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有機JASだけでは足りない|日本茶の米国・EU輸出2026

堤浩記
1 日前
読了時間: 32分

更新日:7 時間前

米国向けに輸出される日本茶の64.9%、EU・英国向けの75.3%が有機栽培茶です。台湾やASEAN向けではこの比率はここまで高くなりません。欧米市場において有機認証は「あると有利な付加価値」ではなく、商談のテーブルに着くための入場券に近い存在になっています。

そして、有機JASを取得しただけでは、EUの店頭で「BIO」や「Organic」と名乗ることはできません。日EUの有機同等性という仕組みを経由する必要があり、その同等性には2026年12月31日という期限が設定されています。

この記事は、煎茶・深蒸し煎茶・玉露・かぶせ茶・ほうじ茶・玄米茶・和紅茶を含む日本茶全般を、米国とEUに売るための実務をまとめたものです。抹茶のグレード論や残留農薬基準値そのものは別記事に譲り、ここでは「認証・登録・表示という手続きの壁をどう越えるか」に絞って解説します。


本記事のデータについて


本記事の数値は、以下の一次情報に基づいています。

  • 【輸出統計】財務省「貿易統計」、および同統計をもとに農林水産省・日本茶輸出促進協議会が作成した集計

  • 【有機比率】農林水産省「茶をめぐる情勢」令和7年10月

  • 【国・地域別】Global Trade Atlas(対象HSコード 0902.10・0902.20)

  • 【米国の制度】米国FDA、およびジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(米国)」

  • 【EUの制度】欧州委員会規則396/2005・1169/2011・1924/2006・2017/625、実施規則2021/2325、およびジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(EU)」


速報値と確報値を区別しています。2025年の緑茶輸出額は、2026年1月公表の速報値で721億円、2026年2月3日発表の実績で約720億円・前年比98.2%増とされています。2024年の363億8,000万円・8,798トン、および粉末状/その他の形状別の内訳は確報値です。

市場規模については、民間調査の推計値を使っていません。「世界の茶市場」「日本茶市場」「抹茶市場」は調査機関ごとに対象範囲の定義が異なり、そのまま並べて比較すると誤った結論を導くためです。定義の異なる数字は混ぜていません。

制度と会期は変わります。本記事は2026年9月時点の情報です。実際に手続きに入る前に、必ず所管当局および主催者の最新情報をご確認ください。


1. なぜ欧米向けは「有機」から始まるのか


米国が金額の4割、英国が4倍増


日本の緑茶輸出を国・地域別に見ると、2025年は米国が金額293億円・数量4,430トンで1位でした。金額シェアは40.7%、数量シェアは35.1%です。2位はドイツで58億円・877トン、3位は英国で47億円・454トンでした。

注目すべきは伸び率です。米国が金額で前年比82.6%増、ドイツが69.4%増だったのに対し、英国は403.9%増・数量で178.2%増と突出しています。欧州で日本茶の実需が立ち上がっている局面だと読めます。有機比率が最も高いのがEU・英国向けであることと、この伸びは無関係ではありません。

形状別に見ると、米国では抹茶を含む粉末状の緑茶が、台湾ではリーフ茶である「その他の緑茶」の輸出量が多く、国によって傾向が異なります。抹茶を含む粉末状の緑茶の輸出単価は、その他と比べて約2.3倍高い水準にあります(農林水産省「茶をめぐる情勢」令和8年3月版・4月版。令和7年10月版までは約2.2倍とされていました)。米国向けについては、重量当たり単価が中国産緑茶の約5倍という分析も示されています。

出典:ジェトロ「300年越しのリベンジ:茨城県産の日本茶を輸出」(2026年6月、財務省「貿易統計」に基づく)/農林水産省「茶をめぐる情勢」


有機比率64.9%・75.3%という数字の意味


米国向け64.9%・EU英国向け75.3%という日本茶輸出の有機栽培茶比率

図A:日本の茶輸出量に占める有機栽培茶の割合。米国向け64.9%、EU・英国向け75.3%。出典:農林水産省「茶をめぐる情勢」令和7年10月


農林水産省「茶をめぐる情勢」(令和7年10月版)によると、日本の茶輸出量に占める有機栽培茶の割合は、米国向けで64.9%、EU・英国向けで75.3%です。なお同資料は年に数回更新されており、2026年9月時点の最新版は令和8年7月版です。比率が更新されている可能性があるため、提案資料に数値を載せる際は最新版でご確認ください。

この数字は「有機茶のほうがよく売れる」という話ではありません。欧米のバイヤーが日本茶を探すとき、有機であることが検索条件・仕入条件の初期フィルタとして機能しているという構造を示しています。有機でない茶は、そもそも候補リストに載らない場面が多い。

実務的な含意はもうひとつあります。有機栽培茶は各国の残留農薬基準をクリアする可能性が高く、輸出に向いているという点です。欧米向けの残留農薬規制は、後述するとおり「基準値を超えたから止まる」よりも「基準そのものが設定されていないから止まる」ケースが多い。有機栽培は、この構造的なリスクを回避する手段でもあります。

有機同等性の仕組みを利用した有機茶の輸出量は、令和5年(2023年)に前年比18.1%増の1,585トンと過去最高を記録しました。特にEU・米国が大きな割合を占めています。

出典:農林水産省「茶をめぐる情勢」令和7年10月/日本茶輸出促進協議会


台湾・ASEANとは前提条件が違う


同じ「日本茶の輸出」でも、仕向地によって最初に越えるべき壁は異なります。

  • 【米国・EU】有機認証と、施設登録・輸入者側の検証プログラムという「制度の入口」が壁になる

  • 【台湾】残留農薬基準と水際の査驗(抜き取り検査)が壁になる。TFDAへの食品業者登録は必要だが、茶そのものに特別な許可は不要

  • 【ASEAN】規制よりも、国ごとに異なる「売れる茶種・形態・飲み方」の見極めが壁になる


台湾向けの残留農薬基準と実務については「台湾で止められる日本茶|残留農薬基準と輸出実務2026」、ASEANの消費者データについては「ASEANの日本茶市場をデータで読む2026」で詳しく扱っています。本記事は米国・EUに絞ります。


