top of page

牛肉・和牛の台湾輸出ガイド2026|2025年5月の月齢制限撤廃・認定施設・3つの証明書から販路まで実務解説

  • 堤浩記
  • 8月26日
  • 読了時間: 26分

2025年5月22日、台湾向けに輸出する日本産牛肉の月齢制限が撤廃されました。それまでは30か月齢未満の牛に由来することが条件で、日本の高級銘柄の多くはこの枠から外れていました。

この変更の意味は大きく、日本では高級銘柄を中心に30か月齢以上でと畜されるものが多く、黒毛和種の約4割がこれに該当します。つまり2025年5月まで、日本の和牛のうち最も価格の取れる層のかなりの部分が、台湾に出せなかったということです。

台湾向けの牛肉輸出額は2025年に133億円、前年比17.7%増。これは月齢制限がまだあった期間を含む数字です。制限撤廃の効果はこれから出てきます。

ただし牛肉は、ラベルと書類を整えれば出せる商材ではありません。認定を受けたと畜場で処理されていなければ、どれほど良い牛でも1キログラムも輸出できません。この記事は、その構造から順に整理します。


本記事のデータについて

市場規模の数値は、公益財団法人日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2024年3月・2026年3月更新)および農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」に基づきます。輸出実績は財務省貿易統計を基に農林水産省が作成したもので、確々報値・確定値により変更される場合があります。

月齢制限撤廃に関する記述は、農林水産省「台湾向け牛肉の月齢制限撤廃について」(令和7年5月23日公表)によります。手続きに関する記述は、農林水産省、動物検疫所、ジェトロの公開情報を参照しています。

原典の図表は転載せず、数値から独自に記述しています。原典にない数値の推定補完は行っていません。制度は変更されるため、実際の輸出にあたっては各当局および輸入者を通じて最新の情報を確認してください。


まず確認:牛肉は出せる。豚肉と鶏肉は出せない

台湾向けの畜産物輸出を検討するとき、最初に押さえるべきはここです。畜産物とひとくくりにすると計画を誤ります。

  • 【牛肉】輸出できます。2025年5月22日に月齢制限も撤廃されました

  • 【豚肉】輸出できません。日本国内で豚熱が発生したことを受け、台湾行政院が輸入停止を公表しました(平成30年11月17日)。動物検疫所も豚およびイノシシ由来の一部製品について輸出検疫証明書の交付を停止しています(平成30年9月9日〜)

  • 【家きん肉(鶏肉など)】日本からの輸出は認められていません


疾病の発生状況によって台湾当局が輸入停止措置をとることがあり、その場合は輸出検疫証明書の交付が止まります。牛肉についても、状況は固定的なものではありません。輸出計画を立てる段階で、動物検疫所の「日本から輸出される食肉等の受入れ状況一覧」を確認する習慣をつけてください。


台湾向け畜産物の輸出可否。牛肉は輸出可能、豚肉は豚熱により輸入停止、家きん肉は輸出が認められていない。

図:台湾向け畜産物の輸出可否。出典:農林水産省「台湾向け畜産物の輸出について必要な手続きなどを教えてほしい」、動物検疫所「偶蹄類の畜産物の輸出」。疾病の発生状況により変わるため、計画時に最新の受入れ状況を確認してください。


出典:農林水産省「台湾向け畜産物の輸出について必要な手続きなどを教えてほしい」、動物検疫所「偶蹄類の畜産物の輸出」。


認定施設で処理されていなければ、良い牛でも出せない

台湾向けに輸出できる牛肉は、厚生労働省が認定したと畜場等(と畜場および食肉処理場)で処理されたものに限られます。認定を受けていない施設で処理された牛肉は、品質や等級にかかわらず輸出の対象になりません。

ここが酒類や加工食品との決定的な違いです。酒類であれば、日本側の免許と台湾側のラベルを整えれば商品そのものは既存のもので足ります。牛肉は、と畜の段階まで遡って条件が付きます。


生産者・販売者が最初に確認すること

  • 自社の牛が、台湾向け認定を受けたと畜場で処理されているか

  • 認定施設のリストに、取引していると畜場・食肉処理場が載っているか

  • 載っていない場合、そのと畜場が認定申請を行う意思があるか


認定施設リストと施設の認定手続きは、農林水産省の「証明書や施設認定の申請」に台湾向け牛肉として掲載されています。産地としてまとまって台湾に出したい場合、この認定の有無が最初の関門になります。

