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台湾に食器・調理器具を輸出する規制ガイド2026|食品器具容器包裝衛生標準・輸入査験・中文表示を実務解説

  • 堤浩記
  • 8月12日
  • 読了時間: 37分

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日本の陶磁器、漆器、木工の器、南部鉄器、包丁、竹細工——これらを台湾に売ろうとしたとき、多くの日本企業がつまずくポイントがあります。それは「食器は雑貨ではなく、食品と同じ枠組みで規制される」という一点です。


台湾では、食品に接触する器具・容器・包装は「食品安全衛生管理法」(食安法)の対象となり、輸入時には衛生福利部食品藥物管理署(TFDA、以下「食藥署」)への輸入査験(輸入検査)が必要になります。適用される衛生基準は「食品器具容器包裝衛生標準」であり、陶磁器なら鉛とカドミウムの溶出試験、金属製品なら材質中の鉛含有率、木製・竹製なら砒素やホルムアルデヒドの溶出基準まで、素材ごとに細かく定められています。


この構造を知らないまま商談を進めると、バイヤーとの条件がまとまった段階で「試験報告書を出してください」と言われて止まる、あるいは通関で滞留する、という事態になります。逆に言えば、最初の商談の時点で「台湾の衛生標準にはこう対応できます」と提示できる日本企業は、それだけでバイヤーからの信頼を得られます。台湾側の輸入業者にとって、規制対応の手間は仕入れ判断そのものを左右する要素だからです。


本記事では、台湾に食器・調理器具を輸出する際に必要な規制知識を、法令の条文レベルまで踏み込んで実務的に解説します。どの製品が規制対象になるのか、輸入査験はどう進むのか、素材ごとにどんな試験が必要なのか、中文表示には何を書くのか、そしてサンプルや展示会用の少量持ち込みはどう扱われるのか。日本の作り手・産地組合・商社の担当者が、台湾側の輸入業者と対等に会話できるレベルの情報をまとめています。


なお、食品そのものの輸出については台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版、関税や価格設計については台湾への輸出にかかる関税・コスト・価格設定ガイドで詳しく扱っています。あわせてご覧ください。


1. なぜ食器・調理器具は「雑貨」ではなく食品関連製品として規制されるのか


食安法が定める「食品器具」「食品容器または包装」という概念


台湾の食品安全衛生管理法は、規制対象を「食品」だけに限定していません。食品に触れるもの、食品を入れるものも同じ法律の枠内に置いています。


具体的には、法律上の用語として「食品器具」「食品容器または包裝」というカテゴリが存在します。食品器具とは、食品の製造・調理・保存・運搬・陳列・摂取に用いられ、食品に直接接触する器械・道具・その他の物品を指します。食品容器または包裝とは、食品を入れる、または包むための物品を指します。


日本の感覚では、飯碗も湯呑も急須も箸も「食器・雑貨」というひとつのカテゴリで捉えがちです。しかし台湾の法体系では、それらは食品衛生の管理対象であり、輸入時には食品と同じ窓口(食藥署)が審査を担当します。この認識のずれが、日本企業が台湾市場で最初に直面する落とし穴です。


衛生標準は「食安法第17条」に基づいて定められている


食品器具容器包裝衛生標準は、食品安全衛生管理法第17条の規定に基づいて制定されています。つまり、単なるガイドラインや業界の自主基準ではなく、法令に基づく強制力のある基準です。


この標準は、大きく次の3つの部分から構成されています。


  • 一般規定(附表一):すべての食品器具・容器・包装に適用される基準。金属、ガラス・陶磁器・琺瑯、プラスチック、紙・植物繊維など、素材区分ごとの試験項目が定められています

  • プラスチック材質の規定(附表二):PVC、PE、PP、PS、PET、メラミン樹脂、PLAなど、樹脂の種類ごとの個別基準

  • 乳製品用容器・包装の規定(附表三):牛乳や乳飲料の容器に固有の基準


日本の伝統工芸品や調理器具が主に関わるのは附表一です。ただし漆器の下地に合成樹脂を使っている場合や、木製品にウレタン塗装を施している場合など、複合素材の製品では附表二の規定も併せて確認が必要になります。


素材ではなく「食品に直接接触するかどうか」で判断される


ここが実務上もっとも重要な判断基準です。台湾の規制は、製品のカテゴリ名ではなく、「食品に直接接触する部分があるかどうか」で適用範囲を決めています。


同じ陶磁器でも、飯碗は規制対象、花器や置物は対象外です。同じ木工品でも、汁椀は対象、木彫りの人形は対象外です。この判断軸を理解しておくと、自社の製品ラインナップのうちどれが規制対象になるのかを自分で整理できるようになります。


また、複数の素材を組み合わせた製品では、食品に接触する面がどの素材かによって適用される試験項目が変わります。たとえば内側が漆塗り、外側が木地の椀であれば、食品に接触するのは内側の漆塗り面です。金属の柄に木のハンドルがついた調理器具であれば、食品に触れる金属部分が判断の対象になります。


2. 何が対象で、何が対象外か——製品ごとの判定


自社の製品が規制対象になるかどうかを、具体的な品目で整理します。



規制対象になる主な製品


食品に直接接触するため、食品器具・食品容器として扱われます。


  • 陶磁器:飯碗、汁椀、皿、鉢、湯呑、急須、土鍋、片口、酒器

  • 漆器:汁椀、重箱、盆(食品を載せる用途)、箸、菓子器

  • 木工・竹細工:木皿、木のカトラリー、弁当箱、蒸籠、竹箸、ざる(食品用)

  • 金属:包丁、鍋、フライパン、南部鉄器の急須・鉄瓶、銅製の卵焼き器、カトラリー、酒器

  • ガラス:グラス、片口、保存容器、耐熱皿

  • その他:茶こし、しゃもじ、まな板、すり鉢、ミルクパン


規制対象にならない主な製品


食品に接触しないため、通常の雑貨・工芸品として扱われます。


  • 花器、一輪挿し(水を入れますが、食品ではありません)

  • 置物、人形、オブジェ

  • 香炉、燭台

  • アクセサリー、装身具

  • 壁掛け、額装した工芸品

  • 着物、帯、テキスタイル製品(日本の染織品を海外で売る実務ガイドで別途解説しています)


