肉エキス5%が境目|シンガポールへ肉・卵・乳を含む食品輸出
チキンオイルを少し使っただけのラーメンスープ、牛脂で香りを付けたレトルトカレー、卵白を使った焼き菓子。日本では「加工食品」の一言で済む商品が、シンガポールでは食肉製品や卵製品として扱われ、工場の認定と政府の証明書がなければ輸入できないことがあります。
シンガポール食品庁(SFA)は、食品を商品名ではなく原料で分類し、分類ごとに輸入条件を変えています。分かれ目は2つです。肉(動物性油脂やエキスを含む)が何%入っているか。そして、卵白・卵黄のような「卵そのものを加工した原料」を使っているか。本記事では、肉・卵・乳を含む食品をシンガポールに輸出するときに、どの商品にどの手続きが必要かを、SFAと農林水産省の一次情報に基づいて整理します。
SFAの登録制度・英語ラベル・GST・販路といった総論はシンガポールへの食品輸出完全ガイドで解説しています。本記事はそのうち「肉・卵・乳」に絞った詳細編です。
本記事の情報について
情報の基準日:2026年9月29日時点で公開されている一次情報に基づきます。
主な出典:SFAの食品分類ページ、Requirements of Specific Food Products Imported for Sale(2026年7月24日更新)、輸入ライセンス・許可の手数料ページ、ラベル規則の改正資料。農林水産省のシンガポール向け畜産物の輸出FAQ、品目別シンガポール輸出に関する規制・ルール(2025年2月版)、証明書や施設認定の申請(アジア)。
シンガポールでは新しい食品安全保障法(FSSA 2025)が段階的に施行されています。2026年9月時点で、輸入ライセンスと輸入許可の枠組みは従来の食品販売法・健全食肉魚類法のままですが、今後切り替わる可能性があります。
認定施設のリストや、家畜の病気による輸出停止の状況は頻繁に変わります。出荷の前に必ず最新の一次情報を確認してください。
結論:原料で「どの区分に入るか」がすべてを決める
SFAは輸入食品を7つの区分(食肉、魚介、生鮮青果、殻付き卵と加工卵、加工食品と食品用器具、生きた家畜、米)に分けて管理しています。肉・卵・乳を含む食品に関係するのは、このうち「食肉・食肉製品」「加工卵(Processed Eggs)」「加工食品」の3つです。
どの区分に入るかで、必要な手続きの重さがまったく違います。
【食肉・食肉製品】日本側の施設(と畜場・製造工場)がシンガポール向けに認定されていることが前提。出荷ごとに政府の衛生証明書が必要。輸入許可料は冷蔵・冷凍・加工肉で1件S$300。
【加工卵(Processed Eggs)】SFAが認定した施設からしか輸入できない。衛生証明書と輸出検疫証明書が必要。
【加工食品】海外工場の認定は不要。輸入者の登録と英語ラベルが中心。輸入許可料は無料。
SFA自身が分類ページで「よくある誤り」として挙げているのが、少量の肉や動物性油脂を含む製品を加工食品として申告してしまうことです。缶詰だから加工食品だと決めつけるのも誤りで、SFAは牛肉のルンダン(煮込み)の缶詰を食肉製品の例に挙げています。

図1 原料による区分の判定フロー。出典:SFA、農林水産省FAQをもとにLink Global作成
出典:SFA「Classification of General Food & Food Products」(最終更新2026年9月7日)
肉エキス・ラード・牛脂の「5%ルール」
動物性油脂やエキスも「肉」として数える
SFAの食肉区分には、肉そのものだけでなく、肉・動物性油脂を含む製品が入ります。SFAが例に挙げているのはチキンミートパウダーとラードです。つまり、肉エキス、ブイヨン、ラード、牛脂、チキンオイルは、見た目は調味料でも「肉」として計算されます。
配合を確認するときは、具材の肉だけでなく、スープの素・油脂・調味料に含まれる動物由来原料をすべて足し合わせてください。複合調味料を仕入れている場合は、原料メーカーから配合率の証明を取り寄せる必要が出てきます。
5%以上なら「食肉製品」
農林水産省は、シンガポール向けに輸出できる食肉製品を「肉が5%以上含まれているもの(冷凍食品、そうざい、レトルト食品、缶詰、油脂等を含む)」と説明しています。この場合の条件は次の3つです。
原料の肉が、日本国内のシンガポール向け認定施設(と畜場・食肉処理施設)由来であること。輸入肉を使う場合は、シンガポールへの輸出が認められた海外施設由来で、輸入時に外国政府が発行した衛生証明書があること
