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台湾の住宅事情2026|広さ・間取り・持ち家率・住宅ローンをデータで解説

  • 堤浩記
  • 7月30日
  • 読了時間: 17分

台湾の住宅事情2026|広さ・間取り・持ち家率・住宅ローンをデータで解説

「台湾の家はどのくらい広いのか」「持ち家と賃貸はどちらが多いのか」「住宅ローンの負担はどの程度なのか」——台湾向けビジネスを設計するとき、現地の人がどんな家に、何人で、どう住んでいるかという生活の土台を知っているかどうかで、商品企画や販路選定の精度は大きく変わります。


台湾は持ち家率84%超という世界有数の「持ち家社会」でありながら、台北の住宅価格は世帯所得の15倍を超え、世帯人数は2.89人まで縮小し、賃貸人口は300万人を突破——と、日本と似ているようで異なる独特の構造を持っています。


当ページでは内政部・行政院主計總處などの政府統計をもとに、台湾の住宅事情を「持ち家率、広さと公設比、間取り、世帯構造、賃貸と住宅政策、価格とローン、地域差、購入の4形態」の順で整理していきます。家具・インテリア・住宅設備など住関連の事業者さまはもちろん、台湾市場を検討するすべての方の基礎資料としてご活用ください。


なお「台湾人はどう家具を選び、内装を誰に頼むのか」という暮らしの実務は、姉妹記事の 台湾の家具の選び方と内装事情 で詳しく解説しています。金額は台湾ドル(元)表記で、目安として1元=約5円で概算しています。


台湾の住宅ストックと持ち家率84.4%

台湾の住宅ストック・持ち家率・平均居住面積・世帯人数の基礎データ|台湾の住宅事情2026

内政部国土管理署の統計によると、台湾の住宅ストックは2024年第4四半期時点で947万7,984戸。人口約2,300万人に対して約950万戸ですから、戸数だけを見れば住宅は十分に供給されている社会です。


そして行政院主計總處の家庭收支調査では、2024年末時点の自有住宅比率(持ち家世帯の比率)は84.4%。この「自有」は同居する世帯員の誰かが住宅を所有している場合を指し、別居の直系親族が所有するケースまで含めると90%に達します。日本の持ち家率が約6割であることを踏まえると、台湾がいかに「家は買うもの」という社会かが分かります。


ただし注意点が2つあります。第一に、これは「世帯単位」の統計であり、三世代が同居して住宅の名義が親であっても持ち家世帯にカウントされること。第二に、住宅価格の上昇で若い世代の取得が難しくなり、自有率は近年、緩やかな低下傾向が指摘されていることです。「若い世代ほど賃貸」という変化は、後述する賃貸市場の拡大とセットで押さえておく必要があります。


平均39.8坪——ただし「坪」表示には公設比という落とし穴がある

次に広さのデータです。主計總處の家庭收支調査(2024年)によると、平均居住面積は1世帯あたり39.8坪(約132㎡)、1人あたり14.3坪(約47㎡)。「台湾の家は狭そう」というイメージを持たれがちですが、平均値で見れば日本の平均的な住宅よりも広いのが実態です。


ただし、台湾の不動産広告や権利証(権状)に書かれる坪数は、日本の専有面積とは意味が違います。廊下・エレベーターホール・ロビー・ジムといった共用部分(公設)が各戸に按分されて合算される、いわゆる「虚坪」方式だからです。


この共用部分の比率を「公設比」と呼びます。新築マンションではおおむね30〜35%が相場で、住宅専門誌・住展雑誌の統計では、2025年に公開された新築案件の平均公設比は台北市35.7%・新北市34.7%と、統計開始以来の高水準にあります。つまり「権状40坪」と書かれた物件でも、実際に室内として使えるのは表示の7割前後、28坪ほどということが珍しくありません。台北市では公設比40%以上の新築案件が2025年に全体の1割まで増えましたが、小宅なら総額を1,000万元前後に抑えられるため、室内の狭さを承知のうえで買われている——というのが高房価下の現実です。背景には、台北市で基地面積200坪未満の小型案件が新規供給の4割近く(2024年は3割)を占めるようになったことがあります。戸数の少ない小規模マンションは共用設備を分担する戸数が少なく、公設比が構造的に上がりやすいのです。


