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ハラールは必須ではない|マレーシアへの抹茶・日本茶輸出

堤浩記
6 日前
読了時間: 22分

マレーシアは、日本茶・抹茶を出しやすい国です。いまのところ日本側で工場の登録は要らず、植物検疫証明書も要りません。東日本大震災後の産地証明の義務も2013年3月1日に廃止されています。2025年の日本からマレーシア向けの農林水産物・食品の輸出は291億円(前年比+26.3%)で、品目別では緑茶が牛肉に次ぐ2位でした。

一方で、出しやすいからこそ見落とされる点があります。マレーシアの食品規則は「茶」の品質を数値で定義していて、灰分や水溶性抽出物の基準を満たさないと「tea」と名乗れません。残留農薬は、マレーシアにもCodexにも基準がない農薬に0.01ppmが適用されます。ハラール認証は法的には必須ではありませんが、売り先によって求められ方が変わります。さらに2027年3月1日からは、輸入食品の製造工場に食品安全保証(HACCPなど)の実施が求められるようになります。

本記事では、抹茶・煎茶・ティーバッグ・抹茶ラテの粉をマレーシアに輸出するときに必要な手続きと、日本企業がつまずきやすい点を、ジェトロ・農林水産省・マレーシア政府の情報に基づいて整理します。HSコードや原産地証明、輸送など、仕向地を問わない抹茶輸出の基本は抹茶輸出のチェックリストで解説しています。


本記事の情報について

  • 情報の基準日:2026年9月29日時点で確認できた情報に基づきます。

  • 制度の骨格は、ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」に基づきます。このページの調査時点は2020年8月です。その後の変更は、2024年1月1日施行のラベル規則改正、2025年7月1日の売上税(SST)の対象拡大、JAKIMのハラール認証機関リスト(2026年1月30日時点)など、確認できたものを本文に反映しています。

  • 輸出額は、農林水産省「2025年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)」に基づきます。

  • マレーシアの残留農薬基準や関税率は改正されることがあります。出荷の前に、マレーシア保健省や輸入者を通じて最新版を確認してください。


結論:手続きは軽い。落とし穴は「品質規格」「残留農薬」「売り先」

  • 【日本側】工場の登録不要、植物検疫証明書不要、放射性物質関連の書類も不要(2013年3月1日に規制廃止)。ただし2027年3月1日からは、工場の食品安全保証の証明が輸入の条件になる

  • 【マレーシア側】輸入者が保健省のオンラインシステム「FoSIM」で登録して輸入する。加工された茶はそのまま輸入でき、未加工の茶葉は別途ライセンスが必要

  • 【品質規格】食品規則が「茶」を灰分・水溶性抽出物・着色料の有無で定義している。日本の分析証明書では通常測らない項目がある

  • 【残留農薬】茶に個別の基準値がある農薬は限られ、基準がない農薬は0.01ppm。日本で使える農薬がそのまま通るとは限らない

  • 【ハラール】法的義務ではない。売り先によって必要性が変わる

  • 【有機】マレーシアは日本の有機JASの同等性の相手国ではない


マレーシアへの茶の輸出は日本側・マレーシア側とも手続きが軽い一方、品質規格・残留農薬・売り先の3点と、2027年3月からの工場の食品安全保証に注意が必要であることを示す図

図1 手続きの軽さと、注意すべき3つの点。出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」をもとにLink Global作成


市場:マレーシアは日本茶の伸び筋

農林水産省によると、2025年の日本からマレーシアへの農林水産物・食品の輸出額は291億円で、国・地域別で13位、前年比+26.3%の伸びでした。品目別の上位は牛肉、緑茶、魚油(肝油を除く)の順で、緑茶は2番目の輸出品目です。

日本全体で見ても、緑茶の輸出は2025年に721億円(前年比+98.2%)と大きく伸びました。農林水産省は増加の背景として、欧米・ASEAN向けなどで、ラテやスイーツの原料になる抹茶を含む粉末状の茶が伸びたことを挙げています。

