日本のテキスタイル・染織品を海外で売る実務ガイド|西陣織・久留米絣から現代ファブリックまで
- Link Global編集部

- 8月8日
- 読了時間: 29分
更新日:8月9日

「日本のテキスタイルの海外で売る方法は?」
「様々な染織物の海外展開で悩んでいる!」
「日本の染織物の海外マーケティングを知りたい!」
日本のテキスタイル・染織品には、西陣織や久留米絣のような伝統的な織物から、播州織、遠州織物、尾州ウールなど現代のファッションやインテリアに活用される生地まで多様な選択肢があります。
繊細な織りや染め、素材の風合い、産地ごとに培われてきた加工技術は海外でも差別化につながりやすい一方で、「日本の伝統技術だから売れる」と考えるだけでは海外展開は進みません。
どういった販路・選択肢で展開するかによって、必要とされる商談相手も必要な資料、そして価格・MOQの考え方も変わります。
※またTITASやIntertextile Shanghai、台湾文博会、DG Taiwanなど、アジアには商材の特性に応じて活用できる展示会を知っておくことも大切です。
そこで当ページでは日本のテキスタイル・染織物を海外展開する際に押さえたい産地ごとの強みから、「販路選定、展示会、B2B商談、輸出準備」など、実務の視点で分かりやすく解説していきたいと思います。
なお、テキスタイル以外の商材を含む伝統工芸品の海外展開の全体像は、ガイドマップに商品カテゴリー別・目的別でまとめています。
日本テキスタイル・染織物が海外で評価される理由と販路

それでは日本のテキスタイル・染織物が海外で評価される理由、そして大切な販路について解説をしていきましょう。
日本のテキスタイル・染織物の海外展開では、「伝統工芸だから価値がある」という説明だけでは不十分です。
海外のデザイナーやバイヤーがみるべきポイント、訴求するべきポイントを知っておかなければ、海外展開・マーケティングとして不十分でしょう。
西陣織や久留米絣のような伝統的な布、播州織、遠州織物、尾州の現代ファブリックまで、日本には異なる強みを持つ産地があります。
そういった強みや需要を活かして海外展開していくためにも、評価される理由や販路について各項目でチェックしてみてください。
織り・染め・加工技術の違いが海外で価値になる理由
まず織り・染め・加工技術の違いが海外で価値になる理由について触れていきましょう。
海外で日本のテキスタイルが評価される理由の一つとして、完成した柄だけでなく「そこに至るまでの技術そのもの」に違いや魅力がある点が挙げられます。
たとえば西陣織は京都・西陣で生産される多品種少量生産を特徴とした先染めの紋織物で、図案から糸染め、製織まで多数の工程を経て作られます。
一方で久留米絣は先に糸を括って染め、織ることで独特の「かすれ」を表現します。
このように見た目が同じ青や黒の布でも、その色や柄が生まれるプロセス自体が優れた商品価値になるのです。
そのため海外展開では「Japanese textile」とだけ説明するのではなく、どの工程が他の生地と違うのか、それによって表情や使い方がどう変わるのかまで伝えることが重要です。
また技法をスペックではなく、デザイナーが採用する理由へ翻訳することが重要ですので、そのあたりも意識しながら海外展開に活かしていくことをオススメします。
意匠性だけでなく素材感・風合い・手仕事が評価される
次に意匠性だけでなく素材感・風合い・手仕事が評価される点にも触れていきましょう。
先の項目と少し似る部分ではありますが、日本のテキスタイル・染織物は様々な点が評価されています。
たとえば久留米絣は、先染めによる模様だけでなく、綿ならではの素朴な風合いや温かみが特徴です。
遠州でも細番手高密度織物や特殊な染色加工など多様な布づくりが行われ、尾州では紡績・撚糸・染色・製織・整理加工など地域内の専門工程が連携して多様な表情を生み出しています。
このような違いが魅力的ではありますが、だからこそテキスタイルは写真だけでは価値が伝わりにくい商材という点を見逃してはいけません。
例えば実際のB2B商談では「柔らかさ、厚み、光沢、凹凸、落ち感、肌触り」など、「触って初めて分かる情報」が重要になります。
海外展開では写真やカタログだけに頼らず、スワッチや製品サンプルを通して触覚まで商談材料にすること、それが日本のテキスタイルの強さを伝えるポイントになると覚えておきましょう。
産地や職人のストーリーを「買う理由」に変える考え方
また産地の歴史や職人のストーリーは海外向けの強力なコンテンツですが、長い歴史を説明するだけでは商談にはつながりません。
大切なのは、その背景が現在の商品価値とどう結びついているかを示すことです。
たとえば「200年続く技法」だけで終わるのではなく、手作業だから生まれる柄の揺らぎがバッグやクッションの一点物感につながる、分業産地だから複雑な加工に対応できる、といった形に変換することが大切!
