海外商談会・バイヤー招へいの委託仕様書の書き方|13自治体の公募資料を比較
海外バイヤー招へい商談会や海外現地商談会を民間に委託するとき、成果を大きく左右するのは仕様書です。2021〜2026年度の13件の公募資料を比べると、参加事業者の数や商談の件数はほぼすべての仕様書に書かれている一方で、成約の目標、商談後のフォロー期間、バイヤーの条件は書かれていないことが多いことが分かりました。
この3点が空白のままだと、受託者は「商談件数を満たす」ことに最適化しやすく、取引につながる商談会になるかどうかは受託者の姿勢に左右されます。本記事では、自治体・商工団体・金融機関の担当者に向けて、仕様書の項目ごとに、実際の仕様書の書き方と文例を整理します。
【本記事のデータについて】比較したのは、各自治体が公開している仕様書・企画指示書・審査基準・募集要領などの公募資料13件です(2021〜2026年度。うち9件が海外バイヤー招へいまたは海外現地商談会の運営業務、残りは展示会出展支援やオンライン商談会の関連業務。このほか千葉県の輸出プロモーション事業も参考にしました)。委託の上限額は仕様書本文ではなく募集要領や公告に書かれていることが多く、確認できなかったものは「未確認」としています。引用は各資料の原文によります。

図1 海外商談会・バイヤー招へいの委託仕様書の書き方。13自治体の公募資料を比較した。
比較した13件の公募資料
主な案件の概要は次のとおりです。予算はいずれも税込の上限額です。
【広島市・令和8年度】圏域特産品の海外向け商談会企画運営等業務:上限300万円/バイヤー3社以上(アジアまたは欧州に販路を持つバイヤー1社以上を含む)/参加30者程度/総商談件数45件以上を目標
【函館市・令和8年度】海外バイヤー招へい商談会開催業務:上限は未確認/対象国は受託者が1か国以上を選定/参加10社以上/数値目標なし
【函館市・令和7年度】同業務:海外バイヤーと国内商社で4名以上(うち海外2名以上)/参加10社程度
【神戸市・令和8年度】海外現地商談会(台湾)運営・展示会出展支援業務:上限570万円/商談会6社程度、1社あたり現地企業5社以上と商談
【茨城県・令和6年度】県産品販路開拓支援(台湾):上限500万円/招へいバイヤー候補を5者以上選定/商談件数・成約件数・成約金額の目標を受託者が設定し、達成率に応じた成功報酬あり
【新潟県・令和8年度】東アジア市場販路開拓支援業務:韓国・台湾からバイヤー8社程度を招へい/台北の現地展示商談会に6社程度/成約見込みを定期報告
【大分県・令和8年度】海外バイヤー招へい商談会開催委託業務:バイヤー6社以上(台湾・東南アジアから各1社以上)/参加30社以上
【長野県・令和6年度】海外バイヤー招へい事業(ベトナム):航空券・宿泊費・国内交通費は委託費から支出/数値目標なし
【三重県・令和6年度】海外バイヤー招聘型現地指導事業:上限4,390,340円/東南アジア中心に3か国以上/参加20事業者程度
【北海道・札幌市(協議会)・令和8年度】道市連携海外展開推進事業(ASEAN市場):上限7,004千円/1か国あたりバイヤー1〜2社程度/商談のべ60件以上(商談会後の商談を含む)
このほか、三重県の令和3年度オンライン商談会、岐阜県の令和3年度オンライン商談会(質問回答書)、札幌市の令和8年度台湾展示会出展事業(企画指示書)を比較に含めています。
出典:広島市 仕様書・説明書/函館市 令和8年度仕様書/函館市 令和7年度仕様書/神戸市 実施要領・仕様書/茨城県 仕様書/新潟県 仕様書/大分県 仕様書/長野県 仕様書/三重県 令和6年度仕様書・参加仕様書/札幌市 ASEAN企画指示書
よく書かれている項目と、書かれていないことが多い項目
13件を並べると、書かれている項目には偏りがあります。

図2 13件の公募資料で、書かれている項目と書かれていない項目。出典:2021〜2026年度の自治体の公募資料13件をもとにLink Global作成
ほぼすべてに書かれている:委託期間、報告書の提出、参加事業者の数、アンケートの実施
多くに書かれている:事前マッチング、通訳の手配、成果物の著作権の帰属
書かれていないことが多い:成約の数値目標、商談後のフォロー期間の具体的な時期、バイヤーの規模・取引実績・日本産品の取扱い状況といった条件
書き方があいまいなことがある:バイヤーの渡航費・宿泊費を誰が負担するか(「手配」とだけ書かれている例がある)
成約の件数・金額の目標を仕様書で直接指定していた案件は、今回の13件にはありませんでした。茨城県は、目標を受託者に設定させる方式をとっていました。
項目別の書き方