マレーシアはムスリムが多数を占める多民族国家で、華人系・マレー系・インド系で食習慣が違います。日本茶の売り方も、日本食レストランや日系小売、カフェの原料、ハラールを重視する量販店など、チャネルごとに求められるものが変わります。ASEANの消費者データはシンガポール・タイ・ベトナムについてASEANの日本茶市場の記事で整理しています。

出典:農林水産省「2025年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)」、同「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」


輸入の枠組み:日本側の登録は不要、輸入者がFoSIMで手続き


日本側で必要なもの

ジェトロによると、日本製の茶をマレーシアに輸出する場合、日本側の施設登録は不要です。緑茶は植物検疫証明書なしで輸出できます。東日本大震災以降に求められていた政府作成の産地証明は、2013年3月1日に廃止されました。

日本側で用意するのは、インボイスやパッキングリストなどの通常の貿易書類と、輸入者や小売から求められる分析証明書(COA)です。経済連携協定(EPA)の特恵税率を使う場合は特定原産地証明書が必要ですが、ジェトロはこれを紅茶・発酵茶(HS0902.30/0902.40)についてのみ必要としています。


マレーシア側:輸入者がFoSIMで手続き

マレーシアの輸入食品は、保健省の食品安全品質部(Food Safety and Quality Division)が税関と協力して管理しています。輸入者はオンラインの食品安全情報システム「FoSIM(Food Safety Information System of Malaysia)」で輸入者・輸入代理人として登録し、輸入手続きを行います。FoSIMは税関のシステムと連携しており、輸入申告の情報は税関と共有されます。ジェトロ(2020年調査時点)によると、保税区から貨物を引き取る際には、輸入許可証、税関申告書(K1フォーム)、インボイス、船荷証券、梱包リストが必要です。

到着時には空港や港で書類検査と現物検査が行われ、不合格の場合は輸入が許可されません。


加工された茶と、未加工の茶葉で手続きが変わる

ジェトロによると、マレーシアへの茶の輸入は「加工茶葉」と「未加工茶葉」で手続きが分かれます。加工茶葉はそのまま輸入できますが、未加工茶葉は農業局に保証金を払って輸入ライセンスを取る必要があります。区分は茶葉の破砕の度合いで判断されます。

小売用の抹茶や煎茶、ティーバッグは加工茶葉として扱われると考えられます(推定)。一方、荒茶や碾茶をバルクで送り、現地で挽いたり仕上げたりする場合は、どちらに当たるかを輸入者を通じて事前に確認してください。

出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」(調査時点2020年8月)


2027年3月1日から:工場の食品安全保証が輸入の条件に


マレーシアは1985年食品規則に「規則3B」を新設し、輸入食品に食品安全保証の実施を求めることを決めています。施行は2027年3月1日です。保健省の食品安全品質部門(FSQP)が認める食品安全保証を実施している施設で作られた食品でなければ、輸入・販売・広告ができなくなります。対象は、製造・包装・加工などを経た輸入食品です。

保健省の指針によると、輸入者は輸入の前に、海外の製造施設ごとに有効な食品安全保証の認証か裏付けとなる書類を入手して保管し、保健省の担当官から求められたらすぐに提示できるようにしておく必要があります。認められる仕組みの例として、GHP、GMP、HACCP、FSSC 22000、BRCGS、IFS Food、SQF、ISO 22000などが挙げられています。保健省は、輸出国の当局との協議や、海外の製造施設の現地調査を行うこともあるとされています。


日本の茶の生産者にとっての意味


抹茶や煎茶は、荒茶工場、仕上げ工場、小分け・包装工場と複数の施設を経ることが多い商品です。輸入者は最終的に製品を作った施設の証明を求めることになるため、どの工場の証明が必要になるかを早めに輸入者とすり合わせてください。