製品を作る工場が、厚生労働省の認定を受けた施設であること
出荷ごとに、工場を管轄する保健所から衛生証明書の発行を受けること
見落とされやすいのは原料肉の条件です。自社工場が認定を取っても、仕入れている牛脂やチキンエキスが認定されていない施設の肉から作られていれば輸出できません。
出典:農林水産省「シンガポール向け畜産物の輸出に必要な手続きを教えて欲しい」(2022年3月1日時点)
5%未満でも「SFAの事前承認」が必要
5%未満なら何も要らない、というわけではありません。SFAは、少量の肉や動物性油脂を含む製品(例としてチキンオイル入りの即席麺)について、SFAが評価し承認しなければならないとしています。
農水省の資料によると、この承認はSFAのオンラインフォームから無料で申請できます。ただし、工場の認定が不要になるだけで、輸出時の書類は必要です。申請時と輸出時に必要なものは次のとおりです。
申請時:製造工程のフローチャート
申請時:加熱条件(何℃で何分加熱しているか)
申請時:原料肉・動物性油脂の原産地
輸出時:製造者の宣誓書(肉の含有量が5%未満であること、政府が認可したと畜場の肉を使っていること、加熱条件、化学保存料を使っていないこと等を記載し、日本の行政機関の承認を受ける)。あわせて、出荷ごとに衛生証明書と輸出検疫証明書、原料食肉の証明が必要
ここでも、原料肉がSFA認定のと畜場・加工施設由来であることが条件です。申請するのは輸入者側が一般的なので、日本側は配合表・工程表・宣誓書をすぐ出せるように準備しておくと、商談が止まりません。
ちょうど5%は「どちら側か」確認を
境界値の書き方は資料によって揺れています。SFAの海外施設認定のページは「5%未満(less than 5%)」を認定不要の範囲としていますが、別のページには「5%以下(5% or less)」という書き方もあります。配合がちょうど5%前後になる商品は、配合を見直すか、事前にSFAに確認してください。
牛肉エキスは含有率に関係なく衛生証明書が必要
牛由来の原料には別のルールがあります。SFAの「Requirements of Specific Food Products Imported for Sale」(2026年7月24日更新)は、牛肉エキスと牛肉エキスを含む食品(ビーフキューブ、ビーフジュースなど)について、出荷ごとの衛生証明書を求めています。証明する内容は、牛肉原料の日付と原産地、そして国際獣疫事務局(WOAH)が「無視できるBSEリスク」と認めた国の原料であることです。
つまり5%未満の少量品でも、牛肉エキスや牛脂を使っていれば、この衛生証明書を別に手配する前提で準備が必要です。「牛脂と卵白を使った商品は輸出できるか」という相談はよくありますが、牛脂は肉の5%ルールと牛由来の特則で、卵白は次に説明する卵のルールで、原料ごとに分けて判断します。

図2 肉の含有率と牛由来原料による手続きの違い。出典:農林水産省(2025年2月)、SFA(2026年7月24日更新)
出典:SFA「Requirements of Specific Food Products Imported for Sale」(2026年7月24日更新)、SFA「Overseas Accreditation of Food & Food Products」、農林水産省「品目別シンガポール輸出に関する規制・ルールについて」(2025年2月)
肉の種類別:牛・豚・鶏で条件が違う
牛肉・ローストビーフ
輸出できる牛肉は、日本で生まれ飼育された牛の可食部位(内臓を含む)で、冷蔵・冷凍のものです。厚生労働省が認定したと畜場・食肉処理施設で処理し、食肉衛生検査所などから食肉衛生証明書を受けます。施設の認定には手数料20,900円がかかり、HACCPに基づく衛生管理やトレーサビリティへの対応が求められます。
ローストビーフのような加工品は「食肉製品」です。原料牛がシンガポール向け認定施設で処理されていることと、製造工場が認定を受けていることの両方が必要です。台湾向けの条件は牛肉・和牛の台湾輸出ガイドで解説しています。
豚肉
豚肉は冷凍に限られ、豚熱(CSF)の発生状況によって都道府県単位で輸出が止まります。動物検疫所が停止・再開の状況を公表しているので、原料の産地が対象県に当たらないか、出荷のたびに確認してください。
鶏肉・家きん肉製品
家きん肉は冷凍に限られ、SFAが認定した食鳥処理場のものに限られます。農水省資料(2025年7月時点)で確認できる認定施設は、宮崎くみあいチキンフーズと南部食鶏の2施設です。
