水産物の台湾輸出2026|施設登録は義務か・衛生証明書・査験
2024年に4億円だった品目が、2025年に51億円になりました。うなぎ(活)です。台湾向け農林水産物・食品の品目別で7位に入り、増加額は47億円。同じ年に20億円増えた牛肉を、増加額で倍以上上回っています。
ただし、この51億円の中身を公表統計から特定することはできません。活のうなぎには稚魚・養殖用の種苗・食用という3つの層があり、それぞれ必要な手続きが違うからです。本記事では内訳を推測せず、3つの層それぞれの手続きを整理します。
もうひとつ、台湾向けの水産食品には、施行日が決まらないまま止まっている規制があります。取扱施設の承認制度です。2024年1月1日に発効する予定でしたが延期され、2026年9月現在も施行日は未確定のままです。
ただし「義務ではないなら関係ない」で終わらせると、制度が動いたときに対応できません。しかも、施行前にできる先回りの窓口は2026年9月に閉じました。ここは後で詳しく整理します。
本記事は、この2点を軸に、日本から台湾へ水産物を輸出する際の実務を整理したものです。
本記事のデータについて
輸出額および台湾の市場データは、公益財団法人日本台湾交流協会 農林水産物・食品輸出支援プラットフォーム(台湾)「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2024年3月作成/2026年3月更新)に依拠しています。同レポートの一次データは財務省「貿易統計」を基に農林水産省が作成したもの、および台湾農業部・経済部統計処・衛生福利部の公表資料です。
制度に関する記述は、農林水産省および水産庁の公表ページを原典としています。原典の図表は転載せず、数値から独自に記述を作成しました。原典にない数値の推定補完は行っていません。
施設承認制度は施行日が未確定で、運用も動いています。本記事は2026年9月19日時点の公表情報に基づいており、実際の輸出にあたっては必ず最新の一次情報と証明書発行機関への確認を行ってください。
台湾は日本産水産物にとってどういう市場か
2025年の台湾向け農林水産物・食品の輸出額は1,812億円で、前年比6.4%増。米国、香港に次ぐ第3位の市場です。日本の輸出額全体の1割強を占めています。
品目別の上位10品目は次のとおりです。カッコ内は2024年の額と増減額です。
1位 アルコール飲料 174億円(159億円・+15億円)
2位 ホタテ貝 133億円(121億円・+12億円)
3位 牛肉 133億円(113億円・+20億円)
4位 りんご 105億円(156億円・▲51億円)
5位 ソース混合調味料 102億円(96億円・+6億円)
6位 清涼飲料水 52億円(46億円・+6億円)
7位 うなぎ(活) 51億円(4億円・+47億円)
8位 菓子(米菓を除く) 45億円(40億円・+5億円)
9位 たばこ 34億円(31億円・+3億円)
10位 ペットフード 30億円(31億円・▲1億円)
出典:日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2026年3月更新)。原典は財務省「貿易統計」を基に農林水産省作成。
上位10品目のうち水産物は2つ、ホタテ貝とうなぎ(活)です。合計で184億円。1位のアルコール飲料174億円を上回ります。単一品目としては目立ちませんが、カテゴリとして見れば台湾は水産物の主要な輸出先です。
注目すべきは増減の方向です。長らく台湾向けの顔だったりんごが51億円減った一方で、水産2品目は合わせて59億円増えました。りんごの減少については、農林水産省の輸出実績資料で春節の需要期のずれや天候による大玉の確保難といった供給側の事情が挙げられており、台湾側の需要が落ちたという整理にはなっていません。
自給率138.5%の市場に、なぜ日本産が入るのか
台湾の水産品自給率は138.5%です(2024年、熱量ベース)。国内で消費する以上に生産している、という意味になります。米が102.9%、豚肉が87.5%、牛肉に至っては4.6%であることを考えると、水産品は台湾が最も自給できている分野です。
それでも日本産が入る理由は、生産している魚種が違うからです。
台湾の主な水産品の生産量(2024年)を見ると、かつお類211,835トン、まぐろ類141,851トン、頭足類130,477トン(うち約9割がいか)、さば類74,069トン、さんま69,486トン、貝類68,385トンと続きます。遠洋・沖合の回遊魚が中心です。