台湾の権状坪数と公設比の内訳図|台湾の住宅事情2026

なお内政部は「虚坪改革」と呼ばれる制度見直しを進めており、駐車場・車路の登記方法の変更などにより、新制度適用後の新築では公設比が5%程度下がる見込みと報じられています。改革の柱は、駐車場(車位)を独立した専有部分として登記し、車位を買わない人が車道面積を分担しない仕組みへ改めること、そして一般エレベーターを容積計算の対象から外すことです。なお新制度は施行後に建築確認を申請する新築のみが対象で、既存の中古住宅の登記が変わるわけではありません。台湾の住宅面積を読むときは、それが「権状坪数」なのか「室内で実際に使える坪数」なのかを必ず確認する——これが台湾の住まいを理解する第一歩です。


標準間取りは「3房2廳2衛」——日本の住まいと違う5つのポイント

台湾の間取りは「◯房◯廳◯衛」と表記します。房は個室(寝室)、廳はリビングやダイニング、衛はバス・トイレの数です。ファミリー向けの標準は「3房2廳2衛」で、日本でいう3LDK・トイレバス2か所に相当し、主寝室(主臥室)に専用バスルームが付くのが一般的です。


台湾の標準間取り「3房2廳2衛」の平面図|台湾の住宅事情2026

日本の住まいとの違いとして、実務で押さえておきたいのは次の5点です。

  • 玄関という独立空間がない間取りが多く、ドアを開けるとすぐリビングにつながる

  • 造り付け収納が少なく、収納は入居後の内装工事(装潢/ジュアンホアン)や家具で確保するのが前提

  • 床はタイルや石材が主流でフローリングは少数派。壁はコンクリートに塗装仕上げが基本で、壁紙の文化はほぼない

  • バスとトイレは同室が基本で、浴槽のないシャワーのみの物件も多い

  • 夏の暑さゆえに、日本のように南向きが絶対視されない


設備面の生活水準は高く、主計總處の調査(2024年)ではエアコン普及率97.5%、洗濯機99.3%、自家用車60.6%。蒸し暑い気候を背景に、冷房はほぼ全世帯の標準装備になっています。長期のデータで見ると、1960〜70年代にテレビ・冷蔵庫・洗濯機が、80年代後半に冷暖房が、90年代に自動車・携帯電話・パソコンが普及してきた歴史があり、現在は家庭のインターネット接続率も96.1%に達しています。


世帯は2.89人へ——「小宅」シフトが進む

内政部の統計によると、戸籍が置かれた住宅の平均居住人数は、2021年第4四半期の3.20人から2025年第4四半期には2.89人まで低下しました。少子化・晩婚化・単身世帯の増加を背景に、主要な七大都市圏すべてで3人を割り込んでいます。


この変化は住宅の売れ筋を直撃しています。大手不動産仲介・永慶房産集団の統計では、直近5年で七都すべてにおいて小坪数住宅(小宅)の取引比率が上昇し、高雄市で7.5ポイント、新北市で6.7ポイント増えました。世帯の縮小に加え、住宅価格の高騰で「総額を抑えられる小宅」に需要が向かっている構図です。世帯構成の中身も入れ替わっており、2025年第4四半期には2人住まいの住宅が160万宅へ増える一方、6人以上が住む住宅は76万宅まで減少しました(内政部)。「大家族の家」は年々珍しくなっています。


整理すると、台湾の住宅は「ストック(既存住宅)は広い持ち家、フロー(新規供給)は小さな住戸」という二重構造です。広い既存住宅のリフォーム・収納強化の需要と、小宅向けの省スペース・多機能需要が並走している市場だと理解すると、商品企画の解像度が一段上がります。