判断が分かれやすいグレーゾーン


実務では、次のような製品で判断に迷うケースが出てきます。


茶托・コースター:食品に直接触れない設計であれば対象外ですが、菓子を直接載せる想定で販売するなら対象になり得ます。カタログでの見せ方や用途訴求によって判断が変わるため、輸入業者と事前にすり合わせが必要です。


装飾用の皿:「観賞用」として販売するなら対象外ですが、実際には食器として使える形状のものは、輸入業者が食品用途で通関申告するケースが多くなります。「観賞用」と明示しても、消費者が食器として使う蓋然性が高い製品は、食品用途として扱うほうが安全です。


桐箱・木箱:菓子や乾物を直接入れる仕様なら食品容器に該当します。商品を袋に入れてから箱に収める仕様なら、箱は直接接触しません。


風呂敷・布:食品を直接包む用途で売る場合は食品包装に該当し得ます。


グレーゾーンの製品については、輸入業者を通じて事前に食藥署へ照会するのが確実です。実務上は、輸入業者が過去の通関実績から判断できるケースも多いため、まず輸入業者に相談することをおすすめします。


「対象外」であっても油断はできない


規制対象外の工芸品であっても、台湾側での輸入時には別の規制がかかる可能性があります。たとえば木製品には植物検疫、動物由来素材(鼈甲、象牙、革製品など)にはワシントン条約関連の規制がかかります。また、いずれの製品でも関税と営業税(税率5%)は発生します。


食品接触の有無は「食藥署の輸入査験が必要かどうか」を決める分岐点であって、それ以外の輸入規制が免除されるわけではない、という点は押さえておいてください。


3. 輸入査験の全体像——誰が、いつ、何を申請するのか


根拠となるのは食安法第30条


台湾では、衛生福利部が公告した食品、食品添加物、食品器具、食品容器について、輸入時に食藥署へ査験を申請し、製品に関する情報を申告することが義務づけられています。根拠は食品安全衛生管理法第30条です。


査験に合格しなければ輸入できません。不合格となった製品は、返送(退運)または廃棄(銷毀)が命じられます。さらに、通関査験で不適合となった場合、輸入の制限に加えて、業者名・住所・商品名・違反内容が公表される可能性があります。


HSコードの「輸入規定」欄で判断する


では、自社の製品が査験の対象になるかどうかは、どこで確認するのでしょうか。答えは、台湾側のHSコード(貨品分類號列)に付されている「輸入規定」のコードです。



食藥署は、食品関連の輸入規定を付す品目分類番号を公告しています。実務上、次の2つのコードが重要です。


  • F01:その分類番号に該当する商品全般について、食品関連の輸入査験が必要

  • F02:その分類番号の商品のうち、食品・食品器具・食品容器包装・食品用洗浄剤などの用途に該当するもの、またはそれらを含むものについて、輸入査験が必要


F02が付いている分類番号の場合、「食品用途かどうか」で査験の要否が変わります。陶磁器や木製品のように、食器としても装飾品としても使われる品目にF02が付いているケースが典型です。前章で述べた「花器は対象外、飯碗は対象」という判断が、この仕組みによって実現されています。


実務での確認手順は次のとおりです。


  1. 自社製品の台湾側HSコード(貨品分類號列)を、輸入業者またはフォワーダーに確認する

  2. 財政部關務署の關港貿単一窓口にある税則税率査詢システムで、該当する分類番号を検索する

  3. 「輸入規定」欄にF01・F02(食品添加物の場合は508)が含まれているかを確認する

  4. F02の場合は、実際の用途(食品接触の有無)で判断する

  5. 分類そのものに疑義がある場合は、号列の前8桁は財政部關務署、後3桁は経済部国際貿易署が主管しているため、それぞれに照会する


日本側でHSコードを推定することもできますが、台湾側の分類番号は日本の統計品目番号とは細分が異なります。最終的には台湾の輸入業者に確認してもらうのが確実です。


申請するのは「報驗義務人」=台湾側の輸入業者


ここは日本企業が誤解しやすいポイントです。輸入査験を申請するのは、日本の輸出者ではなく、台湾側の輸入業者です。


「食品及相關產品輸入查驗辦法」では、食品、遺伝子組換え食品原料、食品添加物、食品器具、食品容器または包装、食品用洗浄剤を輸入する業者を「報驗義務人」と定義しています。この報驗義務人が、貨物の到着港を管轄する査験機関に対して査験を申請します。


申請のタイミングは、製品が港に到着する15日前から、または到着後です。実務上は、書類を先に整えておいて到着前に申請を出し、通関までのリードタイムを圧縮するのが一般的です。


つまり、日本側の役割は「輸入業者が査験を通せるだけの資料を揃えて渡すこと」になります。具体的には、製品の材質構成の説明、試験報告書、中文表示の原案、製品写真、仕様書などです。ここを準備できているかどうかで、輸入業者から見た取引のしやすさが大きく変わります。


査験の中身は「査核」と「検験」の2段階


輸入査験は、書類と現物の確認である「査核」と、実際にサンプルを試験する「検験」の2つに分かれています。


査核は、査験員が現場で製品の品名・規格・包装を照合し、外観、性状、表示、その他の食品衛生関連法令に基づく事項を確認する手続きです。中文表示の不備は、この段階で指摘されます。


検験は、査験員がサンプルを採取して実験室に送り、性質に応じて官能検査、物理的検査、生物学的・化学的分析を行う手続きです。陶磁器の鉛・カドミウム溶出試験などが該当します。


すべてのロットが検験に回るわけではありません。実務では、書類審査で通過するロット、抜き取り検査に当たるロット、ロット単位で全数検査になるケースがあります。過去に不適合があった品目やメーカーは検査率が上がる仕組みになっており、一度不合格を出すとその後の通関が重くなります。


参考として、台湾の食品および関連製品全体の数字を挙げると、2022年(民国111年)の国境査験では受理724,180ロットのうち65,680ロットが検験に回り、検験率は9.07%でした。このうち不適合は664ロットで、合格率は99%です。同署はこの検験率を、アメリカ(2019年1.36%)や日本(2021年8.3%)より高い水準だと説明しています。


