アイス・ジェラートの台湾輸出ガイド2026|乳製品の衛生証明書は不要・関税10%・冷凍物流から販路まで実務解説
- 堤浩記
- 7 日前
- 読了時間: 25分
台湾にアイスクリームやジェラートを輸出しようとして、まず調べるのは「乳製品の輸出には何が要るか」だと思います。牛乳やチーズを台湾に出すには、自治体が発行する衛生証明書が要ります。品目によっては動物検疫証明書も要ります。アイスも乳製品なのだから同じだろう、と考えるのが自然です。
ところが台湾向けに限っては、そうではありません。
農林水産省の「台湾向け輸出乳、乳製品、殻付き家きん卵、卵製品及び缶詰家きん肉製品の取扱要綱」の別添1には、台湾側が衛生証明書を求めるHSコードが列挙されています。その末尾に、こう書かれています。
※ アイスクリーム類、調製粉乳は含まれない。
つまり台湾向けのアイス・ジェラートに、乳製品の衛生証明書は要りません。制度上は「乳製品」ではなく「菓子」として通ります。
これは台湾に固有の扱いです。香港には「香港向け輸出アイスクリーム類等の取扱要綱」が独立して存在し、マレーシアの認定施設リストには Dairy Products/Liquid Milk/Ice Cream という区分があります。近隣で、アイスクリーム類を明示的に除外しているのは台湾だけです。
香港やマレーシアでの経験がある事業者ほど、台湾でも施設認定が要るはずだと探しに行って空振りします。逆に言えば、台湾はアイス・ジェラートの制度的ハードルが近隣で最も低い市場です。この記事は、その前提から実務を組み立て直します。
なお、食品全般の台湾向け輸出手続き(輸入査験の方式、食品業者登録、中文表示の10項目など)については台湾への食品輸出完全ガイド2026年最新版で扱っています。焼菓子・チョコレートなど他の菓子カテゴリはお菓子の台湾輸出ガイド2026をご覧ください。本記事はそこからアイス・氷菓だけを抜き出し、乳製品としての制度的位置づけと冷凍物流の両面を掘り下げたものです。
本記事のデータについて
制度・手続きの記述は、農林水産省「台湾向け輸出乳、乳製品、殻付き家きん卵、卵製品及び缶詰家きん肉製品の取扱要綱」(令和8年2月27日更新)、ジェトロ「菓子の輸入規制、輸入手続き(台湾)」(調査時点2024年7月〜2025年12月)、農林水産省「ランピースキン病に関する情報」(令和8年7月22日更新)に基づきます。輸出実績は日本アイスクリーム協会の公表値、台湾の小売・外食・物流に関する数値は公益財団法人日本台湾交流協会「台湾への農林水産物・食品の輸出に関するレポート」および台湾経済部統計処の公表値によります。台湾の冰品市場規模と地場ブランドに関する記述は台湾の業界メディアによるもので、一次統計ではありません。
出典のある事実と、当社の見立てにすぎない部分は本文中で書き分けています。後者は「当社の見方です」と明記し、どう確かめられるかもあわせて記しました。
1. なぜアイスだけ扱いが違うのか

HS2105は「菓子」の側にある
台湾向けの品目分類では、アイスクリームその他の氷菓はHS2105に該当します。ジェトロが菓子の輸出ガイドで扱っている品目定義にも、1704(砂糖菓子)、1806(チョコレート)、1905(ベーカリー製品)と並んで2105が入っています。牛乳・乳製品のガイドが扱うのは0401〜0406であり、2105は含まれません。
日本側の証明書要件も、これと整合しています。取扱要綱の別添1が挙げるHSコードは、次の7つです。

乳成分を含んでいても、最終製品としてアイスクリーム類に分類されるものは対象外、という整理になっています。
衛生証明書が要る場合の手続き(参考)
自社の商材が0401〜0406側に落ちる場合の手続きも押さえておきます。証明書の発行機関は都道府県、保健所設置市または特別区の衛生主管部局です。国ではなく自治体が出します。輸出のたびに、製造施設を管轄する発行機関へ申請します。
証明書には「当該製品は日本における食品安全及び衛生条件に適合し、人の食用に適する」という証明文言が入ります。
分類が微妙な商材は先に台湾FDAへ