そして貝類68,385トンのうち、約7割ははまぐりです。ホタテはほとんど生産されていません。
この構造は輸入シェアにそのまま表れています。台湾のホタテ(冷凍)輸入額は96,061千米ドルで、そのうち日本のシェアは86.6%。2位の中国大陸10.9%、3位のベトナム1.6%を大きく引き離し、日本が圧倒的な1位です。
出典:台湾農業部統計(日本台湾交流協会レポート2026年3月更新に掲載)。
つまり台湾市場における日本産水産物の位置は「安い代替品との競争」ではありません。台湾で獲れない魚種を、台湾で獲れないという理由で買われている。ホタテがその典型です。
裏を返せば、台湾でよく獲れる魚種を持ち込んでも勝負になりにくい、ということでもあります。かつお・まぐろ・いか・さばは台湾側の生産量が大きい分野です。品目を選ぶ段階で、この自給構造を見ておく価値があります。

図F:台湾向け水産物の輸出額と、台湾の自給率・輸入シェア。出典:日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」(2026年3月更新)。輸出額の原典は財務省「貿易統計」を基に農林水産省作成、自給率と輸入シェアは台湾農業部統計。
施設承認制度は、施行日が決まらないまま止まっている
台湾向けの水産物輸出を考えるとき、最初に押さえるべきなのがこの制度です。すでに決まったものとして解説している記事もありますが、2026年9月時点で施行されていません。
経緯を整理します。2022年7月、台湾の衛生福利部は、台湾向けに輸出される水産食品について、取扱施設を台湾当局が承認すること、および衛生証明書を添付することを求める新たな規制案のパブリックコメントを実施しました。施行日は2024年1月1日とされていました。
ところが台湾側から施行を延期し施行日は未確定との情報があり、日本側でも手続の切替を延期。2024年1月1日以降も従来どおりの手続で輸出を進めるよう案内が出されました。この状態が現在まで続いています。
現状と施行後で何が変わるかを整理すると、次のようになります。
【施設認定】現状:不要 / 施行後:必要(取扱施設)
【衛生証明書】現状:食用の貝類およびその加工品と一部の活水産動物のみ / 施行後:全ての水産食品に必要
【対象となる水産食品】HSコード03(魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物)の全て、1604(魚の調製品、キャビアおよびその代用物)、1605(甲殻類・軟体動物等の調製品)
出典:農林水産省「台湾向け輸出水産食品の施設承認及び衛生証明書の添付の義務づけについて」、および日本台湾交流協会レポート(2026年3月更新)。
HS03がまるごと対象という点に注意してください。生鮮も冷凍も、魚も貝もえびも対象です。さらに1604・1605が入るため、調製品まで含まれます。施行されれば、台湾向けに水産物を出しているほぼ全ての事業者が影響を受けます。

図A:施設承認制度の現在と施行後。出典:農林水産省「台湾向け輸出水産食品の施設承認及び衛生証明書の添付の義務づけについて」(2026年9月閲覧)。
施設情報の提供受付は2026年9月に終了した
ここは、この1か月で状況が変わった箇所です。古い解説を読むと判断を誤ります。
施行日が未確定のまま延期されている一方で、台湾側はこれまで、施行前に台湾向けの輸出実績がある取扱施設の情報提供を求めていました。輸出実績のある施設が施行後も輸出を続けられるよう、あらかじめ台湾側の承認を得ておくための仕組みです。
この情報提供が、2026年9月の更新で不要になりました。農林水産省は、台湾側から今後の情報提供は不要となったと案内しています。これまでに承認された取扱施設の名称や住所などの変更についても、届け出は不要とされています。
整理すると、現在の状況はこうです。
施設の承認登録は、現時点でも義務ではない
施行前に先回りで情報提供する窓口は、2026年9月をもって閉じた
すでに台湾側に承認されている施設のリストは、農林水産省のページで公開されている(2026年6月2日更新。2025年3月17日までに登録した施設を掲載)
船舶で漁獲した水産食品を台湾へ直接輸送した実績がある船舶の船長については、衛生証明書を発行できる船長として情報提供が引き続き必要(回答期限は毎月末日)
つまり、承認済みのリストに名前がある施設と、そうでない施設とで、施行後のスタート地点が変わる可能性があります。リストに載っていない施設が施行後どう扱われるかは、現時点で示されていません。ここは推測で埋めず、施行時の案内を待つしかない部分です。