2. 有機JAS・USDA NOP・EU有機 ― 同等性の正しい理解


同等性とは「相手国の制度で審査し直さなくてよい」という仕組み


日本の有機JASは、米国のUSDA NOP(National Organic Program)およびEUの有機規則と相互に同等性が認められています。つまり有機JAS認証を取得した茶は、米国やEUであらためて現地の有機認証を一から取り直す必要がありません。

緑茶はこの同等性の対象に含まれます。農産物および農産物加工食品としてカバーされるため、煎茶・玉露・ほうじ茶といったリーフ茶も、加工品である抹茶も対象です。

2025年5月18日以降、日EU間の同等性の範囲は有機酒類や畜産物などにも拡大されています。


有機JASマークだけではEUで「BIO」と書けない


有機JAS取得からTRACES提出、外国格付表示業者認証までのEU有機表示の3ステップ

図B:EUで「BIO / Organic」と表示するまでの3ステップ。有機JASマークだけでは有機を名乗れない。出典:実施規則(EU)2021/2325、農林水産省


ここが最も誤解されている点です。同等性があることと、相手国のラベルに有機表示ができることは別の話です。

EU域内で「Organic」「BIO」と表示し、EUの有機ロゴ(ユーロリーフ)を付けて販売するには、登録認証団体が発行する検査証明書が必要で、これをTRACES(EUの電子証明システム)経由で提出しなければなりません。有機JASマークが貼ってあるだけでは、EUの店頭で有機を名乗ることはできない。

さらに、日本の事業者が相手国の有機ロゴ(EUのユーロリーフ、USDAオーガニック、カナダのCOR)を自社で商品に表示する場合には、外国格付表示業者としての認証を別途取得する必要があります。これは2022年10月に始まった制度です。

  • 【ステップ1】有機JAS認証を取得する(登録認証機関による審査)

  • 【ステップ2】輸出時に検査証明書を発行してもらい、TRACES経由でEU側に提出する

  • 【ステップ3】自社でユーロリーフやUSDAオーガニックを表示するなら、外国格付表示業者の認証を取得する

  • 【代替】現地の輸入者・パッカーがロゴ表示を行う場合は、ステップ3は輸入者側の責任範囲になる


どのステップを誰が負担するかは、輸入者との契約で決まります。商談の初期に必ず確認すべき論点です。


2026年12月31日という期限


EU側で日本の有機JASを同等と認めている根拠は、実施規則(EU)2021/2325です。この規則で定められた同等性の有効期間は2026年12月31日までとされています。

期限の延長や新しい枠組みへの移行がどうなるかは、EU側の決定次第です。2026年後半以降にEU向けの取引を本格化させる場合、この動向を必ず確認してください。仮に同等性が更新されない場合、日本の事業者はEU有機認証を直接取得する道に切り替える必要が出てきます。

これは「いつか起きるかもしれない話」ではなく、期日が明示されている話です。EU向けの中期計画を立てるなら、前提条件として押さえておくべき日付です。


通関で止まった実例 ― ハンブルク港


日本茶輸出促進協議会は、ドイツのハンブルク港を管轄する法律局が、日本の輸出業者に有機認証がないことを理由にEUへの輸出でトラブルを起こした事例を報告しています。日EU間の有機同等性は、日本側で輸出業者自身が有機認証を持たないことを含めて結ばれたものです。農林水産省は、EU側の末端の認証機関や政府機関への情報の周知不足が原因との認識を示しています。解決策は、輸入業者からEU側の認証機関等へ説明してもらうことでした。

制度上は正しくても、現場の担当者が知らなければ荷物は止まります。初回の船積みでは、輸入者側に「どの規則に基づいてこの証明書が有効なのか」を説明できる資料を渡しておくと事故が減ります。

出典:日本茶輸出促進協議会


3. 米国に入れる ― 登録・検証・残留農薬・関税


FDA食品施設登録と「偶数年」の更新


米国に食品を輸出する施設は、FDA(米国食品医薬品局)への食品施設登録が必要です。バイオテロ法に基づく制度で、日本側の製造施設が対象になります。

見落とされやすいのが更新です。食品安全強化法第102条により、西暦偶数年の10月1日から12月31日までの間に登録を更新する義務があります。更新を忘れると登録が失効し、次の船積みが止まります。2026年は偶数年です。

なお、緑茶には米国の法令上の定義が存在せず、一般の食品として規制されます。植物検疫証明書は不要です。


輸入前の事前通知とISF


船積みごとに、FDAへの事前通知(Prior Notice)が必要です。期限は航空輸送で到着4時間前、海上輸送で8時間前。PNSIまたはABI経由で提出します。海上輸送の場合はこれに加えて、ISF(Importer Security Filing)を到着24時間前までに提出する必要があります。

これらは通常、米国側の輸入者または通関業者が行います。ただし提出内容の元データは日本側が出すため、製造施設の登録番号・製品情報・数量を正確に渡せる体制が必要です。


FSVP ― 検証の責任は米国の輸入者にある


FDA食品施設登録から事前通知、FSVP、通関までの米国輸出手続きの流れ

図C:米国に日本茶を輸出する手続きの流れ。日本側と米国輸入者で責任範囲が分かれる。出典:米国FDA、ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(米国)」


FSMA(食品安全強化法)のもとで、米国の輸入者にはFSVP(Foreign Supplier Verification Program/外国供給業者検証プログラム)が課されています。輸入者が、海外のサプライヤーが米国と同等の安全基準を満たしていることを検証し、記録を保持する義務です。