※他にも「職人が何日かけたか」だけで高価格を説明するのではなく、デザイン性、耐久性、希少性、地域性まで含めて価格の根拠を作ることも重要です。
ストーリーは商品の横に添える説明ではなく、なぜ他国の生地ではなく、この産地の布を選ぶのかを説明する営業材料として設計する必要があります。
これらを意識した提案・訴求が商談を左右するケースも少なくないため、海外向けの買う理由を上手くアプローチしていくことが大切なのです。
海外デザイナー・ファッションブランドは日本の生地に何を求めるのか
さらに海外デザイナー・ファッションブランドは日本の生地に何を求めるのか、という点を掘り下げておきましょう。
海外のデザイナーやブランドが生地を選ぶときは、「日本製」という肩書だけでなく、自社コレクションで使う理由を判断する傾向があります。
尾州の公式情報でも、地域内に「紡績、撚糸、染色、製織、編立、整理加工」など専門工程が集積し、その品質が海外ブランドにも採用されていることが紹介されています。
また「Intertextile Shanghai Apparel Fabrics」では、サステナブル素材、機能性素材、ウールなどカテゴリ別に商談が行われており、海外の素材調達は意匠と同時に機能・用途・供給条件を見る世界です。
商談では「伝統があります」よりも、素材組成、厚み、風合い、加工特性、色展開、MOQ、量産可能性を整理して訴求していくことが重要です。
感性に響く生地、そして調達担当が採用できる生地の両方を成立させること、それがB2Bでの海外展開には求められると覚えておきましょう。
海外販路は分割して考えることが大切
最後に海外販路は「インテリア」「ファッション製品」「B2B生地販売」の3つに分けて考える重要性についても触れていきましょう。
これは自社の属性にもよって変わる部分ではありますが、テキスタイル・染織物の海外展開では、最初に販路を3つに整理すると戦略を立てやすくなるケースが多いです。
※完成品を売るのか、空間に採用してもらうのか、生地そのものを供給するのかで、相手も準備物もまったく違うことをイメージするとわかりやすいでしょう。
下記に「販路」…「主な商品」(主な商談相手)としてを並べていきますので、参考にしてみてください。
・インテリア・ライフスタイル…クッション、のれん、タペストリー、張地(小売、インテリアブランド、設計・デザイン関係者)
・ファッション・服飾雑貨…ストール、バッグ、小物、完成品(百貨店、セレクトショップ、バイヤー)
・B2B生地販売…反物、ファブリック、素材(ブランド、商社、デザイナー、メーカー)
まず誰に売るのかを決めてから商品を見せることが重要ですあり、自社製品・ビジネスの方向性次第で海外販路・売り方を分けて考えることが大切だと覚えておきましょう。
主要産地・染織技法ごとに海外向けの訴求ポイント

ここからは主要産地・染織技法ごとに海外向けの訴求ポイントについて解説をしていきます。
日本各地には異なる技術を持つテキスタイル産地がありますが、重要なのは「この布が何に向いているか」「どんなバイヤーと相性が良いか」まで結び付けることです。
それらを知っておくことで海外でも深く価値が理解されやすく、海外展開していくうえで強みとなるでしょう。
そんな知っておくべき海外向けの訴求ポイントを掘り下げていきますので、各項目をチェックしていきましょう。
西陣織は高い意匠性と技術力が強み
まず西陣織は高い意匠性と技術力が強みです。
西陣織工業組合は、西陣織を京都・西陣で生産される「多品種少量生産が特徴の先染めの紋織物」と説明しています。
「複雑な図案、多彩な糸使い、光沢や立体感」を美しく表現できるため、海外では着物や帯に限定せず「インテリアやファッション」へ用途を広げる余地があります。
※クッション、タペストリー、アートパネル、バッグ、クラッチ、アクセント素材など、「面積は小さいが存在感がある用途」とも相性が良いと言えるでしょう。
また海外向けでは「着物用の伝統生地」と説明するだけでなく、現代の空間やファッションに使ったモックアップを提示することが効果的です。
大量生産品と価格で競うより、小ロットでも高い意匠価値を出せる素材としてポジショニングする、そういったスタイルのほうが西陣織の特性や強みを活かしやすいでしょう。
久留米絣は手仕事感と日常性が受け入れられる
次に久留米絣は手仕事感と日常性が受け入れられる、という点に触れていきます。
福岡県の久留米絣は、あらかじめ糸を括って染めた絣糸を使う先染めの綿織物です。