出典:農林水産省「台湾向け畜産物の輸出について必要な手続きなどを教えてほしい」。認定施設リストは更新されるため、最新版を確認してください。


2025年5月22日の月齢制限撤廃——何が変わったのか

台湾向け日本産牛肉には、これまで30か月齢未満の牛に由来することという条件が付いていました。台湾当局との協議が整い、令和7年5月22日付けでこの条件が撤廃されています。


黒毛和種の約4割という数字の意味

農林水産省は撤廃の公表にあたって、日本では高級銘柄を中心に30か月齢以上でと畜されるものが多く、黒毛和種の約4割が該当すると説明しています。

肥育期間を長く取るほど脂肪交雑が進み、価格帯も上がります。つまり月齢制限は、単に「一部の牛が出せない」という話ではなく、最も価格の取れる層が台湾市場から外れていたということでした。


黒毛和種のうち約4割が30か月齢以上でと畜され、2025年5月まで台湾向け輸出の対象外だったことを示す図。

図:黒毛和種における30か月齢以上の割合。出典:農林水産省「台湾向け牛肉の月齢制限撤廃について」(令和7年5月23日)。「約4割」は同資料の記述にもとづく概数です。


撤廃によって、これまで香港や米国に向けていた長期肥育の銘柄を台湾でも扱えるようになります。2025年の輸出額133億円は制限があった期間を含む数字なので、この変化はまだ数字に反映されていません。


ここまでの経緯

  • 2001年9月:日本でのBSE発生により輸出停止

  • 2017年9月:月齢制限付きで輸出解禁

  • 2023年6月:台湾においてリスク評価が終了

  • 2025年3月〜5月:台湾においてパブリックコメントを実施

  • 2025年5月22日:月齢条件の撤廃


リスク評価の終了から撤廃まで約2年かかっています。制度変更は公表された時点で完了しているように見えますが、実務では証明書等の改正手続きが後から進みます。撤廃の公表時点で、厚生労働省において輸出に必要となる証明書等の改正手続を進めるとされていました。現在の様式は必ず最新のものを確認してください。


台湾向け日本産牛肉の月齢制限撤廃までの経緯。2001年のBSE発生による輸出停止から2025年5月22日の撤廃まで。

図:月齢制限撤廃までの経緯。出典:農林水産省「台湾向け牛肉の月齢制限撤廃について」(令和7年5月23日)。撤廃の公表時点で証明書等の改正手続が進められるとされていました。


出典:農林水産省「台湾向け牛肉の月齢制限撤廃について」(令和7年5月23日)。


台湾向けの単価は欧州向けの半値強——理由は2つある

月齢制限の影響は、輸出額よりも単価に表れています。2025年1〜7月の日本産牛肉の輸出単価を仕向地別に見ると、差がはっきりします。

  • フランス向け 9,597円/kg

  • オランダ向け 9,582円/kg

  • 米国向け 6,869円/kg

  • 台湾向け 5,091円/kg

  • 香港向け 4,963円/kg


台湾向けは欧州向けのおよそ半値強です。ただしこれを月齢制限だけで説明することはできません。香港向けは4,963円/kgと台湾よりさらに低く、香港に月齢制限はなかったからです。


日本産牛肉の仕向地別輸出単価。フランス9,597円/kg、オランダ9,582円/kg、米国6,869円/kg、台湾5,091円/kg、香港4,963円/kg。

図:仕向地別の輸出単価(2025年1〜7月)。貿易統計の輸出額と輸出量から算出した数値です。香港には月齢制限がなかったにもかかわらず台湾より低く、単価差が月齢制限だけでは説明できないことを示しています。


単価差の要因は2つに分解できます。1つは月齢制限で、30か月齢未満という条件により長期肥育の高単価帯が制度上入れなかったこと。もう1つは部位構成で、台湾と香港は欧米と比べてロイン系以外の部位が多く流れています。後述しますが、台湾の冷蔵品輸出に占めるロイン系の割合は30%で、これは全体平均を大きく下回ります。

これは推測ではありません。農林水産省の資料では、輸出価格はフルセット輸出の多いアジアで5,500円程度、ロイン中心の欧米で10,000円程度と整理されています。つまり台湾の単価が低いことは、必ずしも安く買い叩かれていることを意味しません。単価の低い部位まで含めて売れている、という読み方のほうが実態に近いといえます。

この2つの分解が、台湾で取るべき戦い方を決めます。月齢制限が外れたことでロイン系の単価を引き上げられるようになり、もともと非ロイン系が動く市場である以上、その量も同時に取れる。片方だけを狙う市場ではありません。


政府目標との差

政府の輸出拡大実行戦略では、2025年の牛肉輸出目標を香港330億円、台湾239億円、米国185億円、EU104億円と設定していました。台湾の実績は133億円なので、目標に対して約56%にとどまっています。

