お菓子の台湾輸出ガイド2026|市場・チャネル・輸入査験・表示規制まで実務解説
- 堤浩記
- 7月30日
- 読了時間: 20分
更新日:7月30日

「うちのお菓子、台湾で売れるだろうか」
そう考えたことのある製菓事業者の方は多いと思います。台湾は日本産菓子にとって世界第3位の輸出先であり、ビスケット類にいたっては日本の輸出先第1位の市場です。しかも2025年11月、長らく続いた輸入規制が撤廃され、書類面のハードルが一段下がりました。
一方で、「和菓子だから難しいのでは」「生菓子は無理だろう」といった漠然としたイメージのまま、検討が止まってしまっているケースも少なくありません。実際には、台湾の規制もバイヤーも物流も、和菓子か洋菓子かでは分かれていません。分かれるのは別のところです。
本記事では、初めて輸出を検討する方に向けて、台湾の菓子市場の全体像、誰がどこで買っているのか、必要な手続き、そして販路開拓の進め方までを、実務者目線で一通り解説します。なお台湾への食品輸出全般の基礎については、台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版をあわせてご覧ください。
1. なぜ今、台湾なのか
数字で見る台湾市場
日本の菓子類輸出は、2024年に前年比10.7%増の477億円と過去最高を更新しました(全日本菓子協会「令和6年菓子データ」)。円安と海外での日本ブランド認知の高まりが背景にあります。
その主要な受け皿の一つが台湾です。
日本の菓子類(HS 1704/1806/1905)輸出先ランキング(2023年)
1位 / 香港 / 輸出額:1億3,147万ドル / 前年比:+5.1%
2位 / 米国 / 輸出額:9,975万ドル / 前年比:△7.1%
3位 / 台湾 / 輸出額:9,632万ドル / 前年比:+3.6%
4位 / 中国 / 輸出額:9,561万ドル / 前年比:△28.7%
5位 / 韓国 / 輸出額:3,384万ドル / 前年比:+30.5%
全世界 / 全世界 / 輸出額:6億802万ドル / 前年比:△4.8%
出典:ジェトロ「輸出品目別レポート(菓子類)」2025年7月更新(Global Trade Atlasより作成)
注目したいのは品目別の内訳です。同レポートによると、台湾は次のようなポジションにあります。
ビスケット・クッキー類:日本の輸出先 第1位(362万ドル)
米菓(あられ・せんべい):第2位(877万ドル)
チョコレート菓子:第4位(1,303万ドル)
キャンディー類:第4位(985万ドル、前年比+18.2%)
香港や米国が全体で上位に来るのに対し、台湾は焼菓子と米菓で相対的に強い市場です。ここは初めて輸出する中小製菓事業者にとって重要な意味を持ちます。世界的に見て日本の焼菓子・米菓が最も受け入れられている市場が、飛行機で3〜4時間の距離にあるということだからです。
また、農林水産省の「輸出拡大実行戦略」(2025年5月)では菓子が輸出重点品目に指定され、2030年までに台湾向け206億円という目標が掲げられています(全体2,050億円、香港243億円、米国368億円)。政策的な支援も受けやすい分野です。
2025年11月、規制が撤廃された
台湾市場を語るうえで、直近の最大のトピックがこれです。
2025年11月21日以降、福島・茨城・栃木・群馬・千葉の5県産食品に義務づけられていた放射性物質検査報告書、および日本産すべての食品に求められていた産地証明書の添付が不要になりました(ジェトロ「台湾、日本産食品の輸入規制撤廃を公表」2025年11月25日/農林水産省2025年11月21日公表)。
これまでは、たとえば栃木県の工場で作った焼菓子を台湾に送るには、産地証明書に加えて放射性物質検査報告書の取得が必要で、これが実務上の大きな負担になっていました。5県以外の事業者にとっても産地証明書の取得は手間でした。それが不要になったということです。
