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化粧品の台湾輸出ガイド2026|市場・チャネル・産品登録・PIF・広告規制まで実務解説

  • 堤浩記
  • 7月29日
  • 読了時間: 35分

「日本で人気のスキンケアを、そのまま台湾でも売りたい」

「化粧品の輸出は、どこに何を申請すればいいのか分からない」

「台湾は許可が必要と聞いたのに、調べると『許可制は廃止された』とも書いてある」


台湾は、日本の化粧品にとって地理的にも文化的にも合理的な最初の輸出先です。日本製への信頼は厚く、訪日旅行で実際に使った経験を持つ消費者が大量にいます。


ただし制度は、2024年から2026年にかけて根本から作り替えられました。ネット上に残る日本語の解説記事の多くは、この改正前の姿で止まっています。「含藥化粧品の許可証を取りましょう」と書かれた記事を読んで準備を始めると、すでに存在しない手続きに時間を使うことになります。


そして2026年7月1日、その改正の最終段階が施行されました。いま台湾で販売・陳列・試用提供されている化粧品は、原則としてすべて産品登録とPIF(製品情報ファイル)を完了していなければなりません。


本記事では、自社ブランドを持つ化粧品メーカーがはじめて台湾へ輸出することを想定し、市場・消費者・チャネルから、登録・PIF・GMP・成分・表示・広告・関税・スケジュールまでを、海外展開支援の実務者目線で通しで整理します。


台湾市場全体の地図は台湾市場進出 完全ガイドマップ2026に、同じく規制の重い商材であるサプリメントの手続きはサプリメント・健康食品の台湾輸出ガイドにまとめています。本記事はその中で、化粧品に固有の論点だけを深掘りするものです。


結論:台湾の化粧品は「許可を取る」市場から「書類を持ち続ける」市場になった


はじめに全体像を示します。台湾に化粧品を出すとき、勝負を分けるのは次の2点です。


  • 制度の型が変わった:2024年7月1日に、特定用途化粧品(旧・含藥化粧品)の許可証制度が廃止された。いまは製品ごとの事前審査がなく、産品登録・PIF・製造所のGMPを事業者が自分で整え、当局が事後に査察する自主管理型に移行している

  • 日本側にしか作れない書類がある:PIFの中核をなす資料は、台湾の代理店では用意できない。全成分のINCI名と配合率、製造方法、製造所のGMPまたはISO 22716の証明、安定性・微生物・防腐効能の試験報告——いずれも日本の製造元しか出せない


この2つを合わせると、実務上の最初の関門は法規ではなく社内調整だという結論になります。すなわち「自社の処方を、どこまで台湾側に開示できるか」。OEMで生産している企業なら、OEM先との合意形成がそのまま台湾展開のスタート地点です。


代理店探しから始めて、商談がまとまってから処方開示の話を持ち出すと、そこで数か月止まります。順序が逆です。処方情報を出せる体制を先に作り、そのうえでパートナーを探すのが正しい進め方です。


台湾の化粧品市場——日本にとって上位5位圏の輸出先


日本の化粧品輸出における台湾の位置


財務省貿易統計をもとにした集計では、日本の化粧品輸出額は2021年の約7,972億円をピークに調整が続き、2024年は約5,264億円。2025年は約5,797億円へ持ち直しています(速報値)。国別では中国向けが約2,417億円で全体の約45.9%を占め、以下、香港・シンガポール・台湾・米国と続きます。


つまり台湾は、単体の規模では中国・香港に及ばないものの、日本の化粧品輸出において上位5位圏に入る主要な輸出先です。中国向けの調整が続くなかで、リスク分散先としての相対的な重要度はむしろ上がっています。


「日本製が強い市場」ではあるが、無風ではない


見落とされがちなのは、韓国コスメの存在です。日本国内ですら、化粧品の輸入相手国は2022年以降、韓国が1位を維持しています。同じ現象が台湾でも起きており、台湾の美容メディアやSNSでは韓国ブランドが話題の中心を取っている場面が少なくありません。


日本ブランドは「品質は信頼されているが、話題の中心ではない」というポジションに移りつつあります。信頼だけで棚が取れる時代ではなく、なぜいまこの製品なのかという理由を台湾語圏の文脈で説明できるかが問われます。台湾市場における日本製品の受容構造は台湾市場の消費トレンドと日本ブランドの受容性で整理しています。


市場規模の数字は、そのまま事業計画に使わない


台湾の化粧品市場規模については、民間調査会社の推計が複数流通しており、集計範囲(スキンケアのみか、ヘアケア・ボディを含むか、医美クリニック向けを含むか)によって数字が大きく振れます。一次統計と民間推計が混在している状態です。


事業計画に落とすときは、市場全体の数字よりも、自社カテゴリの実売データ——具体的には狙うチャネルの棚数、競合の実売価格、EC上のレビュー数——で裏を取ってください。


誰が買っているのか——「日本ですでに買ったことがある」消費者


台湾の消費者は、日本の店頭価格を知っている


化粧品の台湾展開で、食品やサプリと決定的に違うのがここです。


@cosme台湾の会員を対象とした2025年の調査では、回答者の約5割が同年に海外で美容製品を購入しており、そのうち67.5%が「国内での購買頻度に影響した」と答えています。理由として挙がっているのは、海外での購入で補充需要が満たされたこと、そして内外価格差が大きすぎて国内で買う気にならないことです。


背景には訪日旅行があります。年間676万人規模の台湾人が日本を訪れ、日本のドラッグストアと百貨店の価格を実際に見ています(訪日台湾人客をデータで読む2026)。


この構造が意味するのは、価格設定の自由度が低いということです。日本の定価に為替・関税・輸送費・代理店マージンを機械的に積み上げると、「日本で買ったほうが安い」という結論に一発でたどり着かれます。そして台湾の消費者は、その比較を実際に行います。