伝統工芸青山スクエアでは、着物地だけでなく洋装やインテリア商品にも使われ、素朴で温かな素材感が特徴として紹介されています。
この性質は海外のライフスタイル市場と相性が良く、高級工芸品としてショーケースに飾るだけでなく「ストール、バッグ、クッション、テーブルウェア周辺の布製品」など、「日常で触れる日本のクラフト」として提案しやすいからです。
そのため商談では、藍や絣模様の歴史を長く説明するより、模様の微妙なずれや手仕事感をデザイン上の魅力として見せる方が伝わります。
伝統工芸=鑑賞品ではなく、暮らしに使える素材と翻訳すること、それが久留米絣の海外販路を広げるポイントなのです。
播州織は先染め技術とシャツ・アパレル素材として強い
また播州織は先染め技術とシャツ・アパレル素材として強いという点にも触れておきましょう。
兵庫県の播州織は、糸を染めてから織り上げる先染めを特徴とする産地です。
播州織ネクストジャパンの公式情報でも、糸染め、サイジング、製織、仕上げ加工といった各工程の専門性によって、付加価値の高い生地を生産できることが紹介されています。
海外B2Bでは、この「産地の技術」をシャツ地やアパレル素材として具体的に見せることが重要です。
チェックやストライプなどの色柄だけでなく、肌触り、光沢、天然素材、細番手、加工表現など、ブランドの商品企画に使える言葉へ置き換えることで、商談をまとめやすくなるでしょう。
播州織は「伝統工芸」と押し出すより、日本の高品質な先染めテキスタイル産地としてB2B市場へ見せる方法も有効ですので、ターゲット層に合わせて適切な訴求をしていくことが大切です。
遠州織物・尾州ウールは素材感とB2B生地供給の強みがある
さらに遠州織物・尾州ウールは素材感とB2B生地供給の強みがある、という点に触れていきます。
遠州と尾州は、海外ブランドへのB2B生地供給を考えるうえで注目したい産地です。
遠州織物は綿や綿混織物を中心に発展し、現在は天然繊維や化合繊との複合化、細番手高密度織物、特殊染色加工、多品種・小ロット対応など幅広い生地を生産しています。
尾州は愛知県一宮市を中心とする毛織物産地で、紡績から染色、製織、整理まで専門事業者が分業し、海外ブランドにも生地が採用されています。
両者に共通するのは、「日本らしい柄」より、素材としての完成度を商談材料にできる点です。
海外展開では、産地名だけでなく、どんな服に向くか、どの風合いを出せるか、何メートルから供給できるかまで提示し、デザイナーがコレクションへ落とし込める情報を揃えることが大切だと言えるでしょう。
京友禅・江戸小紋・注染など「染めの技法」の商品価値
最後に京友禅・江戸小紋・注染など「染めの技法」の商品価値について深堀りしていきましょう。
染色技法を海外へ紹介する場合も、「伝統的な染め方」という説明だけでは不十分です。
京友禅には手描きによる絵画的な表現や型友禅があり、江戸小紋では細かな型による繊細な模様を表現できます。
※注染は染料を布へ注ぎ、繊維まで浸透させることで表裏の差が小さい染まり方が特徴です。
ここで重要なのは、こうした技法を現代商品の特徴へ変換すること!
たとえば江戸小紋のパターンをバッグやレザー、小物へ展開する、注染をのれんやテキスタイル雑貨に使う、友禅の図案性をアートパネルやアクセントファブリックとして提案する、といった方法があります。
海外展開では「着物文化を理解してもらってから売る」のではなく、染色技術そのものを現代デザインの選択肢として提示する方が販路を広げやすくなるため、海外展開を成功させるために「商品価値の伝え方」を強く意識していきましょう。
販路別の実務①|小売・製品卸でテキスタイルを海外展開する方法

ここからは販路別の実務として、「小売・製品卸」でテキスタイルを海外展開する方法について掘り下げていきましょう。
生地メーカーや産地企業が海外展開を考える場合、必ずしも反物のB2B販売から始める必要はありません。
様々なアイテムへ製品化することで、「百貨店、セレクトショップ、EC、ギフト市場」など別の入口が生まれます。
特に意匠性やストーリー性が強い染織品は、素材スペックだけで競うより「完成品として世界観」を見せた方が理解されやすいケースがあるのです。
ただし製品卸では「販売価格、包装、MOQ、納期、補充対応」まで求められる点に注意が必要です。
いずれにしても小売・製品卸で海外展開する方法を知っておくことは、ビジネスとしても非常に大切なポイントですので各項目をしっかりと把握しておきましょう。