なお、この数字は食器類だけの数字ではなく、食品・食品添加物・食品器具・容器包装を含む全体の数字である点にご注意ください。素材や品目によって実際の検査率は変動します。


検査率は取引実績で下がる


台湾の輸入査験には、実績に応じて検査を軽くする仕組みがあります。報驗義務人が次のいずれかに該当する場合、その輸入製品には一般抽批査験の最低抽験確率が適用されます。


  • 1年以内に検験ロット数が10以上に達し、そのすべてが規定に適合したうえで、査験機関に輸入製品の品質管理計画を提出し、承認・記録された場合

  • 1年以内に検験ロット数が20以上に達し、そのすべてが規定に適合した場合

  • 2年以内に検験ロット数が30以上に達し、そのすべてが規定に適合した場合


ただし、この優遇の適用を受けている製品であっても、国境または市販品の検査で不適合となった場合は適用が停止されます。


この仕組みは、台湾市場へ継続的に出荷する日本企業にとって実質的なメリットになります。初期のロットで確実に基準を満たしておけば、取引が積み上がるにつれて通関のリードタイムとコストが下がっていく構造だからです。逆に言えば、最初の数ロットで手を抜くと、その後長く重い検査を背負うことになります。


不適合を出したときに何が起きるか


一方、国境査験で不適合となった製品には、退運(返送)または銷毀(廃棄)の命令に加えて、抽検確率の引き上げが行われます。最高で100%、つまり全ロット査験まで引き上げられます。


さらに、食安法第52条の規定により、検査に適合しなかった製品の情報が公表されます。業者名を含む情報が公開されるため、台湾市場での信用に直接影響します。


輸入業者の立場から見れば、不適合を出す取引先は「今後すべての貨物で検査が重くなる相手」です。日本側が規制対応を主導すべき理由は、ここにもあります。


輸入業者は「食品業者登録」を済ませている必要がある


台湾で食品や食品器具を扱う事業者には、食安法第8条に基づく食品業者登録(通称「非登不可」)の義務があります。ただし対象は業種ごとに列挙されており、器具・容器の関係では、食品器具・食品容器または包裝の製造・加工業者と、割り箸(竹製・木製を含む)および磁器製の食器・厨房器具の輸入業者が挙げられています。自社の商材を扱う輸入業者が登録対象に当たるかどうかは素材と業態によって変わるため、輸入業者に直接確認してください。登録には工商憑証(法人の電子証明書)が必要です。


いずれの場合も、日本企業が直接この登録をすることはできません。台湾に現地法人を持たない以上、現地の輸入業者・代理店を通す以外に選択肢がない、という構図は変わりません。


裏を返せば、「台湾で食器を売りたい」という段階で、パートナー選びが規制対応の成否を決めることになります。食品関連の輸入実績がある業者かどうかは、商談初期に確認すべき項目です。パートナー選定の考え方については台湾のバイヤー・代理店・ディストリビューターと組む実務ガイドで詳しく解説しています。


4. サンプル・展示会持ち込みはどうなるか——免検(免驗)のライン


商談前のサンプル送付や、展示会でのサンプル持ち込みは、輸入査験が必要なのでしょうか。ここには明確な基準があり、日本企業にとって実務上きわめて重要です。


磁器製食器・厨房器具の免検基準


食安法第30条に基づく査験義務には、類別・用途・金額・数量が一定の条件を満たす場合の免検規定があります。食器類に関して定められているのは、次の内容です。


磁器製の食器または厨房器具が自用(販売目的でないもの)である場合


  • 単一項目の価値がUS$1,000以下で、かつ同一規格の数量が4件を超えないもの

  • または、価値がUS$1,000を超える場合でも数量が1件であるもの


このいずれかに該当すれば、免検で輸入できます。


食品および関連製品一般については、自用で価値US$1,000以下かつ重量6kg以内であれば免検となる基準が別途定められています。


ここで注意が必要なのは、この免検枠が「瓷製」=磁器製に限定されている点です。漆器、木工品、金属製品、ガラス製品は、この磁器製食器の枠には当たりません。これらは食品および関連製品一般の枠で判断されるか、個別に輸入業者を通じて確認することになります。素材によって使える枠が違う、という前提で計画してください。



この基準が実務で意味すること


この規定を実務に翻訳すると、次のような判断ができます。


バイヤーへのサンプル送付:磁器製の食器であれば、同じ商品を4個以内、金額がUS$1,000以下に収まるなら、査験なしで送れる可能性があります。ただし「自用」であることが前提です。磁器以外の素材は後述のとおり別の枠で判断されるため、事前に輸入業者へ確認してください。


展示会への持ち込み:商談用のサンプルとして少量を持ち込む場合は、この範囲内に収めるのが現実的です。台湾の展示会(台湾文博会DG Taiwanなど)に工芸品を出展する際、この点を知らずに大量のサンプルを持ち込もうとして止まるケースがあります。


セット商品の扱い:5客セットの湯呑を1セット持ち込む場合、「同一規格4件以内」の要件をどう解釈するかは判断が分かれます。展示会主催者や輸入業者を通じて事前に確認しておくのが安全です。


「自用」で入れたものを販売すると罰則対象


きわめて重要な注意点があります。自用または非販売目的として免検で輸入した製品を、その後販売する行為は違法です。


食藥署は、免検の範囲を超えているにもかかわらず輸入査験を行わずに販売する行為について、食安法第30条第1項に違反するものとして3万台湾ドル以上300万台湾ドル以下の罰鍰が科されると説明しています(罰則の根拠条文は同法第47条です)。


展示会で「サンプルとして持ち込んだ商品を、会期中に来場者へ販売する」「展示終了後に在庫を現地で売り切る」といった行為は、この規定に抵触するおそれがあります。日本の展示会では当たり前に行われる商習慣ですが、台湾で食品接触製品を扱う場合は、販売するなら正規に査験を通した貨物である必要があります。


展示即売を予定している場合は、免検枠に頼らず、輸入業者を立てて正規に通関させる。これが安全な進め方です。


越境ECで直送する場合


台湾の消費者に日本から直接発送する越境ECの場合も、食器類は同じ枠組みの対象です。個人が自用で購入し、免検の範囲内であれば通関できますが、事業者が反復継続して販売する形態は、輸入査験の対象と判断されるリスクがあります。