1. 対象国と、その国を選ぶ根拠
対象国を自治体側で決める書き方が一般的ですが、函館市の令和8年度は、受託者が1か国以上を選び、その国を選んだ根拠そのものを審査する方式でした(300点満点中30点)。地域の産品に合う市場がまだ絞れていない段階では、この方式のほうが受託者の知見を引き出せます。
文例:「対象国・地域は、本市産品の特性と市場性を踏まえて受託者が1か国以上を提案すること。選定の根拠(市場規模、関税・規制、競合状況、想定する販売チャネル等)を企画提案書に記載すること。」
出典:函館市 令和8年度仕様書・選定結果
2. バイヤーの人数と条件
バイヤーの人数は多くの仕様書に書かれていますが、どんなバイヤーかの条件は「海外に商流を持つ飲食・宿泊事業者、流通、商社等のバイヤー」「海外に精通している流通事業者、海外の飲食・小売事業者、商社等」のように業態を並べるだけのものが目立ちました。函館市の令和8年度、長野県、神戸市、札幌市の台湾展示会事業のように、人数自体が書かれていない例もあります。
条件を具体的に書いていたのが広島市です。優先して招へいするバイヤーとして、次の3つを挙げていました。
圏域産の食品の取り扱いに意欲的で、今後の取引について明確に希望している者
小規模な事業者でも成約の可能性がある者
海外の消費者への直接販路(小売店やECサイト等)を持つ者
函館市の令和7年度は、対象国に販売ルートを持つことに加え、「日本国内への納品および日本国内の口座への入金が可能」であることを条件にしていました。輸出の経験がない事業者が参加する場合、この条件があるかないかで、商談後に取引を始められるかが大きく変わります。茨城県は「大型取引又は継続的取引が期待できるバイヤー等」と書いていました。
文例:「招へいするバイヤーは○社以上とし、次の条件を満たす者を優先すること。(1)対象品目の取扱い実績があり、継続的な取引を希望している者、(2)小規模な事業者とも取引が可能な者、(3)日本国内での納品・円建て決済に対応できる者、またはそれに対応する国内の取引先を持つ者。選定にあたっては、候補者の業態・取扱品目・販売先を一覧にして事前に委託者の承認を得ること。」
3. 参加事業者の数と構成
参加事業者の数はほぼすべての仕様書に書かれており、6社程度から30社以上まで幅があります。構成まで指定していたのは広島市で、「30者程度…そのうち過去3年間に本商談会に参加していない事業者を10者以上」としていました。毎年同じ事業者ばかりが参加する状態を避け、新しい事業者の輸出を後押しする書き方です。
バイヤーの数は、参加事業者の数と見合っている必要があります。事業者が多いのにバイヤーが少ないと、1社あたりの商談相手が限られ、商材に合わないバイヤーとの商談で時間が埋まることになります。岐阜県のオンライン商談会では、「海外バイヤー1社ごとに県内事業者5社程度との商談を想定」と、比率で示していました。
4. 渡航費・宿泊費・通訳費の負担者
招へい型では、バイヤーの航空券・宿泊費・国内交通費が予算の大きな部分を占めます。長野県は「航空券、宿泊費、国内交通費等は全て委託費の中から支出」と明記していました。広島市も、バイヤー謝金(交通費・宿泊費等を含む)と会場費を受託者の負担としています。一方で、函館市や大分県のように「手配」「旅費の支払い」とだけ書き、宿泊費の扱いや負担者がはっきりしない例もありました。
現地開催型では、参加事業者の渡航費・宿泊費・通訳費をどう扱うかが論点になります。茨城県の台湾事業では、事業者の渡航費・宿泊費と、希望した場合の通訳費は自己負担と明記していました。神戸市は通訳を商談会では1社1名、展示会では2名と人数まで指定しています。通訳の質について、三重県の令和6年度は「翻訳システムは不可」と書いていました。
文例:「招へいするバイヤーの往復航空券、宿泊費(○泊)、国内交通費、謝金は委託費に含める。延泊等、委託者が認めた範囲を超える費用は含めない。通訳は商談1件ごとにビジネスレベルの通訳者を1名配置し、機械翻訳のみによる対応は認めない。」
5. 成果指標(KPI)は商談件数だけにしない
数値の成果指標を置いている仕様書の多くは、商談件数でした(広島市の総商談件数45件以上、三重県令和3年度の最低50商談、札幌市ASEAN事業ののべ60件以上)。長野県、大分県、函館市のように、数値目標を置いていない仕様書も少なくありません。
商談件数だけを指標にすると、受託者は件数を確保しやすいバイヤー集めに寄りやすくなります。指標の置き方には、次のような工夫がありました。

図3 成果指標(KPI)の置き方の比較。出典:各自治体の仕様書をもとにLink Global作成
