日本の家具産地とは?主要6産地の特徴と海外展開の可能性を解説
「日本の家具産地にはどんな種類があるの?」
「各産地の特徴や強みを知っておきたい!」
「日本の家具は海外でも通用するのか気になる!」
最近では、日本の家具や木工製品を海外で展開したいと考える企業が増えています。
「日本製=高品質」というイメージは海外でも根強く、入口の興味を得やすいのは事実です。
しかし一方で、自社や取り扱う家具が「どの産地の、どんな系譜にある家具なのか」を語れないまま海外に出てしまい、価格やデザインの土俵で埋もれてしまうケースも少なくありません。
日本の家具は、産地ごとに歴史も得意分野も価格帯もまったく異なります。そして海外のバイヤーや消費者にとって、この「産地のストーリー」こそが他国の家具との差別化材料になります。
そこで今回は、日本の代表的な家具産地それぞれの特徴を整理したうえで、海外展開の可能性と、成功させるために押さえておきたいポイントまで解説していきます。
自社の家具がどの産地の強みを背負っているのかを理解することは、海外市場で効率よくアプローチするためにも欠かせないポイントですので、ぜひ最後までご覧ください。
日本の主要な家具産地とは(5大・6大産地)
まずは前提として、日本の主要な家具産地の全体像から整理していきましょう。
日本では古くから、特定の地域に家具職人や木工関連の業者が集積し、それぞれが独自の家具文化を育ててきました。
一般的には、福岡県大川市・広島県府中市・岐阜県高山市(飛騨高山)・静岡県静岡市・北海道旭川市の5つを「5大家具産地」と呼び、これにかつて生産規模で上位にあった徳島県を加えて「6大家具産地」と呼ぶこともあります。
※「5大」「6大」の数え方は出典によって異なります。本記事では徳島を含めた6産地を主要産地として紹介します。
それぞれの産地は、木材の集積地だったり、海運の要所だったり、寺社の造営に職人が集まったりと、成り立ちの背景が違います。
その背景の違いが、現在の各産地の「得意とする家具」「価格帯」「デザインの方向性」に色濃く表れています。
海外展開を考えるうえでは、まず自社が関わる産地がどの系譜にあるのかを知っておくことが、最初の一歩になります。
主要家具産地それぞれの特徴
ここからは、主要6産地それぞれの特徴を順番に掘り下げていきます。
産地ごとの強みと方向性が分かると、海外で「どう打ち出すか」のヒントも見えてきますので、各項目に目を通してみてください。
大川(福岡県)|約480年の歴史を持つ日本最大級の家具産地
まず日本最大級の家具産地として知られるのが、福岡県大川市です。その歴史は古く、およそ480年前にさかのぼると言われています。
ルーツは室町時代。かつて「榎津(えのきづ)」と呼ばれたこの地には、船の製造や修理を担う高度な木工技術を持つ船大工が集まっていました。その技術を活かしてつくられた指物が「榎津指物」と呼ばれるようになり、これが大川家具の原点とされています。
大川は筑後川の河口に位置し、上流の木材産地から川を下って木材が集まる集積地であると同時に、有明海につながる海運の要所でもありました。原木の仕入れから製造、運搬までを一貫して行える環境が、日本最大級の家具産地を生んだ背景にあります。
明治以降は機械化にいち早く取り組み、フラッシュ構造やダボ工法といった量産技術を導入。戦後の婚礼家具需要の高まりとともに、全国に名を知られる家具産地へと飛躍しました。
大川家具の最大の特徴は、産地規模を背景にした商品ラインの幅広さです。量産技術を活かした「品質の割に手の届きやすい価格帯」のブランドから、素材と技術にこだわった高価格帯ブランドまでが揃い、幅広い層のニーズに応えられます。
海外展開という観点では、価格競争力とロット対応力、そして多様な価格帯を一つの産地で揃えられる懐の深さが強みになりやすい産地だと言えるでしょう。