目標との差を数量だけで埋めるのは現実的ではありません。後述するとおり台湾の牛肉輸入は15万トン規模で、日本産はその1%程度にすぎないからです。ロイン系の単価を上げつつ非ロイン系の量を伸ばす、という両輪が現実的な道筋になります。

出典:輸出単価は2025年1〜7月の貿易統計を輸出額と輸出量から算出した民間分析による数値です。アジア5,500円程度・欧米10,000円程度という価格帯は農林水産省資料の記述によります。輸出目標は農林水産省「輸出拡大実行戦略」。単価の分解に関する解釈には弊社の見解を含みます。


4つの官庁と3つの証明書

台湾向けの牛肉輸出は、日本側だけで複数の官庁が関わります。どれか1つが欠けても出荷できません。


日本側で必要なもの

  • 【厚生労働省】と畜場・食肉処理場の施設認定。認定を受けた施設で処理されている必要があります

  • 【食肉衛生検査所等】食肉衛生証明書の発行

  • 【農林水産省】「台湾向け輸出牛肉製品の取扱要綱」で定められた原料食肉証明書および衛生証明書

  • 【動物検疫所】輸出検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受ける


動物検疫所の輸出検査を受けるにあたっては、取扱要綱で定められた原料食肉証明書と衛生証明書が必要です。つまり書類には順序があり、後工程の証明書だけを先に取ることはできません。


台湾向け牛肉輸出に必要な日本側の手続きフロー。厚生労働省の施設認定から食肉衛生証明書、原料食肉証明書、輸出検疫証明書まで。

図:日本側で必要な手続きと証明書の順序。出典:農林水産省「台湾向け畜産物の輸出について必要な手続きなどを教えてほしい」。製品によっては輸出検疫証明書が不要な場合もあるため、動物検疫所への確認が必要です。


なお製品によっては輸出検疫証明書が不要な場合もあるため、動物検疫所への確認が必要です。


台湾側で必要なもの

指定食肉処理施設の製品を輸出する際は、日本側の動物検疫所が発行する動物検疫証明書を添付のうえ、貿易会社資料・指定施設資料・製品情報などを動植物防疫検疫局に提出する必要があります。

加えて、加工品については別の要件があります。2022年7月に台湾FDAが、畜産動物製品の輸入手続きに際して公的な証明書類の添付を必須とする規制を発表し、2023年7月1日以降施行されています。対象はHSコード1602の畜産動物製品で、証明書類に記載すべき事項も定められています。

生鮮・冷凍の食肉と、加工した製品とで要件が変わる点に注意してください。

出典:農林水産省「台湾向け畜産物の輸出について必要な手続きなどを教えてほしい」、ジェトロ「牛肉の輸入規制、輸入手続き(台湾)」「畜産加工品の輸入規制、輸入手続き(台湾)」。


台湾側の輸入者に必要な登録

台湾で食品を輸入するには、輸入者側にも登録が要ります。ここは牛肉に限らず食品全般に共通する仕組みです。

  • 経済部国際貿易局における輸入業者の登録

  • 衛生福利部食品薬物管理署(台湾FDA)における食品輸入業者の登録。会社登記、輸入品分類、再包装の有無などの書類提出が必要です


食品業者登録の詳細、輸入査験の5方式、中文表示10項目とアレルゲン表示については台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版で扱っています。本記事は牛肉に固有の論点に絞ります。


牛肉に適用される台湾側の基準

台湾にもコーデックス委員会にも、牛肉そのものの規格はありません。代わりに次の基準に準拠することが求められます。

  • 食品安全衛生管理法

  • 動物産品中の残留農薬許容量基準

  • 動物用薬残留基準

  • 食品中の汚染物質および毒素に関する衛生基準


規格がないということは、判断の拠り所が複数に分散しているということです。動物用医薬品の残留基準は日本と台湾で異なる場合があるため、使用実績のある薬剤について輸入者を通じて事前確認しておくのが安全です。


トレーサビリティ

食品安全衛生管理法第9条にもとづき、台湾では食トレーサビリティ制度が実施されています。食品業者は輸入・製造・加工などの業務を行った際、書面または電子形式で原料・半製品・最終製品の流れを追跡できる情報を管理する必要があります。

牛肉は個体識別番号による追跡が国内で確立している商材です。台湾側の制度に対応しやすい一方、ロット管理が曖昧なまま出荷すると、輸入者側で情報が途切れます。日本側の出荷単位と台湾側の販売単位をどう対応させるかは、初回の出荷前に詰めておく論点です。

