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台湾に電気製品・無線機器を輸出する際の認証ガイド|BSMI・NCCの違いと申請実務

  • 堤浩記
  • 5 日前
  • 読了時間: 12分

「Wi-FiやBluetoothが付いた製品を台湾で売るには、どんな認証が必要なの?」


「NCCとBSMIって何が違うの?両方取らないといけないの?」


「認証の手続きは自社でできる?誰に頼めばいい?」


台湾に電気製品や無線機器を輸出しようとすると、必ずぶつかるのが「BSMI」と「NCC」という2つの認証制度です。名前は聞いたことがあっても、どちらが自社製品に必要なのか、何から手を付ければいいのかが分かりにくく、ここでつまずいて台湾展開が止まってしまう企業は少なくありません。


先に本記事の結論を言うと、この領域は自社単独で対応するものではなく、専門の検査機関・認証機関に依頼して進めるのが大前提です。制度上、認可された試験所での試験が必須であり、技術規範の解釈や台湾側とのやり取りにも高い専門性が求められるためです。その上で発注側が押さえるべきは「制度の全体像」と「自社製品にどの認証が必要か」「誰に何を依頼するか」の3点です。本記事ではこの3点を、台湾への販路開拓を支援してきた立場から整理します。制度の細部は改定が続く領域のため、情報には出典と確認日を明記しています。


※本記事は2026年7月時点で確認した情報に基づく一般的な解説であり、個別案件への助言ではありません。制度・対象品目は改定されるため、実際の調査・判断・申請はご自身の責任で行い、必ず各機関の最新の一次情報を確認のうえ、検査機関・認証機関にご相談ください。


台湾の電気製品・無線機器に関わる2つの認証制度


まず全体像です。台湾で電気製品・無線機器を販売する際に関わる強制認証は、大きく2つの系統に分かれます。


BSMI(経済部標準検験局):製品の「電気的な安全性」と「EMC(電磁両立性)」を管轄。電気・電子機器、IT機器、家電などが対象。


NCC(国家通訊伝播委員会):製品の「電波・通信」機能を管轄。Wi-Fi・Bluetoothなどの無線機能を持つ機器や、公衆通信網に接続する通信端末が対象。


重要なのは、この2つが排他的ではなく重複することです。たとえばWi-Fi機能付きのスピーカーであれば、無線部分はNCC、電気安全・EMCの部分はBSMIと、1つの製品で両方の認証が必要になるケースが一般的です(出典:インターテック「台湾市場への製品輸出|BSMI認証の規制と適合性評価ガイド」、確認日2026年7月8日)。


NCC認証:無線・通信機器の審験制度


対象となる機器


NCCの審験対象は、大きく「低功率射頻器材(低出力無線機器)」と「電信終端設備(通信端末設備)」に分かれます。低功率射頻器材には、9kHz〜300GHzの周波数を使う無線LAN(Wi-Fi)機器、Bluetooth機器、RFID、ZigBee、ワイヤレスキーボード・マウス・ヘッドセット、ラジコン、無線式の防犯機器などが広く含まれます。通信端末設備には、公衆通信網に接続する電話機・FAX・モデム・PBXなどが該当します。


つまり「うちの製品は通信機器ではない」と思っていても、Wi-FiモジュールやBluetoothチップを載せた時点でNCCの世界に入る、というのが実務上の要注意ポイントです。


3つの審験方式:型式認証・符合性声明・簡易符合性声明


販売用の電信管制射頻器材の審験には、製品の区分に応じて「型式認証(型式認證)」「符合性声明(適合宣言)」「簡易符合性声明」の方式があります(出典:NCC「電信管制射頻器材審驗辦法」ncc.gov.tw、確認日2026年7月8日)。


型式認証:認可試験機関で型式試験を行い、検証機関に申請して認証を取得する基本方式。申請者は製造商・輸入商・販売商。


符合性声明/簡易符合性声明:低功率射頻器材技術規範(LP0002)の該当章節に適合する機器などについて、試験エビデンスに基づき適合を宣言・登録する簡易化された方式。対象になるかは機器の周波数・変調方式などの区分で決まります。