実務上の意味:これまで「書類が煩雑だから」と台湾を後回しにしていた事業者にとって、参入コストが明確に下がりました。特に東日本の製菓事業者にとっては、10年以上続いた制約が外れたことになります。ただし規制は変わりうるものなので、実際に動く際は必ず最新のジェトロ・農林水産省の情報を確認してください。
「味を知っている消費者」が670万人いる
台湾を語る際に、貿易統計以上に重要なのが訪日旅行の規模です。
2025年の訪日台湾人客数:676万3,424人(JNTO、前年比+11.9%、過去最高)
訪日台湾人の旅行消費額:1兆2,033億円(観光庁インバウンド消費動向調査、過去最高)
2025年の台湾人出国者数:1,894万人、うち日本が673.8万人(35.6%)で圧倒的1位(台湾観光統計)
台湾の総人口は約2,334万人です。延べ出国者数が人口の約8割、その3人に1人が日本に来ている計算になります。
これが菓子輸出にとって何を意味するか。「日本で買って美味しかったから、台湾でも買いたい」という追体験需要が、すでに市場に存在しているということです。ゼロから味を教育する必要がある欧米市場とは、スタート地点がまったく違います。
訪日台湾人客の属性や単価構造については、訪日台湾人客をデータで読む2026で詳しく解説しています。
2. 「和菓子か洋菓子か」では考えない
ここが本記事で最もお伝えしたい部分です。
多くの方が「和菓子の輸出」「洋菓子の輸出」という区分で考え始めます。しかし、台湾の規制も物流も、その区分では一切分かれていません。饅頭とマドレーヌは、輸出実務上ほぼ同じ扱いです。
輸出の難易度を実際に決めているのは、次の2つの軸です。

軸①:温度帯 × 賞味期限
これが輸出難易度そのものです。

常温・長期(6ヶ月〜) / 具体例:焼菓子、クッキー、せんべい、あられ、キャンディー、バウムクーヘン、最中、羊羹 / 輸送:混載コンテナ/航空便どちらも可 / 難易度:★☆☆ / コメント:初めての輸出はここから
常温・要温度管理 / 具体例:チョコレート、生チョコ加工品 / 輸送:台湾の夏場は定温(リーファー)輸送がほぼ必須 / 難易度:★★☆ / コメント:温度帯コストが乗る
冷蔵・短期(1〜2週間) / 具体例:ケーキ、シュークリーム、生菓子、大福 / 輸送:コールドチェーン+リードタイムの壁 / 難易度:★★★ / コメント:通関で数日止まると賞味期限が消える
冷凍 / 具体例:冷凍大福、冷凍スイーツ、冷凍ケーキ / 輸送:冷凍コンテナ / 難易度:★★☆ / コメント:生菓子を諦めた事業者の代替ルート
押さえておきたいポイント:生菓子は「無理」ではなく「冷凍で出す」という選択肢があります。日本国内でも冷凍和洋菓子の技術は急速に高度化しており、解凍後の品質が実用レベルに達している商品は増えています。冷蔵で挑んで通関リスクを負うより、冷凍で安定供給するほうが現実的なケースが多い、というのが弊社の実務所感です。
なお、常温・長期であっても残存賞味期限の要求には注意が必要です。台湾のバイヤー・小売は「入荷時点で賞味期限の3分の2以上残っていること」といった条件を出してくることがあります(商談ごとに条件は異なります)。船便で2〜3週間、通関と国内物流でさらに数日かかることを前提に、賞味期限6ヶ月未満の商品は航空便を含めて設計を検討するのが安全です。
軸②:原材料 —— 通関で止まるかどうか
もう一つの軸が原材料です。以下は台湾特有の論点で、知らずに出荷すると通関で止まります。
(1) 紅麹を含む製品は輸入停止中
台湾の「加工食品及相關產品管制措施」において、日本産の品名または原材料に「紅麹」を含む製品は輸入停止となっています(ジェトロ調査時点:2025年12月)。紅麹を着色に使った和菓子・煎餅は該当する可能性があります。最新状況は必ず確認してください。
(2) 豚由来の油脂を使っていると、原産地表示義務が発生する
台湾では「豚肉および豚の可食部位の原産地表示規定」(2021年1月施行)により、豚の油脂を直接使用した食品(月餅、パンなど)も対象となります。ラードを使った菓子は、豚肉の原産国を繁体字で表示する必要があります。和菓子・中華菓子系で見落としやすいポイントです。