静岡(静岡県)|漆と多品種少量生産の総合産地
大川に次ぐ家具生産規模を誇るのが、静岡県静岡市です。
静岡が家具づくりの拠点として発展するきっかけは、徳川家光による浅間神社の大改修だとされています。造営のために全国から集まった腕利きの職人が、工事後もこの地に定着し、木工文化の礎を築きました。温暖な気候と豊かな森林資源、海上交易路の要所という立地も発展を後押ししました。
漆塗りの技術を土台に、明治には西洋鏡台、大正には茶箪笥といった大型家具へと品目を広げ、戦後は進駐軍からの割当発注をきっかけに大きく成長しました。
現在は大量生産から多品種少量生産へと軸足を移し、毎年「家具メッセ静岡」を開催するなど、産地としての発信も続けています。
漆をはじめとする塗装・仕上げの技術蓄積が厚いため、質感や加飾で価値を訴求する海外向け製品との相性が良い産地だと言えます。
飛騨高山(岐阜県)|「飛騨の匠」が育てたデザイン家具
岐阜県高山市の「飛騨の家具」は、椅子やテーブルといった脚物(あしもの)家具を得意とする、日本を代表するデザイン家具の産地です。
その背景には、約1300年前から続く「飛騨の匠」の伝統があります。飛騨の匠は、平城京や東大寺、唐招提寺といった国家事業の造営に貢献したと伝えられる木工技術者の総称で、この地には古くから木づくりの文化が根づいていました。
家具産地としての本格的な歩みは1920年(大正9年)。ほとんど活用されていなかったブナの原生林を活かそうと、地元の有志がトーネット式の曲げ木技術を取り入れ、現在の飛騨産業の前身となる会社を設立したことに始まります。畳の文化の中で椅子づくりに挑むという、当時としては革新的な試みでした。
現在は、キツツキマークで知られる飛騨産業をはじめ、柏木工、日進木工、イバタインテリアなど複数のメーカーが集積しています。「飛騨の家具」は地域団体商標として保護され、品質基準を満たした認定企業のみが名乗ることができます。10年保証や修理体制を整えるメーカーも多く、長く使う前提のものづくりが根づいています。
海外展開という点でも先進的で、「飛騨の家具」の図形商標は台湾(2009年)・中国(2010年)・香港(2018年)でも登録済みです。早くからパリやロサンゼルスへ出展するなど、世界に向けた発信を続けてきました。デザイン性とブランドストーリーが明確なため、海外のセレクトショップやデザイン感度の高い層へのアプローチに特に向いた産地だと言えます。
府中(広島県)|婚礼家具で名を馳せた高級収納家具の産地
広島県府中市は、収納家具、とりわけ婚礼家具で全国に名を知られてきた産地です。
その歴史は約300年。宝永年間(1700年頃)に、大坂で箪笥の製法を習得した内山円三が帰郷して製作を始めたのが起源とされます。府中は石州銀山街道沿いの物流の要衝で、中国山地の良質な木材が集まり、自然乾燥に適した気候にも恵まれていました。さらに、会津桐・南部桐と並ぶ「備後桐」の産地でもあり、桐箪笥の文化が育まれた土地です。
戦後、府中は全国に先駆けて「婚礼家具セット」を開発します。高度経済成長と団塊世代の結婚適齢期が重なり、高級な婚礼家具が爆発的にヒット。「婚礼家具のメッカ」「日本一府中のたんす」と呼ばれるまでになりました。
引き出しの接合に蟻組み(ありぐみ)を用いるなどの伝統技巧と、各社が競い合って磨いてきた塗装技術が、高級家具の産地としての名声を支えています。府中家具も地域団体商標(2007年)として保護されています。
近年は婚礼家具にとどまらず、デザイナー家具や住宅内装家具まで手がける総合インテリア産地へと展開しています。確かな収納技術と仕上げの美しさは、海外向けの収納提案や素材訴求にも活かせる強みです。
徳島(徳島県)|鏡台・仏壇に強い木工塗装の産地