実務上、この義務は日本側に転嫁されます。輸入者から次のような資料の提出を求められるのが通常です。

  • 危害分析の結果と、予防管理の内容(21 CFR Part117)

  • 残留農薬の分析成績書

  • 製造施設の衛生管理記録

  • FDA施設登録番号

  • 有機認証書(有機として販売する場合)


FDAは2025年5月、外国施設に対する予告なし監査の拡大を表明しています。書類が整っているだけでなく、実態がそれに一致している必要があります。


残留農薬 ― 止めるのは「超過」ではなく「基準がないこと」


米国の残留農薬はEPA(環境保護庁)がトレランス(許容基準)を設定し、FDAが執行するポジティブリスト制です。

重要なのは、トレランスも免除も設定されていない農薬が検出された場合、その茶は輸入できないという点です。「基準値以下だから大丈夫」ではなく、「その農薬に米国の基準が存在するか」がまず問われます。日本国内では適法に使用できる農薬でも、米国にトレランスがなければゼロトレランス的に扱われます。

輸出向けの茶園では、仕向地の基準に適合した防除体系をあらかじめ設計する必要があります。収穫後に分析して初めて気づくのでは遅い。有機栽培が欧米向けで有利なのは、この構造的リスクを根本から避けられるからです。

残留農薬の分析項目やMRLの考え方については「抹茶輸出のチェックリスト」で扱っています。


ラベル ― 栄養成分表示は必要か


米国のラベルは英語表記で、食品名・正味量・原材料・原産国・輸入者情報などが必要です。

栄養成分表示(Nutrition Facts)については、栄養素をほとんど含まない緑茶は表示義務の対象外とされています。ただしフレーバー添加や砂糖・乳成分を含む製品、あるいは健康訴求を行う製品では扱いが変わります。アレルゲン表示も、玄米茶や抹茶ラテ用のブレンドでは確認が必要です。

出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(米国)」


関税 ― 2025年11月13日に緑茶は相互関税の対象外へ


2025年11月13日(米国東部時間)午前0時1分以降の通関から、緑茶は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税の対象外となりました。牛肉、バナナ、オレンジ、コーヒーなどとあわせて、特定の農産品が大統領令で除外されたものです。なお、これは相互関税の適用除外であって通常関税(MFN税率)とは別枠の話です。両者を混同しないでください。

この変更前に作成された輸出コスト試算は、前提が変わっています。2025年前半に「関税を乗せると価格が合わない」と判断して見送った案件があるなら、計算をやり直す価値があります。ただし相互関税は今後も変わりうるため、見積もりの都度、最新の適用状況を確認してください。

あわせて注意が必要なのは、デミニミス(1930年関税法321条に基づく800ドル以下の少額免税)の廃止です。2025年7月30日に廃止する大統領令が発表され、800ドル以下でも関税の対象となり、一般貨物と同様の通関手続きが求められるようになりました。越境ECで小口を積み上げる販売モデルは条件が厳しくなっています。

出典:ジェトロ(2025年11月)/米国大統領令・CBPガイダンス


ほうじ茶とカリフォルニア州プロポジション65


ほうじ茶は焙煎工程でアクリルアミドが生成しうるため、カリフォルニア州のプロポジション65(有害物質の警告表示制度)に留意が必要です。

ただし、食品由来のアクリルアミドに関する警告義務は、2025年時点で連邦地方裁判所の差し止め命令により執行が停止されており、控訴審で係争中です。状況が変わる可能性があるため、カリフォルニア州を主要販路とする場合は現地弁護士または輸入者に最新の状況を確認してください。


4. EUに入れる ― 残留農薬・表示・包材


MRLが設定されていない農薬は一律0.01mg/kg


米国のゼロトレランスとEUの一律0.01mg/kgという残留農薬規制の考え方の違い

図D:米国とEUで異なる残留農薬の考え方。止めるのは「基準値超過」ではなく「基準がないこと」。出典:米国EPA、欧州委員会規則(EC)396/2005、ジェトロ


EUの残留農薬は規則(EC)396/2005に基づくポジティブリスト制です。米国と同じく、日本で適法に使える農薬がEUで問題になる構造があります。

ただしEUには米国と違う点があります。MRL(最大残留基準値)が設定されていない農薬については、一律基準として0.01mg/kgが適用されます。ゼロではありませんが、極めて低い水準です。分析の検出限界に近く、実務上は「使えない」と考えたほうが安全です。

茶は乾燥重量あたりで評価されるため、生葉の段階での残留がそのまま4〜5倍に濃縮されます。野菜や果実と同じ感覚で防除設計をすると必ず引っかかります。


ネオニコチノイド系の引き下げはすでに適用されている


クロチアニジンおよびチアメトキサムのMRLを検出下限値まで引き下げる改正規則が採択され、2026年3月7日から輸入農産品にも適用されています。すでに施行済みです。

この2剤は日本の茶園で使用実績のある系統です。EU向けの出荷を予定している圃場では、防除体系が新基準に適合しているかを確認してください。2026年3月より前に作成された分析成績書は、基準が変わる前のものである可能性があります。

出典:欧州委員会規則(EC)396/2005 関連改正


強化検査 ― 日本産の茶は現時点で対象外


EUは実施規則(EU)2019/1793で、リスクの高い産品・原産国の組み合わせを指定し、国境での検査頻度を引き上げています。調査時点で、日本産の茶はこの強化検査の対象に含まれていません。中国産の茶は管理強化の対象です。

通常の輸入では、規則(EU)2017/625の第44条・第47条に基づき、国境管理所での書類検査と、リスクに応じた公的管理が行われます。CHED(共通衛生入国書類)の事前提出が必要です。