要綱には、実務上とても重要な一文があります。
輸出希望製品について、衛生証明書の添付が必要な製品か不明な場合は、事業者に対し、事前に台湾衛生福利部食品薬物管理署に当該製品のHSコードを確認するよう指導すること。
つまり、グレーゾーンの存在が制度側で想定されています。
ここで出てくる衛生福利部食品薬物管理署は、台湾の衛生福利部(日本の厚生労働省にあたる省庁)の下にある機関で、食品・医薬品・化粧品・医療機器を所管します。英語名 Taiwan Food and Drug Administration の略でTFDA、日本の輸出実務では米国のFDAと区別するため「台湾FDA」と呼ぶのが通例です。以下、本記事でも台湾FDAと表記します。
ここからは当社の見方です。ジェラートは乳固形分や糖分の設計幅が広いため、フローズンヨーグルト系や乳成分の比率が高い商材では、2105ではなく0403側に分類される可能性が理屈のうえでは残ります。そうなれば衛生証明書が必要になります。この判断を下すのは台湾側の税関と台湾FDAであり、日本側で「アイスだから不要」と決め打ちするのは危険です。配合表を持って事前に照会するか、輸入者経由でCCC号列の事前審査を受けてください。
2. 動物検疫の要否
衛生証明書が不要であることと、動物検疫が不要であることは別の話です。
取扱要綱には次の記載があります。
品目によっては、動物検疫所が交付する輸出検疫証明書が必要になる場合があるため、輸出者は輸出先国に受入条件を確認の上、動物検疫所に相談すること。
ジェトロも、一部の牛乳・乳製品には動物検疫が求められ、品目によっては食品衛生に関する証明書と動物検疫に関する証明書の両方が必要になる場合があると整理しています。対象は農業部動植物防疫検疫署の品目リストで定められます。
アイスクリーム類が該当するかは、原材料の構成と加熱処理の条件によって変わり得ます。ここは一般論で断定できる領域ではないため、動物検疫所への個別確認を初期タスクに入れてください。菓子として通る前提で準備を進め、出荷直前に検疫証明書が要ると判明するのが最も損害の大きいパターンです。
なお、ジェトロの菓子ガイドは「動植物検疫の有無:なし」としています。これは1704・1806・1905を中心とした一般的な菓子を想定した記述と読むのが自然で、乳成分を主体とする2105の商材にそのまま当てはめるのは早計です。
3. ランピースキン病が示した「止まり方」の非対称
2024年11月、国内で初めてランピースキン病(LSD)が確認されました。この一件は、乳製品・畜産物の輸出に取り組む事業者にとって、制度リスクの実例として押さえておく価値があります。
経過
2024年11月6日、福岡県で国内初発生
同年12月26日までに福岡県の19農場、熊本県の3農場で発生を確認した後、終息
2025年7月28日、殺処分命令等の措置を可能とする政令が施行
2026年5月の家畜伝染病予防法改正により、届出伝染病から家畜伝染病へ格上げ。これに伴い指定政令は廃止
2026年7月1日付で新たな防疫対策要領
本病は牛と水牛の病気であり、人には感染しません。罹患した牛は家畜伝染病予防法に基づき殺処分され、その肉や乳が市場に出回ることはありません。
輸出への影響は仕向地と品目で割れた

ここが実務上の教訓です。同じ疾病でも、止まり方が国と品目でまったく違いました。
台湾向け乳製品:発生を受けて輸出検疫証明書の交付が停止されましたが、台湾当局から証明書様式の改正により輸入を認める旨の連絡があり、11月11日に交付が再開されました。停止は数日です。
米国向け牛肉:2024年12月19日以降、ワクチン接種都道府県(福岡県)由来の牛肉が輸出できなくなり、再開は2025年3月19日でした。約3か月止まっています。
EU・英国向け:牛内臓(横隔膜及び咬筋を除く)に制限がかかり、それ以外は基本的に従前どおりでした。
各国が判断の根拠を公表しているわけではないので推測になりますが、この差は「証明書の様式を書き換えれば済む話」なのか「産地単位で線を引く話」なのかという、相手国側の制度設計の違いから生じたと考えられます。台湾は前者で対応し、米国は後者を選びました。