徳島県は、かつて大川・静岡に次ぐ家具生産規模を誇った産地です。
鏡台などの家具づくりで発展し、仏壇をはじめとする木工・漆塗装の技術が地域に深く根づいています。
産地としての知名度は前述の産地に比べると控えめですが、塗りと木工の確かな技術基盤を持ち、特定品目で強みを発揮できる産地です。
旭川(北海道)|「家具の聖地」とデザイン都市
北海道旭川市は、120年余りの歴史を持つ、日本最北の家具産地です。
タモやナラといった北海道産の広葉樹を活かし、デザイン性の高い木製家具づくりで国内外から評価を得てきました。カンディハウス(CONDE HOUSE)をはじめとするメーカーが、世界市場でも存在感を示しています。
3年に一度開催される国際家具デザインコンペティション旭川(IFDA)を通じて世界のデザイナーとつながり、旭川市は2019年にユネスコ創造都市ネットワークのデザイン分野に加盟認定されました。
近隣の東川町・東神楽町・当麻町などのメーカーや工房も含め、産地全体で「家具の聖地」「デザイン都市」としての存在感を高めています。
デザインとクラフトの文脈で語れる産地のため、海外のデザイン市場・台湾をはじめとするアジア市場との親和性が高い産地だと言えるでしょう。
【注目】東川町(北海道)|旭川家具を支える「木工のまち」
旭川家具を語るうえで欠かせないのが、旭川市の隣に位置する東川町です。
大雪山連峰・旭岳のふもとに広がる人口約8,600人の町で、町内には30以上の木工所が集まり、旭川家具のおよそ3割がこの東川町で生産されています。まさに旭川家具産地の中核を担う「木工のまち」です。
東川町のもうひとつの顔が「写真の町」です。1985年の「写真の町」宣言以来、写真と家具・クラフトを軸にしたまちづくりで全国的に注目を集めてきました。鉄道・国道・上水道のいわゆる「3つの道」がないにもかかわらず移住者が増え続けている、地方創生の代表的な事例としても知られています。
そんな東川町を象徴するのが、2006年に始まった「君の椅子」プロジェクトです。町で生まれた子ども一人ひとりに、町内の工房で手作りした椅子を贈る取り組みで、贈られる椅子のデザインは毎年選定されます。さらに中学校で3年間使った椅子を卒業時に持ち帰る「学びの椅子」もあり、4月14日は「椅子の日」に制定されています。
このほかにも、椅子研究家・織田憲嗣氏が収集した世界の名作椅子「織田コレクション」の常設展示や、建築家・隈研吾氏と連携したデザインの取り組みなど、町全体がショールームのように木工文化を体現しています。カフェや公共施設にも町でつくられた家具が自然に溶け込み、暮らしと家具が一体になっているのが東川町の特徴です。
海外展開という観点で東川町が際立つのは、「製品」だけでなく「文化・ストーリー」をまるごと語れる点です。子どもに椅子を贈る町、暮らしに家具が根づいた町という世界観は、価格やスペックでは測れない価値として、海外の感度の高い層やアジア市場に強く訴求できる資産になります。
産地の物語ごと海外に届けられる東川町のような地域は、日本の家具・工芸への関心が高い台湾をはじめとするアジア市場との親和性が特に高いと言えるでしょう。
数字で見る日本の木製家具輸出——最大の輸出先は台湾
産地の特徴を押さえたところで、実際に日本の木製家具がどこへ、どれだけ輸出されているのかを確認しておきましょう。ここを知らないまま「海外で通用するか」を議論しても、話が抽象論で止まってしまいます。
以下は財務省「貿易統計」(2025年確々報)を林野庁が集計したものです。ここでいう「木製家具」は、HSコード9401.61(木製イス・アップホルスター)、9401.69(その他の木製イス)、9403.30〜9403.60(事務所用・台所用・寝室用・その他の木製家具)を集計した範囲を指します。統計上の定義が異なる数字と混同しないよう、比較する際は範囲をそろえてください。