Pinkoiのようなプラットフォーム経由で台湾の消費者に販売する場合、少量の直送であれば現実には流通していますが、ボリュームが大きくなった段階でリスクが顕在化します。事業として拡大させるなら、現地在庫を持つ形(=正規輸入)への切り替えを前提に設計しておくべきです。


5. 食品器具容器包裝衛生標準の中身——何が試験されるのか


ここからが本記事の中核です。台湾の衛生標準が具体的に何を要求しているのかを、素材区分ごとに見ていきます。


試験は「材質試験」と「溶出試験」の2種類


衛生標準の試験は、大きく2つに分かれています。


材質試験は、素材そのものに含まれる物質の量を測る試験です。たとえばプラスチックの鉛含有量が100ppm以下であること、金属合金の鉛含有率が0.1%以下であることなどが該当します。


溶出試験は、実際の使用状況を模擬した条件下で、有害物質が食品側に溶け出さないかを測る試験です。どの溶剤で、どの温度・時間で試験するかが素材ごとに定められています。


溶剤は、想定する食品の性質によって使い分けられます。


  • :pH5以上の食品を模擬

  • 4%酢酸、0.5%クエン酸溶液:pH5以下(pH5を含む)の酸性食品を模擬

  • ノルマルヘプタン(正庚烷):表面に油脂を含む食品、脂肪性食品を模擬

  • 20%エタノール溶液:アルコール分を含む食品を模擬


なお、食品の製造加工または調理の過程で100℃以上の温度で使用される製品については、溶出条件が95℃・30分に引き上げられます。土鍋や鉄鍋のように直火にかける製品は、この条件で試験されることになります。


また、ガラス・陶磁器・琺瑯製品については、上記の溶剤の使い分けは適用されません。これらは一律に4%酢酸を用いた試験が定められています。


すべての器具に共通する一般規定


素材を問わず、まず次の基本要件があります。


  • 食品器具・容器・包装は、不良な変色、異臭、異味、汚染、カビ、異物の含有、繊維の剥落があってはならない

  • 器具は、銅、鉛またはその合金が剥落するおそれのない構造でなければならない

  • プラスチック製の食品容器・包装は、回収後に再度食品を包装して販売してはならない


さらに着色剤について、食品添加物の使用範囲および用量基準に適合していることが求められます。ただし、着色剤が溶出または浸出して食品に混入するおそれがない場合は、この限りではありません。


日本の工芸品では、絵付けや上絵、漆の色漆などが着色剤に該当し得ます。「釉薬の下にあるから溶出しない」という構造であれば問題になりませんが、上絵付けで食品に触れる面に顔料が露出している製品は注意が必要です。


乳幼児向け製品の追加規制


3歳以下の乳幼児が使用する食品器具・容器については、DEHP、DNOP、DBP、BBPの4種類の可塑剤を添加してはならないと定められています。また、乳幼児用の哺乳瓶にはビスフェノールA(BPA)を含むプラスチック材質を使用できません。


子ども向けの食器を展開する場合、この区分に該当するかどうかを確認してください。


ガラス・陶磁器・琺瑯——鉛とカドミウムの溶出限量


日本の陶磁器産地にとって、もっとも重要な基準です。ガラス、陶磁器、琺瑯を施した器具・容器については、4%酢酸を用いて常温・暗所で24時間の条件で溶出試験を行い、鉛とカドミウムの溶出量が次の限量以内であることが求められます。


  • (a)深さ2.5cm以上、かつ容量1.1L以下:鉛5ppm以下、カドミウム0.5ppm以下

  • (b)深さ2.5cm以上、かつ容量1.1L以上:鉛2.5ppm以下、カドミウム0.25ppm以下

  • (c)深さ2.5cm以下、または液体を満たせないもの:鉛17μg/cm²以下、カドミウム1.7μg/cm²以下



ここで注目すべきは、区分によって単位が変わることです。(a)と(b)は溶出液中の濃度(ppm)で評価されるのに対し、(c)は表面積あたりの溶出量(μg/cm²)で評価されます。


(c)に該当するのは、平皿、豆皿、茶托、まな板のような浅い製品や、液体を入れられない形状の製品です。日本の工芸品では、銘々皿、取り皿、菓子皿などがここに入ります。試験方法が異なるため、ラボへの依頼時には製品の形状と寸法を正確に伝える必要があります。


台湾当局は、この4%酢酸(pH約2.5)を用いた試験について、酸性食品を長時間入れる条件を模擬したものであり、EUや日本など先進国と同等の水準だと説明しています。日本のJIS規格に基づく試験に対応した実績のある窯元であれば、技術的なハードルはそれほど高くありません。


ただし、日本の試験報告書がそのまま台湾で使えるとは限りません。試験条件(溶剤、温度、時間、区分の切り方)が完全に一致していない場合、台湾の基準に沿った再試験が必要になります。この点は後述します。


金属製品——材質の鉛含有率と溶出量


食品に直接接触する面が金属合金である製品については、材質試験として鉛0.1%以下、アンチモン5%以下という基準があります。


溶出試験は、水(60℃・30分)と0.5%クエン酸溶液(60℃・30分)の両方で行い、それぞれ次の限量以内であることが求められます。


  • 砒素:0.2ppm以下

  • 鉛:0.4ppm以下

  • カドミウム:0.1ppm以下


前述のとおり、100℃以上で使用する製品は溶出条件が95℃・30分になります。鉄鍋、雪平鍋、鉄瓶などが該当します。


銅製品・銅合金製品には追加の規定があります。固有の光沢があり錆びないものを除き、食品に直接接触する部分には全面的にスズめっき、銀めっき、またはその他の衛生上の危害を生じない適切な処理を施さなければなりません。銅の卵焼き器、銅鍋、銅製の酒器を輸出する場合は、内面処理の仕様を明確に説明できるようにしておく必要があります。


また、めっきに使うスズは鉛5%以下、器具・容器・包装の製造や修理に使うはんだは鉛20%以下と定められています。金属製品の接合部にはんだを使っている製品は、この点も確認対象です。