何を準備しておくべきか
ここからは当社の見方です。乳原料を使う商材の輸出計画には、家畜疾病による供給停止を織り込んだ代替設計を持っておくべきだと考えます。原料乳の調達先を複数県に分散させておく、証明書様式の改正情報を動物検疫所の受入れ状況一覧で定期的に確認する、といった備えです。過去の停止事例で実際に再開までどれくらいかかったかを調べれば、どこまで備えるべきかの目安が立ちます。
海外の状況は依然として動いています。欧州ではフランス117件、イタリア90件、スペイン20件の発生が報告され、世界では91か国・地域で発生報告があります(2026年6月11日時点)。日本国内が終息していても、国際的な制度変更が波及する可能性は残ります。
同じ畜産物でも、牛肉は認定と畜場での処理と3種類の証明書が前提になり、制度の建て付けがまったく異なります。畜産物側の手続きは牛肉・和牛の台湾輸出ガイド2026で整理しています。
4. 関税:菓子カテゴリで最も低い部類
アイスクリームその他の氷菓の従価税率は**10.0%**です。台湾のCCCコードでは2105.00.10.00.8に該当します。CCCコードは台湾固有の輸入貨物分類表で、上6桁は基本的にHSコードと同一です。
菓子カテゴリの中で並べると、位置づけがはっきりします。

スイートビスケット25.0%、その他の砂糖菓子27.5%と比べれば、アイスの10.0%は明確に有利です。焼菓子で台湾に出ている事業者が、同じ価格設計の感覚でアイスを見ると、関税負担は半分以下になります。
完成品と原料で税率が倍違う
図の最上段に注目してください。カカオをベースとするアイスクリーム用材料は5.0%で、完成品アイスの半分です。
この5%差をどう読むかは当社の見方になりますが、B2Cの完成品輸出よりもB2Bの原料供給のほうが税率面で有利である、ということを示しています。現地の製造事業者・外食チェーン・ホテルに原料として供給し、仕上げを現地で行う商流であれば、関税負担を半減できる可能性があります。
ただし1806.90.10がカバーする製品形態の範囲は、この記事で確定できていません。カカオをベースとする材料に限られるのか、ミルクベースのジェラートベースも含み得るのかは、CCC号列11桁を財政部関務署のTariff Database(GC411 稅則稅率綜合查詢作業)で確定させないと断定できません。価格設計に組み込む前に、輸入者経由で税則預先審核制度を使い、必ず号列を確定させてください。
その他の税
営業税(日本の消費税に相当)が課されます。計算式は次のとおりです。
営業税 =(CIF価格 + 輸入関税)× 5%
5. 中文ラベルで押さえる点
表示ラベルは輸入時の検査で審査されます。ラベルがなければ輸入できません。包装済み食品の表示は「食品安全衛生管理法」第22条により、繁体字中国語で記載する必要があります。
乳製品ゆえに効いてくる項目
アレルゲン表示:台湾のアレルギー物質の対象11品目には「牛乳、ヤギ乳及びその製品(牛乳及びヤギ乳から抽出されるラクチトールを除く)」が含まれます。アイス・ジェラートはこれに該当します。表示方法は「本製品には○○が含まれています」等の文言を目立つように記載するか、品名に明記するかのいずれかです。
原材料によっては複数のアレルゲンが該当します。卵(カスタード系)、堅果類(ピスタチオ、ヘーゼルナッツ等)、ゴマ、大豆(乳化剤由来)は、ジェラートの定番フレーバーで頻出します。11品目のうち何が該当するかを、フレーバーごとに洗い出してください。
栄養表示:すべての包装食品に義務づけられています。熱量、タンパク質、脂肪・飽和脂肪・トランス脂肪、炭水化物・糖、ナトリウムを繁体字で表示します。アイス・ジェラートは飽和脂肪の数値が相対的に高く出る商材です。表示値と実測値の乖離が検査で問題になり得るため、輸出前に分析値を取っておくことをおすすめします。
原産地:国名に加えて都道府県名の明記が必要です。消費者保護法第24条第2項の解釈に基づく運用です。「JAPAN」だけでは足りません。