出典:ジェトロ「牛肉の輸入規制、輸入手続き(台湾)」、食品安全衛生管理法第9条、食品および関連産品のトレーサビリティ管理法。


表示——包装品と量り売りで規則が違う

台湾での表示は、包装された状態で売るのか、包装せずに売るのかで適用される規則が変わります。牛肉は両方の売られ方をするため、どちらも押さえる必要があります。


包装して売る場合

包装食品の表示項目に従います。製品名、内容物の名称、重量・容量・数量、食品添加物の名称、製造者情報、原産地(国名および都道府県名)、有効期限、栄養表示、遺伝子組換えの有無、アレルゲン、その他所轄官庁が指定する事項が求められます。

原産地は国名だけでなく都道府県名まで求められる点に注意してください。銘柄牛の産地訴求と整合させやすい一方、記載の粒度を誤ると差し戻しの原因になります。

また台湾のアレルゲン表示では、牛肉自体が「特定原材料に準ずるもの」に含まれます。牛肉を原料とする加工品を出す場合は、この扱いを確認してください。


包装せずに売る場合

包装されていない食品は、散裝食品標示規定によります。法人登録をしている販売業者は商品名および原産地(国)を明記する必要があります。法人登録をしていない販売業者は原産地の明記が求められ、こちらは対象品目が限られています。

精肉コーナーの対面販売や、飲食店の店頭表示がここに該当します。日本側が用意した包装ラベルだけでは、売り場での表示要件を満たせない場合があります。輸入者と売り場の形態を確認しておいてください。

出典:ジェトロ「青果物の輸入規制、輸入手続き(台湾)」の散裝食品標示規定に関する記述、包装食品の表示項目に関する公開情報。表示の詳細は品目と販売形態により異なります。


税——関税と営業税

台湾に輸入される牛肉は営業税の対象です。営業税は付加価値税方式で、計算式は(CIF価格+輸入関税)×5%です。輸入者は売上税額と仕入税額を相殺し、その差額を納付します。

関税率は品目のCCC号列によって決まります。財政部関務署の輸入関税検索サイト(Tariff Database)で「稅則稅率綜合查詢作業」から検索できます。冷蔵と冷凍、部位、骨付きか否かで号列が分かれるため、実際に出す製品ごとに確認してください。

CCC号列の特定方法と関港貿単一窗口での検索手順については台湾への輸出にかかる関税・コスト・価格設定ガイドで詳しく扱っています。

出典:ジェトロ「牛肉の輸入規制、輸入手続き(台湾)」、財政部関務署Tariff Database。


2025年11月21日——書類が2つ減った

台湾はかつて、東日本大震災に関連する規制として2つの書類を求めていました。福島・茨城・栃木・群馬・千葉の5県産のすべての食品への放射性物質検査報告書と、日本産すべての食品への産地証明書です。

2025年11月21日以降、この2つの添付が不要になりました。産地による書類の差がなくなり、日本のどの地域の牛でも書類上の扱いが同じになったということです。

注意点として、解説記事や公的機関のページでも、この撤廃前の記述が残っているものがあります。産地証明書の取得を前提に段取りを組んでいた場合は、現在の要件を輸入者を通じて確認し直してください。

撤廃の詳細と、食品規制の本体はそのまま残っているという点については台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版で扱っています。

出典:ジェトロ「畜産加工品の輸入規制、輸入手続き(台湾)」、農林水産省「台湾が日本産食品の輸入規制措置の撤廃を公表(東日本大震災関連)」。



台湾の牛肉市場に、誰がどれだけ入っているのか

制限が外れたことより重要なのは、開いた市場に誰が既にいるのかです。台湾の牛肉輸入を国別に見ると、日本産の立ち位置がはっきりします。


冷凍と生鮮冷蔵は、まったく別の市場

台湾の2025年の輸入額を見ると、牛肉は冷凍と生鮮冷蔵で上位国の顔ぶれが入れ替わります。

  • 【牛肉(冷凍)】輸入額 9億4,392万米ドル。米国33.2%/パラグアイ31.1%/オーストラリア20.6%

  • 【牛肉(生鮮冷蔵)】輸入額 5億2,431万米ドル。米国68.8%/日本14.6%/オーストラリア14.5%


日本産は冷凍市場の上位3カ国に入っていません。一方、生鮮冷蔵では14.6%で2位につけています。つまり日本産牛肉の主戦場は、すでに生鮮冷蔵に定まっています。


台湾の牛肉輸入シェア。冷凍は米国33.2%・パラグアイ31.1%・オーストラリア20.6%、生鮮冷蔵は米国68.8%・日本14.6%・オーストラリア14.5%。

図:台湾の牛肉輸入シェア(2025年・金額ベース)。出典:日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2026年3月更新)。「その他」は上位3カ国以外の合計として算出しています。