「対象外である」ことは有利な条件です。商談の場で競合が中国産の場合、検査頻度の違いはリードタイムと在庫コストの差として説明できます。


表示は販売国の言語で ― 規則1169/2011


EUの食品表示は規則(EU)1169/2011に従い、販売する国の言語で記載する必要があります。ドイツで売るならドイツ語、フランスで売るならフランス語です。英語表記だけでEU全域をカバーすることはできません。

この作業は通常、現地の輸入者またはパッカーが担います。ただしラベルの元データ(原材料名、正味量、賞味期限の設定根拠、保存方法、製造者情報)は日本側が提供する必要があります。翻訳の責任範囲を契約で明確にしておかないと、初回出荷で必ず揉めます。


健康強調表示は原則できない


ここは日本の感覚と最も乖離する部分です。EUでは健康強調表示(ヘルスクレーム)が規則(EC)1924/2006でポジティブリスト管理されており、認められた表現以外は使用できません。

緑茶ポリフェノールやカテキンの抗酸化作用を訴求する表現は、原則として使えないと考えてください。日本の販促資料をそのまま翻訳すると違反になります。

さらに、緑茶エキス(EGCG)を高濃度で含む製品には、1日の摂取量に関する警告文の表示が求められます。通常のリーフ茶では問題になりませんが、濃縮エキスやサプリメント形態の製品を扱う場合は確認が必要です。

訴求の軸は、健康ではなく産地・品種・製法・淹れ方に置くのが現実的です。


包材 ― ティーバッグと保護雰囲気包装


食品接触材料は規則(EC)1935/2004の対象です。あわせて2点、見落とされやすい実務があります。

  • 【ティーバッグ】フランスでは2022年1月以降、生分解性でないプラスチック製のティーバッグが流通禁止となっている。ナイロンやPETのテトラ型バッグは要確認

  • 【窒素充填】窒素充填や脱酸素剤を使った包装は「packaged in a protective atmosphere」に相当する旨の表示が必要になる


緑茶の品質保持に窒素充填はほぼ必須ですが、それが表示義務を発生させるという関係です。包装設計とラベル設計は同時に進める必要があります。


関税 ― リーフ茶はもともと無税


EUの緑茶の関税は次のとおりです。

  • HS 0902.10(正味重量3kg以下の直接包装):通常3.2% → 日EU・EPAで0%

  • HS 0902.20(その他):もともと無税


日EU・EPAの適用は自己申告制で、輸出者・輸入者・通関業者のいずれかが申告します。原産地証明書の第三者発行は不要です。

なお、付加価値税は通関時ではなく売買時に別途課税されます。フランスの場合は5.5%です。輸出価格の試算に関税だけを織り込んで店頭価格を逆算すると、この分がずれます。

出典:日EU経済連携協定/ジェトロ


5. 抹茶とリーフ茶は、同じ「緑茶」でも別のビジネス


形状別に見た輸出額


粉末状272億円5092トンとリーフ茶92億円3706トンという2024年の緑茶輸出の形状別内訳

図E:形状別に見た緑茶の輸出(2024年・確報値)。金額と数量は別グラフで示している。前年比は金額ベースの数値。出典:財務省「貿易統計」、農林水産省、日本茶輸出促進協議会


2024年(確報値)の緑茶輸出額363億8,000万円・8,798トンの内訳は次のとおりです。

  • 粉末状(抹茶を含む):272億円(前年比25.9%増)・5,092トン

  • その他(リーフ茶):92億円(前年比21.1%増)・3,706トン


金額では粉末状が75%を占めますが、伸び率はリーフ茶も21.1%増と大きくは変わりません。リーフ茶が伸びていないわけではない。ただし単価の差が金額シェアを大きく見せています。

2025年の緑茶輸出額は約720億円で、前年比98.2%増・6年連続の過去最高となりました。輸出量も前年比43.3%増で1万トンを超えています。金額の伸びが量の伸びを大きく上回っているため、単価の高い粉末状が牽引した構図と読めます。ただし2025年の形状別の内訳が確定するまでは断定を避けるべきです。

出典:財務省「貿易統計」/農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」(2026年2月3日発表)/日本茶輸出促進協議会


HSコードの区分は「粉末かどうか」ではない


実務でよく誤解される点です。HS0902.10と0902.20を分けるのは、粉末かリーフかではなく、正味重量3kg以下の直接包装かどうかです。EUのCN分類も同じく3kg基準です。

  • 0902.10:正味重量3kg以下の直接包装の緑茶(小売用の缶・袋など)

  • 0902.20:その他の緑茶(バルク)


日本の輸出統計品目表では2019年1月1日に粉末状の緑茶のコードが新設され、統計上は「3kg以下の粉末状/3kg以下のリーフ/バルクの粉末状/バルクのリーフ」の4形態に分類できるようになりました。この4分類は日本側の統計区分であり、相手国の税番と一対一で対応するわけではありません。

見積書とインボイスで使う税番は、仕向地の税番で確認してください。日本側の統計コードをそのまま書くと通関で修正を求められます。


供給側の制約 ― てん茶が足りていない


抹茶の原料であるてん茶の生産量は、令和6年で5,336トン。10年で約2.7倍に増えましたが、茶全体に占める割合はまだ約7.3%です。

需要の伸びに国内生産が追いついておらず、海外バイヤーが産地に直接買い付けに来る、代替品を提案されるといった事例が報告されています。抹茶で新規参入を狙う場合、規制よりも原料確保のほうが先に壁になる可能性があります。

一方でリーフ茶は、荒茶生産量の大部分を占める主力です。2024年の荒茶生産量は鹿児島県が2万7,000トンで統計開始以来初の日本一となり、静岡県が2万5,800トンで続きました。栽培面積では静岡・鹿児島・三重の上位3県で約7割を占めます。