年代でチャネルの好みが分かれる


同じ調査では、海外で美容製品を買う際、21〜30歳は現地の美容専門店を、30〜50歳は現地のドラッグストアを選ぶ傾向が示されています。若年層ほど「発見」を求め、上の世代ほど「補充」で動くと読めます。


台湾国内でも同じ傾向が現れます。新規の日本ブランドが最初に接触すべきなのは、話題性で動く若年層か、信頼で動く30代以上か。ここを決めないままドラッグストアとECに同時に出すと、訴求がぼやけます。


情報の入り口は口コミ


台湾の美容情報は、DcardやInstagram、@cosme台湾といったプラットフォーム上の口コミ、そしてKOL・KOCの発信を中心に流通しています。広告出稿より、実際に使った人の言葉のほうが強く効く構造です。


日本メーカーにとっての含意は明確です。初期に必要なのは大規模な広告予算ではなく、サンプリングとレビューが積み上がる設計です。ただし後述するとおり、KOLの投稿内容も広告規制の対象になり得ます。自由に語らせる設計と、法規上のレビュー体制を両立させる必要があります。


どのチャネルで売れているのか

台湾の化粧品販売チャネル構造とEC勢力図


台湾の化粧品流通は日本以上にチャネルの性格が分かれています。どこを最初の入口にするかで、必要な準備も価格設計も変わります。


開架ドラッグストア(屈臣氏・康是美・寶雅)


最大のボリュームゾーンです。@cosme台湾会員の調査では、購買チャネルの上位3位までの合計で開架ドラッグストアが73%と首位。屈臣氏(Watsons)が36%で先行し、康是美(Cosmed)、寶雅(POYA)を合わせた3社で選択率の8割超を占めます。


新規の日本ブランドにとって現実的な「棚」はここです。ただし棚を取ること自体がゴールではありません。棚代・販促協賛・定番カット条件など、日本の量販店以上にシビアな条件交渉が待っています。


百貨店専櫃(カウンター)


高価格帯の主戦場です。新光三越・遠東SOGO・微風などの周年慶(アニバーサリーセール)が年間最大の商戦になります。台湾は贈答文化が強く、化粧品はギフト需要も大きいカテゴリです。年間の商戦設計は台湾の年間商戦カレンダーと贈答文化で整理しています。


ただし専櫃はカウンター什器・美容部員(BA)の人件費・研修まで含めた投資が必要で、はじめての輸出でいきなり狙う場所ではありません。


EC(momo購物網・蝦皮)


最も早くテストできるチャネルです。台湾のECはmomo購物網と蝦皮(Shopee)が中心で、PChomeなど従来型プラットフォームのシェアは低下傾向にあります。さらに近年は韓国系の酷澎(Coupang)が大型投資でシェアを急拡大しており、勢力図が動いている最中です。プラットフォームの順位やシェアは調査機関によって定義も数字も大きく異なるため、出店先はシェアではなく、自社カテゴリでの実売実績と手数料・広告条件で判断してください。


新規ブランドにとってECの価値は、売上そのものより「反応の検証」にあります。どの訴求で止まるか、どの価格帯で買われるか、どのSKUにレビューが集まるか。これらのデータを持って代理店やバイヤーと話すと、交渉の質が変わります。


一方でECは規制上のリスクも最も高いチャネルです。商品ページの文言は広告とみなされ、後述する化粧品衛生安全管理法第10条の対象になります。


日系ドラッグストア・セレクトショップ


日本商品を集積した業態は、日本ブランドにとって入りやすい入口です。「日本で売れている」という文脈がそのまま通用するため、翻訳コストも説明コストも小さくて済みます。


ただしここは同時に、内外価格差が最も可視化される場所でもあります。日本の店頭価格を知っている客層が来るため、価格の説明責任が発生します。


美容室・エステ・医美クリニック


台湾は医療美容(医美)が生活に入り込んでいる市場で、クリニックや美容室を通じた推奨販売が一定の規模を持ちます。単価が高く、施術と組み合わせた説明が効くため、成分の根拠資料が整っているブランドには相性が良いチャネルです。


逆に言えば、中文のエビデンス資料が用意できないブランドは入れません。医療従事者が説明に使える資料をどこまで作れるかが参入条件になります。


チャネルを決める前に、決めなければならないこと


どのチャネルを選ぶにせよ、その前に必ず決まっていなければならないのが「誰が台湾側の輸入業者になるか」です。


後述するとおり、産品登録は台湾の製造業者または輸入業者しか行えず、海外企業には登録アカウントが開放されていません。つまり台湾のパートナーが決まらないかぎり、手続きは一歩も進みません。


パートナー選定の実務は台湾のバイヤー・代理店・ディストリビューターと組む実務ガイド、契約や与信を含めた一般論は海外代理店の探し方と選び方で解説しています。食品分野での同種の構造は台湾への食品輸出完全ガイド、越境ECでの小規模テストについてはPinkoiで日本の商品を売る完全ガイドも参考になります。


制度の全体像——2024年に「許可制」が終わった

台湾の化粧品規制の制度転換タイムライン2019-2027


台湾の化粧品規制について調べると情報が食い違うのは、2024年7月1日を境に制度が切り替わったためです。まずここを整理します。


旧制度(2024年6月30日まで)


化粧品は2つに分かれていました。防曬(日焼け止め)・染髮・燙髮(パーマ)・止汗制臭・歯のホワイトニングといった用途を持つものは「特定用途化粧品」(さらに前は「含藥化粧品」)とされ、製品ごとに査験登記を行い、許可証の交付を受けてはじめて製造・輸入ができました。それ以外の一般化粧品は、2021年7月1日から産品登録の対象になっていました。


