業種も段階も違う6つの相談にどう応えたか|福岡県の海外展開アドバイザーとして【支援事例】
海外展開の相談は、会社ごとに前提がまったく違います。海外展開のどのステージにいるのか、これまでにどんな経験があるのか、社内にどんな体制があるのか、この先どこまで広げたいのか。前提が違えば、同じ「台湾で売りたい」という相談でも、成否を分ける論点は変わります。ある会社では認証と商標が、別の会社では価格帯と売り場が、また別の会社では取引相手との約束の仕方が鍵になります。
Link Global代表の堤浩記は、福岡県の海外展開支援拠点「グローバルコネクト福岡」で、2025年度から海外展開支援アドバイザーを務めています。この記事では、これまでに対応した相談の中から、業種も段階も異なる6つの事例をピックアップし、それぞれの相談で何が本当の論点だったのか、どう応えたのかを紹介します。企業名や取引の具体的な内容は伏せています。
この事例のポイント
電子機器、伝統工芸、健康関連機器、印章、食品、菓子と、業種の異なる相談に対応しています。海外展開のステージ、これまでの経験、社内の体制、今後の計画も、会社ごとにまったく違います。
相談された内容をそのまま調べるのではなく、まず「何が本当の論点か」を見極めます。その論点に合わせて、規制・市場・販路・交渉のどこに力を入れるかを決めています。
助言は面談で終わらせず、調査結果を提案資料・商談資料・議事録にまとめてお渡ししています。
日程に無理がある計画や、裏付けの取れない話は、そのことを先にお伝えしています。
支援の概要
【支援の枠組み】福岡県「グローバルコネクト福岡」の個別コンサルティング(県内の中小企業は無料で利用できます)
【担当】株式会社Link Global 代表取締役 堤浩記(グローバルコネクト福岡 海外展開支援アドバイザー)
【相談企業の業種】電子機器、伝統工芸、健康関連機器、印章、水産加工品、菓子など
【主な対象市場】台湾、香港、シンガポール、米国ほか
【形式】オンライン面談が中心。初回はグローバルコネクト福岡の事務局も同席します
【Link Globalが担ったこと】事前の調査、面談での助言、規制・市場データの確認、相談後の提案資料・商談資料の作成
グローバルコネクト福岡は、福岡県が2025年5月に開設した支援拠点です。個別コンサルティングのほか、海外展開オンラインセミナーや、海外バイヤーを招いた商談会なども開いています。2026年7月には、同拠点のオンラインセミナーで堤が「台湾市場進出の第一歩」と題して講師を務めました(開催報告)。セミナーを聞いた企業から、その後に個別の相談をいただくことも少なくありません。
福岡県の支援制度の全体像は「福岡県の海外展開支援制度・補助金完全ガイド2026」にまとめています。

図1:6つの相談事例。会社の状況が違えば、見極めるべき論点も変わります(企業名・地域は伏せています)。
事例1:印章の製造販売会社|越境ECとインバウンドの両面から販路を考える
相談時の状況:海外への販売も、ネット販売も初めて。店頭の運営と製作を続けながらの取り組みで、新しいことに割ける時間は限られていました。
見極めたポイント:ご相談は「越境ECをどこに出店するか」でしたが、話を伺うと、店頭に来ている訪日客との接点がまったく生かされていないことが分かりました。輸出とインバウンドを別々に考えないことが論点でした。
台湾・香港向けの越境ECに初めて取り組む印章の製造販売会社から、どの商品を、誰に、いくらで、どこで売るかについて相談を受けました。
輸出の面では、出店を検討していた台湾のデザイン雑貨モールで、同じカテゴリの商品がどんな価格帯で、どのように売られているかを公開データから調べ、出店の順番や価格帯、商品の広げ方を提案しました。印材については、動物性の素材は種類によって輸出前の個別確認が必要になることもお伝えしています。
インバウンドの面では、すでに店頭に来ている訪日客に着目しました。お土産の購入は一度きりで終わりがちです。手彫りの印章はその場で渡せないからこそ、配送先や連絡先を受け取り、帰国後のレビューや再注文につなげられます。店頭での接点を越境ECの最初の顧客づくりに生かす設計を提案しました。
越境ECとインバウンドを別々の施策ではなく、1本の流れとして組み立てた事例です。台湾向けの越境ECについては「Pinkoi(ピンコイ)で日本の工芸品を売る完全ガイド」でも解説しています。
事例2:電子機器メーカー|台湾での発売日から逆算して、認証・商標・関税分類を整理する
相談時の状況:台湾の代理店との取引が固まりつつあり、数か月後に発売を控えた段階。その先には、ほかのアジア市場への展開も計画していました。