賃貸人口は300万人超——ただし市場の大半は統計に表れない

持ち家社会の裏側で、賃貸市場も拡大しています。賃貸住宅サービス業の全国団体(租賃住宅服務商業同業公会全国聯合会)は2025年、台湾の賃貸人口が300万人を突破したと発表しました。総人口の約8分の1に相当します。なお2020年の人口・住宅センサスでは、賃貸世帯は約87.6万戸でした。この普査からの推計で2022年時点の賃貸人口は約245万人。そこから3年あまりで300万人まで増えた計算になり、賃貸は台湾で最も速く拡大している住まい方のひとつです。


ただし台湾の賃貸市場には特有の見えにくさがあります。立法院の資料によると、賃料の実価登録や家賃補助などの制度で捕捉できている賃貸は、最も広く見積もっても全体の2割強。大半は契約が公的記録に残らない、統計に表れない市場です。


政府は社会住宅の建設(2024年に20万戸の目標達成を掲げた枠組み)、民間住宅を借り上げて転貸する包租代管(10万戸超)、大規模な家賃補助などで賃貸環境の整備を進めており、賃貸セクターは制度化の途上にあります。


ビジネスの視点では、賃貸族は「内装工事ができない」層です。据え置きの既製家具、移動できる収納、退去時に原状回復しやすいアイテムの主要顧客であり、持ち家層とはまったく別の商品が刺さります。また単身向けのワンルーム(套房/タオファン)は家具・家電付きで貸し出されることが多く、その場合に家具を買うのは入居者ではなく大家である点も見逃せません。


社会住宅・家賃補助——賃貸の「制度化」はどこまで進んだか

見えにくい賃貸市場を、制度の側から整備する動きはこの10年で大きく進みました。柱は3つ。社会住宅の直接建設、民間住宅を借り上げて転貸する包租代管、そして家賃補助です。


社会住宅は2024年に「20万戸」の目標達成を掲げた枠組みのもと、2024年末時点で直接建設11万9,552戸、包租代管の有効契約8万3,151戸まで積み上がりました(行政院)。包租代管はその後も拡大を続け、2025年には累計10万戸を突破。賃貸住宅サービス業の業界団体の会員数も年29%増と、賃貸の「プロ管理化」が急速に進んでいます。2018年施行の賃貸住宅専法(租賃住宅市場発展及管理条例)を起点に、管理業者は2025年に2,829社(前年比29%増)、専門資格の保有者は4,859人(同37%増)へ拡大。社会住宅の包租代管では11万4千件超の媒合実績に対し、家賃滞納や明け渡し拒否といったトラブルは2.11%にとどまるという実証データも公表されています。貸主の側でも、税優遇付きで登録する「公益出租人」が2023年に17万3千戸まで増え、政府は約91万戸の空き家を税優遇で賃貸市場へ誘導する構想も検討しています。


家賃補助は2022年に総額300億元規模へ拡大され、対象50万戸を目標とする大型制度になりました。現行の「租金補貼2.0」では申請年齢が18歳まで引き下げられ、学生や社会人1年目でも申請できます。


それでも市場の透明化は道半ばです。仲介経由の賃貸契約に義務付けられている実価登録は、2021年時点で登録件数が賃貸世帯全体の約5%にとどまり、補助や包租代管まで合算した「最も広い捕捉」でも2割強(前述の立法院資料)。民間団体からは、実態としての黒市は7〜9割に達するという見方も示されています。


ビジネスの視点をひとつ添えると、包租代管業者や社会住宅の運営主体は「家具・家電をまとめて調達する法人顧客」でもあります。1戸ずつ消費者に売るのとは別の、B2Bの入口として押さえておきたい市場です。この法人需要の実際は 台湾の家具の選び方と内装事情 の「まとめ買いする法人顧客」で詳しく解説しています。


住宅価格とローン——中位数世帯は収入の4割超を返済に充てる

台湾の住宅価格の高さは、大きな社会問題になっています。内政部の房價負擔能力統計によると、2025年第3四半期の全国の房價所得比(住宅価格の中位数÷世帯年可処分所得の中位数)は9.71倍。房貸負擔率(中位数世帯が中位数住宅を買った場合に、月々のローン返済が可処分所得に占める比率)は42.42%でした。