新制度(2024年7月1日以降)

台湾の化粧品規制 旧制度と新制度の比較


特定用途化粧品という区分と、それに紐づく許可証制度が廃止されました。2024年6月30日時点で有効だった特定用途化粧品の許可証は、翌7月1日に失効しています。日焼け止めも染毛剤も、いまは一般化粧品として同じ枠組みで管理されます。


代わりに事業者に課されたのが、次の3点セットです。


  • 産品登録:台湾の製造業者または輸入業者が、当局のプラットフォームで製品情報を登録する

  • PIF(産品資訊檔案):製品の品質・安全性・機能を裏づける技術文書一式を作成し、保管する

  • GMP:製造場所が化粧品優良製造準則(ISO 22716準拠)に適合していること

台湾の化粧品に必要な産品登録・PIF・GMPの関係図


事前審査がなくなった代わりに、事業者が自主管理し、当局が事後に査察する構造へ移行したということです。


「楽になった」わけではない


許可証がなくなったと聞くと参入障壁が下がったように見えますが、実務上はむしろ逆です。


旧制度では、許可証が下りれば「審査を通った製品」という状態が残りました。新制度では、審査してくれる人がいません。適法性の判断責任がすべて事業者側にあり、しかも査察はいつ来るか分からない。書類が不備なら、その時点で違反です。


日本の輸出企業にとっては、「一度通せば終わり」から「作り続け、更新し続ける」への転換だと理解してください。


情報の鮮度を見分ける方法


日本語の解説記事や支援会社のページを読むとき、次の記述があれば情報が古いと判断できます。


  • 「含藥化粧品」「特定用途化粧品」の許可証を取得する必要がある、と書いてある

  • 査験登記に合格すると輸入許可証が発行される、という説明がある

  • PIFへの言及がない、または「2024年から段階的に始まる予定」で止まっている


支援会社を選ぶ際も、この3点は有効なスクリーニングになります(台湾進出支援会社の選び方・比較ポイント)。


【関門1】産品登録——申請できるのは台湾側の事業者だけ


誰が登録責任者になるのか


化粧品產品登錄辦法では、登録義務を負う「一定規模の化粧品製造または輸入業者」を、公司法・商業登記法にもとづき設立登記した公司または商號、工場登記を完了した工場、その他の製造・輸入を行う法人・団体と定めています。


実務上いちばん重要なのは、当局のQ&Aで「登録プラットフォームは製造業者または輸入業者が登録するもので、海外の会社にはアカウントを開放していない」と明示されている点です。


つまり日本のメーカーが自分で登録することはできません。台湾側の輸入者・代理店が決まってはじめて、手続きが動き出します。逆に言えば、パートナー選定の段階で「この会社は化粧品の産品登録とPIFの実務経験があるか」「直近で何件通しているか」を確認する必要があります。経験のない商社と組むと、書類の往復だけで数か月を失います。


登録する10項目


登録内容として定められているのは次のとおりです。


  • 産品登録番号

  • 製品の中文名称・英文名称(国産品は英文名称を省略可)

  • 製品の種類および用途

  • 製品のタイプ。シリーズ製品の場合は型番または色番

  • 製品の剤型

  • 製品の使用上の注意

  • 製造または輸入業者の名称・住所・電話番号

  • 製造場所の名称・住所・国別、および化粧品優良製造規範への適合状況

  • 製品の全成分名称。当局が使用限量を定めている成分は、重量または容量のパーセントで含有量を記載する

  • その他の製品関連説明

台湾の化粧品産品登録で申告する10項目


日本のメーカーが注目すべきは最後の2つです。


8番目の項目で、日本の製造工場の名称・住所・国名と、その工場のGMP適合状況を申告することになります。工場情報を出したくないという理由で止まる企業がありますが、出さなければ登録できません。


9番目の項目で、使用限量が設定されている成分については配合率の記載が求められます。PIFを待つまでもなく、この時点ですでに処方情報の一部を開示することになるということです。


有効期間は3年


産品登録の有効期間は3年です。期間満了後も供給・販売・贈与・陳列・試用提供を続ける必要がある場合は、有効期間満了前3か月以内に展延(更新)の手続きをしなければなりません。うっかり切らすと、その製品は台湾で販売できない状態になります。


また、登録事項に変更が生じた場合は変更登録または再登録が必要です。処方を少し変えた、容量を追加した、輸入者を変えた——こうした変更のたびに手続きが発生します。SKUを増やすほど管理コストが増えるということを、価格設計の段階で織り込んでください。


【関門2】PIF——2026年7月1日に全面適用された


3段階の施行スケジュール

台湾のPIF(産品資訊檔案)3段階施行スケジュール


PIFは化粧品衛生安全管理法第4条にもとづき、化粧品の種類ごとに3段階で施行されました。


  • 第1段階(2024年7月1日):当局が公告した成分を配合した化粧品、または防曬・染髮・燙髮・止汗制臭・過酸化物を含む家庭用歯のホワイトニング用途の化粧品

  • 第2段階(2025年7月1日):嬰児用・唇用・眼部用の化粧品、および非薬用の歯磨き・マウスウォッシュ

  • 第3段階(2026年7月1日):上記以外のすべての一般化粧品(工場登記が免除される固形手作り石鹸業者を除く)


つまり2026年7月1日以降、台湾で供給・販売・贈与・公開陳列・試用提供されるほぼすべての化粧品にPIFが必要です。試供品やノベルティも、市場に流通する以上は対象になります。