金属の食品接触面に合成樹脂塗装(フッ素樹脂加工など)を施した製品については、別の基準が適用されます。水(60℃・30分)でフェノール5ppm以下、ホルムアルデヒド陰性、蒸発残渣30ppm以下(30ppmを超える場合はクロロホルム可溶物が30ppm以下)、4%酢酸および20%エタノール(各60℃・30分)で蒸発残渣30ppm以下、ノルマルペンタン(25℃・1時間)でエピクロロヒドリン0.5ppm以下、99.5%以上のエタノール(5℃以下・24時間)で塩化ビニルモノマー0.05ppm以下、といった項目が並びます。


木製・竹製・紙製——植物繊維を主体とする器具


木の器、竹細工、経木の弁当箱などは、「紙類」の区分で規定されています。この区分は、紙パルプまたは木、サトウキビ、葦、麻、稲わら、麦わら、もみ殻、竹などの農業資材の植物繊維を主体とする弁当箱、皿、碗、杯類の食品器具・容器に適用されます。


適用条件として、プラスチックを塗布したり、プラスチックフィルムを貼り合わせたりしている場合は、物理的に分離できるプラスチックや金属箔の成分含有量が全体重量の10%未満であることが求められます。


食品接触面が蝋または紙パルプ製品である場合、材質試験として蛍光増白剤が検出されないことが求められます。


溶出試験の基準は次のとおりです。


  • 水(60℃・30分):砒素0.1ppm以下(As₂O₃として)、ホルムアルデヒド陰性、蒸発残渣30ppm以下(30ppm以上の場合はクロロホルム可溶物40ppm以下)

  • 4%酢酸(60℃・30分):砒素0.1ppm以下、重金属1ppm以下(Pbとして)、蒸発残渣は上と同じ

  • ノルマルヘプタン(25℃・1時間)、20%エタノール(60℃・30分):蒸発残渣30ppm以下(同上)


さらに、原材料についても要件があります。


  • 添加物は輸出国の食品用紙に関する規定に適合すること

  • 紙を原料とする場合、完全な包装と良好な保管状態の食品用紙を使用し、廃材を使用してはならない

  • 回収材料を使用してはならない。農業資材を用いる場合は原生の一次原料に限る

  • 有害物質を含む竹・木の原材料を使用してはならない


日本の木工品・竹細工では、塗装の有無で扱いが変わります。ウレタン塗装や漆塗りを施している場合、食品接触面は木そのものではなく塗膜になるため、その塗膜の材質に応じた規定が適用されます。無塗装の白木の器なのか、漆器なのか、ウレタン仕上げなのかを整理しておいてください。


プラスチック・合成樹脂


漆器の下地や、樹脂製の食器を扱う場合に関係します。プラスチック類の一般規定は次のとおりです。


  • 材質試験:鉛100ppm以下、カドミウム100ppm以下

  • 可塑剤(DEHP、DBP、BBP、DIDP、DINP、DMP、DNOP、DEPの8種):個別の含有量がそれぞれ0.1重量%を超えないこと(この材質試験の可塑剤規定はPVCには適用されません)

  • 溶出試験:水(60℃・30分)で過マンガン酸カリウム消費量10ppm以下、4%酢酸(60℃・30分)で重金属1ppm以下(Pbとして)

  • ノルマルヘプタン(25℃・1時間)での可塑剤の溶出:DEHP 1.5ppm以下、DBP 0.3ppm以下、BBP 30ppm以下、DIDP 9ppm以下、DINP 9ppm以下、DEHA 18ppm以下


加えて、樹脂の種類ごとに附表二の個別基準が適用されます。PVC、PVDC、PE、PP、PS、PET、メラミン樹脂(ホルムアルデヒド-メラミン樹脂)、PMMA、ナイロン、PC、PLAなど、それぞれ試験項目が異なります。


なお、メラミン樹脂製品については4%酢酸95℃・30分でメラミンが2.5ppm以下という基準があり、PLA(ポリ乳酸)製品は高温殺菌の加工・調理過程に用いてはならず、100℃以上の食品を入れるのに適さないとされています。ポリスチレン製の食器も100℃以上の食品には適さないと明記されています。


6. 素材別の実務——日本の産地が押さえるべきポイント



ここからは、日本の主要な産地・品目ごとに、実務でどう動くかを整理します。


陶磁器(有田焼、美濃焼、瀬戸焼、信楽焼、益子焼など)


確認すべきことは、上絵付けの顔料と釉薬の組成です。鉛を含む釉薬やフリットを使っている場合、溶出試験でリスクが出ます。特に低火度で焼成する上絵、金彩・銀彩を施した製品は要注意です。


準備すべき書類は、台湾の基準に沿った溶出試験報告書です。品目ごと、釉薬の種類ごとに取得します。同一の釉薬・焼成条件であればシリーズ単位でまとめられる場合がありますが、判断は輸入業者およびラボと相談してください。


形状の整理も必須です。前述のとおり、深さ2.5cmと容量1.1Lで区分が変わり、浅い製品は表面積あたりの評価になります。カタログの各アイテムについて、口径・高さ・深さ・満水容量を一覧化しておくと、試験依頼と輸入業者への説明がスムーズになります。


産地全体で台湾市場に取り組むなら、組合単位で代表品目の試験を行い、データを共有する方法も現実的です。詳しくは日本の漆器・陶磁器を海外で売る実務ガイドもあわせてご覧ください。


漆器(輪島塗、山中漆器、越前漆器、津軽塗など)


判断の起点は素地と塗料です。天然木に本漆を塗った製品なのか、合成樹脂素地にウレタン塗装をした製品なのかで、適用される規定が変わります。


本漆・木地の製品であれば植物繊維系の規定、樹脂素地・合成樹脂塗装であればプラスチック類および合成樹脂塗装の規定が関わります。「漆器」という一語で説明せず、素地と塗膜を分けて説明できる資料を用意してください。台湾の輸入業者にとっても、この情報がなければ査験の準備ができません。


日本語の「漆器」と台湾での認識のずれにも注意が必要です。台湾市場では合成漆器も広く流通しており、本漆であることが自動的に伝わるわけではありません。規制対応の資料整備は、同時に本物であることの説明材料にもなります。


木工・竹細工(木曽漆器の木地、大館曲げわっぱ、別府竹細工など)