冷凍市場はパラグアイと米国が量で押さえる領域で、単価で戦う土俵ではありません。

ここで台湾のもう一つの特徴が出てきます。日本産牛肉の輸出は、カンボジアや香港といったアジア向けでは冷凍の割合が高く、欧米向けで冷蔵の割合が高いというのが一般的な傾向です。ところが台湾は、2019年の冷蔵品の輸出数量で1位でした。

理由は輸送日数の短さです。冷蔵品の輸出先は台湾・香港・米国・シンガポールの順に数量が多く、日本から近い国・地域か、航空便で運ぶ欧州が中心になります。台湾はアジアの中で例外的に冷蔵が通る市場だということです。


数量で36分の1、単価で4倍

もう一段掘ると、日本産の性格がわかります。ジェトロの輸出品目別レポートによれば、2023年の台湾の牛肉輸入は金額12億7,111万ドル(前年比11.5%減)、数量15万3,899トン(同3.2%増)でした。

  • 米国 6億3,670万ドル/6万457トン

  • オーストラリア 2億1,197万ドル/2万7,661トン

  • パラグアイ 2億816万ドル/4万796トン

  • ニュージーランド 1億1,882万ドル/1万7,535トン

  • 日本 7,184万ドル/1,699トン(金額25.1%増・数量35.8%増)


2023年の数字で見ると、日本の1,699トンに対し米国は6万457トンで、数量は約36分の1です。一方で金額は約9分の1にとどまるため、1トンあたりの単価は米国の4倍前後になります。パラグアイと比べれば単価差はさらに開きます。なお前掲の円建て単価は2025年1〜7月の数値で、年次も通貨も異なるため直接の比較はできません。


2023年の台湾の牛肉輸入における国別の数量と金額。日本は1,699トン・7,184万ドルで、数量は米国の約36分の1、金額は約9分の1。

図:台湾の牛肉輸入における国別の数量と金額(2023年)。出典:ジェトロ「輸出品目別レポート(牛肉)」(2025年7月更新)。前掲の円建て単価は2025年1〜7月の数値で、年次も通貨も異なるため直接比較はできません。


この構造が意味するのは、日本産牛肉は台湾で「量では勝負になっていないが、単価では突出している」ということです。そして月齢制限の撤廃が効くのは、まさにこの単価の側です。


だから狙いは数量ではなく単価

2023年時点で台湾の牛肉輸入全体は15万3,899トン、日本産は1,699トンでその約1.1%です。ここでシェアを取りにいく戦い方は現実的ではありません。米国とパラグアイが押さえる量の市場に、日本産の生産構造では入れないからです。

一方、生鮮冷蔵で14.6%を持っているという事実は、日本産がすでに高単価帯で認められていることを示しています。月齢制限で外れていた長期肥育の銘柄が加われば、この帯をさらに上に伸ばせます。

冒頭で触れた単価の差も、この市場構造と部位構成の両方で説明がつきます。生鮮冷蔵で14.6%という位置は、日本産がすでに高単価帯で認められていることを示しています。

出典:国別シェアは日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2026年3月更新)の2025年輸入統計。輸入額・数量の内訳はジェトロ「輸出品目別レポート(牛肉)」(2025年7月更新)掲載の2023年統計。年次が異なるため単純比較はできません。単価の解釈には弊社の見解を含みます。


誰が食べているのか——外食が主戦場

台湾における2025年の飲食店の総売上高は合計10,675億台湾ドル(1台湾ドル=約4.9円で換算して約5.2兆円)で、過去最高額を記録しています。日本産牛肉の売り先を考えるとき、この規模の外食市場が起点になります。

和牛は家庭で日常的に消費される価格帯ではありません。台湾でも同様で、実際に動くのは焼肉店・鉄板焼・日本料理店・ホテルのレストランです。


チャネル別の考え方

  • 【焼肉・鉄板焼】部位単位でまとまった数量が動く。銘柄の説明ができる店ほど高単価帯を扱える

  • 【日本料理店・すし店】少量だが単価が高い。コースの一品として使われる

  • 【ホテル・高級レストラン】単価は最も高いが、採用までのリードタイムが長い

  • 【百貨店の精肉売り場】贈答需要と結びつく。中秋節など商戦期の影響を受ける

  • 【スーパー・量販】数量は出るが価格競争になりやすい。冷凍でのスライス品が中心

  • 【EC】ギフト需要。冷凍物流の品質が売り手の評価に直結する


月齢制限の撤廃で新たに出せるようになった長期肥育の高価格帯は、上の3つが受け皿になります。量販から入ると単価が固定されてしまうため、単価の引き上げを狙うなら順序が重要です。