茨城県:受託者が「商談件数、商談成約件数及び商談成約金額」の目標を設定し、毎月報告する。成約目標額の達成率が75%以上なら、達成率に応じて基準委託料の10%を上限に上乗せする
札幌市ASEAN事業:商談件数に「商談会後の商談」を含めて数える
新潟県:商談件数に加え、成約見込み件数・成約見込み額を定期報告させる
千葉県の台湾向け輸出プロモーション:取扱数量(梨1,000kg以上、さつまいも4,000kg以上)を指標にする
茨城県の成功報酬は、受託者に成約まで責任を持たせる仕組みとして参考になります。ただし、仕様書には「成約」の定義と確認方法が書かれていませんでした。成約を指標にするなら、何をもって成約とするか(受注書の発行、初回出荷、入金など)と、それを何で確認するかを一緒に定める必要があります。
文例:「受託者は、商談件数、成約件数(初回の受注書発行をもって成約とする)、成約見込み件数の目標を企画提案書に記載すること。成約件数は、参加事業者からの報告書と受注書の写しにより確認する。」
6. 商談後のフォロー期間
商談会の成果は、見積・サンプル送付・条件交渉が進む商談後の数か月で決まります。ところが、商談後のフォロー期間を独立した項目として明示していたのは、札幌市の2件だけでした(ASEAN事業は事業期間の終わりまで、台湾展示会事業は「展示商談会出展後から令和9年2月26日まで」)。ほかは「契約期間内」か、記載がありませんでした。
もうひとつの問題は、商談会の開催時期です。広島市は令和9年2月頃に開催して契約は3月31日まで、新潟県はバイヤー招へいが1月中旬〜2月中旬で契約は3月31日までです。年度末に近い開催では、フォロー期間が構造的に1〜2か月しか取れません。商談会は年度の前半〜中盤に置くか、フォローを翌年度の事業に組み込むと、成約まで追いかけられます。

図4 年度末に近い開催では、フォロー期間が1〜2か月しか取れない。出典:広島市・新潟県の仕様書をもとにLink Global作成
文例:「受託者は、商談会終了後○か月間、参加事業者と商談先とのやり取り(見積、サンプル送付、条件交渉等)を支援し、商談会の1か月後と3か月後に、商談の進捗と成約状況を取りまとめて報告すること。」
7. 報告書に入れる項目
報告書はすべての仕様書で求められていますが、中身の指定には差があります。大分県は成果物に「成約件数」と「商談の結果とその後の経過」を含めるとしており、前年度の令和8年2月の商談会について、バイヤー9社・参加38社の予定を事前に公表していました。報告書に入れる項目を仕様書で決めておくと、翌年度の事業設計や予算要求の根拠にそのまま使えます。
バイヤーごとの業態・取扱品目・販売先と、商談した事業者
商談件数と、商談ごとの結果(見積依頼、サンプル依頼、継続協議、不成立)
フォロー期間中の進捗と、成約件数・成約金額・成約見込み
不成立の理由(価格、規制、ロット、物流など)と、事業者へのフィードバック内容
参加事業者とバイヤーのアンケート結果
審査基準の配点の作り方
企画提案の審査では、配点が受託者の提案の重心を決めます。比較した案件では、価格点は小さく設定されていました(神戸市100点中5点、函館市300点中30点。広島市は価格を配点せず、経費の内訳の妥当性に5点)。
配点を詳しく公開していたのは広島市です。100点の内訳は次のとおりで、60点未満は選定しないとしていました。
業務目的の理解:20点
バイヤーの選定・招へい:バイヤーとの関係性や招へい実績10点、事業規模・販路・取扱商品の適合性10点
説明会・事業者募集10点、セミナー10点、個別支援10点
マッチング5点、当日運営5点
実施体制5点、類似業務の実績5点、スケジュール5点、経費の内訳5点
函館市の令和8年度は300点満点のうち、事前準備・商談後の支援・不成約者へのフィードバックに90点を配分していました。商談会当日よりも、前後の支援を重く見る配点です。神戸市は企画内容55点、実施体制20点、業務実績10点、価格5点に、地元企業への加点10点を加えていました。
広島市の「招へいを予定しているバイヤーとの関係性や過去の招へい実績」(10点)や、札幌市ASEAN事業の「国内外のネットワーク活用」のように、バイヤーを本当に集められるかを確かめる項目を置くと、提案書の上だけのバイヤーリストを見分けやすくなります。最低基準点は50〜70%で設定されていました。
招へい型と現地開催型で変わるところ
同じ商談会でも、バイヤーを日本に招く招へい型と、海外の会場で開く現地開催型では、仕様書で決めるべき項目が変わります。