有効期限:年月日を判読できる方法で表示します。保存期限が3か月以上の製品は年月のみとし、その月の末日を有効期限とすることもできます。
容器・包装
リサイクルマークの刷り込みまたはラベル表示が求められます。プラスチック容器については7種類のリサイクルマークが定められており、材質に応じた表示が必要です。
また、2023年7月1日以降、乳製品を含む食品に使用されるPVC(ポリ塩化ビニル)製のトレー、容器、使い捨て食器の製造・輸入・販売が禁止されています。日本国内で使っている容器がPVCの場合、台湾向けは資材から変更が必要です。
参考規格
任意規格として、CNS 6508「乳製品・アイスクリーム(包装済み)」(2017年)が定められています。強制ではありませんが、商品名の設定根拠として参照されることがあります。
6. 2025年11月の規制撤廃を反映する
2025年11月21日以降、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県の5県の食品に義務づけられていた放射性物質検査報告書と、日本産すべての食品への産地証明書の添付が不要になりました。
この撤廃前の情報がインターネット上に大量に残っています。「台湾向けには産地証明書が必要」という記述を見かけたら、更新日を確認してください。現在は不要です。
7. 冷凍物流と賞味期限
制度面のハードルが低い分、勝負は物流とコストに移ります。
温度帯
アイス・ジェラートは−18℃の冷凍帯を、日本の工場から台湾の売場まで一度も切らさずに維持する必要があります。日本から台湾への海上輸送は最短で1日程度、航空便は約4時間と近い一方、問題は輸送そのものではなく、通関で滞留する期間です。
通関の所要期間
日本台湾交流協会のレポートによれば、加工食品は台湾FDAの抽出検査で時間を要することが多く、通関から引き取りまでに1〜2か月かかるケースがあります。船便5〜7日とは別の話です。
冷凍コンテナはこの期間も通電が必要で、滞留が長引くほどコストが積み上がります。初回輸出は検査が入る前提で、リーファーの滞留コストを見込んだ価格設計にしてください。
冷凍はコスト構造が違う
リーファーコンテナは、ドライコンテナと比べて運賃も付帯費用も大きく上振れします。
日本への輸入事例では、香港から東京港までの40フィートリーファーがFOB(ALL IN)で23万円程度。日本から台湾への輸出は、これと同程度の距離帯にあたります。ドライとの差は大きく、地中海から東京への比較例では、リーファー40フィートの海上運賃44万〜48万円に対し、ドライ40フィートは15万〜18万5千円です。3倍近い開きがあります。
国内配送も割高になります。冷却装置を動かしたまま陸送するにはMGシャーシ(発電機付きシャーシ)が必要で、通常のシャーシより費用がかかります。加えてリーファーはコンテナの絶対数が少なく、とくに20フィートはブッキング自体が取りにくいという制約もあります。
滞留がコストを跳ね上げる
実務で効いてくるのは、運賃そのものよりこちらです。
リーファーはフリータイムが短く、超過後のデマレージ(CYでの保管料)が日を追って上がります。日本のCYにおける一般的な水準では、リーファーのフリータイムは3〜4営業日で、ドライの6日より短く設定されています。40フィートのデマレージは1〜4日目が1万3千円前後、5〜9日目が3万〜3万5千円、10日目以降は5万〜6万円へと段階的に跳ね上がります。ドライのおよそ2倍の水準です。

ここで前項の「通関から引き取りまで1〜2か月」を思い出してください。仮に40フィートリーファーが1か月間CYに置かれたままなら、デマレージだけで海上運賃を大きく超えます。
ただし、この2つの数字を単純に掛け合わせるのは正しくありません。検査待ちの間ずっとコンテナがCYに置かれるとは限らず、保税の冷蔵冷凍倉庫にデバンニングして保管する運用もあります。どちらになるかで費用は桁が変わります。
当社の見方では、輸入者との初回商談で確認すべき最重要事項はここです。「検査待ちの間、貨物はコンテナのままか、保税倉庫に出すか」。この一問の答えが価格設計の前提を決めます。第8節のスクリーニング項目にも入れてあります。