見極めたポイント:関係しそうな規制をすべて調べるのではなく、製品の用途と対象製品を絞り込み、発売日に間に合う順番で手続きを並べることが論点でした。
台湾の代理店との取引が決まりかけ、数か月後に発売を控えた計測機器メーカーからの相談です。台湾でどんな法規制や認証が必要か、現地法人を作るべきか、日本側で必要な手続きは何か、試験は認証機関に頼む必要があるか、といった点を確認したいというご相談でした。
最初に確かめたのは、製品の用途です。医療用途ではなくスポーツの計測に使う機器であることを確認し、適用される規制の範囲を絞りました。対象製品も、日本から輸出する1製品に絞り込んでいます。そのうえで、次の点を資料にまとめてお渡ししました。
商標:台湾は先に出願した者が権利を得る先願主義のため、ブランド名の出願を最優先にする。
認証:無線機器の認証(NCC)、電気製品の安全認証(BSMI)、台湾版RoHSが関係しうる。どれが必要かは、製品の関税分類(HSコード)を確定させることが判断の出発点になる。
輸出管理:外為法上の該非判定は、自社で行う必要がある。
取引の形:代理店が輸入者になるため、現地法人は原則不要。貿易条件は、売り手が輸入国の関税まで負担するDDPを避ける。
日程:発売日から逆算した工程表と、公的な専門機関に確認すべきことの切り分け。
台湾の認証と商標については「台湾のBSMI・NCC認証ガイド」「台湾の商標登録の費用・期間・手続き」で解説しています。
事例3:伝統工芸の織元|初めての海外市場で、商品の「物語」を確かめてから使う
相談時の状況:海外への販売は初めて。工房として新しい市場に挑むにあたり、資金の手当ても含めて進め方を固めたい段階でした。
見極めたポイント:商品の物語をどう魅力的に伝えるかより先に、その物語に裏付けがあるかを確かめることが論点でした。
伝統的な織物を手がける織元から、初めての海外市場への進出について相談を受けました。その市場と産地には歴史的なつながりがあるといわれており、それを商品の物語として使いたいというご相談です。
面談では、強みを「物語」と「製品そのもの」の2つに分けて整理しました。製品の強みは、染めや織りの技術と手仕事の質です。物語は現地のデザイナーや感度の高い買い手に響く一方、根拠があいまいなまま使うと、かえって信頼を失いかねません。
そこで、よく語られている歴史的なつながりを一次資料で確かめました。その結果、一般に言われている説の一部は裏付けが取れず、誤解に基づいている可能性があることが分かりました。お渡しした発信ガイドでは、確かめられた事実と、確かめられなかったことを分けて示し、言い過ぎにならない伝え方を提案しています。
あわせて、現地で協業や販売の相手になりうる先を具体的に洗い出し、最初のお披露目の場から逆算した工程表をまとめました。行政の後押しについては、待つのではなく産地の側から企画を立ち上げ、県や市に参加してもらう形が動きやすいこと、補助金は原則として後払いのため、つなぎの資金まで含めて計画する必要があることもお伝えしました。
事例4:健康関連機器メーカー|海外の機関と覚書を結ぶ前に、何を約束し、何を約束しないかを決める
相談時の状況:すでに現地の研究機関や企業との共同事業が動き出し、検証用の機器を送る段階。協議の日まで時間は限られていました。
見極めたポイント:覚書を結ぶかどうかではなく、どの約束に拘束力を持たせ、どの約束を柔軟に残すかが論点でした。
台湾の研究機関や企業と共同で事業を進めることになった健康関連機器メーカーから、現地で覚書(MOU)の協議に臨む前の相談を受けました。協議までの時間は限られており、どんな心構えで、何を決めて臨むべきかを整理したいというご相談です。
助言の中心は、拘束力を二層に分けることでした。協力の範囲や役割、期間といった内容は、柔軟に見直せるよう拘束しない。一方で、秘密保持、検証で得られるデータ、知的財産、準拠法は、拘束力のある条項として押さえておく。このほか、次の点を面談の翌朝に資料と議事録にまとめてお送りしました。
複数の相手と結ぶ場合は、公表用の覚書を本体にし、相手ごとの実務は付属文書で定める。
締結後の計画は、導入先の数や時期など、相手に数字で示してもらう。
独占的な販売を求められたら、具体的な約束とセットで応じる。その場で即答せず、持ち帰って判断する。
対話アプリでのやり取りなど、口頭で決まったことは必ず文書に残す。
その後:覚書の案を事前にレビューし、論点を整理したうえで協議に臨んだことで、交渉をスムーズに進めることができました。