百貨店・セレクトショップへの製品卸の商談材料
まず百貨店やセレクトショップのバイヤーに必要なのは、生地の技術説明だけではありません。
・何をいくらで仕入れられるか
・最低発注数はいくつか
・いつ納品でき、追加発注に対応できるか
こういった要素を確認されやすく、その上で産地や技法の背景が差別化要素になります。
たとえば西陣織のバッグなら「西陣織を使用」だけではなく、素材の特徴、柄ごとの違い、パッケージ、想定売価、ギフト用途まで一つの提案として見せることができるでしょう。
※また海外バイヤーはすべての日本産地を知っているわけではないため、「京都で何百年」と長く説明するより、写真と短い英語で特徴を伝える方が商談では有効です。
ブランド資料と卸条件表を分けず、「売場をイメージできる営業資料」にまとめることが重要ですので、バイヤー向けの適切な資料作成に力を入れることをオススメします。
インテリア・ライフスタイル市場でのアイテムの見せ方
次にインテリア市場では、布そのものの美しさだけでなく、空間に入ったときの見え方を伝えることが大切です。
たとえば西陣織の反物を机の上に置くだけでは、ホテルや住宅での活用を想像しにくいですが、クッションやアートパネル、タペストリーとして空間写真に落とし込めば用途が明確になるでしょう。
※例えば久留米絣や注染なら、のれんやクッション、テーブル周辺のテキスタイルとして「暮らしの中の日本」を提案できます。
またホテルや商業施設では寸法変更、防炎などの性能条件、継続供給の可否を確認される場合があります。
製品小売とコントラクト案件では要求が異なるため、まずはライフスタイル製品として売るのか、空間案件へ展開するのかを整理し、使用シーンから逆算して商品を見せることが海外展開のためにも重要なのです。
ストール・バッグ・小物など服飾雑貨を「産地製品」として訴求
また各種服飾雑貨は、日本の染織品を海外へ紹介する入口として扱いやすいカテゴリです。
着物や反物の場合、海外消費者には使い方の説明が必要ですが、「ストール、バッグ、ポーチ、カードケース」なら用途が直感的に理解できます。
そこで重要になるのが、「伝統素材を使用した土産品」から一歩進み、現代のブランドとして見せることです。
「柄、カラー、サイズ、金具、裏地、パッケージ」まで含めてデザインし、産地名は商品の価値を補強する要素として使います。
※また海外では日本の地名自体が十分に知られていないケースもあるため、「Nishijin weaving from Kyoto」のように地域と技法をセットで説明すると理解されやすくなります。
工芸を現代のファッション商品へ編集する力、それが小売販路では重要なので、この部分を軽視することなく適切な訴求を行っていきましょう。
Pinkoi・自社ECは小ロットで海外市場を試す販路
さらに海外展開の初期段階では、いきなり大口卸を狙わず「Pinkoiや自社EC」を使って小ロットで市場反応を確認する方法もあります。
特にストール、バッグ、小物、インテリア雑貨など完成品で販売できる染織ブランドは、消費者の反応を直接確認できる点がメリットです。
ただしECは出品すれば売れる販路ではない点に注意が必要です。
海外販路として適切に開拓をしていくためには、写真はもちろん英語や現地向けの商品説明、そしてサイズ表記、送料、配送期間、返品条件などを丁寧に整える必要があります。
※ちなみにECで売れた柄や価格帯のデータですが、後の百貨店・セレクトショップ商談へ持ち込む使い方もできます。
Pinkoi・自社ECは海外市場を小さく検証する販路として優秀ですので、のちの海外展開へつなげるための第一歩として活用するのもよいでしょう。
ギフト・ライフスタイル需要での価格とミニマムロット設計
最後にギフトやライフスタイル市場では、安く大量に売る商品、そして小ロット高単価で売る商品を混同しないことが重要です。
手仕事の比率が高く生産量に限りがある染織品なら、無理に大量発注へ対応するより、限定性や柄違いを活かした高付加価値商品として設計する方が持続しやすい場合があります。
一方で百貨店催事やチェーン小売へ広げるなら、一定数を同じ品質で供給できる体制が必要です。
・初回は何個、追加は何個から
・同柄を再生産できるか
・色違いなら対応できるか
商談前には最小発注数だけでなく、上記のような部分も明確にしておくとスムーズに商談が進みます。