なお、ここに挙げた運賃とデマレージの水準は、日本の港における輸入事例に基づく参考値です(貿易実務解説サイトHUNADEの公表値)。台湾側の港湾で適用される料率は船社と契約条件によって決まるため、必ず実際の見積もりで確認してください。
賞味期限12か月問題への影響
台湾の輸入者は一般に、最低12か月の賞味期限を求めます。これは常温・冷蔵の加工食品にとって厳しい制約で、賞味期限6か月の商材は商流設計そのものが変わります。
ここは当社の見立てですが、アイス・ジェラートは冷凍前提の商材であり、日本国内の表示慣行でも賞味期限を省略できる扱いがあります。この点で、12か月要求が事実上の障壁になりにくいカテゴリだと考えられます。ただし台湾側の表示要件では有効期限の記載が必要とされているため、実際にどう運用されているかは輸入者ごとに確認してください。
8. 台湾側で必要な手続き
輸出者側の手続きが軽い分、台湾側の体制が成否を分けます。
輸入業者の登録:経済部国際貿易局への輸入業者登録と、台湾FDAへの食品輸入業者登録が必要です。登録には会社登記、輸入品分類、再包装の有無などの資料を提出します。企業登録は毎年更新が必要です。
輸入検査:輸入者は輸入の15日前に、輸入港所在地の検査執行機関へ輸入検査申請書、輸入製品の基本情報に関する申告用紙、輸入申告書の写しなどを提出します。書類審査、現場検証(包装・外観・表示の点検)、抜き取り検査を経て、適合すれば台湾FDAから輸入許可証が交付されます。
トレーサビリティ:食品安全衛生管理法第9条第5項に基づく制度があり、輸入・製造・加工を行う事業者は原料・半製品・最終製品の流れを追跡する仕組みを持つ必要があります。
輸入者を選ぶときの確認項目
当社では、アイス・ジェラートの場合、初回接触の段階で次の5点を聞けば相手の実力が判別できると考えています。
−18℃帯の冷凍倉庫を自社または提携で持っているか
夏季(5〜9月)に冷凍菓子を輸入した実績があるか
末端配送の冷凍対応(低温宅配)を確保できるか
乳製品のアレルゲン表示・栄養表示の設計経験があるか
検査待ちの間、貨物をコンテナのまま置くか、保税倉庫に出すか
5番目は費用に直結します。詳しくは第7節を参照してください。冷凍を扱えない相手に良い条件を提示されても、商品が溶ければ意味がありません。
9. 市場:すでに動いている
日本アイスクリーム協会の公表値によれば、2025年度のアイスクリーム類の輸出は物量ベースで前年比115.6%、金額ベースで119.9%と伸びています。輸入も物量121.5%、金額140.1%と大きく伸長しました。
国別の輸出(物量ベース)では、台湾、香港、アメリカ合衆国、中華人民共和国の4か国で60%強を占めます。
つまり台湾は、日本産アイスクリーム類にとって既に主要な輸出先です。ゼロから需要を作る市場ではなく、既存の棚のどこと入れ替わるかを設計する市場だと考えてください。
台湾側の競合
台湾の冰品市場には、地場の量産ブランドが厚く存在します。桶入り(ファミリーサイズ)では杜老爺、小美、阿奇儂といったブランドが定番として定着しており、輸入ブランドではCOLD STONE(酷聖石)が2007年に台湾へ進出しています。量販店の棚では、1リットル前後の桶入りアイスがNT$200前後の価格帯で並びます。
台湾の小売冰品市場の規模については、ニールセン調査に基づく「年間約50億台湾ドル」という数字が業界メディアで引用されています。ただしこの数値は調査年次が明示されておらず、「冰品」の範囲(アイスクリーム類のみか、かき氷・冰棒等を含むか)も確認できません。桁感をつかむ参考値として扱い、事業計画の根拠には使わないでください。
日本産の位置づけ
輸入冰品のなかで日本産の注目度が高いことを示す調査はありますが、根拠となっているのはネット上の口コミ量であり、販売実績ではありません。口コミ量と売上は別の指標です。