なお台湾は贈答文化が強く、中秋節や春節に需要が集中します。商戦期の逆算は牛肉でも有効です。

出典:飲食店総売上高は日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2026年3月更新)。チャネル別の記述には弊社の実務上の所感を含みます。



台湾は「ロイン系以外が売れる」数少ない市場

和牛輸出には、業界全体が抱える構造的な課題があります。需要がロイン系——リブロース・サーロイン・ヒレ——に偏ることです。牛は1頭を解体すればすべての部位が同時に出てくるのに、売れるのは一部だけという状態が続いています。

この課題に対して、台湾はほかのどの市場よりも有利な条件を持っています。


ロイン系比率30%という数字

2019年の冷蔵品の輸出数量において、1位の台湾ではロイン系部位の割合が30%、2位の香港では43%でした。

これがどれだけ低いかは、全体との比較でわかります。貿易統計で牛肉の輸出が4部位に区分された2017年以降、ロイン系部位が輸出に占める割合は、冷蔵品で数量ベース50%強・金額ベース65%前後、冷凍品では数量ベース70%前後・金額ベース80%程度で推移しています。


牛肉輸出におけるロイン系部位の比率比較。台湾は冷蔵品で30%と全体平均の50%強を大きく下回る。

図:ロイン系部位の比率比較。台湾・香港は2019年の冷蔵品輸出数量、全体平均は2017年以降の推移です。年次と区分が異なるため参考値として比較しています。出典:日本食肉流通センター関連資料。


台湾の30%は、この平均を大きく下回ります。つまり台湾では、カタ・モモ・バラといったロイン系以外の部位が、他の市場よりもよく売れているということです。


理由は薄切りと鍋の文化

台湾を中心としたアジアでは薄切り肉の文化が定着しており、鍋料理などでさまざまな部位が消費されます。しゃぶしゃぶ、火鍋、焼肉のいずれも、部位を選ばず薄切りで使える形態です。

一方、米国を中心とした欧米はステーキ文化で、厚く切って焼く調理法が主流のため、需要がロイン系に集中します。同じ和牛でも、調理法の違いが部位需要の構造を決めています。

なお仕向地ごとの傾向は明確に分かれており、米国向けはロイン系のほかブリスケット(カタ)やウデが多く、香港向けはロイン系に次いでモモ系の数量が多いとされています。


1頭を売り切る出口として

輸出先のユーザーからは部位ごとの販売が求められ、セット販売を実施しているのは商系の業者のごく一部にとどまります。産地から見れば、ロイン系だけが売れて残りが国内在庫として滞留する構造です。

台湾でロイン系以外が動くという事実は、この構造に対する現実的な出口を意味します。ロイン系は欧米や香港へ、それ以外を台湾へという設計が成り立つからです。


和牛1頭の部位を仕向地別に振り分ける設計図。ロイン系は欧米・香港へ、非ロイン系は薄切り文化の台湾へ。

図:1頭を売り切るための仕向地の振り分け。本図の設計に関する記述には弊社の実務上の所感を含みます。セカンダリーカットの輸出には小割・すじ引きといった日本式の食肉処理技術が必要です。


さらに、ここに月齢制限の撤廃が重なります。長期肥育の高価格帯が解禁されたことで、台湾ではロイン系の単価を引き上げつつ、それ以外の部位も同時に流せる状態になりました。1頭あたりの回収額という観点では、これまでで最も条件が良くなっています。

ただし課題もあります。モモやカタといったセカンダリーカットを輸出するには、小割やすじ引きといった日本式の食肉処理技術が必要になります。どこまで日本側で加工し、どこから台湾側に任せるかは、価格と歩留まりの両方に影響する論点です。

出典:ロイン系比率は公益財団法人日本食肉流通センター「和牛の輸出動向等について」掲載の2019年および2017年以降の貿易統計分析。仕向地別の部位傾向・冷蔵冷凍の傾向・輸出価格帯は農林水産省および独立行政法人農畜産業振興機構の資料。台湾の消費形態に関する記述には弊社の実務上の所感を含みます。年次の異なるデータを含むため、単純比較はできません。


和牛と国産牛は違う——表示と説明の問題

日本国内では当然の区別ですが、海外では混同されます。和牛は品種にもとづく区分で、国産牛は日本で飼育された牛という意味です。台湾のバイヤーや消費者に対して、この違いを説明できるかどうかで価格の説得力が変わります。