(3) 部分水素添加油脂は使用禁止
台湾FDAは2018年7月1日(製造日基準)から、部分水素添加油脂(ヨウ素価4超)の食品への使用を禁止しています。古いレシピのマーガリン・ショートニングを使っている場合は要確認です。
(4) 食品添加物はポジティブリスト制
台湾は使用できる添加物とその使用範囲・限度を「食品添加物使用範囲および許容限度ならびに規格基準」で定めています。日本で合法な添加物が台湾で使えない、あるいは使用量の上限が異なるケースがあります。着色料・保存料・甘味料は特に確認が必要です。また保存料・酸化防止剤・甘味料は、名称だけでなく用途も表示する必要があります。
(5) アレルゲン表示は11品目
台湾の「食品アレルゲン表示規定」(2020年7月施行)の対象は次の11品目です。日本の28品目とはリストが異なります。
甲殻類/マンゴー/落花生/牛乳・ヤギ乳/卵/堅果類/ゴマ/グルテンを含む穀物/大豆/魚類/亜硫酸塩類(最終製品中に二酸化硫黄として10mg/kg以上残留)
マンゴーが入っているのが台湾の特徴です。日本にはない項目なので、フルーツを使った菓子は注意してください。
(6) チョコレートは「チョコレート」と名乗れないことがある
「チョコレートの品名および表示規定」(2022年1月施行)により、植物油の添加量が総重量の5%を超える製品は、パッケージに「チョコレート」の名称を使用できません。5%以下の場合も、品名の近くに「植物油を添加している」旨の表示が必要です。準チョコレートを使った商品は設計段階から確認が必要です。
自社商品を自己診断する
この2軸を使えば、「うちの商品は台湾に出せるのか」を自分で概算できます。
常温で賞味期限6ヶ月以上あるか? → YESなら物流面は最も易しい
紅麹・ラード・部分水素添加油脂を使っていないか?
添加物リストを台湾基準で照合したか?
マンゴーを含むアレルゲン11品目を洗い出したか?
チョコ商品なら、植物油の配合比を確認したか?

ここが全部クリアなら、あとは書類とラベルの実務です。
3. 誰が、どこで買っているのか
4つの需要ブロック
台湾の日本産菓子には、性質の異なる4つの需要があります。狙う需要によって、必要な価格帯もロットもチャネルも変わります。
① 日常のスナック需要
コンビニ(7-ELEVEN、FamilyMart)、スーパー(全聯 PXマート、家樂福)、ドラッグストアで買われる日常消費。回転は速いが価格競争が厳しく、ロットも大きい。初回参入としてはハードルが高い領域です。
② 伴手禮(手土産)・ギフト需要
台湾には手土産・贈答の文化が深く根づいています。旧正月(春節)、中秋節、端午節などの節句が明確な需要ピークをつくります。箱菓子・詰め合わせの相性が非常に良い領域で、日本の焼菓子ギフトは香港市場でも同様に定着しています。
③ 訪日リピーターの追体験需要
「日本で食べた、あれをもう一度」という需要。日系小売の存在が受け皿になっています。台北・高雄に展開する DON DON DONKI(唐吉訶德)、2026年に台湾進出した LOPIA などが典型です。地域限定・季節限定商品への感度が高い層でもあります。
④ 業務用・OEM需要
店頭向け完成品だけでなく、外食チェーンや現地食品メーカー向けの業務用規格・原料供給・OEMという切り口があります。2026年のFood Taipeiに関するジェトロの報告でも、台湾市場における業務用・OEM需要の拡大が指摘されています。小ロット多品種の完成品より、業務用のほうが商談が進むケースは実際にあります。
チャネル構造を理解する
初めての方が混乱しやすいのが、「誰に売ればいいのか」です。台湾の流通は、日本のメーカーから台湾の輸入商社・代理店(Importer of Record)を経由して、各小売チャネルへ流れる階層構造になっています。輸入商社の先にある主な販売チャネルは次のとおりです。
量販店・スーパー(全聯、家樂福、city super など)
コンビニチェーン(7-ELEVEN、FamilyMart)