両者を突き合わせると、日本アイスクリーム協会の輸出統計で台湾が上位に位置していることと、台湾側の消費者の関心が輸入品に向いているという定性情報は、方向としては一致しています。ただし台湾側の輸入統計でHS2105の国別内訳を確認できていないため、日本産のシェアは本記事では特定できていません。
10. どのチャネルに置くか

制度と税率で入口が開いていても、−18℃を維持できる売場でなければ商品は置けません。台湾の小売・外食の構造から、現実的な置き場所を絞ります。
コンビニエンスストア
台湾のコンビニは店舗数が多く、冷凍什器を標準装備しています。7-ELEVENが7,102店(2025年3月)、FamilyMartが4,299店、Hi-Lifeが1,652店、OKが783店です。
ただしこの規模のチェーンに単品で入るには、全店供給の物量とバイヤーが求める回転率の実績が要ります。初回輸出の入口としては現実的ではありません。
量販・スーパー
食品小売業の売上高は3,092億台湾ドル、前年比5.6%増です(2025年、台湾経済部統計処)。ここが主戦場になります。
高級志向の業態としてはcity'super 8店、Mia C'bon 20店、新光三越の美麗市場9店、微風超市2店、裕毛屋1店。日系小売ではDON DON DONKIが6店、LOPIAが9店、カルディが13店です(いずれも2025年12月時点)。店舗数が二桁以下のチェーンは、初回のテスト販売と規模の相性が良いという見方ができます。
百貨店催事
百貨店の売上高は4,555億台湾ドルで過去最高を更新しています(2025年)。催事の山は周年慶(10月頃)と春節(1〜2月)です。
冷凍商材は催事什器の確保が前提になりますが、逆に言えば什器さえ押さえれば、短期間で単価の高い売り方ができます。
外食・ホテルの業務用
台湾の外食市場は1兆675億台湾ドル(2025年)、日本食レストランは約7,100件あります。
第4節で見たとおり、カカオをベースとするアイスクリーム用材料の関税は5.0%で、完成品の半分です。ここからは当社の見方になりますが、外食・ホテル向けに業務用の原料またはバルクで供給する商流は、小売向けの完成品より税率面で有利になる可能性があります。加えて、台湾の栄養表示義務には企業間取引の包装済み食品および食品原材料を免除する規定があるため、パッケージ設計の負担も軽くなり得ます。自社の取引形態が免除規定に該当するかは、事前に確認してください。
ECは慎重に
食品小売のEC比率は5.3%にとどまります。小売全体のEC比率が13.9%であることを考えると、食品は明確に店頭偏重です。冷凍の末端配送コストも上乗せされるため、アイス単独でのEC展開を初期戦略に置くのは勧めません。
商談のタイミングと連絡手段
贈答商材のバイヤーは、春節・端午節・中秋節の三節に向けて約6か月前から商材を探し始めます。ギフト需要を狙うなら、逆算して動く必要があります。
なお台湾ではLINEの普及率が92.3%で(2025年)、地場企業は業務連絡もメールではなくLINEで行うのが一般的です。メールの返信が遅い相手でも、LINEなら早いことがあります。
最後に当社の見方を述べておくと、制度ハードルの低さ(衛生証明書不要)と関税の低さ(10.0%)を合わせれば、日本の中小の菓子事業者にとって、台湾向けアイスは焼菓子よりも参入条件が良いと考えられます。障壁は制度ではなく冷凍物流とロットです。
11. 初出荷までのロードマップ
準備は逆算で組みます。分類確認と商標出願が最も早く、輸入者が決まらないと中文ラベルが確定しない点が実務上の制約になります。

最初に着手すべきは、自社商材のHSコード分類の確認です。2105に落ちるのか、発酵乳ベースとして0403側に落ちるのかで、必要書類がまるごと変わります。ここが確定しないまま先の工程を進めると、後戻りの幅が大きくなります。動物検疫の要否確認も、同じタイミングで動かしてください。
商標出願も6か月前です。台湾は先願主義で、登録まで通常6〜12か月かかります。商談が進んでから出願すると、現地で先に押さえられているリスクを負うことになります。