つまり「量を確保しやすいのはリーフ茶、単価が高いのは粉末状」という構造です。どちらで勝負するかは、自社が原料をどれだけ押さえられるかで決まります。

抹茶のグレードと産地の違いについては「抹茶のグレードと生産エリアを正しく理解する」で詳しく扱っています。

出典:農林水産省「茶をめぐる情勢」令和7年/作物統計


6. チャネルと価格構造


欧米の日本茶チャネルは並立している


専門店からECまで欧米の日本茶チャネル6類型をロットと単価で整理したマトリクス

図F:欧米の日本茶チャネルをロットと単価で整理したもの。円の大きさに市場規模の意味はない。出典:ジェトロ「フランス 茶 カントリーレポート」(2023年3月)、農林水産省


「欧米に売る」と一括りにしても、どのチャネルを狙うかで必要な荷姿・ロット・認証がまったく変わります。量販やECだけが答えではありません。

  • 【スペシャルティ茶専門店・ティーハウス】100〜200種を扱う。単一産地・単一品種のストーリーが効く。ロットは小さいが単価が高い

  • 【高級食品小売・スーパー】フランスでは販売チャネルの約85%が近代小売経由。ハイパーマーケットが最大シェア。小売パッケージと現地語ラベルが必須

  • 【カフェ・コーヒーロースター】抹茶ラテ需要が入口。業務用の缶・袋で、安定供給と価格の予見性が問われる

  • 【高級ホテル・レストラン】アフタヌーンティー、ティーペアリング。少量多品種でも成立する。ブランド価値が価格に乗る

  • 【業務用原料】飲料・菓子・化粧品原料。米国向け粉末状茶の約8割がこの用途。ロットは大きいが単価は低い

  • 【越境EC・D2C】高級茶を直販できる。ただし米国はデミニミス廃止で小口の条件が厳しくなった


最初に決めるのは市場ではなくチャネルです。チャネルが決まれば、荷姿・ロット・必要な認証・価格帯が自動的に決まります。逆にチャネルを決めずに「米国に売りたい」と動くと、サンプル対応だけで疲弊します。


フランスの流通構造とマージン


ジェトロのフランス茶カントリーレポート(2023年3月、EU輸出支援プラットフォーム パリ事務局)は、流通構造を「国外生産者→ブローカー→輸入事業者→卸売/梱包・加工事業者→EC・フードサービス・小売→消費者」と整理しています。

押さえておくべき数字が3つあります。

  • 輸入事業者の一般的なマージンは約50〜60%(人件費と税負担が高いため)

  • 日本産緑茶はプレミアム帯として認識され、一般的な中国茶の2〜3倍の価格帯。平均販売価格は50gあたり4.7〜11.8米ドル

  • 支払いは銀行振込が一般的で、20〜30%を注文時に前払い、残りは商品発送時というパターンが多い


マージン50〜60%という数字は、FOB価格を店頭価格から逆算するときの出発点になります。50gで8米ドルの棚を狙うなら、輸入事業者の仕切りはその半分以下です。

インポーターの数は多くありません。フランスではLe Palais des Thés、Cha Yuan Tea House、George Cannonといった事業者が知られており、小売・外食・ECの多くは卸売経由で調達しています。少数の相手に深く入ることが現実的な戦略です。


輸出コストの内訳


見積もりを組むときに漏れやすい費目を挙げます。

  • 仕上げ加工賃(荒茶から製品茶への二次加工)

  • 包装資材(アルミ包材・窒素充填・脱酸素剤)

  • 残留農薬の分析費用(仕向地ごとに項目が異なる)

  • 有機認証の維持費用と検査証明書の発行費用

  • 輸送(常温/定温/リーファー)。LCL混載の場合は最小1立方メートル=1,000kg換算

  • 現地語ラベルの制作費(EU向けは国ごとに発生)

  • 関税・付加価値税


日本茶輸出促進協議会は、輸出業者約100社を対象に年1回の残留農薬検査を実施しています。自社単独で全項目を分析するより負担が軽くなる場合があるため、加入と利用条件を確認する価値があります。


7. 品質と物流 ― 緑茶を劣化させずに運ぶ


劣化要因は4つ


緑茶の品質を落とすのは、酸化・光・湿度・温度、そして移り香です。紅茶や烏龍茶と比べて緑茶は酸化に弱く、輸送中の管理が品質差に直結します。

  • 【酸化】窒素充填または脱酸素剤。開封前の残存酸素濃度を管理する

  • 【光】遮光性のあるアルミ包材。透明パッケージは店頭映えするが品質は落ちる

  • 【湿度】防湿性のある包材と、コンテナ内の結露対策(乾燥剤・デシカント)

  • 【温度】高温は香気成分を飛ばす。抹茶やプレミアム煎茶は定温・リーファー輸送を検討する

  • 【移り香】混載時の同梱品に注意。香辛料・化学品との同一コンテナは避ける


海上輸送を選ぶなら、赤道を通過する航路での庫内温度がどこまで上がるかを船社に確認してください。バルクの業務用原料は海上、プレミアム帯は航空、というのが一般的な使い分けです。


賞味期限と残存シェルフライフ


仕向地の小売は「入荷時点で賞味期限の何割が残っているか」を条件として設定していることがあります。日本で12か月の賞味期限を設定していても、海上輸送に2か月、現地の通関と物流に1か月かかると、店頭に並ぶ時点で残り9か月です。

賞味期限の設定根拠(保存試験のデータ)を求められることもあります。輸出を前提にするなら、設定根拠の文書化を先に済ませておいてください。


放射性物質検査証明書は米国・EUでは不要


東日本大震災後の輸入規制は、主要市場では順次撤廃されています。

  • 米国:2021年9月22日に撤廃

  • EU・英国:原発事故に関連する追加規制は終了

  • UAE:2020年12月に撤廃

  • 台湾:2025年11月21日に規制を撤廃。5県産の検査報告書および全食品の産地証明書が不要になった


一方で中国は、10都県産の食品が輸入停止のまま、それ以外の県産の茶葉についても検査証明書の様式が未合意で、輸出が困難な状況が続いています(農林水産省、2025年6月時点)。