いま台湾展開を検討している日本企業にとって、これは「これから始まる規制」ではなく「すでに始まっている規制」です。台湾のバイヤーは、PIFが用意できないブランドを検討対象から外します。


PIFは「提出」ではなく「保管」


よくある誤解が、PIFを当局に送って審査を受けるものだと考えることです。違います。


PIFは、化粧品衛生安全管理法第7条第1項第7号で表示した住所(製造または輸入業者の住所)に、書面または電子データの形で保管し、当局の査核に応じて提示する文書です。査核は原則として7日前に通知されますが、緊急の場合や公益上の必要があるときは予告なく行われます。審査に通るかどうかではなく、求められたときに出せるかどうかが問われます。なお、原本が中文・英文以外で作成されている場合は、中文または英文の訳本を備える必要があります。日本語の試験報告書や規格書は、そのままでは要件を満たしません。


保存期間は、その製品の最終上市日から起算して5年以上。処方や製造工程に変更があれば、PIFも同時に更新しなければなりません。


産品登録やPIFを行っていない場合、または登録・作成した内容が事実と異なる場合は、化粧品衛生安全管理法第23条により1万台湾ドル以上100万台湾ドル以下の罰鍰が科され、回数ごとに繰り返し処罰されます。情節が重大な場合は1か月以上1年以下の停業処分、廃業命令、会社・商業・工場登記の全部または一部の廃止、当該化粧品の登録の取消または廃止に至ります。登録を取り消された製品は、1年間その製品の登録を申請できません。実務上は、査察で不備が見つかった時点で棚からの撤去(下架)や回収を求められます。


台湾の化粧品規制における罰則(登録・PIF系と広告系)

日本のメーカーが用意する書類


PIFの構成項目は、化粧品產品資訊檔案管理辦法第3条で16項目が定められています。資料は中文または英文で作成する必要があり、日本語のままでは要件を満たしません。16項目のうち、日本の製造元でなければ用意できないものを整理します。


  • 産品登録が完了したことを示す公式書類

  • 全成分のINCI名、実際の配合比率、および各成分の機能・用途

  • 製造方法の概要(生産フローの図または文章)

  • 製造場所が化粧品優良製造準則に適合することを示す証明書類または声明書(GMPまたはISO 22716)

  • 安定性試験・微生物試験・防腐効能試験の報告書

  • 製品および原料の物理化学特性を示す資料(SDS・COA・TDSなど)

  • 中文ラベル・仿単・外装・容器の写真またはデザイン

  • 使用部位・使用量・滞留時間・使用頻度・対象者の詳細

  • 不良反応の記録がある場合はその記録と裏づけ資料

  • 安全性評価の結論と提言

  • 各成分の毒理データ(急性毒性、皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性、変異原性などの試験データ)

  • 機能評価の裏づけ資料。効能を訴求するなら、その根拠をPIFに入れておく必要があります

  • 製品と接触する包装材質の資料

台湾PIF16項目と日本メーカー・台湾輸入者・SAの分担


実務でつまずきやすいのは、物理化学特性と毒理データ、包装材質の資料、そして最後の安全性評価です。前の3つは自社ではなく原料メーカーや容器メーカーからの取り寄せになるため、依頼から入手まで想定以上に時間がかかります。安全性評価は次に述べる有資格者の署名を要します。


安全性評価には有資格者(SA)の署名が必要


PIFの安全性評価結論は、「安全資料簽署人員」(Safety Assessor、SA)が署名しなければ法的効力を持ちません。


資格要件は、国内外の大学の医学系・薬学系、または化粧品学・毒理学およびその関連学科を卒業していること(2019年6月30日以前に化学系・化工系を卒業し、化粧品の安全性評価に5年以上の実務経験がある場合も認められます)に加えて、大学または当局が開設する化粧品安全性評価訓練課程を修了していることです。訓練課程の時数は、化粧品管理法規が4時間以上、成分の応用とリスクが8時間以上、安全性評価の手法が36時間以上、製品安全性評価結論の作成が6時間以上と定められており、合計で最低54時間になります。資格取得後も、毎年8時間以上の継続訓練が必要です。


SAは自社の従業員である必要はなく、外部の専門家に委託することも可能です。日本のメーカーが台湾で自前のSAを抱えるのは現実的でないため、台湾側のパートナーまたは専門コンサルタントを通じて確保するのが通常の進め方になります。


台湾の化粧品SA(安全資料簽署人員)の資格要件と訓練時数

実務上の最大のボトルネックは配合率の開示


ここが、はじめて台湾に化粧品を出す企業がいちばん止まる場所です。


PIFには全成分の実際の配合比率を記載します。産品登録でも、使用限量のある成分については含有量を申告します。処方は化粧品メーカーにとって最重要の企業秘密ですから、社内で「そこまで出すのか」という議論が必ず起きます。


さらにOEM・ODMで生産している場合、処方を持っているのは自社ではなくOEM先です。OEM先が全量配合の開示を拒めば、そこでプロジェクトは止まります。


対策は、順序を変えることに尽きます。台湾のバイヤーと会う前に、


  • OEM先と、台湾向けPIF作成を目的とした処方開示の可否を協議する

  • 開示範囲と守秘義務の設計(誰が見られるか、どこに保管されるか、SAへの提供をどう扱うか)を契約に落とす

  • 開示できない場合の代替案(OEM先が直接PIFの該当パートを作成し、自社を経由せず台湾側に渡す等)を検討する


この3つを先に片づけておくと、その後の進行速度がまったく変わります。海外展開全体の進め方は海外展開は何から始めるべきかで整理しています。


【関門3】GMP——日本の工場に求められること


台湾のGMP施行スケジュール


台湾は国際標準のISO 22716を参照して化粧品優良製造準則(GMP)を制定し、PIFと同じ日程で3段階の実施期程を組みました。第1段階が2024年7月1日で防曬・染髮・燙髮・止汗制臭・家庭用歯のホワイトニングの製造場所、第2段階が2025年7月1日で嬰児用・唇用・眼部用および非薬用歯磨き・マウスウォッシュの製造場所、そして第3段階の2026年7月1日で、その他すべての一般化粧品の製造場所に適用が広がりました。