六都の房貸負擔率(2025年第3四半期)は次のとおりです。

  • 台北市65.47%/新北市56.77%/台中市50.05%

  • 高雄市41.01%/台南市39.65%/桃園市37.13%

  • 「合理的に負担可能」の目安とされる30%以下に収まる都市は、六都にひとつもない


台湾六都の住宅ローン負担率(房貸負擔率)比較グラフ|台湾の住宅事情2026

全国の住宅価格の中位数は約975万元(約4,900万円・2025年第3四半期)で、台北市の房價所得比は15.41倍(2025年第2四半期)と、突出した水準にあります。「家を買えば収入の半分近くがローンに消える」——これが台湾の平均的な購入者の現実です。


この負担を和らげる政策ローンが「新青年安心成家貸款(新青安)」です。名義に住宅を持たない人を対象に、上限1,000万元・物件価格の最大8割・最長40年・元本据置(寛限期)最長5年という条件を、政府と公営銀行の利息補助付きで利用できます。申請は一生に一度。2026年8月からは「新青安3.0」がスタートし、結婚2年以内の世帯は上限1,200万元、未成年の子がいる世帯は1,500万元まで拡大される一方、申請者を50歳未満・本人の年所得200万元以下に限定し、購入物件の総額にも上限が設けられます(台北市3,500万元、新北市・新竹県市2,500万元、その他の県市2,000万元。永慶房産集団によると、七都では直近取引の7割超がこの範囲に収まります)。なお青安ローンは1.0〜2.0の累計で約51万6千戸・2兆7,828億元が実行されてきた巨大制度で、台湾の住宅取得を支える事実上のインフラです。


政策ローン「新青安」の条件と2026年8月からの新青安3.0|台湾の住宅事情2026

最長40年・据置5年という設計が象徴するように、台湾の住宅購入は「毎月の返済を薄く長く」が基本線です。頭金と諸費用に貯蓄を投じた直後の世帯では、内装(装潢)や家具の予算が圧縮・後ろ倒しになりやすい——この消費構造は、住関連ビジネスの価格設計や提案タイミングに直結します。


なお2024年以降、中央銀行による不動産向け融資の選択的信用管制が強化され、2025〜26年の住宅市場は取引量の減少と価格の調整局面にあります。実際、全国の住宅価格指数は2024年第3四半期まで25四半期連続で上昇し、房貸負擔率も同期に46.80%と統計史上最も重い水準に達しました。しかしそこをピークに負担率は3四半期連続で低下し、2025年第3四半期には42.42%まで下がりました。住宅価格の中位数も1,000万元→980万元→975万元と四半期ごとに下落しています。指標は改善方向に動き始めており、データは最新四半期のものを確認することをおすすめします。


データの読み方——「負担率42%」は何を意味しているのか

ここで、指標の定義を正確に押さえておきましょう。内政部の房貸負擔率は、中位数価格の住宅を「頭金3割・借入7割・返済期間20年・元利均等返済」で購入した場合の毎月返済額が、中位数世帯の月間可処分所得に占める比率です。房價所得比は、中位数住宅価格を中位数世帯の年間可処分所得で割った値を指します。


評価の目安も公式に定められています。30%以下が「合理的に負担可能」、30〜40%が「負担能力やや低い」、40〜50%が「負担能力が低い」、50%超が「負担能力が極めて低い」。2025年第3四半期にこの「合理」ゾーンへ収まったのは、全国でも嘉義県と基隆市だけでした。


台湾の住宅ローン負担能力4段階の評価基準|台湾の住宅事情2026

注意したいのは、この統計が20年ローンを前提にしている点です。実際の台湾では、新青安のように40年・元本据置5年という借り方が広がっており、統計上の負担率ほど毎月の支払いが重いとは限りません。「毎月は払える。ただし完済までの期間と総支払額が長く・大きくなっている」——これが実態に近い読み方です。


分母となる世帯可処分所得の中位数は約100.4万元(2025年・約500万円)。所得は増えてはいるものの(直近四半期で前年比+1.3%)、住宅価格の伸びに長く追いつけなかったことが、負担率を歴史的な高水準へと押し上げてきました。