ちなみに価格は製造原価だけで決めず、海外物流、卸マージン、現地小売マージンまで見込み、誰にどの数量で売るビジネスなのかから逆算する必要があるため、そのあたりまで含めて数字をしっかりと出してから商談に臨みましょう。
販路別の実務②|B2B生地・コントラクト市場を開拓する方法

ここからは販路別の実務②として、「B2B生地・コントラクト市場」を開拓する方法について解説をしていきます。
生地そのものを海外へ販売するB2B市場では、小売とは商談のルールが変わる点に注意が必要です。
相手は一般消費者ではなく、ファッションブランドの素材調達担当、デザイナーをはじめ様々な属性に変化します。
そのためブランドストーリーと同じくらい「生地幅、混率、目付、色、MOQ、納期、追加生産能力」といった具体的な情報が重視されるのです。
そういった広義の意味での「開拓する方法」を知ること、それがビジネスの成功の秘訣ですので、ぜひ各項目に目を通してみてください。
ホテル・商業空間向けは誰と商談するのか
まずホテル・商業空間向けは誰と商談するのか、という点に触れていきましょう。
ホテルや商業空間へのテキスタイル採用を目指す場合、「ホテルに営業すればよい」と考えると商談相手を間違えることがあります。
案件によって素材選定に関わるのは、ホテル運営会社だけでなく「設計事務所、インテリアデザイナー、FFE調達担当、家具メーカー」などです。
つまり誰が仕様を決め、誰が発注するのかを確認する必要があるのです。
他にもコントラクト市場では、単なる作品性だけでなく、必要数量を供給できるか、色や柄を再現できるか、張地なら用途に応じた性能情報を提示できるかなども問われます。
商品から営業先を決めるのではなく、採用プロセスから商談相手を探すことが重要だということを覚えておきましょう。
ファッションブランドへの素材供給はスワッチについて
次にファッションブランドへの生地供給についてですが、完成品卸とは異なり、次シーズン以降の商品企画に組み込んでもらう時間軸を意識する必要があります。
デザイン決定、生地選定、サンプル作成、修正、量産まで時間がかかるため、商談時点の即売より1~1.5年先のコレクションを想定して動くケースもあります。
そのため重要になるのがスワッチであり、「素材名、混率、生地幅、目付、色、品番、MOQ、単価条件、量産リードタイム」などを生地見本とセットにしておけば、デザイナーが社内へ持ち帰って検討しやすくなります。
※さらにシーズンごとの新作を継続して見せる仕組みも必要です。
海外ブランド向けのB2Bは一度の展示会で成約するものではなく、素材提案を何シーズンも続けて採用につなげる営業として設計することも成果を出すために大切なポイントになるでしょう。
家具メーカーへの張地供給ではデータを求められる
また家具メーカーへの張地供給ではデータを求められるケースも珍しくありません。
既にご存知の方もいるかもしれませんが、家具メーカーやホテル向けに張地としてテキスタイルを供給する場合、ファッション用の布とは評価基準が異なります。
見た目や手触りが優れていても、椅子やソファに使用するなら用途に応じて「摩耗、耐久性、色落ち、寸法安定性、防炎性」などの性能情報を確認される場合があります。
※どの試験や基準が必要かは製品用途や輸出国、案件ごとに異なるため、「この数値を満たせば世界共通」という考え方は避けるべきです。
最初の商談では、既に持っている試験データを整理しつつ、不足する場合は相手が必要とする基準を確認してから追加試験を検討しましょう。
特に伝統的な織物をインテリアへ転用する場合は、意匠性だけでなく実際に使える素材であることを証明する情報がB2B採用の鍵になるため、この部分を軽視せずに意識していくことをオススメします。
B2B商談では様々な情報を用意する必要がある
さらにB2B商談では様々な情報を用意する必要がある、という点にも触れていきましょう。
B2B商談では「この生地がきれい」という感覚的な評価だけで採用は決まりません。
バイヤーやデザイナーが次に確認したいのは「生地幅、素材混率、目付、最低発注量、利用可能な色、別注色の可否、加工対応、納期、継続供給」などです。
そのためスワッチには品番だけでなく、採用判断に必要な情報を一覧化しておくことをおすすめします。
また手仕事を含む素材では、ロットによって色や表情に差が出る場合があるため注意が必要です。
もしも、それ自体を魅力として売るなら、そういった特性も商談前に伝えておくべきであり、逆に色再現性が重要なブランドへ供給するなら、どこまで再現できるかを明確にすることが大切!