当局の説明によれば、5年の緩衝期間を置いたうえで7年をかけた移行であり、最終段階の適用対象は全台で1,000拠点近くに及びます。


日本の工場は台湾のGMP検査を受ける必要があるのか


よく聞かれる質問ですが、台湾のGMP規定が直接適用されるのは台湾国内の製造場所です。日本の工場が台湾当局の検査を受けて証明書を取得しなければならない、という構造ではありません。


ただし日本の工場は、次の2つの形で必ず登場します。


  • 産品登録の登録項目として、製造場所の名称・住所・国別と、化粧品優良製造規範への適合状況を申告する

  • PIFの構成書類として、製造場所がGMPまたはISO 22716に適合することを示す証明書または声明書を求められる


つまり「検査を受ける」のではなく「証明できる状態を用意する」ことが求められます。ISO 22716を取得済みの工場であれば、その証明書をそのまま使えるため圧倒的に有利です。未取得の場合は声明書での対応可否を、台湾側の輸入者およびSAと早い段階で確認してください。


OEM生産の場合の注意


OEM先の工場がISO 22716を持っているかどうかは、台湾展開の可否に直結します。持っていない場合、証明書の代わりに何を出せるのか、その工場は声明書の発行に応じるのか。ここは処方開示の協議と同じタイミングで確認すべき事項です。


参考までに、台湾には製品カテゴリごとに異なる認証制度があります。電気製品や無線機器を扱うならBSMI・NCCという別系統の認証が必要になるように(台湾に電気製品・無線機器を輸出する際の認証ガイド)、商材が変われば制度も変わります。美容機器と化粧品を同時に展開する場合は、両方の制度を別立てで確認してください。


成分でつまずく——日本でOKでも台湾でNGがある


最初に照合する3つのリスト


台湾では、化粧品に使える成分・使えない成分が公告で管理されています。処方を固める前に、少なくとも次の3つと照合してください。


  • 化粧品禁止使用成分表:配合が一切認められない成分

  • 化粧品成分使用限制表:配合できるが、製品タイプ・使用部位ごとに上限や条件が定められている成分

  • 化粧品防腐剤成分名称および使用限制表:防腐剤として使用する場合の名称と上限


これらは政府のオープンデータプラットフォームでも公開されており、CSV等で取得できます。日本で慣行的に使っている紫外線吸収剤・防腐剤・色素が、台湾では当該用途で認められていない、あるいは上限が低い——という事態は珍しくありません。


リストは改正される。しかも将来の日付で


注意すべきは、これらのリストが継続的に改正されることです。たとえば化粧品成分使用限制表は2024年7月1日施行の改正が行われたのち、2025年11月にはさらに2027年10月1日施行の改正が公告されています。この改正には、2027年9月30日以前に製造または輸入した化粧品は表示された保存期限内であれば引き続き販売できる、という経過措置が付いています。


つまり「一度確認したから大丈夫」は通用しません。しかも将来の施行日が先に公告されるため、いま適法な処方が数年後に不適法になることが事前に分かる構造です。


実務としては、改正の施行日と経過措置を製品ライフサイクルのカレンダーに載せ、次のリニューアルのタイミングで吸収する計画にしてください。台湾側の輸入者に「改正が出たら知らせてほしい」と口頭で頼むだけでは、まず抜けます。


動物実験の扱い


台湾では2019年11月9日から、化粧品業者が台湾国内で化粧品または化粧品成分の安全性評価を行う際、原則として動物を検体としてはならないと定められています。例外は、その成分が広く使用されており他の成分で代替できない場合、または人体の健康を損なう恐れを示す評価資料があり動物試験が必要な場合で、いずれも当局の許可を得たときに限られます。


これは台湾国内で行う安全性評価に対する規制であり、動物実験を経た製品の輸入を一律に禁止するものとは構造が異なります。ただしクルエルティフリーを掲げる消費者層は台湾にも存在するため、規制対応とは別に、ブランドのポジショニングとして自社の方針を整理しておく価値はあります。


中文ラベルの実務


表示すべき10項目


化粧品衛生安全管理法第7条により、化粧品の外装または容器には次の事項を明瞭に表示しなければなりません。


  • 品名

  • 用途

  • 用法および保存方法

  • 正味重量、容量または数量

  • 全成分名称

  • 使用上の注意

  • 製造または輸入業者の名称・住所・電話番号。輸入品は原産地(国)

  • 製造日および有効期間、または製造日および保存期限、または有効期間および保存期限

  • ロット番号

  • その他、当局が公告する表示事項


表示は中文または国際通用記号によることとされていますが、全成分名称については英文表示が認められています。INCI名をそのまま使えるということです。


外装や容器の表面積が小さいなどの事情で表示できない場合は、ラベル・仿単(添付文書)その他の方法で記載します。


日本企業だけがかかる「薬用」問題


本記事で最も見落とされやすい論点です。


当局は2021年7月1日施行で、外装または容器に「薬用」「薬」「医薬」「Medicate」またはこれと同等の意味の外国語表記がある輸入化粧品について、その原産国または販売国でOTC drugや医薬部外品等として管理され、かつ当該国の法規で表記が求められている場合には、製品の外装または容器に「本產品屬化粧品,不具醫療效能。」(本製品は化粧品であり、医療効能を有しません)の文言を加刊表示しなければならないと定めました。