日本では2021年6月から食品衛生法でHACCPに沿った衛生管理が原則として義務化されていますが、小規模事業者向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は第三者認証ではありません。これがマレーシアで裏付け書類として認められるかは、指針の詳細と輸入者の判断を確認する必要があります(推定:第三者認証があるほうが確実)。FSSC 22000やJFS規格などの認証を持っている工場は、その証明書を輸入者に渡せるように準備しておくと、2027年以降の商談で有利です。

出典:ChemLinked「Malaysia Meat Regulation」(2026年9月、保健省FSQP「Guidelines on Regulation 3B: Food Safety Assurance Programme for Imported Food」の要約を含む)、Global Product Compliance(2025年2月のWTO通報)。施行前のため、細部は保健省の最新の指針で確認してください


HSコードと関税・税


抹茶のHSコードは0902.10か0902.20

緑茶(発酵していないもの)は、直接包装の正味重量が3kg以下なら0902.10、3kgを超えるなら0902.20に分類されます。小売用の缶や袋に入った抹茶は0902.10、業務用の大袋は0902.20が基本です。砂糖や粉乳を混ぜた抹茶ラテの粉は茶ではなく調製品として別の番号になるため、税率や手続きも変わる可能性があります。抹茶ラテの粉の分類の考え方は抹茶輸出のチェックリストで詳しく扱っています。


関税は0〜5%

ジェトロの整理では、マレーシアの茶(HS0902)の関税率は、一般税率・日本マレーシア経済連携協定(JMEPA)・日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)のいずれでも0〜5%の範囲です。前述のとおり、ジェトロは特定原産地証明書を紅茶・発酵茶についてのみ必要としています。緑茶や抹茶で特恵税率を使う必要があるかは、細分番号ごとにマレーシア関税局の「JKDM HS Explorer」で確認してください。


売上税(SST):茶は対象外

マレーシアでは2018年9月から売上・サービス税(SST)が導入されています。ジェトロ(2020年調査時点)は茶のSST税率を0%としています。2025年7月1日にマレーシア政府は売上税の免税品目の一覧を新しい命令に置き換え、対象を広げました。新たに5%が課された品目として公表されたのはサーモン、キングクラブ、トリュフ、輸入果物(りんご・オレンジなどを除く)などで、茶は挙がっていません。ただし、新しい免税命令の中で茶がどう扱われているかは一次資料で確認できていないため、輸入前に輸入者を通じて確認してください。

抹茶ラテの粉のような調製品は茶とは別のHSコードになります。調製食品に5%が課される例も解説されているため、売上税の扱いは別に確認してください。

出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」、マレーシア財務省プレスリリース(2025年6月)


食品規格:マレーシアの「茶」には数値基準がある

マレーシアの1985年食品規則は、茶を「1つ以上の品種の発酵・半発酵・非発酵の葉、芽、柔らかい茎を、蒸し・乾燥・焙煎またはその組み合わせで加工した製品」と定義したうえで、次の基準を置いています。

  • 灰分の合計が7%を超えないこと。そのうち半分以上は沸騰水に溶けること

  • 30%以上の水溶性抽出物が得られること

  • 偽物や、枯れた・腐った・カビの生えた葉や茎、異物を含まないこと

  • 着色物質を含まないこと(許可された着色料かどうかにかかわらず)


マレーシアの食品規則が定める茶の規格(灰分7%以下、水溶性抽出物30%以上、着色料不可)と、分析証明書に追加したい項目を示す図

図2 マレーシアの食品規則における「茶」の規格。出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」(1985年食品規則の整理)をもとにLink Global作成


日本の抹茶の分析証明書は、残留農薬・重金属・一般生菌・水分などが中心で、灰分や水溶性抽出物は項目に入っていないことがよくあります。マレーシア向けに出す前に、この2項目を分析しておくと、輸入者からの問い合わせにすぐ答えられます。