なお海外施設については、2023年9月の更新で日本からの情報登録が不要となっています。制度の運用はこのように随時変わるため、農林水産省の該当ページを定期的に確認することが、実務上の最も確実な対応になります。

図B:施設承認制度をめぐる経緯と、2026年9月の変更。出典:農林水産省「台湾向け輸出水産食品の施設承認及び衛生証明書の添付の義務づけについて」(2026年9月閲覧)。
対象となる「取扱施設」の範囲は想像より広い
登録の対象は、水産食品の供給過程に関与する全ての施設です。具体的には次の4類型が挙げられています。
養殖施設(海面、陸上)
加工施設(加工には洗浄・内臓の除去・凍結処理・包装等を含む)
水産食品の加工を行う船舶(もっぱら漁獲又は運搬を行う船舶を除く)
保管施設(冷凍庫、冷蔵庫、倉庫)
見落とされやすいのが2つ目と4つ目です。加工の定義に洗浄・内臓の除去・凍結処理・包装が含まれるため、「うちは加工していない、洗って凍らせて箱に詰めているだけだ」という施設も対象になります。また冷凍庫・冷蔵庫・倉庫といった保管施設も対象です。
自社の工場だけを見て判断すると足りません。原料の保管を外部倉庫に委託している場合、その倉庫も供給過程に関与する施設に当たります。サプライチェーンを遡って、どこが対象になるかを洗い出しておく必要があります。
船舶で漁獲した水産食品を台湾に直接輸送している場合は、その船舶の船長についてのみ、衛生証明書を発行できる船長として台湾側への情報提供が続いています。回答期限は毎月末日です。取扱施設の情報提供が不要になった後も、この部分は残っている点に注意してください。

図C:対象となる取扱施設の4類型。出典:農林水産省(2026年9月閲覧)。
現在、日本側で必要な証明書
施設承認制度が施行されるまでの間、日本側で求められる証明書は限定的です。ただし「限定的」の中身が品目によって分かれており、ここを取り違えると通関で止まります。
現時点で衛生関係の証明書が必要なのは、食用の貝類およびこれらの加工品と、一部の活水産動物です。それ以外の水産食品には、現時点で衛生証明書の添付は求められていません。ただし後述のとおり、魚種によっては衛生証明書とは別の証明書が必要になります。
貝類は活か活以外かで申請先が変わる
食用の貝類およびこれらの加工品には、輸出の都度、衛生証明書の発行を受ける必要があります。申請先は活かどうかで分かれます。
活の貝類:水産庁、または一部の都道府県の水産主管部局
活以外の貝類:施設または輸出者の事業者が所在する地域を所管する地方農政局等
ここで注意が必要なのが、活以外の申請先です。この業務は2022年7月1日に地方厚生局から農林水産省へ移管されました。それ以前に書かれた解説記事は申請先が地方厚生局のままになっていることがあり、そのとおりに動くと窓口違いになります。
手続きの根拠は「台湾向け輸出貝類の取扱要綱」です。申請時には申請書のほか、輸出する貝類が国内で養殖されたものである場合は漁業権免許の写しの添付が必要になります。取扱施設についても、要件に該当することを示す書類の写しが求められます。
申請は農林水産省の一元的な輸出証明書発給システムからオンラインで行います。利用にはGビズIDプライムアカウントが必要で、取得には日数がかかります。初めて輸出する場合は、ここが最初のボトルネックになりがちです。
活水産動物には動物衛生証明書が必要になる場合がある
台湾が指定する生きている水産動物については、動物衛生証明書が必要です。輸出の都度、証明書発行機関である都道府県水産部局に必要書類を添えて申請します。根拠は令和4年3月30日付けの畜水産安全管理課長通知に基づく取扱要領です。
重要なのは、対象が魚種ごとに指定されており、しかも対象疾病がセットで定められている点です。別表には対象となる魚類・甲殻類・貝類が学名で列挙されており、魚類だけで80種にのぼります。
たとえば魚類では、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)が7つの疾病を対象とする一方、マダイ(Pagrus major)はマダイイリドウイルス病のみが対象です。ブリ(Seriola quinqueradiata)、カンパチ(Seriola dumerili)、ヒラメ(Paralichthys olivaceus)、スズキ(Lateolabrax japonicus)なども対象に含まれます。