招へい型:バイヤーの航空券・宿泊・国内移動・謝金の負担と範囲、ビザの手配、産地や工場の視察の組み込み、商談会場と通訳
現地開催型:会場と日程の手配、展示会との組み合わせ、サンプルや展示品の輸送、参加事業者の渡航費・宿泊費・通訳費の負担
共通:バイヤーの条件、事前マッチング、KPIとフォロー期間、報告書の項目
招へい型は、事業者が渡航せずに済み、バイヤーに産地を見てもらえるのが強みです。現地開催型は、1回でより多くのバイヤーと会え、現地の店頭や競合を事業者が自分の目で確かめられます。形式ごとの違いと公的な商談会の実例は台湾現地商談会の開き方|招へい型・訪問型・自由商談型の使い分けで、産地を見せることに重心を置く場合の設計はファムトリップ(FAMツアー)とは?で解説しています。
仕様書のチェックリスト
公募を出す前に、次の点が書かれているかを確認してください。
対象国・地域と、その選定根拠(受託者に提案させる場合は審査項目に入れたか)
バイヤーの人数と、業態以外の条件(取扱い実績、継続取引の意向、取引規模、国内納品・円決済への対応)
参加事業者の数と構成(新規参加の枠など)、バイヤー数との比率
バイヤーの渡航費・宿泊費・謝金と、事業者の渡航費・通訳費の負担者
通訳の人数と水準
KPI(商談件数に加え、成約・成約見込み)と、成約の定義・確認方法
商談後のフォロー期間(具体的な日付または月数)と、進捗報告の時期
報告書に入れる項目(商談ごとの結果、不成立の理由を含む)
審査で、バイヤーを実際に集められるか、商談後の支援を確かめる配点
年度末に偏らない開催時期
Link Globalにできること
株式会社Link Globalは、台湾を中心に、日本の事業者と海外のバイヤーとの商談会を企画・運営してきました。台湾ではこれまで5回以上の現地商談会を手がけ、バイヤーは自社で集めています。代表の堤浩記は京都市、福岡県のグローバルコネクト福岡、大東市などで自治体の海外展開・企業誘致のアドバイザーを務めています。
現地開催型・招へい型の商談会の企画・運営
参加事業者の業種と数に合わせたバイヤーの選定・招集と事前マッチング
商談後のフォローと、成約状況の追跡・報告書の作成
成約後の国内納品・円決済による商流への対応
公募前の情報提供依頼(RFI)や、事業の設計段階での市場情報の提供
サービスの内容は台湾進出支援|商談会・展示会・代理店開拓をワンストップでをご覧ください。
海外バイヤーとの商談会の企画・運営は、海外商談会支援のページで、バイヤーの集め方や進め方、成約後の国内納品・円決済への対応をまとめています。
よくある質問
海外バイヤー招へい商談会の委託費はどのくらいですか?
公開されている上限額は案件によって大きく異なり、比較した案件では300万円(広島市・令和8年度)から700万円台(札幌市ASEAN事業・令和8年度の7,004千円)まででした。招へいするバイヤーの国と人数、参加事業者の数、事前研修や商談後の支援の範囲によって変わります。
仕様書に成約の目標を書くべきですか?
比較した13件では、成約の件数・金額の目標を仕様書で直接指定した案件はありませんでした。茨城県は、商談件数・成約件数・成約金額の目標を受託者に設定させ、達成率に応じた成功報酬を設けていました。成約を指標にする場合は、何をもって成約とするかと、その確認方法をあわせて定める必要があります。
バイヤーの条件はどう書けばよいですか?
業態を並べるだけでなく、取扱い実績、継続取引の意向、取引規模、国内での納品・円建て決済への対応などを書くと、商談後に取引を始めやすくなります。広島市は、取引への意欲、小規模事業者との取引可能性、海外消費者への直接販路を優先条件にしていました。
商談後のフォロー期間はどのくらい必要ですか?
見積やサンプル送付、条件交渉が進む数か月は追いかけられる期間が望ましいといえます。比較した案件では、フォロー期間を独立した項目として明示していたのは札幌市の2件だけで、年度末に近い開催では1〜2か月しか取れない例もありました。開催時期を早めるか、翌年度の事業でフォローを継続する設計が考えられます。
審査で価格はどのくらい重視されていますか?
比較した案件では価格点は小さく、神戸市は100点中5点、函館市は300点中30点で、広島市は価格自体を配点していませんでした。企画内容、バイヤーの選定・招へいの確かさ、商談後の支援に多くの配点を置く傾向があります。
ご相談
商談会事業の設計段階での市場情報の提供や、商談会の企画・運営のご相談は、お問い合わせページから受け付けています。




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