着色料の禁止も重要です。色味を補うために着色料を加えた抹茶風の粉は、マレーシアでは「茶」として売れません。


粉茶・インスタント茶・ティーミックスの定義

食品規則は、茶をふるって出た「粉茶」(0.707mmの穴を通過するもの、沸騰水に不溶の灰分5%以下)、茶の水抽出物だけで作る「インスタント茶」(カフェイン4%以上、タンニン7%以上など)、香りを加えた「センティッドティー」、砂糖などを加えられる「ティーミックス」を別々に定義しています。石臼や機械で挽いた抹茶がどの定義に当たるかは明記されていないため、ラベルの品名の付け方は輸入者と相談してください。

ティーミックスは、すべての包装に使い方の表示が必要で、そのまま飲める形のものは茶飲料として扱われます。

出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」(1985年食品規則の整理)


残留農薬:基準がない農薬は0.01ppm


茶に個別の基準がある農薬は限られている

マレーシアの残留農薬基準は、1985年食品規則の第41条と第16付表で品目ごとに定められています。ジェトロの整理(2020年8月時点)では、茶に個別の基準値があるのは、アメトリン、キャプタン、デルタメトリン、ジコホール、ジメトエート、ジチオカルバメート類、ジウロン、エンドスルファン、グルホシネート、グリホサート、メチダチオン、MSMA、トリデモルフの13成分です。ただし、第16付表はその後の改正(2020年の食品規則改正)で対象食品と基準値が大きく見直され、2024年12月にも新しい農薬の追加などを含む改正案がWTOに通報されています。茶の基準値も変わっている可能性があるため、最新の付表で確認してください。


Codexにもなければ0.01ppm

食品規則で指定のない農薬はCodexの基準値に従い、Codexにも基準がない農薬には一律0.01mg/kg(0.01ppm)が適用されます。日本の茶で使われる農薬の中には、マレーシアにもCodexにも茶の基準がないものがあり、日本の基準を満たしていても0.01ppmを超えれば不合格になります。台湾向けで起きている問題と同じ構造です(台湾で止められる日本茶で詳しく解説しています)。

農林水産省は「諸外国における残留農薬基準値に関する情報」で、茶について日本とマレーシアを含む各国の基準値を比較できる表を公開しています。出荷前に、使っている農薬をこの表と照らし合わせ、必要ならマレーシア向けのロットで残留農薬を分析してください。有機栽培茶は、この点で有利です。


マレーシアの残留農薬基準の判定フロー。マレーシアの基準、Codexの基準の順に確認し、どちらにもなければ0.01ppmが適用される

図3 残留農薬の基準値の決まり方。出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」をもとにLink Global作成


重金属の基準

茶、粉茶、茶抽出物、着香茶の重金属の上限は、ヒ素1mg/kg、鉛2mg/kg、水銀0.05mg/kg、カドミウム1mg/kg、アンチモン1mg/kgです(1985年食品規則 第38条・第14付表)。

出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」、農林水産省「諸外国における残留農薬基準値に関する情報」


ラベル:英語かマレー語で、2024年1月の改正に対応

マレーシアで売る包装食品のラベルは、1985年食品規則のPART IVに従います。輸入食品はマレー語または英語で表示し、必要に応じて他の言語を併記できます。主な表示項目は次のとおりです。

  • 食品の適切な名称(主原料の一般名を含む説明)

  • 原材料(2種類以上の場合は重量の多い順)

  • 過敏症を起こす原材料(グルテンを含む穀類、ピーナッツや大豆を含むナッツ類、魚類、乳・乳製品、卵・卵製品など)