曲げわっぱは、白木、ウレタン塗装、漆塗りの3タイプがあり、それぞれ扱いが異なります。白木の製品は植物繊維系の規定が適用され、砒素・ホルムアルデヒド・蒸発残渣の溶出基準が関わります(蛍光増白剤の材質試験は、食品接触面が蝋または紙パルプ製品である場合の規定なので、白木そのものには適用されません)。


竹製品では、防カビ処理や漂白処理に使った薬剤が問題になり得ます。「有害物質を含む竹木原材を使用してはならない」という規定があるため、処理工程で何を使っているかを説明できるようにしてください。


蒸籠やざるのように、加熱を伴う製品は溶出条件が厳しくなる可能性があります。用途を明確にして輸入業者と確認してください。


金属(包丁、鉄瓶、南部鉄器、銅器、錫器)


包丁は、刃部分が食品に直接接触するため対象になります。ステンレス鋼、炭素鋼のいずれも、材質中の鉛0.1%以下、アンチモン5%以下という基準に照らして問題になることは通常ありませんが、試験報告書の提出を求められる可能性はあります。柄が木製の場合、木部が食品に触れる設計かどうかも確認対象です。詳しくは日本の包丁を海外で売る実務ガイドをご覧ください。


南部鉄器の急須・鉄瓶は、内部の仕様で扱いが変わります。内側にホーロー加工を施した急須は琺瑯の規定、鉄肌のままの鉄瓶は金属の規定が関わります。台湾市場では鉄瓶・急須に一定の需要がありますが、内面仕様の説明は必須です。


錫器(大阪錫器、能作など)は、材質中のアンチモン含有率が論点になり得ます。錫合金の組成を提示できるようにしてください。


銅器は前述のとおり、食品接触面のめっき処理が要件です。


ガラス(江戸切子、津軽びいどろ、ガラス食器)


陶磁器と同じ区分で、4%酢酸・常温暗所24時間の溶出試験により鉛とカドミウムが評価されます。クリスタルガラス(鉛ガラス)を使った製品は、この点が直接の論点になります。江戸切子など高価格帯の製品で鉛クリスタルを使用している場合、事前に試験しておくことを強くおすすめします。


無鉛クリスタルに切り替えている工房であれば、その事実を明示することが台湾市場でのアピールになります。


茶器・急須


日本の茶器は台湾市場で強い需要がありますが、素材が多岐にわたるため個別の判断が必要です。常滑焼・萬古焼の急須は陶磁器の規定、鉄瓶は金属の規定、茶こしの金網部分は金属合金の規定が適用されます。ひとつの急須の中で複数素材が食品に接触するケースもあるため、部位ごとの整理が必要です。


台湾は茶文化が根づいた市場であり、日本の茶器に対する評価も高い市場です。日本の茶器・急須を海外で売る実務ガイドで市場面を解説していますので、あわせてご覧ください。


7. 中文表示——義務の対象になる製品、ならない製品


輸入査験の査核では、表示の確認も行われます。ただし日本の工芸品を扱う場合、まず確認すべきは「そもそも中文表示の義務が自社製品にかかるのか」です。ここは日本語の情報で誤解が多い部分なので、条文から整理します。


食安法26条は「公告された品目」だけが対象


食安法第26条は、食品器具・食品容器・包装に対して中国語(繁体字)と通用記号による表示を義務づけています。ただし条文の主語は「中央主管機関が公告した食品器具、食品容器または包裝」です。つまり、すべての食品器具が自動的に対象になるわけではありません。


そして食藥署が公告している対象品目は、食品接触面にプラスチック材質を含む食品器具・食品容器・包装です(2017年7月1日施行)。


この結果、実務上は次のように分かれます。


  • 対象になる:樹脂製の食器、樹脂コーティングを施した紙容器、食品接触面に合成樹脂塗装がある製品、樹脂パッキンなど食品に触れる樹脂部品を含む製品

  • 対象にならない:無垢の陶磁器、ガラス、無塗装の木製品、金属のみの製品


日本の伝統工芸品の多くは後者に入ります。有田焼の飯碗も、江戸切子のグラスも、白木の曲げわっぱも、26条の表示義務の公告対象ではありません。


ただし「表示は不要」と結論づけないこと


ここで注意が必要です。26条の対象外であることは、台湾で何の表示も要らないという意味ではありません。


  • 漆器やウレタン塗装の木工品のように、食品接触面が合成樹脂の塗膜になっている製品は対象に入る可能性があります。「木製品だから対象外」と即断せず、塗膜の材質で判断してください

  • 食品関連法以外にも、台湾には一般消費財の表示に関する規制があり、原産地や責任業者の表示を求められる場合があります

  • 百貨店やセレクトショップなどの取引先が、法令とは別に独自の表示ルールを設けていることがあります


最終的な判断は、製品の構成を開示したうえで輸入業者に確認してもらうのが確実です。日本側でできるのは、「食品接触面がどの素材か」を正確に伝えることです。


対象になる場合に表示する8項目


自社製品が公告対象に該当する場合、表示すべき事項は次のとおりです。


  1. 品名

  2. 材質名称および耐熱温度。2種類以上の材質から構成される場合は、それぞれ個別に表示する

  3. 正味重量、容量または数量

  4. 国内責任業者の名称、電話番号および住所

  5. 原産地(国)

  6. 製造日。有効期限があるものについては、有効期限または有効期間を併記する

  7. 使用上の注意事項、電子レンジ使用に関する警告その他の警語

  8. その他、中央主管機関が公告する事項



このうち日本企業がつまずきやすいのは、材質名称と耐熱温度2種類以上の材質の個別表示国内責任業者の3点です。


材質名称と耐熱温度は、日本の食器では表示していないことが多い項目です。電子レンジ・食洗機・オーブンの可否とあわせて整理しておく必要があります。複合素材の製品では、木の柄がついた金属製品、樹脂パッキンを使った保存容器などについて、材質を分けて表示します。


そして国内責任業者は台湾国内の業者を指します。輸入業者または代理店の名称・電話番号・住所を記載することになり、日本のメーカー名だけでは要件を満たしません。ここは輸入業者と協業しなければ完成しない項目です。