海外B2Bでは、できる範囲を正確に伝える企業の方が信頼されやすいため、正しい情報を用意して相手方へ訴求をしていくことをオススメします。
小ロット高単価型と量産対応型での価格・MOQの分け方
最後に小ロット高単価型と量産対応型での価格・MOQの分け方について触れていきましょう。
海外展開でありがちな失敗が、少量生産しかできないのに量産市場へ入り、逆に量産力があるのに高付加価値市場だけを狙うことです。
職人による工程が多い染織品なら、無理にMOQを大きくせず、小ロット・高単価・限定性を前提とする方が利益を守りやすい場合があります。
一方でブランド向けの定番生地やシャツ地などでは、一定量を継続的に供給できることが強みになります。
商談時には「最低何メートルから」だけではなく、初回サンプル、量産、リピートでMOQを変える方法も検討できるでしょう。
また小ロット対応は単に数量を減らすサービスではなく、その分の段取りコストを価格へ反映させる必要があります。
自社の生産構造に合う顧客を選ぶことも販路戦略の一部ですので、海外展開のためにも適切なビジネス戦略をみっちりと練ったうえで動き出すことをオススメします。
海外展示会はアジアの年間マップと「素材×製品」「機能×意匠」で選ぶ

ここからは海外展示会のための「アジアの年間マップ」、そして展開のための組み合わせ思考について解説をしていきましょう。
例えばテキスタイルの海外展開では、「海外展示会ならどこでもよい」わけではありません。
なぜなら生地を探すバイヤーが集まる専門展と、完成品・工芸・ファッションブランドを探す展示会では来場者が異なります。
2026年のアジアでは様々な催し・展示会が年間を通じて開催されているため、素材か製品か、機能性か意匠性かの2軸で整理すると適切な展示会を選定しやすくなります。
日本の産地企業にとっては、欧州展へいきなり挑む前に「商習慣や移動距離の面」でもアジアで市場との相性を検証する方法が現実的ですので、それらを知るためにも各項目の内容をチェックしていきましょう。
2026年の催し・展示会一覧と時期
まずは2026年の催し・展示会一覧と時期について、シンプルに解説をしていきましょう。
2026年8月7日時点で公式情報から、主要展示会の「時期・展示会名・会期・位置づけ」を下記にまとめましたので参考にしてみてください。
・2月…VIATT(2月26~28日)…アパレル・ホーム・産業用素材
・4月…DG Taiwan(4月16~19日)…デザイン・ギフト・ライフスタイル製品
・8月…台湾文博会(8月6~12日)…文化・デザイン・ブランド・IP
・8月…Preview in Seoul(8月19~21日)…韓国のテキスタイル・機能性素材
・8月…Intertextile Shanghai Apparel Fabrics 秋展(8月25~27日)…大規模B2B素材調達
・9月…CENTRESTAGE(9月2~5日)…ファッションブランド・デザイン
・10月…TITAS(10月6~8日)…機能性・革新テキスタイル
ちなみにVIATTは2026年に460社超、17,000人超の来場実績を記録しており、TITASは2026年に約400社・1,000ブース超を予定しています。
いずれも非常に規模感が大きく、ビジネスチャンスにつなげやすい催し・展示会ですので、属性がマッチする場合には積極的に参加・出展を検討してみてはどうでしょうか。
VIATT・Preview in Seoulの詳細
次にVIATT・Preview in Seoulの詳細について解説をしていきましょう。
VIATT(Vietnam International Trade Fair for Apparel, Textiles and Textile Technologies)はベトナム・ホーチミンで開催され、2026年はアパレルファブリック&ファッション、ホーム&コントラクトテキスタイル、テクニカルテキスタイル&テクノロジーを幅広くカバーしました。
※先の項目でも触れたように2026年実績は460社超、54カ国・地域から17,000人超の業界来場者とかなり大規模なものです。
一方でPreview in Seoul(PIS/ソウル国際繊維見本市)は韓国繊維産業連合会(KOFOTI)が主催し、2026年は8月19~21日にCOEXで開催予定です。
※ちなみに糸、生地、環境配慮・機能性テキスタイルなどが中心となります。
アパレル素材や機能性を持つ生地なら両展は有力ですが、意匠中心の工芸雑貨とは目的が違う点に注意が必要であり、布として仕入れてもらう商材かどうかを判断してから出展候補に入れるべきだと言えるでしょう。
Intertextile Shanghai・TITASの詳細について
またIntertextile Shanghai・TITASの詳細についても触れていきましょう。
B2B生地販売を本格化するなら、Intertextile Shanghai Apparel FabricsとTITASは重要な選択肢となります。