覚書の活用の考え方は「海外企業とのMOU締結を戦略的に活用する方法」で、自治体と台湾企業の覚書を支援した事例は「自治体と海外企業のMOU締結を支援した事例」で紹介しています。
事例5:輸出経験のある食品会社|家庭向けから業務用へ広げ、商談会の資料をつくる
相談時の状況:複数の国への輸出実績があり、主に商社を通じて取引している会社。輸出に伴う事務の負担も課題になっていました。
見極めたポイント:輸出先の国を増やすことではなく、売り方を家庭向けから業務用・直接取引へ変えることが論点でした。
すでに複数の国へ乾物を輸出している水産加工品の会社から、次の一手について相談を受けました。これまでの輸出は家庭向けの商品が中心で、1回あたりの取引規模も大きくありません。飲食店や中食向けの原料として、業務用に広げたいというご相談です。九州で開かれる食品の商談会に向けた準備もあわせて相談いただきました。
助言したのは主に次の点です。
商社を通す取引に加えて、直接取引の割合を増やす。利益率だけでなく、自社の商品がどこで、どう売られているかをつかめるようになるため。
海外の飲食店で料理に採用された実績のある商品を、業務用の提案の中心に置く。
産地の名前を前面に出し、海外での実績を国内の営業にも生かす。
他国産の安価な商品との価格差は隠さず、食感や品質の違いとして説明する。
商談会で会う相手が分かってからは、相手の業態ごとに提案を分け、お渡しするものを商談用の営業資料に切り替えました。資料は日本語版と、英語・日本語を併記した版の2種類を作成しています。
その後:商談会の前に、相手の業態に合わせた営業資料(日本語版と、英語・日本語の併記版)をお渡しし、準備を整えたうえで商談に臨んでいただきました。
食品の輸出全般については「福岡・九州の食品・調味料を海外に売る実務ガイド」で解説しています。
事例6:菓子メーカー|「年内に台湾へ出荷」を、実現できる計画に組み直す
相談時の状況:台湾でのテスト販売を計画している準備段階。国内では法人向けのOEMの実績がありました。
見極めたポイント:計画をどう進めるかではなく、計画の日程そのものが現実的かを見直すことが論点でした。
台湾の富裕層に向けて、菓子の販売を年内に始めたいという菓子メーカーからの相談です。台湾でのテスト販売を計画している段階でした。
事前の調査で、計画どおりに進めるには3つの壁があることが分かりました。台湾側の輸入者がまだ決まっていないこと、現地の売り場からは長い賞味期限を求められること、製造場所に関わる衛生証明の名義をどうするかが決まっていないことです。この状態のまま進めると、年内の商業出荷は難しいことを提案資料でお示ししました。
そのうえで、勝ち筋を観光客向けのお土産ではなく、OEMや業務用に置くこと、目標とする時期を台湾で最大の贈答期である旧正月(春節)前の百貨店の催事に置き直すことを提案しました。あわせて、商品ごとの関税分類を先に確定させること、自社の店舗を訪日客の受け皿として整えることもお伝えしています。
台湾の贈答の時期については「台湾の年間商戦カレンダーと贈答文化」で解説しています。
こんな状況の方は、ご相談ください
6つの事例に近い状況であれば、Link Globalがお役に立てるかもしれません。
海外展開に関心はあるが、何から手を付ければいいか分からない
代理店や発売の日程が決まりかけていて、必要な手続きを急いで確かめたい
海外の企業や機関から提携の話が来ているが、どう進めればよいか分からない
輸出はしているが、取引が小さいまま広がらない
越境ECを始めたいが、どこで、いくらで売ればいいか決められない
社内に海外担当者がいない、または兼任で手が回らない
ご相談は「お問い合わせ」からどうぞ。初回のご相談は無料です。
業種も段階も違う相談に、的確に応えられる理由
6つの相談は、業種も、海外展開のステージも、経験も、体制も、今後の計画もばらばらです。それでも一つひとつに具体的な答えを出せるのは、次の4つを徹底しているからです。
1. 会社の状況を把握してから、論点を見極める
同じ市場、同じ商材の相談でも、海外展開のステージ、これまでの経験、社内の体制、今後の計画によって、取るべき打ち手は変わります。最初の面談でこうした前提を伺い、何が成否を分けるのかを見極めてから調査に入ります。相談された内容と本当に解くべき論点が違うことも少なくありません。調べる範囲を絞れるので、限られた時間でも答えが具体的になります。
2. 規制・市場・販路・交渉まで、一社で見られる