実務上の進め方


表示ラベルは、日本で貼付してから輸出する方法と、台湾到着後に現地で貼付する方法の2通りがあります。少ロットの段階では現地貼付のほうが柔軟で、ロットが安定してきたら日本側で貼付するほうがコストは下がります。


いずれの場合も、日本側が材質情報を出し、繁体字への翻訳と法令適合の確認は台湾側が行うという分担が現実的です。日本語の商品説明をそのまま機械翻訳したラベルは、用語が不正確で査核時に指摘を受けやすくなります。


なお、法定表示の要否にかかわらず、ブランドストーリーや産地の説明は自由に記載できます。台湾の消費者は日本の産地に強い関心を持っているため、この部分は積極的に活用すべきです。台湾市場での日本ブランドの受容性については台湾市場の消費トレンドと日本ブランドの受容性2026で詳しく分析しています。


8. 試験の実務——どこで、いくらで、どれくらいかかるか


試験機関の選び方


台湾の基準に沿った試験は、次のいずれかで実施できます。


  • 台湾国内の検査機関:食藥署の認証を受けたラボが複数あります。台湾の基準に完全に対応しているため確実です。輸入業者が提携先を持っているケースが多く、まず輸入業者に相談するのが早道です

  • 国際的な検査機関の日本法人:SGS、TÜV、ビューローベリタス、インターテックなどは各国の食品接触材料規制に対応しており、日本国内で台湾基準の試験を依頼できる場合があります

  • 日本国内の公的試験機関・産業技術センター:各県の窯業試験場や産業技術センターで鉛・カドミウム溶出試験に対応しているところがありますが、日本のJIS基準に基づく試験になるため、台湾基準との条件の違いを確認する必要があります


日本の試験報告書は使えるか


「JISの試験は済んでいるから台湾でもそのまま通るはず」と考えるのは危険です。試験の条件(溶剤の種類、温度、時間、区分の切り方)が台湾の基準と一致していなければ、報告書は受け付けられません。


一方で、日本の試験実績があること自体は無駄になりません。技術的に日本の基準をクリアできている製品は、台湾の基準もクリアできる可能性が高いからです。まず日本の既存データで問題がないかを確認し、そのうえで台湾基準の試験を追加取得する、という順序が合理的です。


費用とリードタイムの目安


試験費用は、項目数、素材、依頼するラボによって変動するため一律には言えません。実務上の相場感としては、陶磁器の鉛・カドミウム溶出試験1品目あたり数千円から数万円程度、複数項目を含む樹脂系の試験になると数万円から十数万円というレンジで語られることが多い領域です。ただし、これは概算であり、実際の見積もりは必ずラボから取得してください。


リードタイムは、試験そのものに1〜3週間程度、それに輸送とサンプル準備の時間が加わります。台湾のバイヤーとの商談が具体化してから試験に着手すると、初回出荷までの時間が延びます。主力アイテムについては商談と並行して試験に着手しておくのが、実務上の推奨です。


コストをどう吸収するか


品目ごとに試験が必要になるため、SKU数が多い産地ほど負担が大きくなります。現実的な対処法は次のとおりです。


  • 台湾向けの初期ラインナップを絞る:まず売れ筋・主力の5〜10品目に絞り、実績を作ってから拡大する

  • 釉薬・素材が共通するシリーズでまとめる:同一条件の製品群で代表試験を行えないか、ラボに相談する

  • 産地・組合単位で共同実施する:複数事業者で費用を分担し、データを共有する

  • 補助金を活用する:海外販路開拓や伝統的工芸品の支援制度の中には、認証取得・検査費用を対象経費に含められるものがあります。制度は年度ごとに内容が変わるため、海外販路開拓に使える補助金完全ガイド2026で最新の内容を確認してください


9. よくある失敗パターン


実務の現場で繰り返し見られる失敗を整理します。


商談がまとまってから規制の存在に気づく


もっとも多いパターンです。展示会でバイヤーと意気投合し、価格とロットの条件も合意した段階で、輸入業者から試験報告書と中文表示の要求が来て、そこから数か月かかる。この間にバイヤーの熱量が下がり、話が流れます。


対策は、商談の初期段階で「台湾向けの規制対応はこう進めます」と自分から提示することです。バイヤーから見れば、規制対応の主導権を持っている取引先は扱いやすく、これ自体が差別化になります。


「工芸品だから雑貨扱い」と思い込む


美術工芸品として輸出すれば規制の対象外になる、という誤解です。食品に接触する用途で販売される以上、価格帯や芸術性は関係ありません。10万円の茶碗も1,000円の茶碗も、同じ基準が適用されます。


展示会のサンプルを現地で売ってしまう


第4章で述べたとおり、自用・非販売目的として免検で持ち込んだ製品を販売する行為には罰則があります。日本の展示会では在庫処分を兼ねた販売が一般的ですが、台湾では通用しません。展示即売を計画するなら、最初から正規輸入で設計してください。


輸入業者に丸投げする


「輸入業者がやってくれるはず」という姿勢では進みません。材質構成の情報も、試験報告書も、表示原案の元情報も、すべて日本側にしかありません。輸入業者は手続きの実行者であって、情報の提供者ではないという役割分担を理解しておく必要があります。



上絵付け・金彩の製品を主力に据える


台湾市場では日本の絵付けの美しさが評価されますが、上絵や金彩は溶出試験でリスクが相対的に高い領域です。台湾向けの初期ラインナップを組む際は、釉薬の下に絵付けがある製品(下絵付け)や無地の製品から始め、上絵の製品は試験結果を確認してから投入するのが安全です。


複合素材の製品を「一品目」として扱う


木の柄と金属、陶器と樹脂パッキンなど、複数素材の製品は、食品接触面ごとに基準が異なります。1つの製品として1回の試験で済むと考えていると、追加試験が必要になって出荷が遅れます。


10. よくある質問(FAQ)


Q. 花器や置物も輸入査験の対象になりますか。


食品に接触しない製品は、食品器具・食品容器としての輸入査験の対象になりません。ただし、台湾側のHSコードに食品関連の輸入規定(F02など)が付いている品目では、用途の申告によって扱いが分かれます。実務上は輸入業者が用途を判断して申告します。