百貨店(新光三越、遠東SOGO、微風)および日本物産展・催事
日系小売(DON DON DONKI、LOPIA など)
EC(momo購物網、蝦皮購物/Shopee、PChome)
土産物店・空港免税店

最重要ポイント:台湾側の輸入者(Importer of Record)がいないと、そもそも輸入できません。
台湾で食品を輸入するには、経済部国際貿易局での輸出入業者登録に加え、衛生福利部食品薬物管理署(台湾FDA)への食品輸入業者登録が必要です。日本のメーカーが直接輸入者になることは実務上できません。輸入商社・代理店を見つけることが、台湾展開の最初の関門です。
逆に言えば、日本側では施設登録も輸出事業者登録も不要です(ジェトロ調査時点:2025年12月)。ここは水産物などと大きく違う、菓子の輸出しやすい点です。
4. 輸出手続きの全体像
実際の流れを6ステップで整理します。

STEP 1:HSコードと関税率を確認する
まず自社商品のHSコードを確定します。菓子の主要HSコードは次のとおりです。
1704:砂糖菓子(ココアを含まないもの)
1806:チョコレート、その他のココア調製食料品
1905:ビスケット、ケーキ、ワッフル、米菓などベーカリー製品
2105:アイスクリームその他の氷菓
台湾の関税率(日本はWTO加盟国としてカラムIが適用)は品目によって大きく異なります。

チューインガム / CCCコード:1704.10 / 従価税率:20.0%
その他の砂糖菓子(ココアなし) / CCCコード:1704.90 / 従価税率:27.5%
チョコレート調製品(2kg以下・詰め物あり) / CCCコード:1806.31 / 従価税率:10.0%
チョコレート調製品(2kg以下・詰め物なし) / CCCコード:1806.32 / 従価税率:10.0%
スイートビスケット / CCCコード:1905.31 / 従価税率:25.0%
ワッフル・ウエハース / CCCコード:1905.32 / 従価税率:17.5%
米菓 / CCCコード:1905.90.50 / 従価税率:20.0%
ドーナツ・パンケーキ / CCCコード:1905.90.70 / 従価税率:10.0%
その他ベーカリー製品 / CCCコード:1905.90.90 / 従価税率:20.0%
アイスクリーム・氷菓 / CCCコード:2105.00 / 従価税率:10.0%
出典:ジェトロ「菓子の輸入規制、輸入手続き(台湾)」調査時点2024年7月。最新の実行関税率は台湾財政部関務署の Tariff Database で確認してください。
これに加えて営業税(付加価値税)が(CIF価格+関税)×5%でかかります。
ここが初心者の最大の落とし穴です。 ビスケットは関税25%、砂糖菓子は27.5%。チョコレートの10%と比べると、税負担が2.5倍以上違います。日本の出荷価格をそのまま置いて上代を組むと、現地小売価格が想定の2〜3倍に膨らみ、商談が成立しません。価格設計は必ずFOBから逆算してください。
STEP 2:原材料・添加物を台湾基準で照合する
前章の軸②に沿って、レシピ全体を洗い出します。紅麹、豚由来油脂、部分水素添加油脂、添加物のポジティブリスト照合、アレルゲン11品目。この工程を飛ばして走ると、後で必ず戻ることになります。
注意:米菓には関税割当(TRQ)がある
米の含有量が50%以上のコメ加工品は、台湾の「食糧管理法」により関税割当の対象です。関税割当内の輸入は政府または割当を受けた登録食糧業者が行い、割当外は登録食糧業者または事前承認を受けた輸入業者が行います。せんべい・あられを輸出する場合、輸入者側がこの資格を持っているかどうかが決定的に重要です。この点を確認せずに商談を進めてしまう事例は珍しくありません。
STEP 3:繁体字ラベルを設計する
表示ラベルがなければ輸入できません。 台湾の「食品安全衛生管理法」第22条により、次の項目を繁体字中国語で表示する必要があります。
商品名
内容物の名称(2つ以上の原材料は割合の高い順)