  • 牛肉・豚肉・その派生物・ラードを含む場合はその旨。添加アルコールを含む場合は大文字・太字での表示

  • 食品添加物の含有

  • 正味量

  • 製造者または包装者の名称と住所、マレーシアの輸入者の名称と住所、原産国


2024年1月1日には、ラベル規則の改正(Food (Amendment) (No.4) Regulations 2020)が施行されました。食品添加物は機能分類とINS番号(または化学名)で表示すること、特徴となる原材料の配合率の表示(QUID)、栄養表示の対象の拡大などが含まれます。純粋な抹茶や煎茶は影響が小さいものの、抹茶ラテの粉のように添加物や砂糖を使う商品は、表示の作り直しが必要になる場合があります。なお、米国農務省のレポートによると、輸入者の住所の記載漏れのように安全上の問題がない軽微な不備は、マレーシア国内での貼り直しが認められることがあります。


茶に固有の表示ルール

  • 茶・粉茶・茶エキス・センティッドティーが1つの地域だけで生産された場合、その地域名をラベルに表示できる(宇治、八女、静岡などの産地名を活かせる)

  • 規格を満たさない製品に「tea(茶)」の語を使ってはならない

  • 茶抽出物・インスタント茶は、ブランド名を除いて最も大きな文字で「tea extract」「instant tea」などと表示する

  • センティッドティーは、香り物質の名称とともに「scented tea」と表示する


出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」、米国農務省海外農業局 GAIN Report「Revised Malaysian Labeling Requirements Effective January 1」(2024年1月)


ハラール:必須ではないが、売り先によって効く

マレーシアはイスラム教を国教とし、政府機関のマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)がハラール認証を行っています。ジェトロによると、ハラール認証は強制ではありませんが、輸入者から取得を求められるケースがあります。

日本で取得する場合は、JAKIMが認めた海外の認証機関の認証が必要です。JAKIMの認定リスト(2026年1月30日時点)を集計した民間の一覧によると、認められた海外の機関は48か国・94団体で、日本は6団体です。認定は更新されるため、依頼する前にJAKIMの最新リストで確認してください。

抹茶や煎茶は原料が茶葉だけなので、ハラール上の論点は原料よりも、製造ラインの共用、洗浄剤、アルコールの使用、添加物の由来にあります。抹茶ラテの粉のように乳原料や乳化剤を使う商品は、原料の由来まで確認が必要です。

必要かどうかは売り先で決まります。日本食レストランや日系小売のように「日本の品質」を買う売り先ではハラール認証が問われないこともあれば、ムスリムの客層が中心の量販店やカフェチェーンのように、認証がないと棚に並ばない売り先もあります。どの売り先が良い・悪いではなく、狙う売り先から逆に必要な認証を決めてください。


マレーシア向けの茶でハラール認証が必要かどうかを、売り先から逆算して決める流れを示す図

図4 ハラール認証の要否は売り先から決める。出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」、JAKIM認定の海外ハラール認証機関リスト(2026年1月30日時点)をもとにLink Global作成


出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」、JAKIM認定の海外ハラール認証機関リスト(2026年1月30日時点)


有機:マレーシアは有機JASの同等性の相手国ではない

日本の有機JAS制度と同等性を相互に認めている国・地域は、米国、カナダ、EU、英国、スイス、台湾などで、マレーシアは含まれていません。米国やEUのように「有機JAS認証があれば現地でorganicと表示できる」仕組みはないため、マレーシアで「organic」と表示して売るかどうか、その根拠をどう示すかは輸入者と確認してください。

ただし、有機栽培茶は残留農薬の0.01ppm問題を避けやすいという実務上の利点があり、表示とは別に価値があります。米国・EU向けの有機茶の扱いは日本茶の米国・EU輸出の記事で解説しています。


販売側の規制:外資の卸・小売はライセンスが必要

ジェトロ(2020年調査時点)によると、外資が51%以上出資する企業がマレーシア国内で茶を卸売・小売する場合は、国内取引・消費者省の卸売・小売許可(WRTライセンス)が必要で、最低払込資本金は100万リンギ以上とされています。このほか、店舗や事務所を置く地方自治体の営業許可も必要です。

この条件があるため、日本の茶の生産者や茶商の多くは、現地に法人を作らず、マレーシアの輸入者・卸を通じて販売しています。どの輸入者と組むかで、FoSIMの手続き、ハラールの要否、売り先が決まると考えてください。