注意したいのは、家きん肉製品の工場認定の権限です。牛肉・豚肉と違い、レトルト食品と缶詰を除く家きん肉製品の製造施設は、SFAが認定権限を持っています。鶏肉を使った商品を出したい場合、「鶏肉輸出の申請」は日本の役所の中だけでは完結しません。
鳥インフルエンザ(HPAI)が発生すると、発生県からの家きん由来製品の輸出が止まります。停止と再開は動物検疫所の輸出入停止措置情報で公表されます。
出典:農林水産省「品目別シンガポール輸出に関する規制・ルールについて」(2025年2月)、動物検疫所「輸出入停止措置情報」
卵:卵白・卵黄・液卵は「認定施設」からしか出せない
Processed Eggsの範囲
SFAが海外施設の認定を求める卵製品(Processed Eggs)には、粉末卵・殺菌液卵(全卵、卵白、卵黄、卵白と卵黄の混合)と、ゆで卵・オムレツ・塩漬け卵・ピータンなどの全卵加工品が含まれます。卵白粉や液卵黄は、はっきりとこの区分に入ります。
日本側の条件は、自動洗浄した卵か割卵前に乾燥させた清潔な卵を使い、SFA認定施設で製造し、保健所の衛生証明書と動物検疫所の輸出検疫証明書を付けることです。シンガポール側の輸入許可料は1件S$22(塩漬け卵・ピータン等はS$62)です。
日本の認定施設は5施設
農水省資料(施設一覧は2025年7月時点)で確認できるシンガポール向け家きん卵製品の認定施設は、キユーピータマゴの鳥栖工場・青森工場、あじかんの静岡工場・鳥栖工場、半澤鶏卵の5施設です。施設リストは農水省の証明書や施設認定の申請(アジア)ページで更新されており、2026年3月25日にも更新が入っています。最新版を確認してください。
卵製品そのものを輸出したい場合、新たに認定を取るのは簡単ではありません。現実的には、認定施設の製品を原料に使うか、認定施設と組むことになります。
卵を使った菓子・調理食品は
卵を原料の一つとして使う菓子については、SFAの分類例でビスケットが加工食品の例に入っており、卵を使う伝統菓子や月餅も加工食品として扱われています。一方で、肉のような含有率の基準は、卵については見つかっていません。
マヨネーズ、卵黄ソース、カスタード、卵を多く使う調理済み食品について、SFAが明確に区分を示した資料は確認できませんでした。卵黄の比率が高い商品ほど、Processed Eggsとして扱われる可能性を否定できません。こうした商品は、輸入者を通じてSFAに事前確認してから商談を進めてください。
出典:SFA「Overseas Accreditation of Food & Food Products」、農林水産省「品目別シンガポール輸出に関する規制・ルールについて」(2025年2月)、同「証明書や施設認定の申請(アジア)」
乳製品:原則は加工食品、証明書が要るのは液状乳だけ
乳製品は加工食品として扱われ、海外施設の認定は求められていません。SFAの資料では、口蹄疫の清浄国からの輸入で衛生証明書が必要なのは殺菌済みの液状乳だけです(72℃・15秒以上の殺菌と、清浄国産の原料であることを証明)。それ以外の乳製品には衛生証明書は要りません。
日本はWOAHから口蹄疫のワクチン非接種清浄国と認められているので、チーズ、バター、粉乳、乳を使った菓子は、原則として衛生証明書なしで輸入できる扱いです。ただし清浄国のステータスは変わり得るので、WOAHの一覧を確認する前提で考えてください。
例外もあります。生乳は輸入が禁止されています。乳児用調製乳(0〜12か月向け)には、衛生証明書などの追加要件があります。

図3 卵と乳を含む食品の区分と手続き。出典:SFA(2026年7月24日更新)、農林水産省資料をもとにLink Global作成
出典:SFA「Requirements of Specific Food Products Imported for Sale」(2026年7月24日更新)
市場の規模感:シンガポールは日本の畜産物の主要な出し先
農林水産省によると、2025年のシンガポール向け農林水産物・食品の輸出額は563億円で、国・地域別で8位(前年比+1.2%)でした。上位の品目はアルコール飲料、ホタテ貝、牛肉です。
シンガポールは食料の大半を輸入に頼る市場で、日本食レストランや日系小売も多く、肉・卵・乳を使った日本の加工食品にとって入りやすい市場の一つです。一方で、この記事で見てきたとおり、原料の区分を誤ると通関で止まります。市場の入りやすさと規制の細かさを分けて考えることが大切です。