六都で違う「買いにくさ」——地域差で読む台湾の住宅市場

全国平均の裏には大きな地域差があります。内政部の統計(2025年第2四半期)によると、房價所得比は台北市15.41倍・新北市13.03倍に対し、台中市11.90倍、高雄市9.61倍、台南市9.38倍、桃園市8.65倍。台北で家を買う難しさは、南部の1.5倍以上です。所得の側にも地域差があります。2024年の家庭收支調査では、世帯可処分所得(平均)は新竹市の150.3万元が全国トップで、台北市148.5万元、新竹県148.1万元が続きます。半導体産業を抱える新竹は、房價所得比の数字は8〜10倍程度でも、分母の所得が高いぶん実際の購買力は倍率の見た目以上——と評される市場です。


台湾の都市別 房價所得比マップ|台湾の住宅事情2026

買いにくさは、買われる住宅の「中身」も変えています。永慶房産集団の統計では、台北市の住宅取引に占める築30年超の割合は2015年の31.9%から2024年には54.7%へ拡大。逆に築10年以内の取引は41%から17.5%(2025年)まで縮小しました。素地が尽き、新築価格が高騰した台北では、「古い家を買って内装で再生する」ことが主流の買い方になっているのです。


一方、需要が集中する小宅は各地で値上がりしています。同じく永慶の統計では、小宅の平均総価は2021年比で新竹県市が329万元から522万元へ58.7%上昇したのを筆頭に、桃園+34.5%、新北+27.4%、台北+17.9%。「小さい家なら安い」という前提も、崩れ始めています。


そして世帯の縮小は「1人1宅」を当たり前にしつつあります。内政部統計では2025年第4四半期、戸籍が置かれた住宅約806万宅のうち、1人だけが住む住宅は260万8千宅と全体の約32%。いまや3戸に1戸が「ひとり暮らしの家」です。


まとめると、台北は「老屋を買ってリノベする」市場、新興エリアは「小宅・省スペース」市場——と、都市ごとに主戦場が異なります。同じ台湾でも、どの都市を狙うかで売るべき商品はまったく変わります。なお台北の老屋リノベーション需要が家具消費にどう波及するかは 姉妹記事の老屋リノベーション で扱っています。


家の買い方は4つ——預售屋・新成屋・中古屋・毛胚屋

台湾で住宅を買うとき、物件の状態は大きく4つに分かれます。どの形で買うかによって、内装や家具を「いつ・誰と・どう決めるか」が変わるため、住関連ビジネスでは必修の知識です。


台湾の家の買い方4形態(預售屋・新成屋・中古屋・毛胚屋)比較表|台湾の住宅事情2026

完成前販売(預售屋/ユーショウウー)

図面や模型を見て、完成前に契約する方式です。工事の進捗に合わせて頭金を分割で支払えるため初期負担が軽く、台湾の新築販売の主流になっています。


最大の特徴は、買い主による仕様変更制度「客變(クービエン)」です。建設中の一定期間、間仕切りの位置、水道・電気配線、キッチン設備、床材などの建材を、買い主の希望に合わせて変更できます(提供の有無や範囲は建商=デベロッパーにより異なります)。標準装備(標配/ビャオペイ)のキッチンや浴室設備を「選退」して差額の返金を受け、入居時に自分好みの設備へ入れ替えることも一般的です。ただし建物の構造・外観、キッチン・トイレ・浴室の位置など、変更できない領域も明確に決まっています。


完成済み新築(新成屋)

完成・使用許可取得済みの新築です。標配のキッチン・浴室・建具が付いた状態で引き渡されるため、収納やスタイリング中心の比較的軽い装潢と、ソファ・ベッドなどの家具・家電を揃えればすぐに住み始められます。装潢費用の目安は坪あたり6〜8万元です。


中古住宅(中古屋・老屋)

築年数が上がるほど、給排水管・電気配線・防水といった基礎工事が必要になります。装潢費用は中古屋で坪8〜12万元以上、築25〜30年クラスの老屋を全面リノベーションする場合は坪16〜22万元が目安とされ、室内30坪の老屋のフルリノベで480万〜600万元という試算もあります。