銘柄名についても同様です。産地名を冠した銘柄は日本国内に多数あり、台湾側から見ると区別がつきません。何を根拠にその価格なのかを、格付・産地・肥育期間といった具体的な情報で示せる状態にしておいてください。

包装品の表示では原産地として国名に加えて都道府県名が求められるため、産地情報は表示上も必要になります。銘柄訴求と表示要件を切り離さず、同じ情報として設計するのが効率的です。

※ 本セクションには弊社の実務上の所感を含みます。


冷凍・冷蔵とリードタイム

牛肉は温度管理が品質と法令遵守の両面に効く商材です。台湾は日本から近く、航空便であれば冷蔵での輸送も現実的な選択肢になります。

  • 【冷蔵(チルド)】品質面で有利だが、賞味期間の制約が厳しい。航空便が前提になりやすい

  • 【冷凍】輸送コストを抑えられ、在庫調整もしやすい。スライス品や量販向けが中心

  • 【部位ごとの分割】どこまで日本側でカットするかで、輸入者側の作業と価格が変わる


どちらを選ぶかは狙うチャネルによって決まりますが、台湾の場合は前提が一つあります。前述のとおり日本産は生鮮冷蔵で14.6%を占める一方、冷凍では上位3カ国に入っていません。台湾は輸送日数が短く冷蔵が通る市場であり、日本産の強みが出るのも冷蔵側です。冷凍は米国とパラグアイが量で押さえているため、そこで価格勝負に持ち込むと不利になります。

また輸出検疫証明書や衛生証明書の有効性は、出荷のタイミングと結びついています。書類の準備と輸送手段の選択は同時に設計してください。


実務フロー——どこから着手するか

初回だけ発生するものと、毎回発生するものに分けて整理します。

  • 【初回のみ】取引先のと畜場・食肉処理場が台湾向け認定を受けているかの確認。受けていない場合は認定申請の可否を確認

  • 【初回のみ】台湾側の輸入者の選定。輸入業者登録と食品輸入業者登録の有無を確認

  • 【初回のみ】中文表示の設計。包装品と量り売りの両方を想定

  • 【初回のみ】狙うチャネルの決定と、それに応じた冷蔵・冷凍の選択

  • 【毎回】食肉衛生証明書の取得

  • 【毎回】原料食肉証明書および衛生証明書の準備

  • 【毎回】動物検疫所での輸出検査と輸出検疫証明書の交付

  • 【毎回】台湾側での動植物防疫検疫局への書類提出、通関、関税・営業税の納付


最初の関門は認定施設です。ここが通らなければ他の準備がすべて無駄になるため、商談より前に確認してください。産地としてまとまって台湾に出したい場合も同じで、と畜場の認定状況が計画の前提になります。


台湾向け牛肉輸出の実務フロー。初回のみ発生する認定確認や表示設計と、毎回発生する証明書取得・通関を分けて示す。

図:初回のみ発生する作業と毎回発生する作業の切り分け。認定が通らなければ他の準備が無駄になるため、商談より前に確認してください。



よくある質問(FAQ)


Q. 月齢制限が撤廃されたので、すぐに輸出できますか?

条件が1つ外れただけで、他の要件は変わりません。認定と畜場での処理、食肉衛生証明書、原料食肉証明書と衛生証明書、輸出検疫証明書はいずれも必要です。また撤廃の公表時点で証明書等の改正手続きが進められるとされていたため、様式は最新のものを確認してください。


Q. 自社の牛が認定施設で処理されているか、どう確認しますか?

農林水産省の「証明書や施設認定の申請」に台湾向け牛肉の認定施設リストが掲載されています。リストは更新されるため、最新版を確認してください。取引先のと畜場が載っていない場合、そのと畜場に認定申請の意思があるかを確認するところから始まります。


Q. 豚肉や鶏肉もあわせて出せますか?

出せません。豚肉は日本国内の豚熱発生を受けて台湾行政院が輸入停止を公表しており、動物検疫所も豚およびイノシシ由来の一部製品について輸出検疫証明書の交付を停止しています。家きん肉の日本からの輸出も認められていません。畜産物をまとめて売り込む計画は成り立ちません。


Q. 台湾向けの単価が低いのはなぜですか?

2025年1〜7月の輸出単価は台湾向け5,091円/kgで、フランス向け9,597円/kg、オランダ向け9,582円/kgと比べて半値強です。ただし月齢制限だけが理由ではありません。香港向けは4,963円/kgとさらに低く、香港に月齢制限はなかったからです。もう1つの要因は部位構成で、台湾は冷蔵品輸出に占めるロイン系の割合が30%と低く、単価の低い部位まで含めて売れています。安く買い叩かれているというより、幅広い部位が動いている市場だと理解してください。