重量・容量・数量
食品添加物の名称(2種類以上使用時は機能名称も)
製造者または責任ある台湾企業の名称・電話番号・住所
原産地(国名および都道府県名)
有効期限
栄養表示
遺伝子組換え食品原料の有無
栄養表示は日本より項目が多い点に注意してください。熱量、たんぱく質、脂質、飽和脂肪、トランス脂肪、炭水化物、糖、ナトリウムの表示が義務です。日本の栄養成分表示をそのまま翻訳しても足りません。
また原産地は「日本」だけでは不十分で、都道府県名まで必要です(消費者保護法第24条第2項の解釈による)。
実務上、ラベルの中国語版は輸入者側で作成・貼付するケースが一般的ですが、内容の正確性の責任はメーカー側にあります。原材料表・栄養成分の分析データを英語または中国語で用意しておくと、商談から出荷までが大幅に速くなります。
STEP 4:包装規制を確認する
意外に見落とされるのがここです。
PVC(ポリ塩化ビニル)を含む食品包装材は、2023年7月1日から製造・輸入・販売が禁止されています(トレー、容器、使い捨て食器など)
プラスチック容器には7種類のリサイクルマークのうち材質に応じたものを刷り込むかラベル表示する必要があります
加工食品のギフト包装は「過剰包装商品の規制」の対象です
3つ目は日本の菓子メーカーにとって特に重要です。日本の贈答用の箱菓子は、緩衝材・中仕切り・外箱・のしと、包装が何層にもなりがちです。台湾の過剰包装規制に触れるリスクがあるため、ギフト仕様は現地の輸入者と事前にすり合わせてください。
STEP 5:輸入検査を申請し、通関する
台湾側の輸入者が、輸入の15日前までに輸入港所在地の検査執行機関へ次の書類を提出します。
輸入検査申請書
輸入製品の基本情報に関する申告用紙
輸入申告書のコピー
台湾FDAが求める衛生・安全証明書等
台湾に輸入されるすべての食品は輸入食品検査(査験)の対象です。書類審査、現場検証(包装・外観・表示の点検)、抜き取り検査(感覚検査、化学・生物・物理的検査)を経て、適合すれば台湾FDAから輸入許可証が交付されます。
検疫について:生鮮の野菜・果実と異なり、菓子は通常、植物検疫証明書を取得する必要はありません(ジェトロ調査時点:2025年12月)。木材や青果と比べて、この点は明確に楽です。
STEP 6:現地流通・販売
輸入通関後は輸入者の管轄です。台湾では食品トレーサビリティ制度が実施されており、輸入業者は原料・半製品・最終製品の流れを追跡する記録管理を求められます。ロット番号・製造日の管理は日本側でも徹底しておいてください。
5. 販路開拓の3つのアプローチ
制度がわかっても、買ってくれる相手が見つからなければ意味がありません。実務上のアプローチは大きく3つです。
アプローチ①:展示会に出る
台湾最大の食品見本市が Food Taipei(台北國際食品展) です。台湾貿易センター(TAITRA)主催で、2026年は5展合同の「FOOD TAIPEI MEGA SHOWS」として約1,800社・団体が4,750ブースを出展し、104カ国・地域から海外バイヤーが来場しました。ジェトロと日本台湾交流協会が設置したジャパンパビリオンには73社・団体が出展し、約430平方メートルと海外パビリオン最大規模でした。
2026年の会期は6月24日〜27日、会場は台北南港展覧館でした。次回を狙う場合、自治体ブース(都道府県・市の共同出展)の公募は前年の1〜2月頃に締め切られることが多いため、逆算して動く必要があります。自治体経由なら出展料の補助や通訳の派遣を受けられるケースがあります。
出展の具体的な進め方は Food Taipei(台北国際食品展)とは?出展メリットと日本企業の活用法 にまとめています。
アプローチ②:輸入商社・代理店を開拓する
前述のとおり、台湾側の輸入者は必須です。展示会以外では、ジェトロの引き合い案件データベース、日本台湾交流協会の輸出支援プラットフォーム、自治体の海外商談会などが接点になります。
商談前に用意しておくべきもの