和名は参考として付されているだけで、確認は学名で行うよう明記されています。近縁種で対象・非対象が分かれることがあるため、和名だけで判断しないでください。証明書発行機関や検査機関によって発行・検査できる品目が異なるため、事前相談が必要です。
出典:農林水産省「台湾向け輸出水産動物の取扱いについて」別表(対象魚類及びその対象疾病)。
魚種によっては、衛生証明書とは別の証明書が要る
台湾向けの水産物輸出で必要になる証明書は、衛生関係のものだけではありません。魚種・品目ごとの証明書という区分が別に存在します。
農林水産省の案内では、次のものが挙げられています。
特定のマグロ類等(クロマグロ、メバチ、メカジキ、ミナミマグロ)およびメロ:漁獲証明書が必要
キャビアの輸出・再輸出:国際ルールを遵守するための登録制度がある
うなぎの稚魚(全長13センチメートル以下)、アワビ、ナマコ:水産流通適正化法に基づく適法漁獲等証明書が必要
出典:農林水産省「台湾向け水産物を輸出する際の必要な手続きを教えてほしい」(令和7年12月4日時点にて作成)、水産庁「輸出入に係る証明書の交付申請について(法第13条)」。
つまり「貝類でも活水産動物でもないから書類は要らない」とは限りません。まぐろ類を扱う場合は漁獲証明書が別途必要になります。自社の品目が衛生証明書の対象か、漁獲証明書の対象か、あるいはその両方かを最初に切り分けてください。
なお農林水産省は、これらに加えて食品包装やラベル表示、重金属規制等の台湾内の規制や、その他の手続き・必要書類について、輸入事業者を通じて台湾当局に確認したうえで輸出手続きを進めるよう案内しています。日本側の書類を揃えただけでは足りない、という前提で動くのが安全です。
活のうなぎは3つの層に分かれる
冒頭で触れたうなぎ(活)51億円について、実務の話をします。
まず前提として、この51億円が何であるかを公表統計から特定することはできませんでした。品目別ランキングでは「うなぎ(活)」として1行にまとめられており、内訳は開示されていません。本記事では推測せず、活のうなぎを輸出する場合に想定される3つの層それぞれについて、必要な手続きを整理します。
第1層:稚魚(全長13センチメートル以下)
うなぎの稚魚は、水産流通適正化法における特定第一種水産動植物等に指定されています。アワビ、ナマコと同じ区分です。ここでいう稚魚とは全長13センチメートル以下のうなぎを指します。
この区分で押さえるべきなのは、2025年に制度が変わったことです。令和7年11月30日限りで、外国為替及び外国貿易法に基づく「うなぎの稚魚」の輸出承認制度が廃止されました。令和7年12月1日からは、水産流通適正化法に基づき農林水産大臣が交付する適法漁獲等証明書が必要になっています。
つまり2025年12月を境に、根拠法も窓口も変わりました。旧制度の輸出承認について書かれた解説は、現在は使えません。
申請上の実務も押さえておく必要があります。申請は原則として一元的な輸出証明書発給システムで行います。加工品を除く交付申請は、通関日または証明書の交付を必要とする日の2開庁日前の16時までに、不備のない状態で提出しなければなりません。加工品はさらに審査に時間がかかるため、通関日から7開庁日以上の余裕をもって申請するよう案内されています。この期限を過ぎた申請や不備のある再申請は、通関日までに交付されません。
出典:経済産業省「うなぎの稚魚の輸出について」、水産庁「輸出入に係る証明書の交付申請について(法第13条)」。
第2層:養殖用として輸出されるウナギ属
動物衛生証明書の別表には、ウナギ属(Anguilla spp.)が対象魚種として挙げられています。対象疾病はEpizootic ulcerative syndrome(流行性潰瘍症候群)です。ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)は別項目で、こちらは3つの疾病が対象になっています。
ただしウナギ属には条件が付されています。1キログラムあたり500尾以下の尾数となるサイズであり、かつ養殖用として輸出されるものに限る、というものです。
1キログラムあたり500尾以下は、1尾あたり2グラム以上という意味になります。シラスウナギは体長約6センチメートル、体重約0.2グラムとされているので、それより育った段階のサイズ帯です。
そしてもう一方の条件、「養殖用として輸出されるものに限る」が効きます。この条件により、動物衛生証明書の対象は用途で切られています。
第3層:食用の活うなぎ
第1層にも第2層にも当てはまらない、食用として輸出される活のうなぎがこれにあたります。