Q. 産地証明書は必要ですか?

2025年11月21日以降、日本産すべての食品への産地証明書と、5県産食品への放射性物質検査報告書の添付は不要になりました。ただし解説記事や一部のページには撤廃前の記述が残っています。現在の要件は輸入者を通じて確認してください。


Q. 和牛と国産牛の表示はどうなりますか?

台湾の包装食品表示では、原産地として国名に加えて都道府県名が求められます。和牛と国産牛の区別は日本国内の概念なので、台湾側に価格の根拠を説明するには格付・産地・肥育期間といった具体的な情報が必要になります。


Q. 台湾のアレルゲン表示で牛肉はどう扱われますか?

台湾のアレルゲン表示において、牛肉は「特定原材料に準ずるもの」に含まれます。牛肉を原料とする加工品を出す場合は、この扱いを確認してください。


Q. 精肉売り場での量り売りにも表示は要りますか?

包装されていない食品は散裝食品標示規定によります。法人登録をしている販売業者は商品名および原産地(国)を明記する必要があります。日本側が用意した包装ラベルだけでは売り場の要件を満たせない場合があるため、輸入者と販売形態を確認してください。


Q. 動物用医薬品の残留基準は日本と同じですか?

台湾にもコーデックス委員会にも牛肉の規格はなく、動物産品中の残留農薬許容量基準および動物用薬残留基準に準拠します。基準は日本と異なる場合があるため、使用実績のある薬剤について事前に確認してください。


用語集

  • 【認定施設】厚生労働省が台湾向け輸出用として認定したと畜場・食肉処理場。ここで処理された牛肉のみ輸出できます

  • 【食肉衛生証明書】食肉衛生検査所等が発行する証明書

  • 【原料食肉証明書】「台湾向け輸出牛肉製品の取扱要綱」で定められた証明書。動物検疫所の輸出検査に必要です

  • 【輸出検疫証明書】動物検疫所が輸出検査を経て交付する証明書

  • 【動植物防疫検疫局】台湾側で輸入時の書類提出先となる機関

  • 【散裝食品標示規定】包装されていない食品の表示に関する台湾の規定

  • 【CCC号列】台湾の輸入品目分類コード。11桁で関税率が決まります



公式情報リンク集

農林水産省 台湾向け牛肉の月齢制限撤廃について:maff.go.jp プレスリリース

農林水産省 台湾向け畜産物の輸出手続き:輸出FAQ 畜産物

動物検疫所 偶蹄類の畜産物の輸出:家畜衛生条件

ジェトロ 牛肉の輸入規制・輸入手続き(台湾):jetro.go.jp 牛肉

ジェトロ 畜産加工品の輸入規制・輸入手続き(台湾):jetro.go.jp 畜産加工品


まとめ

台湾向けの牛肉輸出は、2025年5月22日の月齢制限撤廃で局面が変わりました。日本では高級銘柄を中心に30か月齢以上でと畜されるものが多く、黒毛和種の約4割が該当します。これまで台湾に出せなかった層が解禁されたということです。

2025年の輸出額133億円は、制限があった期間を含む数字です。政府目標の239億円に対して約56%にとどまります。輸出単価5,091円/kgは欧州向けの半値強ですが、これは月齢制限と部位構成の両方によるもので、買い叩かれているわけではありません。

台湾の特異な点は、冷蔵品のロイン系比率が30%と低く、カタ・モモ・バラが動くことです。ロイン系への需要偏重は和牛輸出全体の課題であり、台湾はその出口になりえます。月齢制限の撤廃でロイン系の単価を引き上げつつ、非ロイン系の量も取る。1頭あたりの回収額という観点で、これまでで最も条件が良くなっています。

ただし牛肉は、ラベルと書類を整えれば出せる商材ではありません。認定と畜場で処理されていなければ、どれほど良い牛でも輸出できません。最初に確認すべきはここです。


関連記事・ご相談について

同じく所管が異なる商材:アルコール飲料の台湾輸出ガイド2026

台湾への牛肉・和牛輸出についてのご相談:お問い合わせ

本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。法令・制度・証明書の様式は変更される場合があります。実際の輸出にあたっては、農林水産省・動物検疫所・所轄の食肉衛生検査所および台湾側の輸入業者にご確認ください。

コメント


浜松町ダイヤビル 2F

株式会社Link Global​

〒105-0013

東京都港区浜松町2丁目2番15号

© 2024-2026 株式会社Link Global

  • LinkedIn
bottom of page