日本の薬用化粧品——法的には医薬部外品——には、台湾に対応する区分がありません。台湾では一般化粧品として扱われます。したがって日本のパッケージの「薬用」表記をそのまま持ち込むと、この打ち消し表示が必要になります。


パッケージ上で「薬用」と謳いながらすぐ隣に「医療効能を有しません」と書くことになるわけで、ブランドの見え方に直結します。台湾向けパッケージを設計する段階で、


  • 「薬用」表記を残して打ち消し表示を併記するのか

  • 台湾向けは「薬用」表記を外した仕様にするのか


を意思決定しておく必要があります。輸出直前にラベル原稿を作り始めて気づくと、パッケージの作り直しになります。


日本の薬用化粧品を台湾へ輸出する際の表示判定フロー

台湾で詰め替え・包装し直す場合


輸入した化粧品を台湾国内で分装(小分け)または改装(包装し直し)する場合は、外装または容器に「臺灣分裝」または「臺灣改裝」に相当する文言を表示することが求められます。原装輸入なのか台湾で手を加えたのかを消費者が識別できるようにするための規定です。


日本側の落とし穴:ラベルを変えると「製造」になる


ここは台湾側ではなく、日本側の規制の話です。


ジェトロの解説によれば、日本国内で流通している製品をそのまま輸出するのではなく、現地向け仕様にしたもの——国内流通品の容器・外箱のデザインや表示語を現地向けに変更したものを含む——を輸出する場合は「化粧品製造」行為に該当し、化粧品製造業(包装・表示・保管)の許可を得たものでなければならないとされています。この許可は都道府県知事が出すもので、区分は「一般(1号区分)」と「包装・表示・保管(2号区分)」に分かれており、ラベル貼付・箱詰め・検品のための保管は2号区分に当たります。加えて、輸出にあたっては「輸出用化粧品製造届」をPMDA(医薬品医療機器総合機構)へ提出する必要があります。


つまり、台湾向けの中文ラベルを日本国内で貼る行為は、日本の薬機法上の製造行為になり得ます。「シールを貼るだけだから自社の倉庫で」と考えて進めると、日本側で違法状態になりかねません。


中文ラベルを日本で貼るか、台湾に着いてから貼るかは、コストや納期の問題ではなく法規の問題として決めてください。実務上は台湾側で貼付するケースが多くなりますが、その場合は台湾側の作業場所についてもGMPの観点が問われます。


安全保障貿易管理(キャッチオール規制)


化粧品も安全保障貿易管理上のキャッチオール規制の対象です。輸出に先立って、規制品に該当しないことの自己判定(該非判定)が必要になります。該当する可能性がある場合は経済産業大臣の輸出許可が要ります。


化粧品でここに引っかかることは多くありませんが、判定を行った記録を残していないこと自体が問題になります。初回輸出時に必ず社内で処理してください。


最大のリスクは広告表現


罰則の重さ


化粧品衛生安全管理法第10条は、化粧品の表示・宣伝・広告について、虚偽・誇大にわたること、および医療効能に及ぶことを禁じています。罰則は次のとおりです。


  • 虚偽または誇大:新台湾ドル4万元以上20万元以下

  • 医療効能に該当:新台湾ドル60万元以上500万元以下


当局が公表した年度の違反広告統計では、化粧品の事例で60万元の処分が科されたケースが上位に挙がっており、食品・薬物・化粧品を合わせた違反広告の処分件数と罰鍰総額は年々増加しています。摘発は例外的な事故ではなく、日常的に行われています。


どこからがアウトなのか


判断基準は「化粧品標示宣傳廣告涉及虛偽誇大或醫療效能認定準則」(2019年6月4日発布)に定められています。品名・文章・図案・記号・映像・音声などが消費者に伝える意味を相互に関連づけ、全体の表現から総合的に判断するという建て付けです。個々の単語だけを見るのではない、という点が重要です。


当局や地方衛生局が例示している具体例を挙げます。


  • 虚偽・誇大とされる例:豐胸(バストアップ)、瘦身(痩身)、活化毛囊(毛包の活性化)、預防・防止妊娠紋(妊娠線の予防)、抗過敏(抗アレルギー)、醫藥級(医薬品グレード)

  • 医療効能に該当するとされる例:換膚(ピーリングによる皮膚の入れ替え)、平撫肌膚疤痕(傷跡を平らにする)、修復受損肌膚(損傷した肌を修復する)、減輕肌膚鬆弛(肌のたるみを軽減する)

台湾の化粧品広告規制 虚偽誇大と医療効能の線引きと罰則


象徴的なのが、当局担当者が示したシャンプーの例です。「活化毛囊」(毛包を活性化する)は毛囊が人体の組織・器官の名称であるため誇大と認定されるが、「活化髮根」(毛根を活性化する)であれば違法にはならない、と説明されています。さらに「薄毛を治療し発毛させる」と書けば医療効能となり、60万〜500万元の対象になります。


線引きの軸は、日本語の語感ではなく「人体の組織・器官に作用すると読めるか」「疾患の予防・改善・治療を想起させるか」です。


日本の訴求はそのまま訳せない


日本で医薬部外品として承認を受けた効能——美白、シワ改善、育毛など——は、その承認があるからこそ日本で表示できるものです。台湾には対応する区分がないため、同じ文言をそのまま中文に訳すと、認定準則に照らして誇大または医療効能側に落ちる可能性があります。