別表の記載を読む限り、稚魚のサイズを超え、かつ養殖用ではない食用の活うなぎは、適法漁獲等証明書の対象にも、動物衛生証明書の別表の条件にも該当しないことになります。
ただし本記事では、これをもって「食用の活うなぎには何も要らない」と断定することはしません。理由は2つあります。ひとつは、日本側で不要であることと、台湾側が輸入時に何を求めるかは別問題であること。もうひとつは、施設承認制度が施行されればHS03全体が衛生証明書の対象になり、この整理そのものが変わることです。
実務としては、輸出しようとする個体のサイズと用途を明確にしたうえで、都道府県の水産部局と台湾側の輸入者の双方に事前確認を取ってください。3つの層のどこに乗るかで、必要な書類も所要日数もまったく変わります。

図D:活うなぎの3層と必要書類。出典:農林水産省「台湾向け輸出に必要な手続について」ほか(2026年9月閲覧)。
2025年11月21日、放射性物質関連の規制は撤廃された
台湾向けの食品輸出を調べると、放射性物質検査報告書や産地証明書に関する記述が大量に出てきます。これらは現在、必要ありません。
2025年11月21日、台湾当局は東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて日本産食品に対して設けていた輸入規制を撤廃しました。これにより、一部の食品に必要とされていた放射性物質検査報告書および産地証明書が不要になりました。
撤廃までの経緯を簡単に整理すると、2024年9月に5県(福島・茨城・栃木・群馬・千葉)の野生鳥獣肉・きのこ類・コシアブラの輸入停止が条件付きで解除され、5県以外の放射性物質検査報告書の添付義務が撤廃されました。そして2025年11月21日、残っていた規制もすべて撤廃されています。
水産物はこの規制の影響を強く受けていた分野です。撤廃から日が浅く、旧要件のまま書かれた解説が多く残っているため、書類リストを作る際は日付の新しい一次情報で確認してください。
出典:農林水産省「台湾が日本産食品の輸入規制措置の撤廃を公表(東日本大震災関連)」(令和7年11月21日)。

図E:2025年11月21日に撤廃された書類と、現在も必要な書類。出典:農林水産省「台湾が日本産食品の輸入規制措置の撤廃を公表」(2026年9月閲覧)。
台湾側の輸入手続き:CCCコードと査験
日本側の書類が揃っても、台湾側で止まれば意味がありません。台湾側の手続きを整理します。
まず品目の特定です。台湾は11桁のCCCコードで貨物を分類しています。前半6桁はHSコードと同一で、後半5桁が台湾独自の分類です。たとえばホタテ貝およびその他のいたやがい科の軟体動物(活、生鮮)は0307.21.00.00-5となります。
HSコードの6桁までしか調べずに関税率や規制を判断すると、後半5桁で分かれている条件を見落とします。最初にCCCコードを11桁で確定させてください。
関税率の調べ方や価格への反映のしかたは台湾への輸出にかかる関税・コスト・価格設定ガイドで解説しています。
通関時の審査は3区分に分かれます。
区分一(簡易審査扱い):輸入申告後、直ちに輸入許可
区分二(書類審査扱い):税関に通関書類を提出し審査を受ける
区分三(検査扱い):税関職員による現物の抜き打ち検査
生鮮品は航空便を使うケースが多く、抽出検査の対象にならなければ到着即日の引き取りになります。検査対象になった場合は、検査内容に応じて1〜3日後の引き取りです。加工食品は衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)の抽出検査に時間を要することがあり、通関手続きを含めて引き取りまで1〜2か月かかるケースもあります。
物流面では、船便は基隆港(一部は台北港)、航空便は桃園空港からの輸入が中心です。南部のバイヤーは高雄港・高雄空港を使うのが通常です。横浜港・神戸港から台湾各港までは平均5〜7日程度かかります。
輸送手段そのものの選び方は台湾へどう送るか|EMS・クーリエ・混載・コンテナの使い分けにまとめています。
出典:日本台湾交流協会レポート(2026年3月更新)、物流企業ヒアリングに基づく記載。
水産物が落ちる理由は農産物と違う
台湾の水際検査で不合格になる理由は、品目カテゴリによってはっきり分かれます。
2025年に日本から輸出して台湾の水際検査で不合格となった事例は116件でした(容器具の基準違反を除く。前年から3件増)。最も多かったのはキンカンといちごの残留農薬基準値超過で、いずれも22件です。みかん、メロンなども残留農薬でした。