出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」(調査時点2020年8月)


ケーススタディ:4つの商品で考える

ここまでのルールを、相談の多い商品に当てはめます。いずれも一般的な仕様を想定した例で、実際の判断は商品ごとの配合と分析結果で行ってください。


例1:宇治産の抹茶30g缶(小売用)

HS0902.10の加工茶として輸入できると考えられます。ラベルは英語で作り、単一産地なら「Uji」の産地名を表示できます。灰分と水溶性抽出物の分析値をCOAに加え、使っている農薬がマレーシア・Codexの基準にあるかを照合します。日系小売や日本食レストラン向けならハラール認証は問われないこともありますが、ムスリムの客層が中心の店に並べるなら、JAKIMが認めた機関の認証を検討します。


例2:カフェ向けの業務用抹茶1kg袋

3kg以下なのでHS0902.10です。カフェチェーンはハラール認証の有無を取引条件にすることがあるため、商談の最初に確認します。業務用は開封後の品質劣化が早いので、小分け包装や窒素充填の有無も評価されます。


例3:抹茶ラテの粉(砂糖・粉乳入り)

茶ではなく調製品なので、HSコード、関税、売上税の扱いを別に確認します。品名の区分(ティーミックスなど)は輸入者と確認し、2024年の改正に合わせて添加物は機能分類とINS番号で表示します。粉乳や乳化剤の由来はハラールの審査で問われるため、原料メーカーの証明をそろえておきます。


例4:煎茶のティーバッグ

加工茶として輸入でき、HS0902.10が基本です。包材は食品規則PART VIの容器の規定に従う必要があります。リーフ茶より抽出が簡単なため、茶を淹れる習慣がない層にも届きやすい形です。


輸送と保管:高温多湿を前提に設計する

マレーシアは一年中高温多湿で、港湾や倉庫、店頭で茶が熱と湿気にさらされる時間が長くなりがちです。抹茶は光と湿気と熱で色と香りが急速に落ちるため、日本国内より一段厳しい条件で包装と輸送を考えます。

  • 包装:遮光性と防湿性の高い包材を使い、脱酸素剤や窒素充填で酸化を抑える

  • 輸送:海上コンテナは内部が高温になりやすいため、少量で高単価の抹茶は航空便や温度管理コンテナも検討する

  • 現地保管:輸入者の倉庫が空調・低温保管に対応しているかを確認する

  • 賞味期限:輸送と店頭の期間を見込み、現地での販売期間が十分に残る期限を設定する


抹茶の品質保持の考え方は、抹茶輸出のチェックリストの品質維持の章で詳しく解説しています。


シンガポール向けとの違い

同じASEANでも、隣のシンガポールとは前提が違います。シンガポールでは茶は加工食品として扱われ、輸入者がシンガポール食品庁(SFA)に登録して輸入し、輸入時に物品サービス税(GST)9%がかかります。マレーシアは茶の売上税が免税で、茶の品質を数値で定義する規格と、ハラールの判断がより重くなります。両国を同じ商品・同じラベルで回そうとすると、どちらかで合わないことがあるので注意してください。シンガポールの食品輸出の全体像はシンガポールへの食品輸出完全ガイドで解説しています。


品目別の早見表

  • 【小売用の抹茶(缶・袋、3kg以下)】HS0902.10/加工茶として輸入可(推定)/灰分・水溶性抽出物・着色料なしを確認、英語かマレー語のラベル

  • 【業務用の抹茶(3kg超の大袋)】HS0902.20/加工茶として輸入可(推定)/カフェ・製菓向け。ハラールの要否は売り先次第

  • 【煎茶・玉露などのリーフ茶】HS0902.10/0902.20/加工茶として輸入可/産地名は単一産地なら表示可

  • 【ティーバッグ】HS0902.10が基本/加工茶として輸入可/包材の素材にも注意(食品規則PART VI)