スケルトン渡し(毛胚屋/マオピーウー)

間仕切りも内装も一切ない、コンクリート躯体のままの引き渡しです。設計の自由度は最も高い一方、内装費用も最大になるため、大坪数の高級物件を中心に採用されています。


買い手の財布——所得・貯蓄・支出構造

最後に、買い手側の家計を見ておきます。主計總處の家庭收支調査(2024年)によると、台湾の世帯可処分所得はこの10年で17%以上、1人あたりでは30%以上伸び、貯蓄率も20%台を維持しています。家計に余力がないわけではありません。


ただし格差は広がっています。世帯を所得順に5等分すると、上位20%の平均可処分所得235.7万元に対し、下位20%は38.4万元と6.14倍の開き。住宅・内装・家具のような大型消費は、どの所得層を狙うかで価格設計がまったく変わります。


支出の構造も特徴的です。台北市の家計では、消費支出の28.5%を住居サービス・水道光熱が占めて最大の費目になっています(台北市主計処・2024年)。「住まい」は台湾の家計にとって最大の支出先であり、だからこそ価格へのシビアさと、装潢や家具への強い関心が同居しているのです。


台湾の世帯所得格差と台北市の家計支出内訳|台湾の住宅事情2026

まとめ——「広い持ち家 × 小さくなる世帯 × 重いローン」

台湾の住宅事情をビジネス目線で要約すると、次の3点に集約されます。

  • ストックは広い持ち家(持ち家率84.4%・平均39.8坪):リフォーム・買い替え・収納強化の裾野が大きい

  • フローは小宅化(世帯2.89人・小宅取引比率の上昇):コンパクト・多機能・省スペース商品の新しい需要

  • ローン負担は重い(返済負担率42%):装潢・家具の予算は圧縮されやすく、価格設計と「あとから足せる価値」の提案が効く


この住まいの構造の上に、台湾特有の「装潢文化」——内装は工事で作り込み、収納は造り付け、家具は最後——という購買行動が乗っています。続きは姉妹記事の 台湾の家具の選び方と内装事情 で詳しく解説します。


また、台湾の消費者理解を深めたい方は 台湾市場の消費トレンドと日本ブランドの受容性2026 を、「いつ売るか」の設計は 台湾の年間商戦カレンダーと贈答文化 を、台湾市場攻略の全体像は 台湾市場進出 完全ガイドマップ2026 をあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

台湾の持ち家率はどのくらいですか?

行政院主計總處の家庭收支調査によると、2024年末時点で84.4%です。同居する世帯員の誰かが所有している世帯の比率で、別居の直系親族の所有まで含めると90%になります。


台湾の家の平均的な広さはどのくらいですか?

同調査(2024年)で平均居住面積は1世帯39.8坪(約132㎡)、1人あたり14.3坪です。ただし不動産広告の坪数は共用部分込みの「権状坪数」で、新築の公設比は30〜35%が相場のため、室内はその7割前後と考える必要があります。


台湾の標準的な間取りは何ですか?

「3房2廳2衛」(個室3・リビングダイニング2・バストイレ2)が標準的なファミリータイプです。世帯の小型化により、都市部では2房以下の小宅の供給も増えています。


台湾の住宅ローンの負担はどのくらい重いですか?

内政部統計で2025年第3四半期の全国房貸負擔率は42.42%、台北市は65.47%です。若年層向けには上限1,000万元・最長40年・元本据置最長5年の政策ローン「新青安」が用意されています。


預售屋の「客變」とは何ですか?

完成前販売(預售屋)の建設中に、間取り・配線・設備・建材を買い主仕様に変更できる制度です。標準設備を外して返金を受ける「選退」も可能で、台湾では内装・家具の意思決定が入居のかなり前に始まる理由になっています。

六都で最も家を買いやすいのはどこですか?

房貸負擔率(2025年第3四半期)が最も低いのは桃園市の37.13%で、次いで台南市の39.65%です。ただし「合理的に負担可能」とされる30%以下に収まるのは全国でも嘉義県と基隆市のみで、六都はいずれも基準を上回っています。



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