どの方式に該当するかの判定自体が専門的な作業であり、ここも検査機関に相談すべきポイントです。なお、審験合格機器のサンプル・特殊試験ソフト・治具には生産終了または輸入停止後5年間の保管義務があり、型番・ブランドが異なる機器はそれぞれ審験が必要です(アンテナ・外観・電源方式などのみが異なる「シリーズ製品」には追加申請の枠組みがあります)。


「NCC認証済みモジュールを使っていれば手続き不要」ではない


実務で誤解が多いのがここです。NCC認証済みのWi-Fi/Bluetoothモジュールを搭載していても、完成品として自動的にOKになるわけではありません。完成品側でアンテナや出力を変更していないか、別の無線機能(GNSS等)を追加していないか——といった構成によって、簡易な届出で済むのか、完成品としての追加認証が必要なのかが分かれます。


モジュールメーカーの「NCC取得済み」という表記だけで判断せず、完成品の構成を検査機関に伝えて要否を確定させてください。ここの判定を早く終えられるかが、発売スケジュール全体を左右します。


合格後のラベル表示


審験合格後は、NCCの審験合格標籤(認証マークと識別番号)を製品本体に表示する義務があります。本体が小さく貼付が困難な場合の除外規定や、ディスプレイを持つ機器でのe-label(電子表示)も認められています(出典:JQA「台湾電波法(NCC)の無線装置認証規定改訂のご案内」、確認日2026年7月8日)。ラベル・刻印の設計段階からNCC表示のスペースを織り込んでおく必要があります。


BSMI認証:電気安全・EMCの検験制度


対象となる製品


BSMI(Bureau of Standards, Metrology and Inspection/経済部標準検験局)は、台湾で製造・輸入される製品のうち、政府が指定する「応施検験品目」に該当するものに検験(認証)を義務付けています。電気・電子機器、IT機器、家電製品のほか、リチウム電池・充電器・電源アダプタといった部材類も対象に含まれます。自社製品が対象品目かどうかは、CCCコード(品目分類)を起点にBSMIの公式情報で確認するのが出発点です。


注意したいのは、対象かどうかはHS/CCCの品目分類と対象公告で確定するものであり、「電池を内蔵しているから対象」「小型だから対象外」といった感覚的な判断はできない点です。実務ではまず製品のHS分類を確定させることがすべての起点になり、HSが決まればBSMIの要否、後述のRoHS表示の要否、NCC側の段取りまでが一気に固まります。分類に迷う場合は税関の事前教示制度の活用も選択肢です。


主な適合性評価の方式


BSMIの適合性評価には複数のスキームがあり、代表的なものは次の3つです(出典:東京都立産業技術研究センターMTEP「国別規格 台湾編」2020年3月、確認日2026年7月8日)。


RPC(登録認証/商品検験登録):型式試験と工場登録に基づく登録方式。認証書には有効期限があり、期限前の更新手続きが必要。


型式認可+逐批検験(TABI):事前に型式認可を取得し、出荷ロットごとに届出・検査を受ける方式。少量・限定生産品などが対象。


符合性声明(DoC):ハードディスク・キーボードなど相対的にリスクの低いIT製品等に適用される宣言方式。ただしこの場合もBSMI指定試験所での製品試験は必要。


どの方式が適用されるか、有効期限・更新条件がどうなっているかは品目ごとに定められており、制度改定の影響も受けます。この判定と最新確認も、後述する検査機関に依頼する範囲に含めるのが実務的です。


検験標識の表示


適合した製品には、BSMIの商品検験標識(検験マークと識別番号)を表示して初めて台湾市場での販売が可能になります。NCCと同様、ラベル設計の初期段階から織り込むべき要素です。


台湾RoHS(有害物質表示)との連動


見落とされがちですが、台湾のRoHS(有害物質規制)はBSMIの対象品目に連動しています。対象品目に該当する場合、指定6物質の含有状況について自己宣言と製品への表示が求められ、根拠となる部材の含有情報・証明書類の保管も必要になります。EU RoHS対応で部材データを整備済みの企業は、その資産を流用できるケースが多いため、まず手元のデータの有無を確認するとよいでしょう。


「両方必要」になる製品の考え方


判断の目安はシンプルです。電気で動く製品はまずBSMIの対象品目かを確認し、無線機能があればNCCも確認する。この2軸で整理すると、自社製品に必要な認証の組み合わせが見えてきます。