古い解説記事には撤廃前の情報が残っています。バイヤーから証明書を求められた場合は、当局の最新の規制状況を示して確認するのが確実です。

出典:農林水産省/ジェトロ


8. 欧米のバイヤーに会う ― 展示会は年間の型で押さえる


展示会は毎年ほぼ同じ時期に開かれます。個別の会期を追いかけるより、「何月にどういう性格の展示会があるか」を年間の型として持っておくほうが計画を立てやすい。申込の締切が会期の半年から1年前に来るためです。


年間の型


  • 【2月】BIOFACH(ドイツ・ニュルンベルク/NürnbergMesse主催)=有機専門の世界最大級。毎年開催。2025年は94か国から約2,300社が出展し、140か国から35,000人超が来場。来場者の約半数が国外。本記事の主題と最も近い

  • 【3月上旬】Natural Products Expo West(米国・アナハイム/New Hope Network・Informa Markets主催)=ナチュラル・オーガニック系。2025年は3,000超ブランドが出展し64,000人超が来場、うち約3分の2がバイヤー。日本は独自パビリオンを設置している

  • 【3月】World Tea Expo(米国・ラスベガス/Questex主催)=北米最大のB2B茶展示会。Bar & Restaurant Expoを併催

  • 【3月】FOODEX JAPAN(東京ビッグサイト/日本能率協会ほか主催)=1976年開始のアジア最大級の食品・飲料B2B商談展

  • 【6〜7月】Summer Fancy Food Show(米国・ニューヨーク/Specialty Food Association主催)=北米最大の専門食品見本市。2025年は59か国から2,492社が出展し、24の国際パビリオンが並び約32,000人が来場

  • 【6〜7月】「日本の食品」輸出EXPO(東京ビッグサイト/RX Japan主催・ジェトロ共催)

  • 【10月・偶数年】SIAL Paris(フランス/Comexposium主催)=2024年は127か国から7,500社超が出展し約285,000人が来場。来場者の79%が国外

  • 【10月・奇数年】ANUGA(ドイツ・ケルン/Koelnmesse主催)=2025年は7,851社が出展(国際比率93%)、190か国超から139,647人が来場

  • 【11月】「日本の食品」輸出EXPO(年2回目の開催)


BIOFACHからANUGAまで日本茶の輸出に使える海外・国内の展示会を月別に並べた年間カレンダー

図G:日本茶の輸出に使える展示会の年間の型。上段が海外、下段が国内。規模はいずれも主催者発表の実績値。出典:各展示会主催者公式発表、ジェトロ


SIAL ParisとANUGAは隔年で、偶数年と奇数年に分かれています。どちらかは毎年開かれるという関係です。

規模の数値はいずれも主催者発表の実績値で、第三者監査を受けたものではありません。また食品・オーガニック全体の数字であって茶単独ではないため、茶の来場者規模として読まないでください。

出典:各展示会主催者公式発表/USDA Foreign Agricultural Service


有機で売るならBIOFACH


BIOFACHは世界最大級のオーガニック専門見本市で、出品者・来場者ともに高い専門性を持つ点に特徴があります。ジェトロがジャパンパビリオンを設置しており、BIOFACH 2026では日本茶、調味料、発酵食品、アルコールなど計18社が出展しました。日本茶が実際に出ている場です。

ジェトロはジャパンパビリオンの運営にあたり、会場内にデモスペースを設けて出展企業が自社ブース外で試飲・試食を提供できるようにしたほか、出展企業の商品カタログをJapan Streetに登録している欧州のバイヤーへ事前配布して来場を誘致しました。その結果、会期前から出展企業とバイヤーのやり取りが始まり、会期中はそれを踏まえた商談が行われたと報告されています。

注意すべきは申込の時期です。BIOFACH 2027(2027年2月16〜19日)のジャパンパビリオンは、募集が2026年7月17日で締め切られています。会期の約7か月前に窓口が閉じる。いま準備を始めるなら、現実的な目標は2028年です。


BIOFACHの出展要件・費用・申込スケジュール・日本企業の出展実績は「BIOFACHとは?有機認証がないと出られない世界最大の有機見本市」で詳しく解説しています。


出典:ジェトロ/NürnbergMesse


日本国内でも海外バイヤーに会える


海外に行かなくても、国内で海外バイヤーと商談できる場があります。初めての輸出では、渡航費をかけずに反応を確かめられる点で合理的です。

  • 【「日本の食品」輸出EXPO】東京ビッグサイト・年2回。農畜産物・水産物から飲料・調味料・加工食品まで日本の食品が出展し、60か国の海外バイヤーと国内の輸出商社が来場する。「出展社が日本企業、来場者が海外バイヤー」という輸出専門の展示会として、農林水産省・ジェトロの協力を得て立ち上げられた

  • 【FOODEX JAPAN】毎年3月・東京ビッグサイト。1976年から続くアジア最大級の食品・飲料B2B商談展。次回2027年で第52回

  • 【ジェトロ食品輸出商談会】ジェトロが海外バイヤーを招へいし、国内事業者と個別商談させる形式。幕張のSMTS併催(2月)、FOODEX併催、名古屋の「in東海」(11〜12月)、東京本部(12月)などで開催。2026年のSMTS併催回では16か国のバイヤーを招へいした。茶・水産・調味料・菓子・飲料と品目は幅広い


「日本の食品」輸出EXPOには、購買予算が1,000万円などの条件をクリアした海外VIPバイヤーを、事務局が宿泊費を負担して特別招待する仕組みがあります。会期初日のツアーに参加し、2日間以上来場し、出展社との商談アポイントを10件以上予定している、といった条件が設定されています。ブースで待つのではなく、誰が来るかを事前に確認して当たりに行く使い方が前提です。