出典:農林水産省「2025年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)」(財務省貿易統計の確々報値に基づく)
品目別の対応表
相談の多い商品について、区分と必要な手続きを整理しました。「推定」は一次情報で明示されていない部分です。
【ローストビーフ・ハンバーグ】食肉製品/原料牛がシンガポール向け認定施設由来+製造工場の認定+保健所の衛生証明書+輸出検疫証明書
【冷凍鶏肉・鶏肉製品】食肉(家きん)/SFA認定の食鳥処理場または認定工場+衛生証明書+輸出検疫証明書。鳥インフルエンザ発生県は停止
【肉エキス・ラード入りのレトルトカレー、スープ、ラーメンスープ(肉5%以上)】食肉製品/工場の認定+衛生証明書
【同上(肉5%未満)】SFAの事前承認が必要な製品/工場の認定は不要。SFAへの承認申請(無料)+出荷時の衛生証明書・輸出検疫証明書・宣誓書。牛肉エキス入りならBSE関連の証明も必要
【卵白粉・液卵黄・液全卵】Processed Eggs/SFA認定施設(日本は5施設)+衛生証明書+輸出検疫証明書
【牛脂と卵白を使う商品】牛脂は肉として5%ルールで判断+牛由来の衛生証明書。卵白原料は認定施設由来のものを使うのが安全(推定)
【マヨネーズ・卵黄ソース・カスタード】区分不明/SFAへの事前確認が必須
【卵・乳を使った焼き菓子】加工食品(推定)/輸入者の登録+英語ラベル+アレルゲン表示
【チーズ・バター・粉乳】加工食品/原則として衛生証明書は不要(殺菌済み液状乳だけ必要)

図4 品目別の区分と必要な手続き(2026年9月時点)。「推定」は一次情報で明示されていない部分。出典:SFA、農林水産省の各資料をもとにLink Global作成
ケーススタディ:4つの商品で判定してみる
ここまでのルールを、相談の多い商品に当てはめてみます。いずれも一般的な配合を想定した例で、実際の判定は個別の配合表で行ってください。
例1:豚骨ラーメンの濃縮スープ(常温)
豚骨エキスとラードを合算した肉の割合が5%以上なら、食肉製品です。工場のZZ-A1・SG-A2認定と、出荷ごとの衛生証明書が必要になります。原料の豚が、豚熱で輸出が止まっている県の産でないことも確認します。5%未満に収まる配合なら工場の認定は不要になり、SFAの事前承認と出荷時の証明書類で進められます。ラベルでは、ラードを「animal fat」とまとめて書くことはできません。
例2:牛脂を使ったレトルトビーフカレー
牛肉の具材と牛脂を合わせると、多くの場合5%を超え、食肉製品になります。原料牛がシンガポール向け認定施設で処理されたものであること、工場が認定を受けていることに加え、牛由来の原料についてBSEに関する証明が求められます。牛脂だけを輸入原料でまかなっている場合は、その原料の由来施設までさかのぼる必要があります。
例3:卵黄をたっぷり使ったカステラ
完成品は菓子として加工食品に分類されると考えられます(推定)。海外施設の認定や衛生証明書は原則として不要で、輸入者の登録、英語ラベル、アレルゲン表示(卵・乳・小麦)が中心です。ただし、卵黄の比率が高い商品は区分の判断が分かれる可能性があるので、初回の輸出前に輸入者経由でSFAに確認しておくと安全です。
例4:ベイクドチーズケーキ(冷凍)
乳製品を使った菓子は加工食品で、日本からなら乳の衛生証明書は原則不要です。卵も使っているので例3と同じくアレルゲン表示を確認します。冷凍品なので、輸入者の冷凍物流の体制も商談の早い段階で確認してください。
輸出までの流れ:8つのステップ
区分の判定から出荷までを、日本側とシンガポール側の役割に分けて並べると次のようになります。工場の認定が必要な商品は、ステップ3に数か月かかることを見込んでください。
ステップ1(日本側):配合表を肉・卵・乳で塗り分け、区分を判定する。肉は動物性油脂・エキスを合算する
ステップ2(日本側):原料の仕入れ先を確認する。原料肉がシンガポール向け認定施設由来か、卵白・卵黄が認定施設の製品か
ステップ3(日本側):自社工場の認定の要否を確認し、必要なら地方厚生局に申請する(食肉製品はZZ-A1とSG-A2、卵製品はシンガポール向け要綱)
ステップ4(シンガポール側):5%未満品や区分が微妙な商品は、輸入者を通じてSFAに承認申請・事前確認をする
ステップ5(シンガポール側):輸入者の食肉ライセンス・加工食品登録を確認する
ステップ6(両側):2026年改正に対応した英語ラベルと、食肉のカートン表示を作る
ステップ7(日本側):出荷の直前に、豚熱・鳥インフルエンザによる停止情報を確認する