  • 【抹茶ラテの粉(砂糖・粉乳入り)】茶とは別のHSコード(調製品)/品名の区分(ティーミックス等)は輸入者と確認、添加物のINS番号表示、乳原料のハラール確認/売上税の扱いは別途確認

  • 【荒茶・碾茶のバルク】HS0902.20が基本/未加工茶葉に当たるかを事前確認(該当すれば農業局の輸入ライセンスと保証金)


マレーシアへ輸出する茶の品目別に、HSコード、輸入の扱い、注意点を整理した表

図5 品目別のHSコードと注意点(2026年9月時点)。「推定」は一次情報で明示されていない部分。出典:ジェトロ、マレーシア食品規則をもとにLink Global作成


輸出までの流れ:7つのステップ

  • ステップ1:売り先を決める(日本食レストラン、日系小売、カフェ原料、ハラール重視の量販など)

  • ステップ2:売り先に合う輸入者を探し、FoSIMの登録状況とハラールの要否を確認する

  • ステップ3:使っている農薬を、マレーシア・Codexの基準と照合する(基準がなければ0.01ppm)

  • ステップ4:残留農薬・重金属に加え、灰分と水溶性抽出物を分析し、COAと工場の食品安全保証の証明(HACCP等)を用意する

  • ステップ5:英語またはマレー語のラベルを作る(2024年改正対応、輸入者の名称・住所、原産国)

  • ステップ6:HSコードを確定し、関税と売上税の扱いを輸入者と確認する

  • ステップ7:高温多湿の環境を前提に、遮光・防湿の包装と輸送方法を決めて出荷する


マレーシアへ抹茶・日本茶を輸出するまでの7つのステップを示すフロー図

図6 輸出までの7ステップ。出典:ジェトロ「茶の輸入規制、輸入手続き(マレーシア)」をもとにLink Global作成


輸入者に最初に確認すること

マレーシア側の手続きは輸入者が行うため、どの輸入者と組むかで、売り先も必要な書類も変わります。最初の商談で次の点を確認してください。

  • FoSIMに輸入者として登録済みか、茶の輸入実績があるか

  • 主な売り先はどこか(日本食レストラン、日系小売、カフェ、ハラール重視の量販など)

  • ハラール認証を求めるか。求める場合、どの認証機関なら受け入れられるか

  • ラベルは英語でよいか、マレー語の併記を求めるか。シールは日本側とマレーシア側のどちらで貼るか

  • 空調のある倉庫と、温度管理ができる物流を持っているか


よくある失敗

  • 日本の基準は満たしているが、マレーシアにもCodexにも基準がない農薬が検出され、0.01ppmを超えて不合格になる

  • 色味を補うために着色料を使った抹茶風の粉を「matcha tea」として出してしまう

  • 抹茶ラテの粉を茶として申告し、HSコードや表示が合わない

  • ハラールが必要な売り先なのに、JAKIMが認めていない機関の認証を取ってしまう

  • 有機JAS認証があるからと、根拠を確認せずに「organic」と表示する

  • 荒茶・碾茶のバルクを送ったら、未加工茶葉として輸入ライセンスを求められる


商談前のチェックリスト

  • 使っている農薬の一覧と、マレーシア・Codexの茶の基準値との照合結果

  • 残留農薬・重金属の分析結果(マレーシア向けロット)

  • 灰分と水溶性抽出物の分析値

  • 着色料を使っていないことの確認

  • HSコード(0902.10/0902.20/調製品)と、関税・売上税の扱い

  • 英語またはマレー語のラベル案(輸入者の名称・住所、原産国、アレルゲン、添加物のINS番号)

  • ハラール認証の要否と、必要な場合の認証機関(JAKIM認定か)

  • 包装仕様(遮光・防湿・窒素充填)と賞味期限

  • 工場の食品安全保証の証明(HACCP、FSSC 22000、ISO 22000などの認証や衛生管理の記録。2027年3月1日以降の輸入に必要)