正しい手順は、日本の広告表現を翻訳することではありません。認定準則の附件に例示されている「通常使用できる詞句」の範囲から、台湾向けの訴求を組み立て直すことです。翻訳ではなく再設計だと考えてください。


ECの商品ページもKOLの投稿も広告


広告の定義は広く、消費者保護法施行細則では、多数の人に宣伝内容を知らせ得る伝達手段が広く含まれるとされています。ECの商品ページ、自社サイト、SNS投稿、ライブコマースでの発言はいずれも対象になり得ます。


食品分野では、ある年の台北市衛生局の摘発内訳で違反広告の約8割がインターネット上のものだったという公表データがあります(サプリメント・健康食品の台湾輸出ガイド)。化粧品も構造は同じです。最も早く始められるチャネルが、最も摘発されやすいチャネルでもあります。


KOL・KOCを起用する場合は、投稿内容のレビュー体制を契約に入れてください。「口コミなので自由に書いてもらう」という設計は、そのまま法的リスクになります。処分を受けるのは発信者だけでなく、製品を供給した事業者側です。


通関・関税・コスト設計


関税と営業税


台湾の輸入関税は3欄構成で、第1欄の税率がWTO加盟国および台湾と互恵待遇関係にある国・地域からの輸入に適用されます。日本もこれに該当します。ジェトロの整理では、HS3303から3306までは0%、3307は5%とされています。これに加えて営業税5%と、推広貿易服務費(完税価格の0.04%)がかかります。ただし税率は品目ごとに号列が分かれるため、この数字を前提に価格を組むのではなく、CCC号列を確定させたうえで財政部関務署の税則税率照会システムで必ず確認してください。


実際の税率はCCC号列(台湾の11桁の税則番号)で確定するため、自社製品がどの号列に分類されるかは通関業者に確認してください。関税・税額の考え方は台湾への輸出にかかる関税・コスト・価格設定ガイドで詳しく整理しています。


コストを押し上げるのは関税ではなく規制対応費用


化粧品の場合、関税負担は食品ほど大きくありません。コスト構造を実際に決めるのは、規制対応にかかる費用とチャネルの取り分です。


初期費用として発生するのは、PIF一式の作成費(不足試験の実施費用を含む)、SAの署名費用、書類の翻訳費、産品登録、中文ラベルの設計・印刷、商標登録。継続費用として、3年ごとの登録更新、成分表改正への追随、処方変更時のPIF更新が乗ります。


重要なのは、これらの多くがSKU単位で発生するということです。数量が読めない段階でSKUを増やすと、固定費だけが積み上がります。初回は主力の2〜3SKUに絞り、売れることを確認してから広げるのが定石です。支援会社に委託する場合の費用感は台湾進出支援の費用・相場完全ガイドにまとめています。


台湾への化粧品輸出のコスト構造と関税・営業税

価格は「日本の店頭価格を知られている」前提で作る


前述のとおり、台湾の消費者の多くは日本の店頭価格を知っています。日本の定価をベースに諸経費を積み上げただけの価格は、比較された瞬間に説得力を失います。


現実的な打ち手は、直接比較を避ける設計です。台湾向けの容量違い、複数点をまとめたセット、台湾限定の色番やパッケージ、チャネル別の品揃え分離——いずれも「同じ商品が日本ではいくら」という比較を成立しにくくします。単純な値引きで対抗すると、代理店のマージンを削るだけで終わります。


使える補助金


PIF作成、試験、翻訳、展示会出展などの初期費用には、日本側の支援制度を充てられる場合があります。海外展開に使える制度は海外販路開拓に使える補助金完全ガイド、2026年に統合された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠でそれぞれ整理しています。制度は年度ごとに改廃されるため、申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。


商標は先に押さえる


台湾は先願主義を採用しており、先に出願した者に商標権が与えられます。日本で長く使っているブランド名であっても、台湾で第三者に先に出願されれば、自社名義での使用が困難になります。


化粧品は模倣品・並行輸入品が入りやすいカテゴリでもあります。産品登録やPIFの準備と並行して、商標出願を進めてください。費用・期間・手続きは台湾で商標登録は必要?費用・期間・手続きで解説しています。