ステップ8(両側):出荷ごとに衛生証明書と輸出検疫証明書を取得し、輸入者がTradeNetで輸入許可を取る

図5 区分の判定から出荷までの8ステップ。出典:農林水産省、関東信越厚生局、SFAの各資料をもとにLink Global作成
日本側の手続き:認定・証明書・検疫
食肉製品の工場認定は二段階
食肉製品をシンガポールに出す工場の認定は二段階です。
ZZ-A1:地方厚生局が認定。食肉製品製造業の営業許可、HACCPの実施、構造設備の基準を満たしていることが条件
SG-A2:シンガポール向けの追加基準。トレーサビリティ、区分管理の手順書、微生物検査の結果などを提出し、SFAへの登録を経て輸出できるようになる
家きん卵製品は、シンガポール向け要綱の認定だけで輸出できます。認定にかかる標準的な期間は公表されていないため、商談の数か月前から動き始めるのが安全です。
要綱と通知はどこで見るか
2020年4月から、輸出関係の要綱と通知は農林水産省輸出・国際局のページにまとめて掲載されています。シンガポール向けには「シンガポール向け輸出食肉の取扱要綱」「シンガポール向け輸出食肉製品等の取扱要綱」などがあり、いずれも2026年6月1日に更新されています。
出荷ごとに必要な証明書
衛生証明書:食肉は食肉衛生検査所、食肉製品・卵製品は工場を管轄する保健所が発行
輸出検疫証明書:動物検疫所が発行(殻付き卵は輸出前7日以内の交付が必要)
原料食肉の証明:輸入肉を使う場合は、輸入時に外国政府が発行した衛生証明書
5%未満の商品は工場の認定が不要ですが、輸出時の書類は必要です。農水省の資料(2025年2月版)は、原料食肉証明書、シンガポール向け食肉製品等の衛生証明書、輸出検疫証明書、日本の行政機関の承認を受けた製造者の宣誓書を挙げています。2022年時点の農水省FAQには「衛生証明書は不要」とする記載も残っているため、出荷前に動物検疫所と管轄の保健所に確認してください。
出典:関東信越厚生局「輸出食肉製品及び家きん卵製品について」、農林水産省「証明書や施設認定の申請(アジア)」
シンガポール側の手続き:輸入者のライセンスと許可
シンガポール側で手続きをするのは輸入者です。日本の輸出者は、組む輸入者がどのライセンスを持っているかを最初に確認してください。
食肉・魚介の輸入ライセンス:年S$84、審査は1営業日
加工食品・食品器具の輸入登録:無料、1営業日(加工卵製品の許可申請にもこの登録番号を使う)
輸入許可(TradeNetで1貨物ごと):冷蔵・冷凍・加工肉S$300、缶詰肉S$77、塩漬け卵・ピータン等S$62、その他の加工卵製品S$22、加工食品は無料

図6 シンガポール側の手続きと費用。出典:SFA「Application Process & Fees for Licence / Permit / Registration for Import / Export」をもとにLink Global作成
ライセンスの申請窓口はGoBusiness Licensingです。前提として、会社の登記(ACRA)、事業体番号(UEN)の税関での有効化、口座振替(GIRO)の設定が必要です。サンプルでも、販売目的なら商業輸入として扱われます。
食肉は、カートンごとの表示も求められます。製品の説明、原産国、処理施設の名称と認定番号、処理日、と畜場の名称・番号・と畜日、包装施設の名称・番号・包装日、正味重量です。箱に印字されている施設番号は、この認定番号を示している可能性があります。
出典:SFA「Application Process & Fees for Licence / Permit / Registration for Import / Export」、SFA「Import Requirements for Food & Food Products」
ラベル:2026年1月30日の改正に注意
シンガポールのラベル規則は2026年1月30日に改正されました(Food (Amendment) Regulations 2025)。肉・卵・乳を含む食品に関係する主な変更点は次のとおりです。
原材料から持ち込まれた食品添加物は、最終製品で技術的な機能を果たす場合に表示する
原材料から持ち込まれたアレルゲンも、固有の名称で表示する
ロット識別番号の表示が必要になった
原産国の前に「Product of」などの文言を付ける
原材料欄に見出しを付け、加えた水も表示する