これに対して水産物は、キビナゴやイカで重金属の含有が理由になっています。2024年には冷凍キビナゴが3件、2025年も冷凍キビナゴで3件です。件数自体は多くありませんが、落ちる理由が農薬ではなくカドミウムなどの重金属である点が農産物と決定的に違います。
根拠となるのは「食品中汚染物質及び毒素衛生標準(食品中污染物質及毒素衛生標準)」で、食品中の重金属含有量の最大基準値が定められています。あわせて「食品中微生物衛生標準(食品中微生物衛生標準)」があり、冷凍食品や生鮮食品に対して食中毒を引き起こす微生物の基準が設けられています。
なお、違反回数の多い品目は、通常より高い抽出比率が適用される「強化サンプル検査」に指定されます。2026年2月末時点で日本からの輸入品では4品目が指定されていますが、いずれも青果類(その他生鮮・冷蔵のかんきつ類、いちご、メロン、うんしゅうみかん)で、水産物は含まれていません。
出典:台湾衛生福利部食品薬物管理署の公表データ(日本台湾交流協会レポート2026年3月更新に掲載)。
つまり水産物は、現時点では青果ほど検査で狙われている分野ではありません。ただし重金属は産地と魚種に起因するもので、輸出直前の努力では下げられません。原料段階での管理が前提になります。
中文表示:水産物には免除規定がある
食品および食品原料の容器または包装には、食品安全衛生管理法第22条に定める項目を中国語(繁体字)および通用符号で明確に表示しなければなりません。項目は品名、内容物の名称、正味重量・容量または数量、食品添加物の名称、製造メーカーまたは台湾内担当メーカーの名称・電話番号・住所、原産地(国)、有効期限、栄養表示、遺伝子組み換え食品の原材料、その他中央主管機関が指定した項目の10項目です。
加工食品では、原材料を遡って詳細に書く「展開」が必要になります。醤油であれば醤油(大豆、小麦、食塩)というように、原料まで記載します。この作業は製造メーカーの協力が不可欠で、輸出実務における大きな負担のひとつです。
ただし、水産物には効いてくる免除規定があります。栄養表示の免除対象に、生鮮・冷蔵・冷凍の果物、野菜、肉、鶏肉、卵、液体卵、そして他の成分を含まないシーフードが含まれているのです。
つまり、味付けも加工もしていない冷凍のホタテや魚であれば、栄養表示は免除されます。加えて、企業間取引(BtoB)の包装済み食品および食品原材料も栄養表示の免除対象です。外食向けの業務用として出す場合、この2つの免除が重なることがあります。
逆に、調味料を加えた時点で「他の成分を含まないシーフード」から外れます。味付け加工品に切り替えた瞬間に栄養表示の義務が発生し、しかも台湾では日本で義務化されていない飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、糖類の含有量まで表示が求められます。商品設計の段階で押さえておくべき分岐です。
アレルゲン表示は11品目が対象で、そのなかに甲殻類およびその製品、魚類およびその製品が含まれています。魚類については、ビタミン製剤やカロテノイド製剤の担体、または酒類の清澄剤として用いる魚類由来のゼラチンは除かれています。
出典:台湾衛生福利部食品薬物管理署「食品安全衛生管理法」「包裝食品營養標示應遵行事項」「食品過敏原標示規定」。
温度帯の定義が日本と違う
台湾は1年を通じて温暖なため低温物流の需要が高く、衛生福利部が食品管理における温度帯の分類を定義しています。冷蔵食品(7℃以下)と冷凍食品(-18℃以下)を低温食品と位置づけたうえで、さらに細かく7つに区分しています。水産物を扱う場合、この定義を知らないと現地パートナーとの会話が噛み合いません。
18℃:一般食品(弁当、サンドイッチ、おにぎり等。保存期間12〜24時間)
0〜7℃:冷蔵食品(生鮮野菜、果物、牛乳、加工肉製品等。保存期間約1〜3週間)
-2〜2℃:氷温食品(畜産品・水産品等)
-10℃:区分名の記載なし(肉やクリーム等)
-18℃以下:冷凍食品(冷凍魚介類、冷凍餃子等)
-20℃:冷凍食品(氷、アイスクリーム。保存方法は冷凍食品と同じ)
-30℃:超冷凍食品(急速冷凍した食品。刺身等)
出典:台湾衛生福利部(日本台湾交流協会レポート2026年3月更新に掲載)。
刺身用として出す場合、-30℃の超冷凍が想定されている点は押さえておく価値があります。台湾では低温物流の整備が進んでおり、全温度帯の管理に対応して台湾全域にコールドチェーンを構築している事業者が複数存在します。

図G:台湾の食品管理における温度帯の定義。出典:台湾衛生福利部(日本台湾交流協会レポート2026年3月更新に掲載)。