Intertextile上海秋展は2026年8月25~27日に国家会展中心(上海)で開催されます。
※2025年秋展実績では3,700社超、26カ国・地域が出展し、123カ国・地域から10万人超が来場しており、世界有数のアパレル生地・服飾資材の調達展と言われています。
一方でTITASは2026年10月6~8日に台北南港展覧館1館で開催予定で、「サステナビリティ」「機能性応用」「スマート製造」を主要テーマとし、約400社・1,000ブース超を見込みます。
前者は幅広い素材調達、後者は高機能・高性能テキスタイルとの親和性が高いと考えら、意匠だけでなく素材スペックを武器にできる企業ほど優先したい展示会と言えるでしょう。
台湾文博会・DG Taiwan・CENTRESTAGEについて
さらに台湾文博会・DG Taiwan・CENTRESTAGEについても掘り下げていきましょう。
海外展開を考えた際に、生地そのものより「染織技術を使ったバッグ、ストール、インテリア製品」などを売りたい場合は、専門テキスタイル展以外も有力候補に入るでしょう。
例えば2026年の台湾文博会(Creative Expo Taiwan)は、ブランド商展を8月6~12日に台北南港展覧館1館で開催しており、文化・デザイン・ブランド・IPを軸にした商談機会があります。
またDG Taiwan(Designed Giftionery Taiwan)は4月16~19日に台北世界貿易センター1館で開催され、260社・400ブース超が参加する大規模展示会です。
そして香港のCENTRESTAGEは9月2~5日に香港コンベンション&エキシビションセンターで開催予定です。
これらはTITASとは来場目的が異なり、高度な織物技術を「製品やブランド」として売りたい企業に向くため、属性がマッチする場合には積極的に選択肢に加えてみることをオススメします。
国内展示会と欧州展は次点としての選択肢
最後に国内展示会と欧州展は次点としての選択肢という点に触れていきましょう。
海外の有名展示会について解説をしてきましたが、海外出展前の準備として国内展示会を活用する方法もあります。
FaW TOKYO内の「生地・素材EXPO 秋」は2026年10月7~9日に東京ビッグサイトで開催予定で、国内外の生地・素材バイヤーとの商談を想定した展示会です。
JFW系では日本の高付加価値テキスタイルを海外へ発信する取り組みがあり、国内商談でスワッチや価格条件を磨く場として活用できます。
さらに欧州には、ホーム・コントラクト向けのHeimtextil、高級服地のMilano Unica、ファッション素材のPremière Vision Parisがあります。
※Heimtextil 2026は3,000社が出展し、Première Vision Parisの次回は2026年9月1~3日です。
ただし欧州は競争環境や出展コスト、商習慣のハードルも高いため、まずアジアで商談経験と輸出実績を積み、その後に欧州を検討する進め方が現実的です。
どういった海外展開を想定しているか次第ではありますが、まずは先に挙げたような見本市・展示会を上手に活用しつつ、自社ブランド・自社製品を効率良くアプローチしてみてはどうでしょうか。
輸出・商談準備と海外展開で失敗しないための実務ポイント

ここからは輸出・商談準備、そして海外展開で失敗しないための実務ポイントについて解説をしていきます。
テキスタイル・染織物は食品ほど輸入許認可が複雑ではないケースが多いものの、「日本から発送できれば販売できる」と安易に考えるのは危険です。
繊維製品では「組成表示、洗濯表示、原産国表示」などのルールが輸出先によって異なり、完成品と生地でも確認事項が変わります。
そういった要素を知らずに海外展開をすることはリスクを高めてしまうため、各項目をチェックしてルールを含めた実務ポイントをしっかりと把握しておきましょう。
繊維製品の組成・洗濯・原産国表示のルール確認
まず繊維製品の組成・洗濯・原産国表示は「輸出先ごとのルール確認が必要」という点に触れていきます。
繊維製品の表示ルールは国・地域ごとに異なるため、日本国内向けのタグをそのまま海外へ流用できるとは限りません。
たとえば米国向け衣料品についてJETROは、原産国表示のほか、繊維製品識別法に基づく繊維組成等の表示ルールがあることを案内しています。
このように国によって所管機関や表示項目、表示方法が異なるため、注意が必要なのです。
さらに生地としてB2B供給する場合と、バッグやストールなどの完成品として小売する場合でも扱いが変わる可能性があります。
そのため輸出前には対象国の税関、消費者保護当局、業界ルール、JETRO等の最新版を確認する必要があります。
「日本で適法=海外でもそのまま販売可能」ではないことを前提に考え、万が一のトラブル・リスクを回避しながら海外展開を進めていきましょう。
生地サンプル・スワッチを海外へ送るときの品番・仕様・書類
次に生地サンプル・スワッチを海外へ送るときの品番・仕様・書類について触れていきましょう。