図7 2026年1月30日施行のラベル改正の主な変更点(模式図)。出典:SFA「Labelling Amendments to the Food Regulations」をもとにLink Global作成
従来からの必須項目は、英語表記、名称、原材料、正味量、シンガポールの輸入者・販売者の名称と住所、原産国です。電話番号やウェブサイトで住所を代替することはできません。なお、原材料の一括名のリストでは、豚脂・ラード・牛脂は「animal fat」とまとめて表示できないとされています(改正後のリストでも同じ)。
アレルゲンの表示義務は、グルテンを含む穀類、甲殻類、卵、魚、ピーナッツ・大豆、乳(乳糖を含む)、木の実、亜硫酸塩(10mg/kg以上)の8分類です。肉エキスの原料に小麦や大豆が使われていることも多いので、原料メーカーの規格書までさかのぼって確認してください。
関税とGST
シンガポールでは、酒類・たばこなど一部を除き、食品に関税はかかりません。肉・卵・乳を含む加工食品も原則として関税はかからず、輸入時に物品サービス税(GST)9%がかかります。関税より、衛生証明書の手配や輸入許可料(食肉は1件S$300)のほうがコストの差として効いてきます。
重金属の基準
シンガポールには食品中の重金属の上限値があります。一般の上限は、ヒ素1ppm、鉛2ppm、水銀0.05ppm、スズ250ppm、カドミウム0.2ppm(ココアは0.5ppm)、アンチモン1ppmです(Food Regulations第31条・第10付表。数値はジェトロの整理による)。缶詰はスズの値に注意が必要です。
出典:SFA「Labelling Amendments to the Food Regulations」、SFA「A Guide to Food Labelling and Advertisements」、ジェトロ「菓子の輸入規制、輸入手続き(シンガポール)」
福島・放射性物質の規制は撤廃済み
シンガポールは、日本産食品に対する放射性物質関連の輸入規制を2021年5月28日に撤廃しました。福島県や10都県の産品であることを理由にした追加要件は、現行の一次情報では確認できません。
ただし、家畜の病気(豚熱・鳥インフルエンザ)による停止は産地単位で残ります。「福島の規制はもうない」ことと、「どの産地の肉でも出せる」ことは別の話です。
出典:SFA「Changes in Import Requirements of Food Products from Japan」(2021年5月27日)、農林水産省FAQ
よくある失敗
チキンオイルやポークエキスを少量使った商品を「加工食品」として申告し、通関で止まる
自社工場は認定済みだが、仕入れた牛脂・エキスの原料肉が認定施設由来ではなかった
卵白・卵黄を認定されていない工場から仕入れていた
豚熱や鳥インフルエンザで停止中の県の原料を使っていた
カートンに施設番号や処理日の表示がなかった
2026年1月の改正後も、「animal fat」表記やロット番号のないラベルを使い続けていた
いずれも、商談の前に配合表と原料の仕入れ先までさかのぼって確認すれば防げます。シンガポールの輸入者は、こうした書類をすぐに出せる日本企業を優先して選びます。
輸入者に最初に確認すること
シンガポール側の手続きは輸入者が行うため、どの輸入者と組むかで、輸出できる商品の範囲が変わります。最初の商談で次の5点を確認してください。
食肉の輸入ライセンスを持っているか。加工食品の登録しかない輸入者は、食肉製品を扱えない
5%未満品のSFA承認を申請した経験があるか
冷凍・冷蔵の物流と保管の体制があるか
英語ラベルのシールを、日本側で貼るのか、シンガポール側で貼るのか
通関で検査や保留になったとき、誰がSFAとやり取りするか
商談前のチェックリスト
輸入者やSFAから求められやすい書類と情報です。商談の前にそろえておくと、話が止まりません。
配合表(動物由来原料ごとの配合率。肉・動物性油脂・エキスの合計)
原料メーカーの規格書(肉エキスや調味料の中身、アレルゲン)
原料肉の由来施設と、シンガポール向け認定の有無
卵白・卵黄など卵原料の製造施設と、SFA認定の有無
牛由来原料の有無と、原料の原産地・日付
製造工程のフローチャートと加熱条件(何℃・何分)
製造者の宣誓書の案(5%未満品の場合)
英語ラベルの案(2026年改正対応、アレルゲン8分類、ロット番号、輸入者の名称・住所)
自社工場の認定状況(ZZ-A1・SG-A2、卵製品要綱)

図8 商談前チェックリスト。Link Global作成
よくある質問(FAQ)