販路:まず外食を見る
台湾で日本産水産物を売る場合、最初に検討すべきは外食です。規模が違います。
2025年の台湾の飲食店総売上高は1兆675億台湾ドル、日本円でおよそ5.2兆円で、過去最高を記録しました。内訳はレストランが8,533億台湾ドル、飲料店が1,426億台湾ドル、その他(屋台等)が716億台湾ドルです。2024年の1兆378億台湾ドルをさらに上回りました。
同じ2025年の食品小売業売上高は3,092億台湾ドル。外食の規模はその3倍以上あります。台湾は外食と中食の利用が多く、都心部では共働き世帯が多いため家で手の込んだ料理を作ることが少ない、という生活習慣が背景にあります。
日本食レストランは2025年時点で約7,100件あります。
業務用として供給する場合、日本産であることに加えて、安定供給や規格の一貫性といった実務条件が問われる点は、他の商材と変わりません。どの用途・どの業態に向けるかによって求められる規格が変わるため、供給先を絞ってから仕様を詰めるほうが早いことが多いです。
小売とECのチャネル構造
小売で日本産食品を扱う主なチャネルは次のとおりです。店舗数の時点が資料上で異なるため、各行に付記します。
食品スーパー:PX Mart(全聯福利中心)1,283店(2025年11月1日時点)、Simple Mart(美廉社)813店、Carrefour(家楽福超市)302店、Costco(好市多)14店(いずれも2025年12月末時点)
高級志向・日本産品に積極的:Mia C'bon 20店、美麗市場(新光三越)9店、city'super 8店、微風超市2店、裕毛屋1店(2025年12月末時点)
日系:LOPIA(ロピア)9店、カルディ13店、DON DON DONKI 6店、JA全農のJAJA 1店(2025年12月末時点)
コンビニ:7-Eleven 7,102店、FamilyMart 4,299店、Hi-Life 1,652店、OK-Mart 783店(2025年3月末時点)
百貨店も無視できません。2025年の百貨店売上高は4,555億台湾ドルで過去最高を更新し、総合小売業売上高全体の約3割を占めています。周年慶(10月頃)や春節(1〜2月頃)に催事が組まれ、日本産品の取扱いも積極的に行われます。
ECについては期待値の置き方に注意が必要です。小売業全体のEC売上比率が13.9%であるのに対し、食品・飲料・タバコのEC比率は5.3%にとどまります。一方で、生鮮専門のECや生鮮サプライチェーンを持つ実店舗事業者が運営するECは持続的に成長しているという見方もあります。
水産物との関連で注目されるのが鮮拾です。7-Elevenを展開する統一グループが2020年に開始したサービスで、台湾各地の漁業会と提携しています。ほかに愛上新鮮(i3Fresh)、放心初蔬果網、全聯小時達服務などがあります。
出典:台湾経済部統計処、未來流通研究所、各社公開情報(日本台湾交流協会レポート2026年3月更新に掲載)。
商戦の時期は半年前から動く
台湾では春節・端午節・中秋節が三大節句とされ、贈答文化が根付いています。飲食・外食産業の繁忙期もこの連休シーズンと連動し、大型連休前に注文が増えます。
水産物にとって特に重要なのが中秋節です。台湾には中秋節にバーベキューをする文化があり、肉製品と海産物の需要が増え、相場が1年で最も高騰する時期になります。
そしてバイヤーは、各贈答シーズンの約半年前から商材を探し始めます。つまり中秋節(9月中〜下旬)を狙うなら、商談は春先に始まっていなければ間に合いません。
逆算のスタート地点をどこに置くか
台湾向けの水産物輸出は、書類を揃えれば出せる商材ではありません。月単位で動く手続きがいくつもあります。逆算の起点になるものを整理します。
GビズIDプライムアカウントの取得:一元的な輸出証明書発給システムの利用に必要。取得に日数を要するため最初に着手する
CCCコードの11桁確定:関税率も規制も、後半5桁で分かれることがある
船長の情報提供:船舶から台湾へ直接輸送している場合のみ。回答期限は毎月末日
貝類・活水産動物の証明書発行機関への事前相談:機関により発行・検査できる品目が異なる
中文表示ラベルの設計:原材料の「展開」には製造メーカーの協力が必要で、情報収集に時間がかかる
商談:三節を狙うなら約半年前から
このうち読めないのは、施設承認制度そのものの施行時期です。施行日が未確定である以上、準備の締切も示されません。施行が公表された時点で慌てないよう、農林水産省の該当ページを定期的に確認する担当を決めておくことをおすすめします。