輸出先ランキング——1位は台湾(18.5億円)
2025年の日本の木製家具の輸出額は、76か国・地域あわせて89.1億円でした。上位5か国・地域は次のとおりです。
1位 台湾 18.5億円 / 2位 中国 16.2億円 / 3位 米国 9.0億円 / 4位 香港 9.0億円 / 5位 韓国 6.2億円
最大の輸出先が台湾であることは、あまり知られていません。米国や欧州を最初の候補に置く事業者が多い一方で、実際に日本の木製家具がいちばん多く渡っているのは台湾です。上位5つのうち4つが東アジアであり、この市場の重心はアジアにあります。
品目別——台湾向けは台所家具が約6割
台湾向け18.5億円の内訳を見ると、市場の性格がさらにはっきりします。台所用の木製家具(9403.40)が11.0億円で全体の約6割を占め、次いで木製イス・アップホルスター(9401.61)が3.5億円、その他の木製家具が2.85億円、その他の木製イスが0.8億円、寝室用が0.28億円、事務所用が0.09億円という構成です。
つまり台湾で動いているのは、椅子やテーブルといった単品の脚物よりも、キッチンまわりの造作・収納が中心だということです。台湾の住宅では「系統櫃」と呼ばれる造作家具の文化が根強く、内装工事とセットで家具が決まる商習慣があります。単品のプロダクトを持ち込むより、内装業者・設計事務所の流れに乗る方が数量が出る構造だと理解しておくと、商談相手の選び方が変わります。
なお日本全体で見ると、木製家具89.1億円のうち「その他の木製家具」が41.9億円(47.0%)、木製イス・アップホルスターが22.9億円(25.7%)、台所用が16.1億円(18.1%)という構成です。台所用の比率が全体では18%なのに対して台湾では約6割に達している点が、この市場の際立った特徴です。
5年で2.2倍——木製家具の輸出は伸びている
木製家具が輸出統計に品目として加えられたのは2020年です。その2020年の輸出額は40億円でしたが、2025年には89.1億円に達しました。5年で約2.2倍です。同じ期間に、木像・寄木細工・装飾木箱などの木製品は約1.6倍、漆塗りの木製食器や箸などの木製食器は約2.0倍に伸びています。
林産物全体で見ると、木材・木製家具・特用林産物を合わせた2025年の輸出額は735億円(前年比10.1%増)でした。政府は2030年までに林産物の輸出額を1,660億円とする目標を掲げています。木材が丸太中心の構造から抜けきれていない一方で、家具や食器といった付加価値の高い完成品カテゴリーが着実に伸びているのが、いまの林産物輸出の実態です。
この伸びをどう読むかは冷静であるべきです。89億円という規模は、産地単位で見れば大きな数字ではありません。ただし5年で倍以上になっている市場で、最大の相手が台湾であるという事実は、これから海外展開を検討する産地にとって出発点の情報になります。ゼロから需要を作る話ではなく、すでに動いている商流のどこに入るかという話だからです。
この数字が示しているのは、「日本の家具は海外で評価されるか」という問いの立て方そのものを変えた方がよい、ということです。すでに年間89億円が76か国・地域に渡っており、最大の相手は台湾です。問うべきは通用するかどうかではなく、自社の産地の強みがどの市場のどの用途と噛み合うか、です。
日本の家具産地が海外で評価される理由
ここからは、日本の家具産地が海外で評価される理由を掘り下げていきます。
産地の特徴を理解したうえで「なぜ海外で通用するのか」を言語化できると、商談やブランディングで大きな武器になります。
品質・耐久性への信頼
まず挙げられるのが、品質と耐久性への信頼です。