海外商談でスワッチを送る際は、布だけを封筒に入れて送るのではなく、採用判断に必要な情報をセットにすることが大切です。
例えば「品番、素材混率、生地幅、目付、色番号、加工内容、MOQ、参考納期」などを1枚のスワッチカードへ整理すると、現地のデザイナーや調達担当が社内で検討しやすくなります。
また国際配送では貨物の品名、数量、価格等を示す書類が必要になるため、サンプルでもインボイス等の扱いを確認しておくことをオススメします。
※展示会用の商品見本や商用サンプルを海外へ一時的に持ち出して再輸入する場合は、対象国・用途によってATAカルネを利用できるケースもあります。
サンプル送付は小さな業務に見えますが、商談先で誰が見ても内容を把握できる状態まで整えることが重要ですので、軽視することなく商談のキーになるアイテムとして用意を整えていきましょう。
用尺・生地幅・色展開の現地ニーズ確認の重要性
また用尺・生地幅・色展開の現地ニーズ確認は重要であり、これを怠ったまま商品化すると失敗しやすいという点にも触れておきます。
ありがちな失敗例ではありますが、海外向け商品を日本側だけで完成させてから売り込むと、サイズや色、用途が現地ニーズと合わないことがあるのです。
たとえば同じテキスタイルでも、ファッションブランドなら服のパターンに適した生地幅やシーズンカラー、インテリアなら大きな面積で見た柄のスケールや空間への合わせやすさが重要です。
製品販売でも、日本で好まれる小ぶりなサイズや渋い色が、そのまま海外で売れるとは限りません。
そのため初期段階では大量商品化より、サンプルや少量製品を見せてバイヤーやデザイナーの反応を集める方が安全だと言えるでしょう。
・どの色なら買うか
・どの幅なら使いやすいか
・何に使いたいか
他にも現地での需要・ニーズを確認しつつ、商品へ反映させる流れがスマートでしょう。
海外展開では、現地ニーズを確認する前に作り込まないことも重要なリスク管理の1つですので、リスクをおさえるための選択肢として覚えておきましょう。
【補足】MOQ・納期・追加生産・色再現性を曖昧にするリスク
補足として「MOQ・納期・追加生産・色再現性」を曖昧にすると、B2B商談が止まりやすいというリスクについても触れていきます。
B2B商談では商品の評価が高くても、条件が曖昧なだけで案件が止まることは珍しくありません。
特に確認されやすいのが、「MOQ、サンプル対応、量産納期、リピート時の納期、廃番の可能性、同色再現性、別注対応」に関連するケースでしょう。
伝統技法や手作業が含まれる商品では、「まったく同じ表情にはならない」こと自体が魅力になる場合もありますが、商談前に説明しなければ品質のばらつきと受け取られかねません。
また受注後に生産能力を確認するのでは遅く、展示会へ出る前から月間・年間でどの程度供給可能かを把握しておく必要があります。
これらを怠ると商談が止まってしまったり、受注継続が難しいケースもあるため、海外展開を軌道に乗せるためにも各種情報を曖昧にせず、自社では数値として管理できる状態にしておくことが大切なのです。
布以外の工芸品では日本の漆器・陶磁器を海外で売る実務ガイドや日本の茶器・急須を海外で売る実務ガイドで、産地訴求と輸出実務の考え方を整理しています。
着物・帯・和布など染織品に特化した産地別・販路別の実務は日本の染織品を海外で売る実務ガイドで詳しく解説しています。
日本のテキスタイル・染織品は海外でも通用する

今回は日本のテキスタイル・染織品を海外で売る実務ガイドとして、様々な視点で解説をしてきました。
日本のテキスタイル・染織品を海外で売るために重要なのは、伝統や技術を紹介するだけではなく、「誰が、どの用途で、この素材を必要とするのか」まで具体化することです。
西陣織の高い意匠性をインテリアへ展開する方法もあれば、久留米絣をライフスタイル製品として提案する方法、播州織や尾州の生地を海外ブランドへB2B供給する方法もあります。
そして販路が変われば必要になるスワッチ、MOQ、納期、性能情報、価格設計、展示会も変わるものです。
またアジアではTITASやIntertextile Shanghaiのような素材商談型の展示会、そして台湾文博会やDG Taiwanのようにデザイン・製品を見せる展示会を使い分けることも重要なポイント!
さらに海外展開で成果を出すには、自社の技術を海外向けに翻訳し、適切な市場・商談相手・販路へつなげる計画・戦略が欠かせません。
もし日本のテキスタイル・染織品の海外展開でお悩みの方は、株式会社Link Globalまで気軽に相談ください。
経験と実績が豊富な弊社であれば、アジア市場を中心に海外販路の選定から展示会活用、バイヤー開拓、商談まで一貫したサポートが可能です。
自社の染織品に合う海外展開の形を見極めながら、無理のない一歩から販路を広げていくことが成功への道を歩んでみませんか。
販路の選定から展示会活用、バイヤー開拓・商談までを伴走する支援内容は、海外販路開拓支援サービスのページでご確認いただけます。




コメント