・無線機能なしの家電・IT機器 → BSMIのみ該当する可能性


・Wi-Fi/Bluetooth搭載機器(スマート家電・IoT機器・ワイヤレスオーディオ等) → BSMI+NCCの両方が必要になるケースが一般的


・電池非搭載・非電気製品 → 原則どちらも対象外(ただし玩具など別の検験制度に注意)


なお食品を輸出する場合はまったく別の規制体系(食品衛生・検疫・ラベル表示)になります。詳しくは台湾への食品輸出完全ガイドをご覧ください。


実務の進め方:検査機関への依頼が大前提


なぜ自社単独では対応できないのか


BSMIもNCCも、認可・指定された試験所での試験が制度上必須です。つまり「自社で書類を揃えて役所に申請する」タイプの手続きではなく、試験設備と認定を持つ機関を通さなければ物理的に進みません。加えて、技術規範(LP0002等)の解釈、方式の判定、台湾側とのやり取り、規範改定への追従はいずれも高い専門性を要します。認証の取得は専門の検査機関・認証機関に依頼して進めるのが唯一現実的なルートであり、発注側の仕事は「正しい相手に、正しい情報を渡して、販売計画と整合するスケジュールを組むこと」です。


日本国内で完結できるルート:日台MRAと国内認証機関


ここで知っておきたいのが「電気製品分野の日台民間相互承認取決め(日台MRA、2013年7月締結)」です。これは、日本国内の承認された適合性評価機関で試験・検査を受けて適合証明書を取得すれば、それを台湾側に提出して認証を取得できる仕組みです(出典:JQA「日台MRA」、確認日2026年7月8日)。


日本品質保証機構(JQA)は2014年9月にBSMIから適合性評価機関として承認されており、日台MRAに基づく試験・工場検査を日本国内で実施して適合性証明書を発行できます。試験サンプルを台湾へ送る必要がなく、申込みから証明書発行まで日本語で完結し、工場検査も日本語で対応——という点は、日本のメーカーにとって時間・コミュニケーション両面で大きなメリットです。NCC認証についても、JQAをはじめとする国内機関が申請代行サービスを提供しています(出典:JQA「台湾BSMI認証の適合性評価」、確認日2026年7月8日)。


ただし1点補足すると、日台MRAの対象となる製品分野は限定されています(情報機器・AV機器・家電等が中心)。自社製品がMRAの対象分野に含まれるかどうかで、日本国内完結ルートが使えるかが変わるため、これも検査機関への最初の相談時に確認すべき項目です。


申請名義と現地代理人の設計


台湾に拠点を持たない企業の場合、申請にあたって現地代理人(または台湾側の輸入者)の確保が必要になります。認証機関が有料の現地代理人サービスを提供している場合もあるため、依頼時に併せて相談するとよいでしょう。


そのうえで重要なのが「認証の名義を誰が持つか」の設計です。名義を台湾側の代理店に安易に渡すと、将来その代理店を変更する際に認証を取り直す事態になりかねません。認証名義は販路の主導権に直結するため、代理店契約の交渉と認証戦略はセットで設計してください。


日本側にも手続きがある:外為法の該非判定


台湾側の認証と並行して忘れてはならないのが、日本側の輸出管理です。外為法に基づき、輸出する製品がリスト規制に該当するかの「該非判定」を輸出者自身が行い、非該当判定書を整えておく必要があります。無線機器の場合、Bluetooth等の通信に含まれる暗号機能が判定の論点になることがあります。判定の進め方に迷う場合は、CISTEC(安全保障貿易情報センター)が相談窓口になります。


なお、輸出入業者登録のある台湾の代理店が「輸入者」となる体制を組めれば、台湾に現地法人を設立する必要は原則ありません。この体制設計も含めて、認証・輸出管理・代理店契約は同じテーブルで段取りするのが効率的です。


期間と費用の考え方


期間・費用は、製品の複雑さ、必要な試験項目、適用される方式によって大きく変動するため、一般論の数字を鵜呑みにせず、必ず検査機関に個別見積りを取ってください。押さえるべきは「台湾側の販売開始時期から逆算して早めに動く」ことです。試験から認証取得までは月単位の時間を見込み、展示会出展や代理店との発売時期の合意より前に着手するのが原則です。