はじめての1年間のロードマップ

台湾への化粧品輸出 はじめての1年間の逆算ロードマップ


0〜3か月:出せるかどうかを判定する


この段階の目的は、売り方を考えることではなく、そもそも自社製品が台湾に出せるかを見極めることです。


  • 主力SKUを3つ以内に絞る

  • 全成分を、禁止使用成分表・成分使用限制表・防腐剤使用限制表と照合する

  • OEM先と、処方開示の可否と範囲を協議し、守秘の枠組みを合意する

  • 手元にある試験データ(安定性・微生物・防腐効能)を棚卸しし、不足を洗い出す

  • 製造工場のISO 22716取得状況を確認する

  • パッケージに「薬用」表記があるかを確認し、台湾向け仕様の方針を決める

  • 商標の先行調査を行う


ここで問題が見つかった場合、多くはこの段階なら手当てできます。逆にここを飛ばすと、商談成立後に差し戻されます。


3〜6か月:パートナー選定とPIF作成


  • 台湾側の輸入者・代理店を選定する。産品登録とPIFの実務経験を必ず確認する

  • SA(安全資料簽署人員)を確保する

  • 不足していた試験を実施する。微生物試験や安定性試験は一般に4〜8週間かかるため、ここが工程のクリティカルパスになりやすい

  • 中文ラベルを設計する。表示10項目と、必要なら「薬用」の打ち消し表示を織り込む

  • 産品登録を行う

  • PIFを完成させ、保管場所と更新責任者を決める


6〜12か月:チャネル投入とテスト販売


  • 初回出荷。ECで先行して反応を取り、実店舗の棚は数字を持って交渉する

  • 商品ページ、販促物、KOL向け資料を、認定準則に照らして事前レビューする

  • 周年慶(9〜12月)、ダブルイレブン、春節といった商戦から逆算して投入時期を決める

  • 初回のレビューとリピート率を見て、SKU拡大と健全なチャネル拡張を判断する


全体の進め方は海外販路開拓の進め方、社内に担当者を置けない場合の選択肢は海外営業代行とは?費用相場・サービス範囲・失敗しない選び方で整理しています。


展示会をどう使うか


台湾の美容業界で規模の大きい展示会は、台北國際美容保養展暨美甲美睫博覽會です。春と秋の年2回、台北世界貿易中心で開催され、スキンケア・メイク・ネイル・美容機器・医美・OEM/包材まで幅広い領域をカバーします。2026年の春季展からは、主催の聯合線上がドイツのメッセ・フランクフルトと組み、国際展ブランド「Beautyworld Taipei」として開催されています。会期は回によって変わるため、出展を検討する際は公式サイトで最新の日程と申込締切を確認してください。


ただし化粧品は、展示会の場で商談が完結する商材ではありません。バイヤーが確認したいのは、まず規制対応が済んでいるか——PIFは用意できるのか、登録は誰がやるのか——であり、次に台湾市場でどう売るのかという計画です。


したがって展示会は、規制対応の見通しが立ったあとに、代理店候補との面談機会として使うのが正解です。準備が整う前に出ても、名刺交換で終わります。出展前後の設計は海外展示会 完全ガイドマップ2026海外展示会で商談ゼロになる日本企業の共通点5つ、台湾の展示会に絞った支援内容は台湾展示会の出展・視察支援で解説しています。


よくある質問(FAQ)


日本のメーカーが自分で産品登録を申請できますか


できません。産品登録を行えるのは台湾の製造業者または輸入業者で、当局のQ&Aでも海外の会社には登録プラットフォームのアカウントを開放していないと明示されています。台湾側の輸入者・代理店が決まってはじめて手続きが始まります。


「含藥化粧品」の許可証は今も必要ですか


不要です。2024年7月1日に特定用途化粧品(旧・含藥化粧品)の許可証制度は廃止され、同年6月30日時点で有効だった許可証も翌日に失効しました。現在は日焼け止めも染毛剤も一般化粧品として、産品登録とPIFで管理されます。この点を古いまま説明している日本語の情報が今も多く残っているので注意してください。


PIFは台湾の当局に提出するのですか


提出するものではありません。法定の届出住所に保管し、当局の査察時に提示できる状態にしておく文書です。最終上市日から5年以上保存し、処方や製造工程を変更した際は更新する必要があります。


日本の薬用化粧品(医薬部外品)は、台湾でも「薬用」と表示できますか


台湾に医薬部外品に相当する区分はなく、一般化粧品として扱われます。外装や容器に「薬用」「薬」「医薬」「Medicate」等の表記があり、原産国でOTC drugや医薬部外品として管理され当該国の法規で表記が求められている場合は、「本產品屬化粧品,不具醫療效能。」という文言の加刊表示が必要です。日本での承認効能をそのまま中文にすると、広告規制に触れる可能性があります。


中文ラベルは日本で貼ってもいいですか


法規上の判断が必要です。ジェトロの解説では、国内流通品の表示語やデザインを現地向けに変更して輸出する場合は「化粧品製造」行為に該当し、化粧品製造業(包装・表示・保管)の許可を得たものでなければならず、PMDA経由で厚生労働大臣への届出も必要とされています。自社倉庫でシールを貼るだけ、という感覚で進めないでください。


準備期間はどのくらい見ておくべきですか


すでに製造工場がISO 22716を取得しており、安定性・微生物・防腐効能の試験データが揃っている企業であれば、パートナー確定から半年程度で初回出荷にたどり着けます。試験をゼロから実施する場合や、OEM先との処方開示協議に時間がかかる場合は1年前後を見てください。工程のクリティカルパスは、試験の実施期間と処方開示の社内合意です。


まとめ


台湾の化粧品規制は、2024年から2026年にかけて事前許可型から自主管理型へ移行しました。2026年7月1日にPIFとGMPの最終段階が施行され、いま台湾で流通するほぼすべての化粧品が産品登録とPIFを備えていなければならない状態になっています。


この変化が日本企業にとって意味するのは、負担の中身が「申請を通すこと」から「書類を作り、持ち続けること」に移ったということです。そして、その書類の中核——全成分の配合率、製造方法、GMP証明、各種試験報告——は、台湾の代理店では作れません。日本の製造元しか出せないものです。


だからこそ、台湾展開の起点は代理店探しではなく、処方をどこまで開示できるかという社内・OEM先との合意になります。ここを先に片づけた企業から、順番に棚を取っていきます。


Link Globalでは、台湾市場の調査から、代理店・輸入者の開拓、展示会出展、規制対応の進め方まで一貫して支援しています。台湾への化粧品輸出をご検討の際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。


参考文献・出典(確認日:2026年7月29日)


本記事の記載は、以下の一次情報および公表資料にもとづいて確認しています。台湾の化粧品規制は成分表を含めて継続的に改正されるため、実務にあたっては必ず最新版をご確認ください。


台湾の法令・行政公告



台湾の当局資料



日本側の制度・統計



台湾の市場・チャネルデータ



※本記事は2026年7月時点で確認できる公開情報にもとづいて整理したものです。台湾の化粧品規制は成分表を含めて継続的に改正されており、個別製品の適法性については、台湾側の輸入業者・SA・専門機関に必ずご確認ください。

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