Q. シンガポールでは、加工食品に入っている肉エキスは規制されますか?
はい。肉エキスは「肉」として数えます。肉・動物性油脂の合計が5%以上なら食肉製品となり、工場の認定と衛生証明書が必要です。5%未満なら工場の認定は不要ですが、SFAの事前承認(無料)と、出荷時の衛生証明書・宣誓書などが必要です。牛肉エキスの場合は、含有率に関係なく出荷ごとのBSE関連の衛生証明書が求められます。
Q. 牛脂と卵白を使った商品はシンガポールに輸出できますか?
条件を満たせば輸出できますが、原料ごとに判断します。牛脂は肉として5%ルールで判断し、牛由来の衛生証明書を用意します。卵白は、卵白そのものがProcessed Eggsの対象なので、SFA認定施設の原料を使うのが安全です。
Q. 卵黄ソースやマヨネーズはどの区分ですか?
SFAが明確に区分を示した資料は確認できていません。卵黄の比率によってはProcessed Eggsとして扱われる可能性があるため、輸入者を通じてSFAに事前確認してください。
Q. 鶏肉をシンガポールに輸出するには、どこに申請しますか?
家きん肉は、SFAが認定した食鳥処理場のものに限られます。レトルト・缶詰以外の家きん肉製品の工場認定はSFAが権限を持つため、農林水産省・厚生労働省の窓口を通じてSFAの認定を受ける流れになります。鳥インフルエンザの発生県からの輸出は停止されます。
Q. ローストビーフは輸出できますか?
食肉製品として輸出できます。原料牛がシンガポール向け認定施設で処理されたもので、製造工場も認定を受け、保健所の衛生証明書と輸出検疫証明書を付けることが条件です。
Q. 乳製品に衛生証明書は必要ですか?
日本は口蹄疫の清浄国なので、原則として衛生証明書が必要なのは殺菌済みの液状乳だけです。チーズ・バター・粉乳などには不要です。生乳は輸入禁止で、乳児用調製乳には追加の要件があります。
Q. シンガポールに食品中の重金属の基準はありますか?
あります。Food Regulationsで、鉛2ppm、カドミウム0.2ppm、水銀0.05ppmなどの一般上限が定められています。
Q. 工場の認定にはどれくらいの期間がかかりますか?
標準的な期間は公表されていません。書類審査、現地調査、SFAによる受理という段階を経るため、数か月単位を見込んで、商談の前から準備を始めるのが安全です。
Q. 商品サンプルを送るだけでも手続きは必要ですか?
SFAは、小包やサンプルであっても販売目的なら商業輸入として扱います。試食・展示会用のサンプルの扱いは、輸入者または展示会の主催者を通じて事前に確認してください。
まとめ:配合表を「肉・卵・乳」で塗り分けることから
シンガポール向けの肉・卵・乳を含む食品は、商品名ではなく原料で区分が決まります。まず自社商品の配合表を、肉(動物性油脂・エキスを含む)、卵、乳で塗り分けてください。確認するのは3点です。肉の合計が5%以上か。牛由来の原料があるか。卵白・卵黄など卵そのものの加工品を使っているか。この3点が分かれば、必要な認定と証明書はほぼ決まります。
区分が微妙な商品や、原料の仕入れ先に不安がある場合は、商談の前にSFAや輸入者に確認するのが、結局いちばん早い道です。
Link Globalは、シンガポール・台湾をはじめとするアジア市場への食品輸出について、規制の確認から輸入者探し、展示会出展までを支援しています。個別の商品について相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。




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