工程上のボトルネックは中文ラベルです。ラベルには台湾側の国内責任業者の名称・電話番号・住所を記載する欄があるため、輸入者が確定するまで設計を終えられません。輸入者の選定が遅れれば、その分だけラベルも印刷も生産も後ろにずれます。輸入者を4〜5か月前までに決めることが、全体スケジュールを守る条件になります。
冷凍物流の手配とコスト確定は2〜3か月前です。ここで第7節の滞留リスクを価格に織り込みます。初回は台湾側で抽出検査が入る前提で組んでください。
よくある質問
Q. アイスクリームを台湾に輸出するのに、日本側で施設認定は必要ですか。
台湾向けのアイスクリーム類については、乳製品としての衛生証明書の対象から除外されているため、そのための施設認定は求められません。ただし動物検疫の要否は品目・原材料により変わるため、動物検疫所への個別確認が必要です。また、これは日本側の要件の話であり、台湾側の輸入検査は別途受けることになります。
Q. 香港向けの手続きと同じですか。
異なります。香港には「香港向け輸出アイスクリーム類等の取扱要綱」が独立して存在し、アイスクリーム類が明示的に証明書の対象になっています。台湾はこれを除外しています。香港での実績をそのまま台湾に持ち込むと、余分な手続きを探すことになります。
Q. ジェラートとアイスクリームで扱いは変わりますか。
台湾側の分類はHSコード(CCC号列)で決まるため、日本国内の呼称や乳固形分による区分がそのまま適用されるわけではありません。乳成分の比率が高い商材や発酵乳ベースの商材は、2105ではなく0403側に分類される可能性が理屈のうえでは残ります。分類が微妙な場合は、要綱が指示するとおり事前に台湾FDAへHSコードを確認してください。
Q. ランピースキン病の影響はまだ残っていますか。
国内の発生は2024年12月26日までに確認された福岡県19農場・熊本県3農場をもって終息しています。台湾向け乳製品の輸出検疫証明書は2024年11月11日に交付が再開されました。ただし2026年5月の家畜伝染病予防法改正で本病は届出伝染病から家畜伝染病に格上げされており、制度は動いています。海外では依然として発生が続いているため、最新の状況は動物検疫所の受入れ状況一覧で確認してください。
Q. 産地証明書は必要ですか。
2025年11月21日以降、日本産すべての食品への産地証明書と、5県産食品への放射性物質検査報告書の添付は不要になりました。撤廃前の記述が残っている解説記事が多いため、注意してください。
Q. 関税は完成品と原料でどれくらい違いますか。
アイスクリームその他の氷菓(2105.00.10.00.8)が10.0%、カカオをベースとするアイスクリーム用材料(1806.90.10.00.3)が5.0%です。ただし後者がカバーする製品形態の範囲は号列単位で確認が必要です。価格設計に組み込む前に、Tariff Database(GC411)で11桁のCCC号列を確定させてください。
Q. 小ロットから始められますか。
制度上の障壁は低い一方、冷凍コンテナは容積単位で費用が発生するため、少量では単位あたりコストが跳ね上がります。まずは百貨店催事や日系スーパーでのテスト販売を、輸入者の既存の冷凍便に混載してもらう形が現実的です。ただし混載の可否は輸入者の物流体制によるため、初回接触時に確認が必要です。
Q. 表示ラベルは日本語のままでも大丈夫ですか。
できません。繁体字中国語での表示が必要で、ラベルがなければ輸入自体ができません。原産地は国名に加えて都道府県名の明記が求められます。中文ラベルには台湾側の国内責任業者の名称・電話番号・住所を記載する欄があるため、輸入者が確定しないと設計を完了できません。
Q. 小売と業務用、どちらから始めるべきですか。
一概には言えませんが、判断材料は3つあります。第一に関税で、業務用の原料として出せる形態なら5.0%と完成品の半分になり得ます。第二に表示で、台湾の栄養表示義務には企業間取引の包装済み食品と食品原材料を免除する規定があり、業務用はパッケージ設計の負担が軽くなり得ます。第三にロットで、小売は棚を確保するための継続供給が前提になる一方、業務用は取引先単位で立ち上げられます。自社の生産能力が小さいほど、業務用から入る合理性は高まります。