ジェトロの商談会はサプライヤー登録を行い、バイヤー側が商談希望先を選ぶ方式です。展示会のように誰でも出られるわけではないので、募集時期を逃さないようにしてください。

2027年夏からは、「日本の食品」輸出EXPOと同時開催で「日本の食器・調理器具」輸出EXPOが初開催されます。茶葉と茶器を一体で提案したい場合は、この回が狙い目です。

出典:RX Japan/日本能率協会/ジェトロ


品評会と商談会を混同しない


日本茶には国内の著名なイベントがいくつかありますが、性格が異なります。輸出のための商談機能を持つものと、そうでないものを分けて考えてください。

  • 【日本茶AWARD】毎年11月・代官山T-SITEで「TOKYO TEA PARTY」を開催。消費者が審査に参加して大賞を決める品評会・コンテストで、海外バイヤーとの商談機能はない

  • 【世界お茶まつり】3年に1度・静岡県。2025年は10月に開催。茶の総合博覧会で、消費者向け・文化発信が中心。「世界緑茶会議」などのフォーラムは併設されるが商談会主体ではない

  • 【世界緑茶コンテスト】公益財団法人世界緑茶協会主催。茶葉の品質に加え商品コンセプトやパッケージなど商品性を競うコンテストで、商談会ではない

  • 【BIOFACH JAPAN】朝日新聞社とNürnbergMesseの共催。9月・東京ビッグサイト。ドイツのBIOFACHとは別物で、B2BとB2Cが混在する国内向けの色が強い。大規模な海外バイヤー招へいがあるという一次情報は確認できなかった


日本茶AWARDなど品評会と、JFEXなど商談会の機能の違いを対比した図

図H:品評会・コンテスト・博覧会と、海外バイヤーと直接商談できる場の違い。出典:日本茶AWARD実行委員会、世界お茶まつり実行委員会、世界緑茶協会、BIOFACH JAPAN、RX Japan、ジェトロ


受賞歴は商談の場で名刺代わりになりますが、受賞そのものが取引につながるわけではありません。バイヤーと会うための予算は、上記の商談会・展示会のほうに配分してください。

出典:日本茶AWARD実行委員会/世界お茶まつり実行委員会/世界緑茶協会/BIOFACH JAPAN


直近の確定会期(2026年9月時点)


  • SIAL Paris 2026:2026年10月17〜21日(パリ・ノール ヴィルパント展示会場)

  • 「日本の食品」輸出EXPO:2026年11月11〜13日(東京ビッグサイト)

  • BIOFACH 2027:2027年2月16〜19日(ニュルンベルク)※ジャパンパビリオンの募集は2026年7月17日で終了

  • Natural Products Expo West 2027:2027年3月2〜5日(アナハイム。展示ホールは3〜5日)

  • World Tea Expo 2027:2027年3月22〜24日(ラスベガス)

  • FOODEX JAPAN 2027:2027年3月・東京ビッグサイト(第52回)

  • 「日本の食品」輸出EXPO/「日本の食器・調理器具」輸出EXPO:2027年6月30日〜7月2日(東京ビッグサイト)

  • ANUGA 2027:2027年10月9〜13日(ケルン)

  • BIOFACH 2028:未公表


会期と募集要項は変わります。アグリゲーターサイトには前年の会期をコピーしただけのものが多いので、必ず主催者公式サイトかジェトロで確認してください。


出展費用は大半が非公表


見積もりを立てようとすると最初につまずく点です。主要な展示会の出展料は、公式サイトに料金表が載っていません。

  • ジェトロのジャパンパビリオン、「日本の食品」輸出EXPO、FOODEX JAPAN、World Tea Expoは、いずれも資料請求または担当者への問い合わせ制。公表された金額表は確認できなかった

  • 例外はANUGA。2025年は面積単価で早期割 337ユーロ/㎡、通常 347ユーロ/㎡、直前 399ユーロ/㎡と公表されていた。ただしこれは自社で直接出展する場合の単価で、ジャパンパビリオン経由の負担額とは別

  • 申込の締切は会期の半年から7か月前が目安。ANUGAの早期割は会期の1年以上前に設定されていた


ネット上の「相場」情報は根拠が示されていないものがほとんどです。概算が必要なら、主催者とジェトロの両方に資料請求して比較するのが確実です。


どこから始めるか


  • 有機茶で欧州を狙う → BIOFACH。ただし申込は会期の約7か月前に締まる

  • 茶の専門バイヤーに会う → World Tea Expo

  • 米国の専門食品・高級小売を狙う → Summer Fancy Food Show/Natural Products Expo West

  • 渡航せずに反応を見る → 「日本の食品」輸出EXPO(年2回)/ジェトロ食品輸出商談会

  • 欧州の流通ボリュームに当てる → SIAL Paris(偶数年)/ANUGA(奇数年)

  • 茶器とセットで提案する → 「日本の食器・調理器具」輸出EXPO(2027年初開催)


出展料を抑えるなら、ジェトロのジャパンパビリオンを活用する選択肢があります。ただし設置の有無は展示会ごと・年ごとに変わるため、必ず最新の募集要項で確認してください。

出典:各展示会主催者公式サイト/ジェトロ(2026年9月時点)


9. 使える公的支援


GFPと産地形成


農林水産省のGFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)は、輸出診断・産地形成・マッチングを提供しています。入口はGFPコミュニティサイトへの登録です。

茶では、GFPフラッグシップ輸出産地形成プロジェクトとして、静岡茶輸出拡大協議会や京都府農林水産物・加工品輸出促進協議会宇治茶部会などが認定されています。茶のフラッグシップ輸出産地は熊本・静岡・京都・鹿児島など8産地です。自社の産地が対象かどうかを確認する価値があります。