よくあるつまずきポイント


型番ごとの認証を見落とす:認証は原則ブランド・型番単位。カラーバリエーションやマイナーチェンジがシリーズ製品として扱えるか、新規審験になるかの見極めが必要です。


ラベル表示の漏れ:認証取得後の標識表示は義務。表示なしでの販売は違反になります。


ネット販売時の表示漏れ:NCCの規定では、インターネット販売を行う際に商品ページ内へNCCマークと認証番号を表示することが求められます(出典:JQA「台湾電波法(NCC)の無線装置認証規定改訂のご案内」、確認日2026年7月8日)。越境ECやモール出品の際に見落としやすいポイントです。


技術規範の改定に気づかない:LP0002をはじめとする技術規範は改定されます。継続販売する製品ほど規範改定のウォッチが必要で、国内認証機関経由なら改定情報を日本語で受け取れる利点もあります。


認証名義の設計ミス:前述のとおり、名義を持つ者が販路の主導権を持ちます。代理店契約と認証戦略はセットで設計してください。


商標を出願せずに進めてしまう:台湾は先願主義です。認証を進めている間に第三者にブランド名を商標出願されると、せっかく認証を取っても自社ブランドで売れない事態になりかねません。台湾の商標庁(TIPO)で空き状況を確認し、認証と並行して早期出願するのが定石です。


「環境試験」の正体を取り違える:台湾の強制認証で求められる試験はEMC(電磁両立性)と電気安全であり、温度・湿度・振動・落下といった耐久・信頼性試験は台湾の強制ルールではありません(自社の品質基準で実施すればよい領域です)。ここを混同すると不要な試験費用を積むことになります。


健康・生体データ系の製品で医療的な表現を使ってしまう:心拍などの生体データを扱う機器は、訴求表現によっては医療機器規制の領域に踏み込みます。スポーツ・フィットネス用途として展開するなら、診断・治療を想起させる表現を避けるところまで含めて設計が必要です。


まとめ:認証は検査機関へ、販路設計は戦略として


台湾への電気製品・無線機器の輸出では、BSMI(安全・EMC)とNCC(電波・通信)という2つの認証制度を見分け、必要な組み合わせを早期に特定したうえで、認証の実務そのものはJQAをはじめとする専門の検査機関・認証機関に依頼する——これが正しい進め方です。


一方で、認証名義を誰が持つか、どの代理店と組むか、いつ発売するかは、検査機関ではなく自社が決める「販路設計」の問題です。Link Globalは、台湾・アジアへの販路開拓支援のなかで、この市場参入設計の部分——代理店開拓・契約交渉のサポート・展示会活用・販売計画——を支援しています。台湾・アジア市場を中心に100社以上・10カ国以上の支援実績があります。製品の台湾展開をご検討の際は、無料相談からお気軽にご相談ください。


参考文献・出典(確認日:2026年7月8日)


・NCC(国家通訊伝播委員会)「電信管制射頻器材審驗辦法」 https://www.ncc.gov.tw/


・BSMI(経済部標準検験局)公式サイト https://www.bsmi.gov.tw/


・日本品質保証機構(JQA)「日台MRA|台湾|国際認証サービス」 https://www.jqa.jp/service_list/safety/service/global/taiwan/mra.html


・日本品質保証機構(JQA)「台湾BSMI認証の適合性評価」 https://www.jqa.jp/service_list/safety/service/voluntary/bsmi/


・日本品質保証機構(JQA)「台湾電波法(NCC)の無線装置認証規定改訂のご案内」 https://www.jqa.jp/service_list/safety/topics/topics_safety_190.html


・東京都立産業技術研究センター MTEP「国別規格シリーズ 台湾編」(2020年3月) https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/15258.pdf


※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成した一般的な情報提供であり、個別案件への助言ではありません。制度・技術規範・対象品目は今後改定される可能性があります。実際の調査・判断・申請はあくまでもご自身の責任で行っていただき、最新の情報は必ず各機関の公式一次情報でご確認のうえ、検査機関・認証機関にご相談ください。


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