Q. 台湾の地場ブランドと競合できますか。
価格で正面から戦うのは避けたほうがよいと考えます。台湾には杜老爺、小美、阿奇儂といった量産ブランドが定着しており、桶入りの価格帯も形成されています。日本産が同じ土俵に乗る理由は乏しく、フレーバーの独自性、産地や原料のストーリー、少量高単価のギフト形態といった別の軸で差別化する設計が要ります。これは当社の見方であり、実際の勝ち筋は輸入者へのヒアリングと催事でのテストで検証してください。
Q. 通関にはどれくらいかかりますか。
加工食品は台湾FDAの抽出検査で時間を要することが多く、通関から引き取りまでに1〜2か月かかるケースがあります。船便の輸送日数5〜7日とは別の話です。冷凍コンテナはこの期間も通電が必要なため、初回輸出は検査が入る前提で、リーファーの滞留コストを見込んだ価格設計にしてください。
Q. 冷凍輸送のコストはどれくらい見ておくべきですか。
リーファーコンテナはドライコンテナより大幅に高く、地中海から東京への比較例では海上運賃で3倍近い開きがあります。香港から東京港までの40フィートリーファーはFOB(ALL IN)で23万円程度で、日本から台湾への輸出も同程度の距離帯にあたります。国内配送にも発電機付きのMGシャーシが必要になります。ただしこれらは日本の港における輸入事例に基づく参考値であり、台湾側の料率は船社と契約条件によって決まります。実際の見積もりで確認してください。
Q. 検査待ちの間、貨物はどこに置かれますか。
コンテナのままCYに置かれるか、保税の冷蔵冷凍倉庫にデバンニングして保管するかで、費用が桁違いになります。リーファーのフリータイムは3〜4営業日と短く、超過後のデマレージは40フィートで10日目以降5万〜6万円程度まで段階的に上がるためです。通関から引き取りまで1〜2か月かかる可能性を踏まえると、この一点が価格設計の前提を決めます。輸入者との初回商談で必ず確認してください。
まとめ
台湾向けのアイス・ジェラートは、制度と税率の両面で、思われているより通しやすい商材です。
乳製品の衛生証明書は不要(取扱要綱の別添1で明示的に除外)
関税10.0%は菓子カテゴリで最も低い部類(ビスケット25.0%、砂糖菓子27.5%)
産地証明書は2025年11月に撤廃済み
台湾は既に日本産アイスクリーム類の主要輸出先
一方で、実務上の勝負どころは制度ではなく物流に移ります。−18℃を切らさず、通関で1〜2か月滞留する可能性を織り込んだ価格設計ができるかどうか。そして、冷凍で回せる台湾側パートナーを確保できるかどうかです。
コストの構造も押さえておいてください。リーファーの海上運賃はドライの3倍近く、フリータイムは短く、超過後のデマレージは日を追って跳ね上がります。滞留期間中に貨物がコンテナのまま置かれるのか、保税倉庫に出されるのかで費用は桁が変わります。輸入者に最初に確認すべきはここです。
置き場所も先に決めておく必要があります。コンビニは店舗数こそ多いものの、初回輸出で入る規模ではありません。現実的な入口は、店舗数が二桁以下の日系・高級スーパーでのテスト販売か、百貨店の周年慶・春節の催事です。生産能力が小さい事業者ほど、外食・ホテル向けの業務用から入る選択肢も検討に値します。
分類が微妙な商材(発酵乳ベース、乳成分の比率が高いもの)については、事前に台湾FDAへHSコードを確認してください。制度が「アイスは除外」と書いているからといって、自社の商材がアイスに分類される保証はありません。
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本記事は2026年8月時点の公開情報に基づいています。規制・関税率は変更される可能性があるため、実際の出荷前には財政部関務署Tariff Database、台湾FDA、農林水産省、動物検疫所の最新情報を必ずご確認ください。




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