認証や輸出規制の確認、販売データの分析、商談資料の作成、取引相手との約束の設計まで、海外展開で必要になる領域を一社で扱えます。相談の途中で論点が変わっても、別の専門家を探し直す必要がありません。代表の堤は日本語・英語・中国語で商談に対応でき、中国での現地法人の立ち上げも3回経験しています。
3. 面談で終わらせず、資料にしてお渡しする
面談で話した内容は、社内で共有したり、あとで判断したりするときに残りません。調査結果と助言は、提案資料・商談資料・議事録の形にしてお渡しし、相談後にすぐ動けるようにしています。
4. 都合の悪いことほど、先に伝える
日程に無理がある計画、裏付けの取れない話、規制上の懸念は、提案と一緒に先にお伝えします。認証の要否や統計の数字は、公的機関や販売サイトの一次情報で確かめてから伝えています。
担当アドバイザー
堤浩記(つつみ・ひろき)。株式会社Link Global代表取締役。福岡県久留米市出身。日本・中国・シンガポールで事業開発に携わり、中国での現地法人の立ち上げを3回経験しました。日本語・英語・中国語で商談に対応します。福岡県のほか、京都市の企業誘致推進や大東市の起業・誘致推進事業などでも自治体のアドバイザーを務めています。
Link Globalは、台湾・アジアを中心に、日本企業の海外販路開拓、海外バイヤーとの商談会の企画・運営、インバウンド支援を行っています。自治体と産地の台湾商談会を企画・運営した事例は「北海道東川町の家具の台湾商談会【支援事例】」で紹介しています。
Link Globalにご依頼いただけること
今回の事例のような相談は、Link Globalへ直接ご依頼いただくこともできます。相談の段階や内容に合わせて、次のような形で支援しています。
【海外展開の進め方の整理】市場や販路の選び方、何から手を付けるかの整理。初めての海外展開でも、何を決めればよいかから一緒に考えます。
【規制・認証・輸出手続きの確認】台湾・アジア向けの認証、商標、関税分類、輸出規制の確認と、日程から逆算した工程づくり。
【越境ECとインバウンドの販路づくり】モールへの出店計画、価格帯の検討、訪日客との接点を越境ECにつなげる設計。
【海外バイヤーとの商談会・商談資料】バイヤーの招へい、商談会の企画・運営、日本語・外国語の商談資料の作成。
【海外企業との交渉・覚書・契約の支援】協議の論点整理、覚書や代理店契約の進め方、現地での交渉の同席。
【継続的な伴走】社内に海外担当者がいない、または兼任という会社向けの月次パートナープラン(月額77,000円〜・税込)。
よくある質問
グローバルコネクト福岡の個別コンサルティングは、誰が利用できますか?
海外展開を検討している福岡県内の中小企業やスタートアップが、無料で利用できます。申し込みはグローバルコネクト福岡のウェブサイトから行います。最新の条件は同拠点のウェブサイトでご確認ください。
海外展開が初めてでも相談できますか?
できます。この記事の事例にも、国内でネット販売をしたことがない段階から越境ECを始めた会社や、初めての海外市場に挑む織元があります。一方で、すでに輸出している会社が、業務用への拡大や商談会の準備を相談するケースもあります。
越境ECとインバウンドは、別々に考えるものですか?
商材によっては、一緒に設計したほうが効果が出ます。印章の事例では、店頭での訪日客との接点を、帰国後の越境ECの顧客づくりにつなげる設計を提案しました。
相談したい内容がまだはっきりしていなくても依頼できますか?
できます。この記事の事例のように、相談された内容と本当の論点が違うことは珍しくありません。最初の面談で状況を伺い、何から手を付けるべきかを整理するところから始めます。
福岡県外の会社でも、Link Globalに相談できますか?
できます。グローバルコネクト福岡の個別コンサルティングは福岡県内の企業向けの制度ですが、Link Globalへの直接のご相談は、地域を問わずお受けしています。
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業種や海外展開のステージ、社内の体制を問わず、ご相談をお受けしています。「何を相談すればいいか分からない」という段階でも構いません。まずは状況をお聞かせください。会社ごとの前提を伺い、論点を見極めるところからご一緒します。
ご相談は「お問い合わせ」からどうぞ。初回のご相談は無料です。
なお、福岡県内の中小企業の方は、グローバルコネクト福岡の個別コンサルティング(無料)もご利用いただけます。




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