英語または繁体字の商品スペックシート(原材料表、栄養成分、賞味期限、内容量、ケース入数、ケースサイズ・重量、JANコード)
FOB価格表(工場渡しではなくFOBで出すこと。バイヤーは自分でコストを積み上げます)
最低ロット(MOQ)と生産リードタイム
商品写真(パッケージ単品、ケース、開封状態)
このセットがないと、興味を持ってもらっても見積もりの段階で止まります。逆にこれさえあれば、初回商談の質は大きく変わります。
アプローチ③:ポップアップ・催事でテストする
いきなり定番棚を狙うのではなく、百貨店の日本物産展や期間限定ポップアップでテスト販売するアプローチです。
メリットは、小ロットで消費者の反応(味の評価、価格受容性、パッケージの訴求力)を直接取れること。ここで実績が出れば、その後の輸入商社との交渉材料になります。
弊社は2025年に台北・華山1914文化創意産業園区で日本の家具・工芸品の展示会を実施し、約4,500名の来場、14件のBtoB商談、約500万円の売上という結果を得ました。「実物を持ち込んで、現地の反応を数字で取る」ことの価値は、カテゴリを問わず大きいというのが実感です。
6. 初出荷までの現実的なタイムライン
初めての輸出で「どれくらいかかるのか」は必ず聞かれる質問です。以下は弊社の支援実績からの推定であり、商品特性や相手先によって前後します。

商品選定・規制確認 / 期間目安:1〜2ヶ月 / 主な作業:HSコード確定、原材料の台湾基準照合、関税率確認、価格設計
資料整備 / 期間目安:1ヶ月 / 主な作業:スペックシート、FOB価格表、商品写真、分析データ
バイヤー開拓 / 期間目安:3〜6ヶ月 / 主な作業:展示会出展、商談、サンプル発送、条件交渉
ラベル・包装対応 / 期間目安:1〜2ヶ月 / 主な作業:繁体字ラベル設計、包装規制対応、輸入者とのすり合わせ
初回出荷 / 期間目安:1〜2ヶ月 / 主な作業:契約締結、生産、輸入検査申請(15日前)、通関
合計 / 期間目安:6〜12ヶ月 / 主な作業:商品選定から初回出荷まで
「来月から売りたい」というスピード感では動きません。逆に言えば、規制確認と資料整備は今日から始められる部分です。バイヤーが見つかってから慌てて資料を作ると、そこで数ヶ月失います。
7. よくある失敗
最後に、初めての方が陥りやすいポイントを整理します。
① 関税率を確認せずに価格を組む
ビスケット25%、砂糖菓子27.5%という税率を知らずに国内価格ベースで話を進め、商談の最終段階で価格が合わないと判明するケース。最も多い失敗です。
② 日本の栄養成分表示をそのまま翻訳する
飽和脂肪・トランス脂肪の表示が抜けていて、ラベルを作り直すことになります。
③ 賞味期限の残存条件を確認していない
賞味期限4ヶ月の商品を船便で送り、入荷時に残り2ヶ月半では、小売の要求水準を満たせないことがあります。
④ 米菓なのに輸入者のTRQ資格を確認していない
せんべい・あられは食糧管理法の対象です。輸入者に資格がなければ、そもそも通りません。
⑤ ギフト包装をそのまま持ち込む
過剰包装規制と、PVC・リサイクルマークの要件。日本の丁寧な包装が、そのままでは通らないことがあります。
⑥ 和菓子だから/生菓子だから、と最初から諦める
繰り返しになりますが、難易度を決めているのは「和洋」ではなく「温度帯と原材料」です。冷凍という選択肢を検討せずに諦めているケースを、実際によく見ます。
まとめ
台湾は、日本産菓子にとって世界第3位、ビスケット類では第1位の輸出先です。年間676万人の台湾人が日本を訪れ、味を知ったうえで台湾に帰っていきます。そして2025年11月、10年以上続いた輸入規制が撤廃されました。
参入の条件は、これ以上ないほど整っています。
必要なのは、「和菓子か洋菓子か」ではなく、自社商品の温度帯・賞味期限・原材料を台湾基準で棚卸しすること。そして、台湾側の輸入者という最初のパートナーを見つけることです。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 和菓子は台湾に輸出できますか?