設備・体制への補助


  • 茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業(持続的生産強化対策事業のうち、令和7年度予算11.5億円)

  • 産地生産基盤パワーアップ事業のうち園芸作物等の先導的取組支援(令和6年度補正予算110億円のうち茶関連は4.5億円程度)

  • 自治体独自の支援。静岡市は抹茶生産向けの品種転換・改植に対する補助金を交付している


公募スケジュールは年度ごとに変わり、直前に変更されることもあります。制度名の変更や統合も頻繁です。実際に申請する際は、必ず所管省庁の最新の公募要領で現存とスケジュールを確認してください。


JFOODOとジェトロ


JFOODO(日本食品海外プロモーションセンター)は、米国・欧州で日本茶のオールジャパン・プロモーションを実施しています。対象は茶葉の栽培・製造・充填包装を日本国内で行う茶葉です。中心は現地消費者向けのプロモーションで、プロモーションサイト、Amazonでの特集、SNS運用などを手がけています。2026年10月からは米国向けに「OCHA SHOP CHANNEL」を開始し、抹茶にとどまらない日本茶全体の需要拡大を目指すとしています。過去には日本茶事業者16社と現地卸の商談イベントも実施しました。

ジェトロは各国の輸入制度ポータル、現地市場の価格調査、Japan Streetなどのオンライン商談基盤を提供しています。制度の一次情報を無料で確認できる窓口として、実務では最も使う頻度が高い先です。


10. よくある質問


有機JASを取らずに米国・EUに輸出することはできますか


制度上は可能です。有機認証は輸出の必須要件ではありません。ただし米国向けの64.9%、EU・英国向けの75.3%が有機栽培茶という実態があり、非有機だとバイヤーの候補リストに載りにくい。加えて、残留農薬で止まるリスクが構造的に高くなります。業務用原料として価格で勝負する場合を除き、有機を前提に設計することをおすすめします。


有機JAS認証の取得にはどれくらいの費用と期間がかかりますか


登録認証機関や圃場の規模によって大きく異なるため、本記事では具体的な金額を示しません。転換期間(慣行栽培から有機への移行期間)が必要な点と、毎年の維持審査費用が発生する点は共通です。複数の登録認証機関に見積もりを取って比較してください。


EUの同等性が2026年12月31日で切れたらどうなりますか


現時点で確定していることは、実施規則(EU)2021/2325で定められた有効期間が2026年12月31日までであるという事実だけです。延長されるのか、新しい枠組みに移行するのかはEU側の決定次第で、現時点では予測できません。仮に更新されない場合は、EU有機認証を直接取得する対応が必要になります。EU向けの中期計画を立てる際は、この日付を前提条件として置いてください。


抹茶とリーフ茶のどちらから始めるべきですか


自社が原料をどれだけ押さえられるかで決まります。抹茶は単価が高い一方で、原料のてん茶が需要に追いついていません。リーフ茶は量を確保しやすい反面、単価が低く、チャネルを選ばないと価格勝負になります。産地との関係が強く、てん茶を安定調達できるなら抹茶。そうでなければ、単一産地・単一品種のストーリーで戦えるリーフ茶を専門店チャネルに、というのが現実的です。


現地語のラベルは誰が作るのですか


通常は現地の輸入者またはパッカーが作成します。ただし原材料名・正味量・賞味期限の設定根拠・保存方法・製造者情報といった元データは日本側が提供します。翻訳の責任範囲と、表示内容に誤りがあった場合の責任の所在を、契約書に明記しておいてください。EUは国ごとに言語が異なるため、販売国を増やすたびにラベル制作費が発生します。


展示会は出展と視察のどちらから始めるべきですか


初回は視察をおすすめします。World Tea ExpoやSIAL Parisのようなコマ数の多い展示会では、どのゾーンにどういうバイヤーが来るのかを把握しないまま出展すると、小間位置で結果が大きく変わります。1回視察して出展者と来場者の構成を確認してから、翌年に出展する。この順序のほうが最終的な費用対効果は高くなります。


まとめ ― 欧米向けは制度設計から始まる


日本茶の米国・EU輸出で最初に越えるべき壁は、味でも価格でもなく制度です。

  • 米国向け輸出茶の64.9%、EU・英国向けの75.3%が有機栽培茶。有機は付加価値ではなく入場券に近い

  • 有機JASを取っただけではEUで「BIO」と名乗れない。検査証明書のTRACES提出と、ロゴを自社表示するなら外国格付表示業者の認証が要る

  • 日EU有機同等性の有効期間は2026年12月31日まで。中期計画の前提条件として押さえる

  • 米国はFDA施設登録の偶数年更新とFSVP対応が継続的なハードル。残留農薬は「基準がないこと」で止まる

  • EUはMRL未設定が一律0.01mg/kg。健康強調表示は原則使えず、訴求軸は産地・品種・製法に置く

  • 緑茶は2025年11月13日から米国の相互関税(IEEPA)の対象外。それ以前のコスト試算は前提が変わっている

  • チャネルを先に決める。専門店・小売・カフェ・ホテル・業務用原料・ECで、必要な荷姿とロットが変わる



制度を越えるための準備は、圃場の防除設計から始まります。輸出を決めてから動くのでは間に合いません。逆に言えば、この準備を済ませている産地・事業者は、それ自体が差別化要因になります。

食品・調味料の輸出全体の進め方については「食品・調味料の輸出 完全ガイドマップ2026」、茶器をあわせて提案する場合は「日本の茶器・急須を海外で売る実務ガイド」をご覧ください。

Link Globalは、日本企業の海外販路開拓を100社超・10カ国以上で支援してきました。茶の輸出について、チャネル選定・現地バイヤーの開拓・展示会出展まで個別にご相談いただけます。

ご相談はこちら:https://www.linkglobal.jp/contact

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