日本の家具づくりは、木材の選定・加工精度・仕上げ・修理可能性まで含めて丁寧に作り込む文化があります。
「長く使える」「壊れにくい」という実用面の信頼は、家具のように長期間使う商品では特に強い購買理由になります。
デザイン性と工芸的価値
次に、デザイン性と工芸的価値です。
飛騨高山や旭川に代表されるように、日本の家具産地はデザインと手仕事の価値を両立させてきました。
機能だけでなく、触り心地・佇まい・素材感といった「工芸としての価値」は、価格以上の納得を生み、海外の感度の高い層に響きます。
産地ブランドのストーリー性
そして、産地ブランドのストーリー性です。
「どの産地で、どんな歴史と技術を背景に作られているか」というストーリーは、他国の家具にはない差別化材料になります。
ただし注意したいのは、ストーリーは「感動話」で終わらせず、「だから使いやすい」「だから長持ちする」という納得材料に変換することです。この点は海外市場で成果を出すうえで非常に重要なポイントになります。
家具産地が海外展開で直面する課題
一方で、日本の家具産地が海外展開を進めるうえでは、いくつかの課題も存在します。
評価される理由とあわせて、つまずきやすいポイントも理解しておきましょう。
価格競争力(為替・輸送コスト)
家具は容積が大きく重量もあるため、輸送コストが価格に大きく跳ね返ります。
為替の影響も受けやすく、現地価格が想定以上に上振れしてしまうケースは珍しくありません。
価格が上がる場合は、その「高い理由」を明確な根拠で説明できるかどうかが、評価の分かれ目になります。
現地のライフスタイル・住環境への適応
日本国内向けにつくられた家具が、そのまま海外で受け入れられるとは限りません。
住居の広さ、湿度や気候、収納の考え方、生活動線など、現地のライフスタイルに合わせた設計・提案が求められます。
「自社の強み」ではなく「現地の暮らしの課題」を起点に位置づけることが、海外で選ばれるための鍵になります。
販路とアフターサポート体制
家具は買って終わりの商品ではありません。
メンテナンス方法、保証、修理、交換パーツの供給といったアフターサポートが曖昧だと、バイヤーも消費者も採用をためらいます。
販路の確保と並行して、購入後の不安を先回りして解消する体制を整えておくことが、海外展開の成否を左右します。
家具を実際に輸出するときの実務——コスト・規制・輸送
産地の強みを言語化できても、実際の輸出でつまずけば商談は前に進みません。ここでは、家具を海外に出すときに必ず向き合うことになる実務論点を、台湾を例に整理します。
コストは「関税+営業税+推廣貿易服務費」の3点で計算する
台湾に輸入される物品には、関税のほかに営業税(日本の消費税に相当する付加価値税)が課され、計算式は(CIF価格+輸入関税)×5%です。さらに推廣貿易服務費(貿易サービス税)がCIF価格の0.04%かかります。関税だけを見て見積もりを作ると着地価格がずれるため、この3点をセットで計算してください。
台湾の輸入税率はカラムⅠ・カラムⅡ・カラムⅢの3種類に分かれ、日本産はWTO加盟国向けのカラムⅠが適用されます。個別の税率は、財政部関務署の輸入関税検索サイト「Tariff Database」で、トップページから「税則税率」→「(GC411) 稅則稅率綜合查詢作業」と進めばCCC号列から照会できます。木製家具はHS9401(イス類)とHS9403(その他の家具)に分かれ、さらに用途で細分されるため、自社製品がどのコードに当たるかを最初に確定させておくと、その後の見積もりも通関もスムーズです。
素材を輸出する場合は植物検疫とBSMIが関わる