Q. 日本のJIS試験の報告書をそのまま提出できますか。


試験条件が台湾の基準と一致していなければ、そのままでは使えません。台湾の食品器具容器包裝衛生標準に定められた溶剤・温度・時間・区分に沿った試験報告書が必要です。日本のデータは技術的な事前確認には有効ですが、提出書類としては台湾基準の試験を取得してください。


Q. サンプルを台湾のバイヤーに送りたいのですが、査験は必要ですか。


磁器製(瓷製)の食器・厨房器具について、自用(非販売目的)であり、単一項目の価値がUS$1,000以下かつ同一規格が4件以内、またはUS$1,000超でも1件であれば、免検の対象となります。ただしこの枠は磁器製に限定されており、漆器・木工・金属・ガラスは別の枠で判断されます。また、免検の範囲で輸入したものを販売した場合は、食安法第30条第1項違反として3万〜300万台湾ドルの罰鍰の対象となります。


Q. 誰が輸入査験を申請するのですか。


台湾側の輸入業者(報驗義務人)です。日本の輸出者が直接申請することはできません。輸入業者は事前に食品業者登録(非登不可)を済ませ、食品輸入業者番号を取得している必要があります。


Q. 申請のタイミングはいつですか。


報驗義務人は、製品が港に到着する15日前から、または到着後に、輸入港を管轄する査験機関へ査験を申請します。


Q. 陶磁器の鉛・カドミウムの基準値を教えてください。


4%酢酸・常温暗所24時間の溶出試験で、深さ2.5cm以上かつ容量1.1L以下の製品は鉛5ppm以下・カドミウム0.5ppm以下、深さ2.5cm以上かつ容量1.1L以上の製品は鉛2.5ppm以下・カドミウム0.25ppm以下、深さ2.5cm以下または液体を満たせない製品は鉛17μg/cm²以下・カドミウム1.7μg/cm²以下です。


Q. 中文表示は日本で貼ってから送るべきですか。


どちらでも可能です。少ロットの段階では台湾到着後に現地で貼付するほうが柔軟に対応できます。ロットが安定したら日本側で貼付するほうがコストを抑えられます。いずれの場合も、国内責任業者の欄には台湾の輸入業者の情報を記載します。


Q. すべての貨物が検査されるのですか。


いいえ。書類審査で通過するロット、抜き取り検査に回るロット、全数検査になるロットがあります。過去に不適合を出した品目・メーカーは検査率が上がる運用のため、初回の対応が重要です。


Q. 越境ECで台湾の消費者に直送する場合はどうなりますか。


個人が自用で購入し、免検の範囲内であれば通関できます。ただし事業者が反復継続して販売する形態では輸入査験の対象と判断されるリスクがあります。取扱量が増える段階で、現地在庫を持つ正規輸入の形へ移行する前提で設計してください。


Q. 試験にはどれくらい時間がかかりますか。


試験そのものに1〜3週間程度、これにサンプル準備と輸送の時間が加わります。商談と並行して主力アイテムの試験に着手しておくことをおすすめします。


まとめ——規制対応は「参入障壁」であり「競争優位」でもある



台湾に食器・調理器具を輸出する際の要点を整理します。


  • 食品に接触する器具・容器は、食品安全衛生管理法の対象となり、輸入時に食藥署への査験が必要になる

  • 対象かどうかは製品カテゴリではなく、食品に直接接触するかどうかで決まる

  • 適用される基準は「食品器具容器包裝衛生標準」で、素材ごとに材質試験と溶出試験の項目が定められている

  • 陶磁器・ガラス・琺瑯は鉛とカドミウムの溶出が中心。形状と容量で3つの区分に分かれ、浅い製品は表面積あたりで評価される

  • 査験を申請するのは台湾側の輸入業者。日本側の役割は、材質情報と試験報告書を揃えて渡すこと

  • 食安法26条の中文表示義務は、食品接触面にプラスチックを含む製品が公告対象。無垢の陶磁器や無塗装の木製品は対象外だが、樹脂塗装・樹脂部品があると対象になり得る

  • 磁器製食器には免検の枠があるが、素材によって適用される枠が異なり、免検で入れたものを販売すると罰則の対象になる


規制対応は、たしかに手間もコストもかかります。しかし見方を変えれば、これは参入障壁でもあります。対応を済ませた事業者は、対応していない競合が入ってこられない市場で戦えるということです。


そして台湾の輸入業者・バイヤーの側から見れば、規制対応の資料を自分から整えて持ってくる日本のメーカーは、圧倒的に組みやすい取引先です。日本の産地の多くがこの部分を輸入業者任せにしている中で、ここを主導できることは、商談における明確な優位性になります。


台湾市場全体の攻略については台湾市場進出 完全ガイドマップ2026、伝統工芸品の海外展開全般については伝統工芸品の海外展開ガイドマップ2026で、それぞれ体系的に解説しています。


最初のアクションは、自社製品のうち食品に直接接触するアイテムの仕分けと、各アイテムの深さ・満水容量の一覧化です。この2つが揃っていないと、試験の見積もりも、輸入業者への説明も始められません。


「自社の器が台湾の規制にどう当たるのかがわからない」「試験をどこまでやるべきか判断できない」という段階でしたら、Link Globalにご相談ください。累計100社・10カ国での支援実績をもとに、規制の当たり判定から輸入業者・バイヤーの開拓、商談・契約まで伴走します。


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参考・出典


  • 衛生福利部「食品器具容器包裝衛生標準」(食品安全衛生管理法第17条に基づく)

  • 衛生福利部食品藥物管理署「食品及相關產品輸入查驗辦法」

  • 衛生福利部「食品安全衛生管理法」第26条(表示)、第30条(輸入査験)、第47条(罰則)

  • 衛生福利部「攜帶或郵購國外食品需報驗,未經查驗不可售」(免検基準について)

  • 衛生福利部「食藥署輸入食品邊境查驗機制及管理說明」(検査率データ)

  • 衛生福利部「陶瓷材質食品器具容器之衛生安全管理」(溶出試験の考え方について)


※本記事は2026年8月時点で公開されている情報に基づいて作成しています。法令および運用は改正される可能性があるため、実際の輸出にあたっては最新の情報を確認し、台湾の輸入業者および専門機関にご相談ください。

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