図H:台湾へ水産物を出すまでに先に着手する6項目。
よくある質問
Q. 台湾向けの水産物輸出で、施設登録は義務ですか?
A. 2026年9月時点では義務ではありません。台湾側が求めている施設承認制度は施行日が未確定のまま延期されており、現在も従来どおりの手続(食用の貝類およびその加工品と一部の活水産動物に衛生証明書を添付する方式)で輸出できます。なお、施行前に行われていた取扱施設の情報提供は、2026年9月の更新で不要になりました。船舶から台湾へ直接輸送している場合の船長の情報提供は、引き続き必要です。
Q. 貝類以外の水産物にも衛生証明書は必要ですか?
A. 現時点で衛生関係の証明書が必要なのは、食用の貝類およびこれらの加工品と、一部の活水産動物です。ただし衛生証明書とは別に、クロマグロ・メバチ・メカジキ・ミナミマグロ・メロには漁獲証明書が、うなぎの稚魚・アワビ・ナマコには適法漁獲等証明書が必要です。また施設承認制度が施行されると、HSコード03の全て、1604、1605が対象となり、全ての水産食品に衛生証明書が必要になります。
Q. 放射性物質検査報告書や産地証明書はまだ必要ですか?
A. 必要ありません。2025年11月21日に台湾当局が輸入規制を撤廃し、これらの書類は不要になりました。撤廃から日が浅いため、旧要件のまま書かれた解説が多く残っています。
Q. 活のうなぎを輸出する場合、何が必要ですか?
A. サイズと用途によって3つに分かれます。全長13センチメートル以下の稚魚は水産流通適正化法の適法漁獲等証明書(2025年12月から。それ以前は外為法の輸出承認)。1キログラムあたり500尾以下のサイズで養殖用として輸出されるウナギ属は動物衛生証明書。いずれにも該当しない食用の活うなぎは、別表の記載上はこれらの対象外と読めますが、台湾側の要求は別途確認が必要です。都道府県の水産部局と輸入者の双方に事前確認してください。
Q. 冷凍のホタテを出す場合、栄養表示は必要ですか?
A. 他の成分を含まないシーフードは栄養表示の免除対象です。生鮮・冷蔵・冷凍で、味付けや他の成分の添加がなければ免除されます。また企業間取引(BtoB)の包装済み食品および食品原材料も免除対象です。ただし調味料を加えた加工品にすると免除から外れ、日本では義務化されていない飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・糖類の表示まで必要になります。
Q. 台湾は水産品の自給率が138.5%ですが、それでも日本産は売れますか?
A. 生産している魚種が違います。台湾はかつお類・まぐろ類・いか・さば類など回遊魚が中心で、貝類68,385トンのうち約7割ははまぐりです。ホタテはほとんど生産されていません。実際、台湾のホタテ(冷凍)輸入で日本のシェアは86.6%と圧倒的な1位です。逆に台湾側の生産量が大きい魚種は競争が厳しくなります。
Q. 通関にはどのくらいかかりますか?
A. 生鮮品を航空便で送る場合、抽出検査の対象にならなければ到着即日の引き取りです。検査対象になると1〜3日後になります。加工食品はTFDAの抽出検査に時間を要することがあり、引き取りまで1〜2か月かかるケースもあります。船便は横浜港・神戸港から台湾各港まで平均5〜7日程度です。
まとめ
台湾向けの水産物輸出について、本記事で整理した要点は次のとおりです。
台湾向け上位10品目のうち水産物はホタテ貝133億円とうなぎ(活)51億円の2つで、合計184億円
台湾の水産品自給率は138.5%だが魚種が異なるため、ホタテ(冷凍)では日本が輸入シェア86.6%を占める
施設承認制度は2024年1月1日発効予定から延期され、2026年9月時点も施行日は未確定
現在必要な衛生証明書は食用の貝類およびその加工品と一部の活水産動物のみ。ただしまぐろ類等には別途、漁獲証明書が必要
施行前に行われていた取扱施設の情報提供は、2026年9月の更新で不要になった。船長の情報提供のみ継続
対象施設は養殖・加工・加工船・保管の4類型で、洗浄や凍結、外部委託の冷蔵倉庫も含まれる
活うなぎは稚魚・養殖用・食用の3層に分かれ、必要な書類がそれぞれ違う
放射性物質関連の書類は2025年11月21日に撤廃済み
他の成分を含まないシーフードとBtoB包装食品は栄養表示が免除される
制度の状況が動きうる分野です。実際の輸出にあたっては、証明書発行機関および台湾側の輸入者への事前確認を必ず行ってください。
台湾市場全体の進め方については台湾市場進出 完全ガイドマップ2026、食品全般の規制と手続きについては台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版もあわせてご覧ください。
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