完成品の家具と、家具用の材料では、かかる規制がまったく違います。木材・製材を素材として輸出する場合は植物検疫の対象になり、2023年1月19日以降は樹皮のない製材にも植物検疫証明書の添付が必要です。また合板・集成材・フローリング・MDF・パーティクルボードなどの積層木材類は、台湾国内で販売する場合に経済部標準検験局(BSMI)の事前検査とラベル表示が求められます。ただし家具に加工・組立するための原材料は検査対象から除外される扱いがあるため、用途によって要否が変わります。
素材と完成品のどちらで出るかによって手続きが変わる点は、輸出の入口で必ず確認しておくべきポイントです。詳しくは「日本産木材の台湾輸出 完全ガイド2026」で解説しています。
こん包材にも規制がある——ISPM No.15
見落とされがちなのが、こん包に使う木材パレットや木箱です。輸出こん包用の木材は国際基準ISPM No.15に基づく熱処理と認証マークが必要で、商品そのものに問題がなくてもパレットが未処理だと通関で止まることがあります。フォワーダーに「輸出用認証パレット」を明示して手配してください。
家具は容積が大きく重量もあるため、輸送コストが価格に直接跳ね返ります。分解・平積みできる設計にできるか、コンテナに何台積めるかは、現地価格を決める重要な変数です。デザインの段階で輸送効率を織り込んでいる産地・メーカーは、海外市場で明確に有利になります。
日本の家具産地が海外展開を成功させるためのポイント
最後に、日本の家具産地が海外展開を成功させるために押さえておきたいポイントを整理します。
ポイントは、「産地の強みを、現地の暮らしの言葉に翻訳すること」に集約されます。
自社が関わる産地の強み(価格対応力なのか、デザイン性なのか、技術や素材なのか)を明確にし、それを現地のライフスタイルの課題解決に結びつけて提案する。そのうえで、写真・動画・寸法といった具体情報と、サポート体制を揃える。この型を踏むことで、文化が違っても価値が伝わりやすくなります。
特にアジア・台湾市場は、日本の家具・工芸への関心が高く、有力な展開先のひとつです。台湾市場での評価のされ方や、現地展示会の活用については、以下の記事もあわせてご覧ください。
・台湾市場での評価の分かれ目を解説:台湾市場で日本の家具・工芸が評価される理由・されない理由
・工芸品の台湾・アジア展開の全体像:日本の伝統工芸品を台湾・アジアで売るための完全ガイド
・台湾の家具系展示会を活用したい方へ:メジャーな台湾の家具関連の展示会を解説
・展示会出展の費用感を知りたい方へ:海外展示会の出展費用はこう作る
・販路開拓の進め方全体は:海外販路開拓の進め方
日本の家具産地は、それぞれが固有の歴史と強みを持つ、世界に誇れる資産です。その強みを正しく翻訳して海外に届けられれば、価格だけでは測れない価値で選ばれるブランドになれます。
もし海外展開の戦略づくりや、産地・自社の強みの打ち出し方でお悩みの方は、お気軽に弊社までご相談ください。海外販路開拓支援として、ターゲット市場の分析に基づく事業戦略から、展示会出展・代理店開拓・現地コミュニケーションまで一貫してサポートいたします。
【本記事の統計データについて】木製家具の輸出額は、財務省「貿易統計」(2025年確々報)を林野庁木材利用課が集計した「木材輸出をめぐる状況」(2026年4月)に基づきます。集計範囲はHSコード9401.61(木製イス・アップホルスター)、9401.69(その他の木製イス)、9403.30〜9403.60(事務所用・台所用・寝室用・その他の木製家具)です。国内の産地別生産規模については、統計上の集計範囲(家具・装備品・建具を含むかどうか)や調査年次が資料によって異なるため、本記事では数値の比較を行っていません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本の家具産地は結局いくつあるのですか?