よくある質問(FAQ)


Q. マレーシアに抹茶を輸出するのに、ライセンスは必要ですか?

現時点では日本側の登録は不要です。マレーシア側では、輸入者が保健省のFoSIMで登録して輸入します。2027年3月1日からは、製造工場が食品安全保証(HACCPなど)を実施している証明を輸入者が持っている必要があります。加工された抹茶はそのまま輸入でき、未加工の茶葉の場合だけ農業局の輸入ライセンスが必要です。外資が51%以上出資する会社が国内で卸・小売をする場合は、WRTライセンスが別に必要です。


Q. マレーシア向けの抹茶のHSコードは何番ですか?

直接包装の正味重量が3kg以下なら0902.10、3kgを超えるなら0902.20です。砂糖や粉乳を混ぜた抹茶ラテの粉は茶ではなく調製品として別の番号になります。


Q. ハラール認証は必須ですか?

法的には必須ではありません。ただし、ムスリムの客層が中心の売り先では求められることがあります。取得する場合は、JAKIMが認めた海外の認証機関で取る必要があります。


Q. ラベルはマレー語でなければいけませんか?

輸入食品はマレー語または英語で表示できます。必要に応じて他の言語を併記できます。


Q. 関税や税金はかかりますか?

茶(HS0902)の関税率は0〜5%の範囲です。売上税(SST)はジェトロの整理で0%で、2025年7月の拡大で新たに課税された品目にも茶は挙がっていませんが、新しい免税命令での扱いは輸入者経由で確認してください。抹茶ラテの粉など別のHSコードになる商品は、関税・売上税を別に確認してください。


Q. マレーシアの茶の残留農薬基準はどうなっていますか?

茶に個別の基準値がある農薬は限られていて、それ以外はCodexの基準に従い、Codexにもない農薬は0.01ppmが適用されます。日本の基準を満たしていても不合格になる場合があるため、出荷前に照合と分析をしてください。


Q. 有機JAS認証があれば、マレーシアで「organic」と表示できますか?

マレーシアは日本の有機JASの同等性の相手国ではないため、米国やEUのような仕組みはありません。表示するかどうかとその根拠は、輸入者と確認してください。


Q. 「宇治抹茶」「八女茶」のような産地名はラベルに書けますか?

食品規則は、茶・粉茶・茶エキス・センティッドティーが1つの地域だけで生産された場合に、その地域名を表示できるとしています。複数の産地をブレンドした商品に特定の産地名だけを書くことは避けてください。


Q. マレーシアとシンガポールに同じラベルで出せますか?

英語表記という点は共通ですが、輸入者の名称・住所は国ごとに違い、表示項目や添加物の書き方にも違いがあります。国ごとにラベルを作るか、各国の輸入者情報をシールで貼る前提で設計してください。


Q. 2027年からマレーシア向けの食品にHACCP認証が必要になるのですか?


2027年3月1日から、マレーシア保健省が認める食品安全保証(HACCP、GMP、FSSC 22000、ISO 22000など)を実施している施設で作られた食品でなければ輸入できなくなります。輸入者は製造施設ごとに証明を保管する必要があります。どの証明が認められるかの細部は、保健省の指針で確認してください。


まとめ:マレーシアは「規格と農薬」を先に押さえれば出しやすい

マレーシアへの日本茶・抹茶の輸出は、日本側の手続きが軽く、関税・売上税の負担も小さい、条件の良い市場です。その分、つまずく場所ははっきりしています。茶の数値規格(灰分・水溶性抽出物・着色料)、基準がない農薬の0.01ppm、そして売り先によって変わるハラールの要否です。この3点を商談の前に押さえておけば、輸入者との話は早く進みます。

Link Globalは、マレーシアやシンガポール、台湾などアジア市場への食品輸出について、規制の確認から輸入者探し、展示会出展までを支援しています。個別の商品について相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。

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