A. できます。台湾の規制は和菓子・洋菓子という区分では分かれておらず、判断基準は「温度帯・賞味期限」と「原材料」です。常温で賞味期限の長い最中・羊羹・煎餅などは、輸出難易度が最も低い部類に入ります。一方、生菓子は冷蔵ではなく冷凍で出すという選択肢を検討する価値があります。
Q. 日本側で必要な登録手続きはありますか?
A. 菓子の輸出にあたり、日本側で必要となる施設登録や輸出事業者登録はありません(ジェトロ調査時点:2025年12月)。台湾側の輸入者が、経済部国際貿易局の輸出入業者登録と台湾FDAの食品輸入業者登録を持っている必要があります。
Q. 産地証明書や放射性物質検査報告書は今も必要ですか?
A. 2025年11月21日以降、5県産食品への放射性物質検査報告書と、日本産すべての食品への産地証明書の添付は不要になりました(農林水産省・ジェトロ発表)。
Q. 関税はどれくらいかかりますか?
A. 品目によって大きく異なります。スイートビスケット25.0%、米菓20.0%、その他の砂糖菓子27.5%に対し、チョコレート調製品(2kg以下)は10.0%です。これに加えて営業税が(CIF価格+関税)×5%でかかります。
Q. 台湾のラベル表示は日本と何が違いますか?
A. 繁体字中国語での表示が必須で、原産地は国名だけでなく都道府県名まで必要です。栄養表示では飽和脂肪・トランス脂肪の記載が義務づけられており、アレルゲンは11品目(マンゴーを含む)と日本とリストが異なります。
Q. 初めての輸出で、初出荷までどれくらいかかりますか?
A. 弊社の支援実績からの推定で、商品選定から初回出荷まで6〜12ヶ月が目安です。バイヤー開拓に3〜6ヶ月かかることが多いため、規制確認と商談資料の整備は先行して進めることをおすすめします。
Link Globalについて
株式会社Link Globalは、日本企業の海外展開支援と外国企業の日本市場参入支援を専門とするコンサルティング会社です。食品・伝統工芸・家具・酒類・観光など幅広いセクターで、これまで約100社の海外展開を支援してきました。
台湾市場については、展示会の企画・実行、現地バイヤーとの商談設計、規制・物流の実務確認まで、戦略から現場までを一貫して伴走しています。
「自社の商品が台湾で通用するか知りたい」「輸入商社を探したい」「展示会出展を検討している」といったご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
本記事の出典
ジェトロ「菓子の輸入規制、輸入手続き(台湾)」(調査時点:2024年7月〜2025年12月)
ジェトロ「輸出品目別レポート(菓子類)」2025年7月更新(Global Trade Atlas/IHS Markitより作成)
ジェトロ「台湾、日本産食品の輸入規制撤廃を公表」2025年11月25日
農林水産省「台湾が日本産食品の輸入規制措置の撤廃を公表(東日本大震災関連)」2025年11月21日
農林水産省「輸出拡大実行戦略」2025年5月
全日本菓子協会(ANKA)「令和6年菓子データ」
日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計 2025年
観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年暦年速報
公益財団法人日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2026年3月更新)
台湾観光統計 2025年
※本記事の規制・関税情報は執筆時点のものです。実際の輸出にあたっては、必ず最新の公的情報をご確認ください。




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