数え方は出典によって異なります。一般的には福岡県大川市・広島県府中市・岐阜県高山市(飛騨高山)・静岡県静岡市・北海道旭川市の5つを「5大家具産地」と呼び、これにかつて生産規模で上位にあった徳島県を加えて「6大家具産地」と呼ぶこともあります。本記事では徳島を含めた6産地を主要産地として紹介しています。これ以外にも各地に木工の集積地があり、どれが上位かという序列よりも、自社が関わる産地がどの系譜にあるかを把握することの方が実務では重要です。
Q2. 日本の木製家具は実際にどれくらい輸出されているのですか?
2025年の日本の木製家具の輸出額は、76か国・地域あわせて89.1億円でした(財務省「貿易統計」2025年確々報、HS9401.61・9401.69・9403.30〜60の集計)。最大の輸出先は台湾で18.5億円、以下、中国16.2億円、米国9.0億円、香港9.0億円、韓国6.2億円と続きます。上位5つのうち4つが東アジアです。
Q3. なぜ台湾が1位なのですか?
台湾向け18.5億円の内訳を見ると、台所用の木製家具が11.0億円で約6割を占めています。台湾の住宅には「系統櫃」と呼ばれる造作家具の文化が根強く、内装工事とセットで家具が決まる商習慣があります。単品のプロダクトを持ち込むより、内装業者や設計事務所の流れに乗る方が数量が出やすい構造です。日本全体では台所用の比率が18%にとどまることを考えると、台湾は明確に特殊な市場だと言えます。
Q4. 小さな工房でも海外展開はできますか?
規模よりも、何を語れるかと、どのチャネルを選ぶかで決まります。量産ロットで戦う産地と、少量多品種や一点物で戦う産地では、そもそも組むべき相手が違います。少量多品種は弱点ではなく、ギャラリー、インテリアショップ、高級ホテル、ブライダルや企業ギフトといったチャネルが求める強みでもあります。自社の生産能力に合ったチャネルを選べば、規模の小ささは不利になりません。
Q5. 産地のストーリーは本当に売りになりますか?
なりますが、条件があります。ストーリーを「感動話」で終わらせず、「だから使いやすい」「だから長持ちする」という納得材料に変換できているかどうかです。海外のバイヤーは歴史そのものを買うわけではありません。480年の歴史があるから量産技術とロット対応力がある、飛騨の匠の系譜だから曲げ木と脚物に強い、というように、歴史を現在の機能や品質の裏付けとして提示できたときに、初めて価格の根拠になります。
Q6. 価格が高くなってしまうのですが、どう説明すればいいですか?
家具は容積と重量が大きいため輸送コストが価格に跳ね返り、為替の影響も受けます。現地価格が想定以上に上振れすることは珍しくありません。重要なのは価格を下げることではなく、高い理由を具体的な根拠で説明できるかどうかです。使用樹種、加工精度、保証年数、修理体制、交換パーツの供給といった、長く使う前提のものづくりを裏付ける情報を揃えてください。飛騨高山の一部メーカーのように10年保証と修理体制を明示している例は、価格の説明そのものになっています。
Q7. 海外で商標を取っておく必要はありますか?
産地ブランドで展開するなら検討する価値があります。「飛騨の家具」の図形商標は台湾(2009年)・中国(2010年)・香港(2018年)で登録されており、府中家具は2007年に国内の地域団体商標として登録されています。産地名は模倣されやすく、後から取り返すのは困難です。展開先が固まった段階で、現地での権利化を先に進めておくことをおすすめします。
Q8. まず何から始めればいいですか?
自社が関わる産地の強みが、価格対応力なのか、デザイン性なのか、技術や素材なのかを明確にすることからです。そのうえで、その強みが現地の暮らしのどの課題を解決するのかに翻訳し、写真・動画・寸法といった具体情報とサポート体制を揃えます。台湾のように内装とセットで家具が決まる市場なのか、単品で選ばれる市場なのかによって、商談相手も提案の形も変わります。市場を決めてから資料を作る順番が、遠回りに見えて最短です。
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