制度の上に成り立っています。所管は財政部で、台湾側には菸酒進口業許可執照が、日本側には輸出入酒類卸売業免許が必要です。ラベルも食品とは別の規則で、警語は字の大きさまで決められています。
税は清酒に不利な構造です。度数の低い清酒が、度数の高い蒸餾酒とほぼ同額の酒税を負担します。価格設計はこの前提から始める必要があります。
そして最も難しいのは制度ではありません。台湾は日本の酒がすでに大量に入っている成熟市場で、新規の蔵にとっては空いた棚がない状態です。ここで輸入者に求められるのは物流ではなく販促であり、だからこそ独占の話が出てきます。独占を渡すかどうかではなく、販促の中身を契約に書けるかどうかで相手を選んでください。
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本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。法令・税率・制度は変更される場合があります。実際の輸出にあたっては、通関業者・所轄税務署・台湾側の輸入業者および専門家にご確認ください。




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